sEマイクで始めるホーム&スタジオレコーディングのテクニック:#9 ドラムレコーディング【6本のマイクによるドラムレコーディングについて(後編)】

sE Electronics マイクを使ったレコーディングに役立つTipsをご紹介します。ナビゲーターは AT-Music 代表の辻 敦尊さんです。

こんにちは、AT-Music の辻敦尊です。

前回(前編)に引き続き、6本のマイクによるドラムレコーディングをテーマに説明していきたいと思います。

前回はバスドラムに2本のマイクを使用したので、残り4本はスネアドラム用に2本、そしてドラムセット全体のサウンドを狙うように2本使用していきたいと思います。

ではスネアドラムへのマイキングから始めていきましょう。

スネアドラム用のマイクの立て方について

スネアドラムはトップとボトム(表と裏、もしくは上と下というイメージ)を狙うようにマイクをセッティングすることが一般的で、ここでもそのパターンを例に説明していこうと思います。使用する2本のマイクは同じものをセレクトすることも多く、今回は sE Electronics V7 X というスーパーカーディオイドタイプのダイナミックマイクを使いながら説明していこうと思います。

※スーパーカーディオイドはカーディオイドと同じく単一指向性に分類されるものですがカーディオイドと比べて指向性の角度がもう少し狭い性質を持っています。そして後方からの感度もカーディオイドと比べると高い性質を持っています。

V7 というモデルがボーカルに最適化されているのに比べ、今回使用する V7 X のカプセルは、楽器用としての調整が施されたものとなっています。sE Electronics ではスネアやギターキャビ、タム等に向いていると述べています。

1.トップ側のマイクはスネアドラムのフチ(フープ)の上4cm~5cm程度の位置に角度をつけて立てるようにします。角度は30度~40度程度を目安にすると良いでしょう。

2.マイクを立てたら、Universal Audio 4-710d(マイクプリアンプ)のチャンネル3のMIC INにマイクケーブルで接続します。

3.4-710d のMIC/LINEの切り替えスイッチを【MIC】側にします。

4.4-710d の入力ゲインコントロールノブと出力レベルコントロールノブを回しながら、Apollo Twin へ送る信号レベルを調整します。

アドバイス!
バスドラムの時と同様に、オーディオインターフェイスへ入力する信号レベルは-20db程度に合わせることからはじめていくと良いかと思います。また、入力される信号が大きすぎる時にはPADをONにしてみたり、チャンネルごとに用意されているコンプレッサーを有効的に使ってみたり、レコーディング環境によってはローカットをONしてみたりすることも効果的だと思います。

今回は 4-710d に搭載されているコンプは使用せず、TUBE/TRANSの比率調整ノブは100%TRANSに調整してみました(トップもボトムも同様)。

それでは、ここまでセッティングしたマイクによって収録したサウンドを試聴してみましょう。

*このサウンドサンプルはコンプレッサーやEQ等を使わずに音量調整だけを行ったモノラルサウンドとなっています。
**良いモニター環境で聴いていただけるほど、その効果を感じていただけるかと思いますので、スマホなどで確認される方はイヤフォンやヘッドフォンで聴いてみていただけたらと思います。

アドバイス!
マイクをスネアドラムの表面に対して3cm位まで近づけ、寝かせていくようにすると、上記セッティングで収録したサウンドよりも「トントン」とした響きが抑えられ、耳で聞いている感じに近い音へと変化していきます。曲によってサウンドキャラクターをコントロールしていくのに効果的ですので、この知識もぜひ覚えておきましょう。

それでは、こちらのセッティングによる収録サウンドも試聴してみましょう。

いかがですか?違いを感じていただけましたか?

