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イベントレポート : 東京ペダルサミット2022

2022年11月5〜6日の2日間にわたり、東京・千代田区の 3331 arts chiyoda にて日本最大のエフェクターの祭典「東京ペダルサミット2022」が開催されました。フックアップの展示ブースで注目を集めていた製品と、初日に行ったセミナーの模様をダイジェストでお届けします。

気になるペダルを次々と試奏できる展示ブース


会場を秋葉原に移して開催された今回の東京ペダルサミット。3年ぶりの待望の開催ということもあってか来場者数は当初の想定を大幅に上回り、大盛況の2日間となりました。

フックアップのブースでは、Universal Audio、IK Multimedia、Carl Martin、VITAL AUDIO、MORLEY、XSONICなどの人気製品を展示。各種エフェクターはもちろん、アンプシミュレーターやパワーサプライ、フットコントローラー、DI/プリアンプなども試奏可能で、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた最新のサウンドメイクも体験できます。

▲会場となった 3331 arts chiyoda は閉校した中学校の校舎を改修して作られたアートセンターだ
▲手前が IK Multimedia、奥がフックアップのブース。気になるペダルを次々と試し弾きできる
▲IK Multimedia のペダルシリーズ、AmpliTube X-GEAR。手前から時計回りに AmpliTube X-SPACE(リバーブ)、AmpliTube X-TIME(ディレイ)、AmpliTube X-VIBE(モジュレーション)、AmpliTube X-DRIVE(ディストーション)
▲ギターだけでなくアナログシンセ(IK Multimedia UNO Synth)にエフェクトをかけるといったことも試せる
▲IK Multimedia Z-TONE DI(アクティブDI)。JFET/PUREスイッチや、インピーダンスの連続調整、ピックアップ・セレクタなどを利用してオーディオインターフェイスやPAに高品位なオーディオ信号を送り、楽器本来の理想的なサウンドを得られる
▲この秋に発売され、大きな注目を集めているIK Multimedia TONEX。AIモデリングテクノロジーを利用してギターアンプやエフェクターのサウンドをキャプチャーし、プラグインとして利用可能にするという画期的なソフトウェアだ
▲こちらは Universal Audio 製品の展示エリア。大人気のリアクティブ・ロードボックス OX を設置して、Marshallのアンプヘッドから出力される大迫力のサウンドをヘッドホンで体感することができる
▲OX はただのロードボックスではなく、優れたマイク/ルーム/スピーカーキャビネットのエミュレーションも備えている
▲大きな注目を集めていたのが、今年発売されたばかりの Universal Audio UAFX アンプペダル・シリーズ。左から Dream '65 Reverb Amplifier(アメリカン・チューブアンプ)、Ruby '63 Top Boost Amplifier(ブリティッシュ・バルブアンプ)、Woodrow '55 Instrument Amplifier(アメリカン・ツイード・チューブアンプ)
▲こちらは同じくUAFXのエフェクト・ペダルシリーズ。左から Golden Reverberator(リバーブ)、Starlight Echo Station(ディレイ)、Astra Modulation Machine(モジュレーション)
▲スマート・マルチ・コントローラー XSONIC AIRSTEP の機能特化バージョンが4モデル出揃った。BW は Katana-Air 及び Waza-Air、Kat は Katana シリーズ、YT は THR-II シリーズ、Spk は Spark をそれぞれワイヤレスでフット操作できる
▲こちらは Carl Martin の人気製品がセットアップされたペダルボード。1つ1つ詳しく見ていこう
▲左は80年代のビンテージ・オーバードライブを再現したドライブペダル、Panama。ダンピングツマミが付いているのが特徴だ。右はビンテージトーンのオーバードライブ、DC Drive。トーンモード(レギュラー/ファット)を切り替えて音作りできる
▲ロングセラーモデルの PlexiTone から、人気のHigh Gainチャンネルを抜き出し、シングル化した Plexi Tone Single Channel。Driveノブの可変幅が広く、ブースター的な使用からクランチ~ハイゲインまで、幅広いサウンドを作り出すことができる
▲2つのブーストコントロールと2タイプのローカットをプリブーストに持つオーバードライブ・ペダル、PlexiRanger。ブースターセクションはクリスタル・クリーンブーストに加え、周波数帯を調整してブーストさせるフリケンシーブーストを備えている
▲本物のチューブを搭載したアンプ/スピーカーシミュレーター・ペダル、Ampster。ブリティッシュ系ギターアンプのサウンドをリアルに再現し、ライブステージでのDIとしても、レコーディング用ツールとしても活用できる
▲計20プリセット可能なプログラマブル・ループスイッチャー、VITAL AUDIO ENCOUNTER / VAPS-4。4ループに加えて独立したチューナーアウトを備え、4つのプリセットパッチを5つのバンクにプログラムできる。ペダルへの電源供給も可能
▲パワーサプライを組み込んだペダルボード Vital Audio VA-40 は、参考出品ながらギタリスト達の熱い視線を浴びていた
▲MORLEYのワウペダル 20/20 シリーズは8機種をレイアウト。ディストーション回路を持つ DISTORTION WAH やファズ回路を持つ POWER FUZZ WAH など多彩なモデルがラインナップしている

