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sEマイクで始めるホーム&スタジオレコーディングのテクニック:#8 ドラムレコーディング【6本のマイクによるドラムレコーディングについて(前編)】

sE Electronics マイクを使ったレコーディングに役立つTipsをご紹介します。ナビゲーターは AT-Music 代表の辻 敦尊さんです。

こんにちは、AT-Musicの辻敦尊です。

前回は2本のマイクでドラムを録ることをテーマに説明しましたが、今回はもう少しマイクの本数を増やした形で説明をしていきたいと思います。

今回も使用するオーディオインターフェイスは Universal Audio Apollo Twin MkII ですが、マイクプリは4ch分増設をしないとマイク6本を扱うことができないため、同じくUniversal Audio 社のマイクプリ 4-710d を Apollo Twin にADAT経由で増設して使っていきたいと思います。

イメージとしては下図のようになります。

*今回は24Bit/48kHzの仕様で作業をしていこうと思いますので、4-710d フロントパネル右側にある16Bit/24Bit切り替えスイッチを【24Bit】側に、そしてSAMPLE RATEのノブを【48】に合わせるようにします。

はじめに、Apollo Twin へ外部マイクプリ 4-710d を接続していく手順から説明していきましょう。

Apollo Twin へADAT接続で外部マイクプリを増設する方法

1.Apollo Twin の背面にあるADAT INにTOSLINKコネクタを持ったオプティカルケーブルを挿します。

2.オプティカルケーブルのもう一方のTOSLINKコネクタを 4-710d の背面にあるADAT OUT(1)に挿します。

3.それぞれの機器の電源を入れた後にパソコンを起動し、Apollo コンソール(ソフトウエア)を開きます。

4.Apollo コンソールの左下にある【SETTINGS】ボタンを押します。

5.【Console Settings】ダイアログが開くので、下図の赤枠で示しているプルダウンメニューから【ADAT】を選択します。こうすることによって、Apollo Twin に搭載されているオプティカル端子をADAT規格の端子として使用可能になります。

6.同じく【Console Settings】ダイアログからクロックソース(下図の赤枠で示したプルダウンメニュー)として【ADAT】を選択します。これを正しく行わないとクロックのズレなどが原因で予期せぬノイズトラブルなどが発生しますので注意しましょう。

7.【Console Settings】ダイアログを左上の×印を押して閉じます。

ここまでの手順を行うことで、Apollo コンソールの画面表示内容が下図のようになります。

黄枠で示している箇所では Apollo Twin の内蔵マイクプリからの入力をコントロールし、赤枠で示している箇所では 4-710d のマイクプリ(1ch-4ch)からの入力をコントロールします。なお今回は使用しませんが、青枠で示している箇所は 4-710d からのLINE入力信号(5ch-8ch)をコントロールする目的で使用します。

アドバイス!
クロックソースの選択は下図の赤枠で示した箇所からも選択可能です。

ここまでの操作を行なったことで、6チャンネル分のマイクが使用できるようになりました。

ここから先は 4-710d の1、2チャンネルをバスドラム用に使用し、3、4チャンネルをスネア用として、そして Apollo Twin 内蔵のマイクプリ1、2チャンネルはオーバーヘッド用として使用していきたいと思います。

なお、4-710d と Apollo Twin で使用するA/Dコンバータは異なるため、厳密に言えばその点でもわずかに位相差が生じてくることとなります。ですが、それは例えばオーバヘッドに立てるマイクとバスドラムに立てるマイクとの位相差に比べれば極わずかなものですので、心配するほどではありません。ただし、これまで紹介してきたようなORTF方式やMS方式など2本1組として考えるようなマイキングの場合には支障をきたす場合もありますので、ケースに合わせて注意するようにしてください。

私も昔は位相差を気にし過ぎて神経質になっていたこともありましたが、そもそも全ての信号の位相を100%合わせる事は不可能ですので、皆さんもあまり神経質にはなり過ぎないようにするのが良いと思います。大切なのは、位相の存在を常に意識して可能な範囲でコントールしていくということなんだと思います。

それではここから実際にバスドラムにマイクを2本準備していく手順について説明していきましょう。

バスドラム用のマイクの立て方について

1.1本目のマイク(sE Electronics の X1D というモデルを使用)は、バスドラムのビーターサウンドを主に収音する目的で使用しますので、バスドラム前面に開いている穴から下図のように入れ、できるだけビーターの直線上にマイクのダイアフラムが来るようにセッティングします。

