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sE Electronics : コンデンサーマイクの基礎知識【選び方 & おすすめ機種】

レコーディングやライブ、配信などに使われるマイクには、コンデンサーマイク、ダイナミックマイク、リボンマイクなどいくつかの種類があり、中でもクリアな収音が得意とされるのが「コンデンサーマイク」です。ひと口にコンデンサーマイクと言っても、様々なタイプがあります。

目次


  1. コンデンサーマイクとは?
  2. ラージダイアフラムとスモールダイアフラム
  3. エレクトレット・コンデンサーマイク
  4. チューブ・コンデンサーマイク
  5. USBコンデンサーマイク
  6. コンデンサーマイクのスペックの見方
  7. コンデンサーマイクのセッティングのポイント
  8. 揃えておきたい周辺グッズ
  9. コンデンサーマイクを宅録で使う時のポイント

1. コンデンサーマイクとは?


コンデンサーマイクとは、電気を蓄えたり放出したりする「コンデンサー」の技術を応用したマイクのことです。使用の際は電源供給が必要で、広い周波数帯を高い感度で拾うことができ、大きな音からかすかな音まで収音可能。歌の息遣いや弦の擦れる音、部屋鳴りなど、細かいニュアンスの収録に適しています。

宅録ビギナーの方に、コンデンサーマイクについて知っていることを聞いてみると、「プロっぽい」「音がいいらしい」「値段が高いらしい」といった声があり、わりと漠然としたイメージを持たれているようです。“コンデンサーマイクを使えばプロと同じ音が録れる”という、ある意味正しく、ある意味オーバーな表現で捉えている方が多いように見受けられました。とは言え、コンデンサーマイクの仕組みを理解して正しく使いこなすことで、宅録環境でも十分にプロフェッショナルなサウンドを得ることができます。


■コンデンサーマイクの仕組み

電気を蓄えたり放出したりする回路のことを「コンデンサー」と呼び、この技術を応用したのがコンデンサーマイクです。音源から発せられた空気振動を拾って振動する「ダイアフラム」(数ミクロンの非常に薄い金属膜)と、絶縁体を挟んで固定された「電極」の間の電圧が変化することで、微弱な電気信号を得ることができます。

Diaphragm
▲ヘッドの中心部に見えるパーツがダイアフラム

マイクの内部には信号を増幅させるための回路があり、これはトランジスタや真空管によって構成されます。また、この回路を動かすためには電源供給が必要です。コンデンサーマイクは構造上、振動や衝撃、湿度、ホコリなどに弱く、高感度ゆえ意図しないノイズまで拾って増幅してしまう側面もあるため、プリアンプとの組み合わせ方や音源との相性も含め、取り扱いは慎重に行いましょう。


■コンデンサーマイクの主な用途

コンデンサーマイクのダイアフラムは非常に薄くて軽いので、一般的にダイナミックマイクよりも広い周波数帯を高感度で拾うことができます。綿密に音響設計されたレコーディングスタジオやホールなどで使用すると、大きな音からかすかな音までを拾い、さらにその部屋の響きまで収録することができるため、このあたりが「音がいいらしい」というイメージに繋がっているのかと思います。

ボーカルの微妙な音程のニュアンスや息遣い、ドラムの各シンバルのキャラクターや部屋鳴り、アコースティックギターのボディ鳴りや弦の擦れる音などを忠実にキャプチャーするには、最初の入口にコンデンサーマイクが必要なのです。

また、特性や指向性をピッタリ合わせた2本のコンデンサーマイクをペアで使うと、ステレオ録音にも使用することができます。セッティング方法としては、2本のマイクを平行に置く「A-B方式」や、同じ位置に90度の角度を付けてセットする「X-Y方式」、音源のセンターとサイドを分けて収録する「M/S(Mid/Side)方式」などがあります。

ステレオ録音

参考記事 sEマイクで始めるホーム&スタジオレコーディングのテクニック

2. ラージダイアフラムとスモールダイアフラム


ダイアフラムは、振動し始めてから収まるまでの振る舞い方を制動する構造を持たないため、サイズが大きいほど振動時間が長くなります。このことにより、ダイアフラムの大きさによって様々な音響特性が発生します。

■ラージダイアフラム

ラージダイアフラムは、イメージとしては大きく柔らかく動くため、感度が高く、ダイナミックレンジが狭い傾向にあります。低音にキャラクターがあるモデルが多く、ニュアンスが付けやすいので、ボーカル録音に多用されます。

