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sE Electronics : マイク導入事例 @ マカロニえんぴつ日本武道館公演

マカロニえんぴつや Lucky Kilimanjaro など多数のアーティストのライブサウンドに携わるエンジニアの井田真樹氏は、最近 sE Electronics のダイナミックマイクやリボンマイクを積極的に活用しています。マカロニえんぴつの日本武道館公演を訪ね、そのマイクチョイスについて話を聞きました。

BL8 に変えただけでキックがすごくタイトになった


- 井田さんが sE Electornics(以下 sE)のマイクを導入したきっかけは?

KIM の大村さんとよく一緒に仕事をする機会があって、今年の6月頃に大村さんから BL8 を勧められたんです。音を聴いてみたらすごく印象が良くて、sE の他のマイクにも興味が湧いてきました。sE のマイクは the peggies のライブでも使用したことがありましたが、その時はボーカル用の V7 でした。

- 楽器用マイクは BL8 が初めてですか?

はい。マカロニえんぴつの武道館ライブを予定していたので、そのリハで試してみたらいい感じだったので使うことにしました。低域も高域も綺麗に拾えるし、アタックもしっかりパンチがあるので、すごくいいなと。BL8 に変えただけでキックがすごくタイトになったんです。キックの中に入れるマイクは、基本的にアタックを作るためのものなんですが、BL8 はレンジもしっかりあるし、これ1本だけでも十分に収音できますね。

BL8
▲sE Electronics BL8(コンデンサーマイク)

- 以前はどんなマイクを使っていたんですか?

Sennheiser e901 を使っていました。それも BL8 と同じバウンダリーマイクで、置き方も BL8 と同じようにキックの中央辺りに置いていました。その辺の位置がバランスは一番いいですね。BL8 は e901 と比べてアタックがタイトで、僕が好きなミッドあたりがちょうど再生できます。

- キックの外側には V KICK と YAMAHA SUBKICK も立てられていますね。

V KICK はモニターマン(返しの音作りをするエンジニア)が使っていたんです。SUBKICK と BL8 で客席側に出す音を作り、バンドメンバーに返す音は V KICK で作っていたんですよ。最初は SHURE BETA 52A をモニター用に使っていましたが、色々と試していく中でメンバーからも V KICK の方がモニターしやすいという話になり、モニターマンの判断でそうしました。

V KICK
▲sE Electronics V KICK(ダイナミックマイク)

- SUBKICK と BL8 の使い分け方は?

SUBKICK は完全にサブで、それ以外は BL8 が担っています。低域を少し補うというか、加えるというか、体で感じる部分を拾うために SUBKICK を使っている感じです。あと V KICK も BL8 も SUBKICK のスペアになるので、仮に SUBKICK が使えなくなった場合でも対応できる。そういう考えもありました。

- V KICK のボイシングスイッチは使いましたか?

はい、リハで試してミッドは classic、ハイはモダンに設定するのが1番いいねと。これもモニターマンの判断でした。

V KICKボイシングスイッチ
▲V KICK のボイシングスイッチ

- BL8 にもボイシングスイッチが付いています。

ATT PADは毎回入れていました。それ以外はフラットにして、ローカットも入れていません。ボイシングによって結構印象が変わりますね。僕はコンデンサー系の広がるような音があまり好きじゃないので、わりとタイトに拾える方が好みです。

- タムには V BEAT が使われていました。

タムとコーラスマイクに使いました。V BEAT もパキッとハッキリ出るところがいいですね。タムの音がしっかり出せます。アタックが出ないと何を叩いているのかわからなくなるし、ゴチャっとしてしまうからハッキリ聴こえるマイクがいいなと。V BEAT はハイが綺麗に出るし、なおかつローもある。ミッドとローもあるので、マカロニえんぴつのドラムに合うと思って採用しました。

V BEAT
▲sE Electronics V BEAT(ダイナミックマイク)

- V BEAT をコーラスマイクに使っているのはユニークですね。

すごく綺麗に声が聴こえるし、サイズが小さいのがいいんですよ。長いマイクだと叩いている時に邪魔になるから、このくらいのサイズで良いものを探していて、以前は Shure Beta 56 を使っていましたが、それよりも V BEAT の方が断然綺麗にハイが伸びてくれます。

- マイキングのしやすさ、しにくさなど気になった点は?