*使用するマイクスタンドの構造によってセッティングのしやすさが大きく変わってきますので、ケースに合わせたスタンドセレクトもしていけると良いでしょう。

2.X1D を立てたら、4-710d のチャンネル1のMIC INにマイクケーブルで接続します。

3.マイクをマイクプリに接続したら①MIC/LINEの切り替えスイッチを【MIC】側に、②ファンタム電源をONにします。

4.入力ゲインコントロールノブと出力レベルコントロールノブを回しながら、Apollo Twin へ送る信号レベルを調整します。

アドバイス!
オーディオインターフェイスへ入力する信号レベルに不安がある方は、-20db程度に合わせることからはじめていくと良いかと思います。上記手順の他にも入力される信号が大きすぎる場合にはPADをONにしてみたり、チャンネルごとに用意されているコンプレッサーを有効的に使ってみたり、レコーディング環境によってはローカットをONしてみたりすることも効果的だと思います。

ここまでセッティングしたマイクで収録したサウンドをとりあえず聴いてみましょう。

*今回、4-710d に搭載されているTUBE/TRANSの比率調整ノブは100%TUBEに調整してみました。
**良いモニター環境で聴いていただけるほど、その効果を感じていただけるかと思いますので、スマホなどで確認される方はイヤフォンやヘッドフォンで聴いてみていただけたらと思います。

6.続いて sE Electronics Gemini II という真空管タイプのマイクをバスドラムの前面10cm~15cm程度の位置に立てます。この時、ビーターを狙っているマイクとは少し位置(狙っている軸)をズラすようにして立ててみると良いように思います。

アドバイス!
私の場合、使用するマイクとドラマーの演奏する音量に合わせて20cm程度離してセッティングするような事もあります。

7.4-710d のチャンネル2のMIC INに、Gemini II の電源ユニットからのマイクケーブルを接続します(Gemini II は、マイクとプリアンプの間に専用の電源ユニットを挟む形でセットアップするものになります)。
*マイクに専用電源が用意されている場合はファンタム電源をONにする必要はありません。

8.4-710d のチャンネル2のMIC/LINEの切り替えスイッチを【MIC】側に合わせます。

9.1本目の時と同様に、入力ゲインコントロールノブと出力レベルコントロールノブを調整しながら Apollo Twin へ送る信号レベルを調整します。

これで2本目のマイクも準備ができました。このセッティングで実際に収録したサウンドを聴いてみてください。

1本目のマイクがビーターサウンドをメインに収音していたのに比べて2本目のマイクでは耳で聞いた感じに近いバスドラムのサウンドが収音されていることが解っていただけたかと思います。

それでは今回(前編)の最後としてバスドラムに立てた2本のマイクのミックスサウンドをお聴きください。

*今回お聴きいただくサンプルサウンドは全てコンプレッサーやEQなどの処理は施さずに音量調整だけで調整したモノラルサウンドとなっています。

いかがでしょうか?

2本目のマイクだけで収音したサウンドよりもアタック感が強調されたサウンドになったかと思います。曲によって2種類の音をミックスする比率は変わってきますし、場合によっては2本目のマイク側の音だけを使用するようなことも少なくありません。

ぜひ皆さんもリハスタなどで実際に試してみて自分の求めるサウンドを追及してみてもらえたらと思います。

それでは今回(前編)はこの辺りまでにしておこうかと思います。

次回(後編)ではスネアへのマイクの立て方からはじめていきたいと思います。

sEマイクで始めるホーム&スタジオレコーディングのテクニック:#9 ドラムレコーディング【6本のマイクによるドラムレコーディングについて(後編)】>

辻 敦尊(つじあつたか)

音楽家・クロスメディアアーティスト

中学時代より作曲とギターを始め、20歳からプロとしての音楽家活動をスタート。

近年では企業向けに音を中心としたコンテンツの提供や開発協力などをおこなう事が多く、3Dコンテンツ制作や立体音響コンテンツ制作、映像コンテンツ制作、プログラミングなど幅広いジャンルで制作プロジェクトに関わっている。

最近のリリース作品としては大久保茉美「Oboe Music」やそがみまこ「花束」などがある

AT-Music 代表

AT-Music オフィシャル ホームページ

真朗太(マロウタ)

1983.7.12生まれ

高校よりドラムを独学で始める。
19才より上京し、ヤマハ音楽院に入学。
在学中からプロドラマーとしての活動を開始。
卒業後は数々のライブ、レコーディングに参加。 現在はメジャー、インディーズ問わずポップス、ロック、演歌、映画音楽等のジャンルを主にLIVEやレコーディングの現場で活動中。

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