製品例 X1A

X1A はエントリーモデルながら筐体の作りがしっかりしており、価格以上に高級感を感じました。指向性は単一指向のみですが、パッドとローカットも備えています。肝心の出音については、男性/女性ボーカルのどちらを録っても、高域のクセもなくフラットな印象です。低域については若干物足りなさもありますが、ナチュラルな分、ミックス時にEQで追い込むことができます。

ドラムのルームマイクとして使った時の印象も良く、比較的カラッとした音像になるので、ドラムキットのキャラクターを活かしたい場面でも合うと思います。アコギに試したところ、オンマイク気味にセッティングするとボディ鳴りも弦のきらびやかさも残ります。初めてのコンデンサーマイクとしてオススメできる、“使える”マイクです。

X1A
▲2/3インチ・ラージダイアフラムのコンデンサーマイク、X1A
▲こちらは1インチのラージダイアフラムを持つX1Sローカットを80Hzと160Hzから、パッドを−10dBと−20dBから選べる

製品例 sE2200

sE2200 は金属製の筐体を持つ、単一指向性のモデルです。専用のマイクマウントに付属のポップガードを直接取り付けることができるため、取り回しが非常にラクでコンパクトです。男性ボーカルに試したところ、低音は抑えめながらも耳に入ってくるスピード感が感じられて、オケの中でも歌詞が聴き取りやすい感じ。女性ボーカルでは声の芯がクッキリ出る印象で、明るいサウンドキャラクターを感じました。この sE2200 も、初めてコンデンサーマイクを購入する人でも使いやすい、失敗しないマイクだと思います。

sE 2200
▲1インチのラージダイアフラム・コンデンサーマイク、sE2200
▲sE2200のマルチパターンバージョン、sE2300。無指向性/双指向性/単一指向性の3パターンをセレクトできる

製品例 sE4400a

小振りな筐体の sE4400a は、指向性切り替え/パッド/ローカットの各スイッチが効率良く配されています。まずは女性ボーカルで試してみると、高域の張り出し方、芯の残り方にキャラクターがある印象を受けました。激しいオケの中でも芯がしっかり残ってくれる印象で埋もれません。また、ギターアンプや、ドラムのトップマイク/ルームマイクとして使用しても同じような印象で、オールラウンドに使えそうです。専用のショックマウントは前面がカットされた形状になっており、音源にペタっと近付けることができるのも便利なポイントです。

sE4400a
▲sE4400aは様々な楽器の収音に使用できる万能タイプ
T2
▲sE4400aをベースに、チタン蒸着カプセルを採用したT2は、優れた中域と低域バランスが得られる。また、より早くトランジェントに反応できるので、特にドラムやパーカッションをはじめとするアタックが重要な楽器に最適だ

■スモールダイアフラム

ダイアフラムが小さいコンデンサーマイクは、金属膜がしっかり張っているため振動しにくいとされています。そのため感度は低めですが、許容音圧レベルが高く、ダイナミックレンジが広い傾向にあります。また、全周波数帯においてフラットな音響特性であり、質感をナチュラルに収録することができます。周波数特性がフラットなので、ドラムのトップマイクや弦楽器の収録にも多く使用されます。また、許容音圧レベルが高いため、比較的大音量のギターアンプの収録にも使用可能。ステレオマイクとしても多く使用されます。

製品例 sE8

sE8 は極めて低ノイズなスモールダイアフラムのコンデンサーマイクです。今回はステレオペアのモデルを使い、まずはアコギにA-B方式で、2本の間隔を5cmほどにして近づけてみました。位相感が整っていて、とても立体的に収録することができます。また、一方を弦側、もう一方をボディ側にそれぞれ向けた場合も位相が合いやすく、弦の擦れやアタック感、ボディの鳴りや低音感など、狙いたい音が無理なく収録できます。

専用のポップガードも用意されていたので、男性の声でも試してみました。一聴して感じたのは、特にラージダイアフラムのマイクで感じるリップや歯擦音が、かなり抑えられて聴こえること。直接吹かない限りは、とてもナチュラルに録れるので、歌以外のナレーションや、ラジオ/ポッドキャストなどの収録、Web会議用のマイクとしても最適と感じました。

sE 8
▲スモールダイアフラムのコンデンサーマイク、sE8
RN17
▲スモールダイアフラムはラージダイアフラムと比べて、音がややシャープ過ぎるところがあるが、写真のRN17は大型のトランスを搭載することで、スモールダイアフラムを超える次元のバランスとヘッドルームを実現した