このサウンドコントロールがしっかりできるようになると、曲によってはスネアへ立てるマイクは1本だけでも十分な効果を期待できます。使用できるマイクの本数が限られている時等に思い出してみてもらえたらと思います。

それから、マイクは距離や角度で収録サウンドにいろいろと変化を与えることができますが、一番配慮すべきポイントはプレイヤーにとって演奏しやすい環境作りです。セッティングするマイクが演奏の邪魔にならないよう常に心掛けましょう。

トップ側のマイクがセッティングできたら、次にボトム側のマイクもセッティングしていきましょう。

5.ボトム側のマイクはトップ側のマイクと同じ軸上になるように位置調整し、角度はスネアドラム対して90度程度となるように立てます。

6.マイクを立てたら 4-710d のチャンネル4のMIC INにマイクケーブルで接続します。

7.マイクをマイクプリに接続したら、MIC/LINEの切り替えスイッチを【MIC】側にし、フェーズの極性切り替えスイッチをトップ側と反対側(逆相状態)にします。

これは、トップ側とボトム側のマイクそれぞれに入っていく音の位相が逆相に近い状態となっていることへの対策です。ボトム側の位相をマイクプリで反転させることで、DAWに記録されるトップ側とボトム側の位相は正相に近い関係にできるわけです。

8.入力ゲインコントロールノブと出力レベルコントロールノブを回しながら、Apollo Twin へ送る信号レベルを調整します。

それではここまでセッティングした内容でボトム側の収録サウンドも試聴してみましょう。

こちらはスネアの裏側に貼ってある響き線(スナッピー)の鳴りを収音する目的であることが解っていただけたかと思います。

それではトップ側とボトム側をミックスしたサウンドを次に聴いてみましょう。

*トップ側のマイクで収録しきれていないスナッピーサウンドをボトム側のマイクを使って少し補うようにしてみたサウンドの例です。

さぁ、これでスネアドラムへのマイクセッティングも完了しました。

次はドラム全体を収音するためのマイク2本をセッティングしていきましょう。

ドラム全体のサウンドを録るには

ドラム全体のサウンドを2本のマイクで録る方法は 前々回 に説明しましたが、その時のドラム上部辺りに2本のマイクを立てて録る方法(オーバーヘッドへのセッティング)はここでも有効となります。

その方法を今回も重複して説明するのも良いのですが、それではあまり参考になりませんので、今回はあえてもう一つ新たな「3 to 1 ルール」と呼ばれる方法について説明してみたいと思います。

まずは下図をご覧下さい。

3 to 1 ルールとは、収録目的とする音源からの距離を1とした場合、マイクを立てる位置の幅をその3倍設けるというルールになります。そのようにセッティングすることで、位相ズレなどの問題が生じにくくなる等と言われています。

そもそも 3 to 1 ルールは合唱を録る時等に多く用いられたりしますが、複数楽器で構成されるドラムのレコーディングにも有効な方法だと思いますのでここで紹介してみました。

それでは、下図の黄丸で示したオーバーヘッドによるサウンドと赤丸で示した3to1ルールによるサウンドの違いを聴いてみましょう。

オーバーヘッドにセッティングしたマイクによるしたサウンド

3 to 1 ルールでセッティングしたマイクによるサウンド

それぞれの違いが解っていただけたでしょうか?

それでは6本のマイクによるドラムレコーディング説明の締めくくりとして、「オーバーヘッドにセッティングしたマイク2本+スネアドラム2本+バスドラム2本」で収録したサウンドを最後にお聴きいただきましょう。

*このサウンドサンプルは、いくつかのコンプやEQを用いて処理したサウンドとなっています。

次回はドラムレコーディングの最終回として、12本のマイクを使ったドラムレコーディングについて説明していこうと思います。

ぜひ次回もご覧ください。

辻 敦尊(つじあつたか)

音楽家・クロスメディアアーティスト

中学時代より作曲とギターを始め、20歳からプロとしての音楽家活動をスタート。

近年では企業向けに音を中心としたコンテンツの提供や開発協力などをおこなう事が多く、3Dコンテンツ制作や立体音響コンテンツ制作、映像コンテンツ制作、プログラミングなど幅広いジャンルで制作プロジェクトに関わっている。

最近のリリース作品としては大久保茉美「Oboe Music」やそがみまこ「花束」などがある

AT-Music 代表
AT-Music オフィシャル ホームページ

真朗太(マロウタ)

1983.7.12生まれ

高校よりドラムを独学で始める。
19才より上京し、ヤマハ音楽院に入学。
在学中からプロドラマーとしての活動を開始。
卒業後は数々のライブ、レコーディングに参加。
現在はメジャー、インディーズ問わずポップス、ロック、演歌、映画音楽等のジャンルを主にLIVEやレコーディングの現場で活動中。

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