特にないですね。いつも通りにセッティングできました。専用のクランプもありますが、僕はクランプがあまり好きではないのでスタンドを使いました。

V BEAT
▲ドラマーのコーラス用にセットされた V BEAT

- タムとキックのマイクを sE に変えたことで、ドラムサウンド全体への影響はありましたか?

だいぶ変わりました。全体像がクッキリ、ハッキリ、タイトに、より前に出てきます。僕は革物の音を出したいので、ハッキリ出てくれるマイクが好きなんです。なので、こういうチョイスになりました。

- コンソール側ではどんなEQ処理をしましたか?

かなりハイの「チキー」っていうところをもう少し伸びるようにEQしました。8kHzから上のベリーハイですね。それ以外の帯域は何もしなくても出てくると思ったので、ローのEQをしたくらいですね。

VR1 はダイナミックの圧がすごく拾える。レンジが広いからギターに合う


- ギターアンプにはリボンマイクの VR1 が使用されていました。

Marshall 用ですね。基本的な音は Aston Microphones の Origin で作っていますが、ミッドや太さを出すために VR1 を使いました。Flying V と Marshall の組み合わせはドンシャリが印象的だから、少しミッドが出るマイクが欲しいなと。Origin は高域がよく拾えるので、ミッドを拾えるマイクとして VR1 を使ってみたら、バランスが良くなって綺麗にまとまりました。Origin だけだと綺麗には録れるんですが、全体的に少し痛めというか、もっとミッドを充実させたいと思ったので、Origin をステレオ、VR1 をモノで混ぜています。

- リボンマイクとしてのクオリティはいかがですか?

サイズはこんなに小さいのにダイナミックの圧がすごく拾えます。レンジが広いのでギターに合っている。ギター用のマイクとしてすごく好きですね。

VR-1
▲キャビネットの右下部に設置されているのが sE Electronics VR1(リボンマイク)。左上の2つは Aston Microphones Origin

- マイキングはほぼベッタリ付くほどキャビネットに近いですね。

たぶん隙間に指1本入るかどうかぐらい近いと思います。離すのがあまり好きではなくて、 コンデンサーマイクを立てる場合も大体同じぐらいにしています。ほんの少し空けるぐらいです。

- 同じくリボンマイクの VR2 もアンプに使われていますね。

VOX 用ですね。こちらはL/Rで鳴らして、VR2 をステレオで2本立てています。VOX は歪み用、Matchless がクリーン用で、歪みの方がローやミッドが薄くなってしまうので、それを補う意図がありました。VR2 はハイもローもすごく綺麗に出るので、どちらのアンプも一度 VR1 と VR2 をリハで試してみて、ローがスッキリする VR2 の方が合っているように思いました。あとドラムが近くても被りが本当に少ない。アンプの音がそのまま出せるので、だいぶ使い勝手がいいです。マイクを離すほど被りも多くなってしまうので、なるべく近づけるようにしています。

VR-2
▲手前の VOX に立てられているのが sE Electronics VR2(リボンマイク)

- 他のアーティストのライブでも使いましたか?

先日、BRADIO というバンドで VR2 を使った時も印象が良くて、メンバーからも「このマイクすごく好き」と好評でした。ギターで使いました。

- ドラムやギターの音作りに sE のマイクを導入したことで、バンドサウンド全体の印象はどう変化しましたか?

sE のマイクは本当にミッドが充実していて、音に厚みがすごく出ると思います。やっぱりライブサウンドとしての厚さを出したいですね。

- セッティングのしやすさなど、作業性へのメリットはありましたか?

その点はさほど変わりませんが、サウンドチェックで音をもらう時のEQ処理がすごく楽になりました。ポイントが見えやすいし、タイトな感じになるのがすごくいいと思います。

井田さん
▲エンジニアの井田真樹氏

井田真樹

サンフォニックス、Freewleeling を経てフリーランスで活躍するPAエンジニア。マカロニえんぴつ、BRADIO、Lucky Kilimanjaro、the peggies、eill、鶴、早見早織などのアーティストを担当している。

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