3. エレクトレット・コンデンサーマイク


エレクトレットコンデンサー型は、簡単に言うと、ダイヤフラムや背極、バックプレートなどに半永久的に電荷を蓄える高分子フィルムを使うことで、外部からの電源を必要としない方式です。ダイヤフラムと対向する金属のうち、「背極」に高分子フィルムを使うものを「バックエレクトレット・コンデンサー型」といいます。

sE7
▲スモールダイヤフラムのバックエレクトレット・コンデンサーマイク、sE7。アコギからピアノ、ドラム等に至るまで活用できる

4. チューブ・コンデンサーマイク


微弱な電流を増幅する回路に、真空管を用いるタイプのマイクを「チューブマイク」と呼びます。経年劣化や耐震性の問題をはらむので、より慎重に取り扱う必要がありますが、その音質はトランジスタよりも“倍音が暖かく柔らかいサウンド”と言われます。トランジスタを使用したコンデンサーマイクでは高音がキツく聴こえる音源でも、チューブマイクにすると耳障りな帯域を抑えられる場合があります。

製品例 Z5600a II

Z5600a II は、9段階の指向性切り替えスイッチが付いた専用の外部電源とマイク本体を、8ピンの専用ケーブルで接続して使用します。筐体は真鍮製で、1,970gと重量があり、高級感と存在感を放ちます。今回は男性シンガーのレコーディングで、価格差があるのは承知で、Neumann U87Ai と比較試聴してみました。

U87Ai のシルキーな高域や豊かな低音感に対し、Z5600a II は芯が残りながらも柔らかい印象の高域と、スッキリしているものの耳に届くまでのスピード感が素晴らしい低域を収録できます。比較的テンポ感が早めの曲だったので、Z5600a II の方が採用されました。また、ミックス段階でもEQやコンプのかかりが良く、さほど補正せずに素晴らしいサウンドを得ることができました。正直、この価格でこのサウンドが得られるのは驚きです。

z5600aii
▲幅広いソースを引き立たせる、太くリッチなチューブマイク、Z5600a II
Gemini II
▲こちらは入力段と出力段に真空管を1本ずつ搭載したデュアル・チューブマイク、Gemini II
▲低ノイズのECC82真空管と、Rupert Neve Designs製のカスタム出力トランスを搭載したRNT

5. USBコンデンサーマイク


「USBマイク」とは、マイクプリやモニタリング用のアウトプットも含めた、オーディオインターフェイスとしての機能を内蔵しているマイクのことです。USBケーブル1本でPCやモバイルデバイスとつなぐことができ、シンプルなセットアップとオペレーションを実現しています。特に初心者の方にはオススメで、これ1台を手に入れればセッティングについての余計なことを考えずに、歌う/話すという作業に集中できます。また、Web会議用にUSBマイクを使うと、クリアな音質にワンランクアップすることができます。価格帯が比較的お手頃なのもポイントです。

USBマイク
▲最高192kHz/24ビットの高解像度で収録可能なUSBコンデンサーマイク、NEOM USB。2/3インチ・バックエレクトレット・コンデンサーカプセルを搭載している他、マイクの感度やゲインの状態を一目で確認できる入力レベル用LEDを備える

6. コンデンサーマイクのスペックの見方


■指向性

指向性は、ダイアフラムの正面に対して、どの方向からの振動(音)を収録できるかを示します。例えば、以下のようなタイプがありますが、細かく分類するともっとたくさんあります。

  • 単一指向性/カーディオイド(正面)
  • 無指向性/オムニ(360度全方位)
  • 双指向性/フィギュア8(正面と背面)

多くのコンデンサーマイクには、この指向性を切り替えるためのスイッチが付いており、収録したい音源に応じて使い分けます。

例えば、通常のボーカル録音では、マイクの裏側から入ってくる部屋の反射音などをなるべく抑えて、歌声のみを収録したいので、基本的に「単一指向性」を使います。アコギやギターアンプも同様の場合が多いです。ドラムのトップや、アンビを録る場合には「無指向性」を使うことが多いです。前述のM/S方式のステレオ録音では、sideのマイクを「双指向性」にすることで両サイドの音を録ることができます。


■周波数特性

収音可能な周波数帯域と、周波数ごとの感度の変化を表したものが「周波数特性」と呼ばれています。一般的には、マイクの性能のわかりやすい指標です。コンデンサーマイクは広い周波数帯域が収録可能ですが、そのうえで、より低音まで収録できたり、中域のおいしいところにピーク(凸)やディップ(凹)があることで、マイクのキャラクターが生まれます。また、マイクの指向性や音源の性質によっても周波数特性は変わりますし、聴感上の捉え方は本当にケースバイケースなので、音源に対して適切なマイクを選ぶことの大切さがあります。