UAFXの魅力を深掘りするUniversal Audioスペシャルセミナー


スタジオクオリティのサウンドを持ち運べるようにした

会場奥のギャラリーBでは、UAFX シリーズの魅力を深掘りする「Universal Audioスペシャルセミナー」が開催されました。Universal Audio(以下 UA)の永井 ICHI 雄一郎氏、ギタリストの北口博之氏、フックアップの伊藤善浩の3名が登壇。まずは ICHI 氏から UAFX 誕生の経緯が明かされました。

ICHI:UA はつい5年ほど前からギターの市場に参入しました。レコーディングで使われるプラグインでギターサウンドを調整するところから始まって、徐々にハードウェアの開発も進めて、2017年にギターアンプを静かに使える OX という装置を発売しました。ギタリストはみんなアンプを鳴らすのが好きですが、自宅では音量が大き過ぎますよね。だから OX があるとすごく便利なんです。ギターの世界ではかなり話題になりました。その後、ペダルシリーズの UAFX をリリースしました。レコーディングやミックスで使うプラグインのパワーをギターに活かして、スタジオクオリティのサウンドを持ち運べるようにしたのです。このような流れで UA はレコーディングの世界からギターの世界にやってきました。

▲左から伊藤善浩(フックアップ)、永井 ICHI 雄一郎氏(Universal Audio)、北口博之氏

伊藤:オーディオインターフェイスの Apollo を発売した頃から、UA はギタリストを意識するようになりましたよね。

ICHI:そうですね。昔だとレコーディングはスタジオでエンジニアやプロデューサーがやるものでしたが、今はどんな楽器を弾いている人でも自分でできるようになりました。ギタリストもどんどんレコーディング機材を使うようになっています。

伊藤:Apollo が出た時も衝撃的でしたけど、OX も急に登場して驚きました。

ICHI:VOODOO LAB や AVID で Eleven Rack の開発などに携わってきた James Santiago という面白い人物がいて、彼が UA にきたことでギター周りの開発が始まりました。それと TC Electronic にいたTore(トア)という人物もいて、彼もギターチームのコアメンバーですね。

伊藤:Tore が加わってから UAFX の開発が始まったのですね。UA製品はいつもコンセプトがしっかりしていますよね。

ICHI:プラグインもそうなんですが、実際に世の中に存在するものをできるだけ完璧にフィジカルモデリングで届けようとしています。例えば今日紹介する UAFX Dream '65 Reverb Amplifier(以下 Dream)も、Fender Deluxe Reverb(以下デラリバ)というみんなが大好きなギターアンプをキャプチャしていて、本当にアンプを使っているかのような気持ちで弾くことができます。