▲周波数特性を表すグラフ
pattern
▲こちらはマイクの指向性に対する周波数帯域ごとの特性を表したもの

■インピーダンス

マイクにおけるインピーダンス(抵抗値)とは、とても簡単に強引に言うと、マイクケーブルを伝わる時の電流の流れにくさのことで、音声信号に乗るノイズに関係してくる部分です。現代のマイクは、600Ω程度のローインピーダンスであることが多いです。


■感度

マイクが一定の振動(音圧)を受けた時に、電気信号としてどのくらいの電圧を出力するかの数値です。例えば sE2200 のスペックを見ると、感度は「23.7 mV/Pa」と記載されています。これは1Paの音圧を受けた時に23.7mVを出力するという意味です。この数値が大きいほど、より大きな電気信号として出力できるという意味ですが、「感度がいい」=「いい音」ということではありません。マイクプリとの相性にも影響してくる部分です。


■最大許容音圧レベル

マイクに対して大音量の信号が入力された時に、どこまで歪まずに入力できるかを示す値で、どれだけ音圧が高い音源を収録できるかを意味しています。一般的には、1kHzの信号が1%歪む値をdBで表します。


■S/N比

Sはシグナル、Nはノイズのことで、音声信号とノイズの割合を示します。単位はdBで、数字が大きいほどノイズの割合が少なくなり、音声信号がクリーンであるとされます。


■ダイナミックレンジ

収音可能な最小音量から最大音量(最大許容音圧レベル)までの幅を示しています。これもdBで表され、数字が大きいほど、幅広い音量を収録することができます。

7. コンデンサーマイクのセッティングのポイント


■ファンタム電源(+48V)をオンにする

コンデンサーマイクを動作させるためには電源の供給が必要です。単体のマイクプリや、オーディオインターフェイスのマイクプリから48Vのファンタム電源を供給しましょう(専用の外部電源を用意しているモデルもあります)。取扱いの基本として、必ずファンタム電源を落としてからケーブルを抜くように徹底しましょう。また、ファンタム電源のオン/オフ時には特有のノイズが信号に乗りますので、マイクを取り替えたりする時には、モニターのミュートを忘れずにすること。念のため、ヘッドホンでモニターしているボーカリスト/プレイヤーには、一時的にヘッドホンを外してもらうなどの気遣いも必要です。

電源ボックス
▲チューブマイクのRNTには専用のパワーサプライが付属する

■ローカットスイッチで振動や空調のノイズを抑える

不要な低域の振動を抑えるために、ローカットスイッチが用意されています。ちょっとした足音やエアコンの音をカットするためにも使います。マイク本体でローカットするか、マイクプリ側でローカットするか、ミックス時にEQでローカットするかなど、色々なパターンがありますが、それぞれ周波数ポイントが違ったりサウンドキャラクターにも影響するので、そのクセを把握しておくことが必要です。

■入力が大き過ぎる場合はパッドスイッチを入れる

ボリュームが大きい音源に対してマイクで歪まないように、−10dBなど、入力レベルを下げるためのパッドスイッチが用意されています。意図せずパッドがオンになっていると、マイクプリのゲインが上がらない時もあるので、基本的なことですが、収録前にスイッチの位置を必ず確認するクセを付けましょう。

パッド

■湿度管理に気をつけて保管する

海外のアーティストのホームスタジオの写真を見ると、コンデンサーマイクを出したままにしたりする場合も見受けられますが、湿気の多い日本ではNGです。できれば湿度管理ができるデシケーターに入れて保管するのがベストですが、用意できない場合は専用のケースにシリカゲルなど乾燥剤を入れて保管します。これも基本的なことですが、乾燥剤も寿命があるので必ず定期的に交換しましょう。 

8. 揃えておきたい周辺グッズ


■ケーブル

基本的には、XLR端子(キャノンコネクタ)のケーブルを使用します。またチューブマイクなど、専用ケーブルが用意されているものがあります。同じ形状でも、モデルによって配線の順番が異なる場合がありますので、必ずそのマイク専用のものを使用してください。間違ったものを使用した場合、一発で故障してしまうこともあります。

参考製品
VITAL AUDIO VAB 3MX / 3FX(バランスケーブル)

■マイクスタンド

落下防止や振動防止のためにも、ある程度頑丈でしっかりした作りのスタンドを選びましょう。最近は卓上タイプのものもあったりしますが、その場合に気になるのはスタンドからの振動です。どうしても振動が気になるような場合はマイクのローカットを使用します。