▲北口氏による巧みなギタープレイにより、エフェクトペダル3機種とアンプペダル3機種のハイクオリティなサウンドが披露された

UAFXはアンプそのもの。アンプと同じように使えばいい

ここからは実際に音を聴いてみることに。北口氏のデモ演奏により、UAFX アンプペダル3機種のサウンドが披露された。今回は2つの鳴らし方で聴かせてくれるという。1つは UAFX のラインアウトからPAに信号を直接送り、アンプを介さずに鳴らすパターン。もう1つはステージ上のギターアンプに UAFX をつないで鳴らすパターンだ。まずは UAFX Woodrow '55 Instrument Amplifier から。これは Fender Tweed Deluxe のサウンドを再現するアンプペダル。クリーンからドライブまで幅広いサウンドメイクができ、2つのフットスイッチを使ってプリセットを切り替えられることなどが紹介された。続いて Dream のサウンドチェックに移る。

北口:内蔵リバーブが Fender 感を醸し出していますね。たっぷりかけてもいい感じになります。

ICHI:本当にアンプそのものなので、アンプと同じように使えばいいんです。自分の好きなエフェクトペダルを並べて、最後に Dream をつなぐ。そうすればマイクで収音したアンプのリアルな音を、ラインでPAから鳴らせます。

伊藤:実際にPAのスピーカーから Dream の音を鳴らすと「アンプの音っていいな」って思いますし、つないだ他のエフェクターの良さも感じられました。

北口:Dream は他のペダルとの相性がいいんですよ。僕はずっとカントリーをやっているんですが、Dream の音はカントリーの雰囲気にも合います。

ICHI:UAFX アンプはいろんな設定が可能なんです。キャビネット・シミュレーションにしても、小さいスピーカーから巨大な4 × 12まで選ぶことができる。それに、歪ませたい時のためにブースト回路が内蔵されていて、Stevie Ray Vaughan などが使っていたアンプの回路を組み込んでいるので、ディストーションからクリーンまでカバーできます。しかもスマホの UAFX Control アプリを使うことで、アーティストが作成した数々のプリセットを切り替えることもできるんですよ。もちろん自分で作ったプリセットを保存することも可能です。

伊藤:スピーカーの種類や数が切り替えられるってスゴイですよね。Fender のアンプを4発のスピーカーで鳴らすなんて普通はできませんが、そういうイレギュラーな組み合わせも UAFX なら実現できる。

UAFXが2台目のアンプになる「4ケーブルモード」

ICHI:ライブによってはリアルなアンプを鳴らす場面もありますよね。そんな時は、日本のライブハウスやリハスタには大抵 JC(Roland Jazz Chorus)があるので、そこにこのアンプペダルをつなげばいい。もちろんアンプは Marshall でも ORANGE でも構いません。

伊藤:アンプのセンド/リターンに UAFX アンプをつなぐことで、アンプをもう1台用意したような感じになるんですよ。JC の音だけじゃなく、JC のプリアンプをすっ飛ばして Dream の音を JC のスピーカーから出すこともできる。これは「4ケーブルモード」と言うんですが、実際にやってみたら、本当に JC のプリアンプをスルーできてメチャクチャ驚きました。UAFX が2台目のアンプになるという体験は感動しますね。北口さんは普段この4ケーブルモードを利用して、JC でクリーントーン、Dream で歪みのサウンドを作っているのですか?

北口:そうです。僕の場合 JC はクリーンにして、Dream はちょっと飽和した感じのクランチにしています。もし Marshall がある環境なら、 Marshall で歪んだ音、Dream でデラリバのクリーントーンを出すという使い分け方もできますね。

▲北口氏は自身のボードに Dream を組み入れている

セミナーの終盤では、Astra Modulation Machine(モジュレーション)、Golden Reverbrator(リバーブ)、Starlight Echo Station (ディレイ)といった UAFX エフェクトペダルも組み合わせて、多彩なサウンドメイクが披露された。

伊藤:UAFX はエフェクトもハイクオリティですね。アナログディレイとデジタルディレイの名機をエミュレートしていたり、プレートリバーブのようなレコーディング現場でしか使えなかったものを再現していたりと、プロフェッショナルなエフェクトを使えます。

ICHI:アーティストが作った音や、多くの人に聴き馴染みがある音を作れる機材をチョイスして、それを完璧にモデリングしつつ、すぐにいい音が作れるように操作性もシンプルにしました。ツマミをどの位置に設定しても良い音が出るようになっています。実機が好きな人なら UAFX を気に入ると思います。

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