参考製品
iCON Global MB-04(ブーム・マイクスタンド)
iCON Global MB-06
(デスクアーム・マイクスタンド)

■ショックマウント

ショックマウントも床面からの振動を防止するためにとても大事な部分です。それぞれマイクに専用のマウントが用意されているかと思いますが、汎用の製品を使う場合は、制振がしっかりできるものを選びましょう。

ショックマウント
▲sE2300に付属するショックマウント

■リフレクションフィルター

比較的響きが多く残るように作られたスタジオや、宅録環境で、響きをデットに録りたい場合に便利なのがリフレクションフィルターです。Reflexion Filter は非常に使い勝手が良く、効果も高いです。筐体の上部に歌詞などを吊るすことができるパーツもあります。マイクの前面に置くことにより、余計な部屋の響きをしっかりと抑えてくれます。ボーカル録音の響き方で悩んでいる方はぜひ導入を検討してみてください。実際に使ってみると、より高価なマイクを買うよりはるかに効果が高いです。ボーカル以外にもギターアンプの収録の際も、余計な部屋鳴りをおさえるためによく使います。

リフレクションフィルター
▲RF-X

■ポップガード

コンデンサーマイクは吹かれやポップノイズに弱いので、それを防ぐポップガードは不可欠なアイテムです。感染症対策のために、複数人での連続で使い回しはしないことと、アルコール溶剤などをしみこませた布で拭いたり、しっかり洗浄し、しっかり乾かすなど、衛生管理を徹底しましょう。

ポップガード
▲sE2200、sE2300には専用のポップガードが付属する

9. コンデンサーマイクを宅録で使う時のポイント


ご時世柄、コンデンサーマイクを買って自宅で使う方(楽器演奏や歌以外にも動画配信やWeb会議用途など)が増えた印象がありますが、「扱いが難しい」「使いこなせない」「いい音にならない」という相談をよく受けます。ボーカル録音の場合は部屋鳴りがどうしてもコントロールできず、「せっかくコンデンサーマイクを買ったのに、宅録であることがすぐバレてしまうくらいクオリティが良くない」という声も聞きます。

音響特性が考慮されていない自宅環境下では色々な要素があるので、一概に「これが絶対的な解決方法」というのは言えませんが、まず試してもらいたいのは、歌う時に背中側のなるべく近い位置にハンガーラックを置き、コートや厚手の服を吊るしてもらうことと、床にカーペットなどを敷いてもらうこと。壁自体や壁の中の素材によっても変わりますが、これだけで背後や下からの反射音の侵入が抑えられ、録り音の印象が変わることが多いです。そこからさらに、壁に布をかけたり、リフレクションフィルターを導入するのもいいでしょう。

冒頭にも書きましたが、ビギナーがぼんやり思い描くような「コンデンサーマイク=いい音」ということはなく、高感度ゆえに些細な音も拾ってしまうということを忘れないようしてほしいと思います。せっかく購入したのに結局使いこなせず、ホコリをかぶっているのではとても残念なので、しっかり特徴を理解して使いこなしてほしいと思います。

最後に、コンデンサーマイクはダイアフラムの構造上、振動や衝撃に非常に弱いです。落下などはもってのほかですので、ケースから取り出す時、スタンドに取り付ける時、持ち運ぶ時などは慎重に取り扱いましょう。ご時世柄、感染症対策で飛沫が直接当たるマイク本体の消毒をしなければと思うかもしれませんが、本体にアルコールなどを直接吹きかけるのは絶対にNGです。マイクの品質維持と除菌の問題については非常にデリケートで、保証するデータは何もありませんが、それぞれのマイクメーカーが出している対処方法を確認したうえでクリーニングの対応をしてください。まずは、「複数の人が連続して同じマイクを使わない」というのが基本的な対処だと思います。

文:堀 豊(Studio 21)

堀 豊 プロフィール

エンジニア、コンポーザー、アレンジャー、サウンドクリエーター。1983年生まれ。作・編曲からミックス、マスタリングまで幅広く手掛ける。岡本真夜、前田敦子、石川よしひろ、逗子三兄弟、小椋佳、熊木杏里など、多数のアーティストの作品に参加している。2021年よりプロデューサーズユニットYuTA P(ユタピー)を本格始動、シンガーソングライターsaeをフューチャリングボーカルに迎え、Puzzle(feat. sae)、Night Drive(feat. sae)をリリース。https://linktr.ee/YuTAP

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