素晴らしき80年の歩み
レコーディング技術の開拓者の一人であり、現在もなお最前線に立つ Rupert Neve 氏。技術の進化とともに歩んできたその人生は、まさにオーディオエンジニアリングの歴史そのものです。彼の手によって生まれた機器の数々は時代、ジャンルを問わず重用され、星の数ほど存在するレコードの多くに素晴らしいサウンドをもたらし続けています。この80年以上にわたる Rupert 氏のレコーディング機器にかけてきた情熱をご紹介しましょう。
世界を渡り歩いてきた Rupert 氏は、第二次世界大戦前までアルゼンチンで育ち、初の「現代的な」レコーディング・コンソールをイングランドで誕生させました。そして現在はテキサスでデジタル世代のためのアナログ回路の設計に勤しんでいます。
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黎明期
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第二次世界大戦中にアルゼンチンで育った Rupert 少年は、多くの人々にラジオのニュースを届けたいと考えていました。彼はラジオの修理や自身の手作りラジオを売り、Radio Amateurs Handbook(アマチュア無線の手引き)を教科書に学んでいきます。そして真空管のカタログを熟読し、地元のラジオショップに通いつめ、コンポーネントに関するメリットとデメリットを議論し、その知識を蓄えていきました。
17歳になった彼は、世界中の英国男子ともども王と国のために戦うと志願しました。そしてイングランドに向かう船団に乗り込み、ロイヤルシグナルスに配属されることとなります。その後イングランド西部地方で民間人となった彼は祖母の遺産を活用し、元は米国陸軍の救急車であったバンを買い、機材をセットしてモバイルレコーディングとPA用コントロールルームへと改造しました - そして、合唱、アマチュアのオペラ団、音楽フェスティバルや公共イベントなどを78回転のラッカーディスクに録音していくのです(当時はまだ磁気テープのない時代でした)。
やがて彼は、プリマスのシティセンターにある再建された聖アンドリュー教会のオープニングでのエリザベス王女(現在のエリザベス女王)の公共放送を手掛けます。また、Winston Churchill が息子 Randolph の政治活動の応援をしにプリマスにやってきた時は、シティセンターすべてに届くほどの巨大PAシステムを構築し、マイクからの音声は Rupert 氏が設計/製作したアンプを通じて広場全体に響き渡ったのでした。
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1950年代
準備期
Evelyn との恋が実った際、彼女の父親からこう訊ねられました。「君はどうやって娘に安定した暮らしを約束するつもりなんだい?」答えはひとつしかありません。「定職につきます。」
そして Rupert 氏は、Rediffusion、Ferguson Radio、そしてトランス・メーカーのチーフエンジニアとしてオーディオ回路設計とその製造に関する経験を積み上げました。
この会社のオーナーはPAスピーカーの製造も手がけていました。当時はまだコーナーバッフルに大量の砂を詰めたものばかりでしたが、Rupert 氏は空いた時間に小さなブックケース型エンクロージャーを開発しました。彼はそれを500注文したいというクライアントをみつけ、ボスにこの設計を提案しましたが、却下されてしまいます。この一件により、Rupert 氏の起業家魂が燃え、ある日彼は給与明細を見つめながら、現実と向き合い、決断を下しました。
製造への第一歩
CQ Audio - それは短命に終わりましたが、ひとつの製品を設計・製造し、原材料の備蓄からテスト、品質管理、販売から供給までを一元管理で行い、世界中に供給することを目指しました。
Rupert 氏はここで以下の製品を設計、プロデュース、販売を行いました :
The CQ Reproducer
最初のブックケース型のハイファイスピーカーシステムのひとつです。
Rupert 氏はこれをロンドンのRSA(ロイヤル・ソサエティ・オブ・アーツ)の British Institute of Recorded Sound(サウンドレコーディング科)でデモンストレーションを行い、その驚愕のサウンドクォリティにスタンディングオベーションが起きました。
The Q Flex
革新的なスピーカーシステムで、フレキシブルウォールを利用してサウンドのエネルギーを拡散します。この製品は業界団体のインダストリアルデザイン賞(Council of Industrial Design Award)を獲得し、ロンドンのデザインセンターに展示されました。
The CQ Twin 4
ステレオ Hi-Fi アンプ
The CQ ‘Ten Fifteen’
10W出力のシングルチャンネル Hi-Fi アンプ
The Tetraq
単独のバイポール型のツイーター
The CQ Tapeheart
ステレオテープ録音、再生ユニット
CQ Audio 自体は決して成功した事業とは言えませんが、この経験により Rupert 氏は製造とマーケティングの知識を得ることができ、後の Rupert Neve 社設立にあたりおおいに役立つこととなります。
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1960年代
設計者としての頭角
Musique Concrete London
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プロのミュージック・コンクレートの作曲家である Desmond Leslie は、テープレコーダーが山積された部屋の中をその「コンクレート」サウンドで満たしていました。彼は EMI との契約でシェイクスピアの劇中のバックグランドミュージックの素材としてこれらをミックスするデバイスを必要としていたのです。
Rupert 氏はミキサーを設計し Desmond に価格を提示しましたが、パーツを仕入れる資金がありませんでした - これは本当にユニークなカスタムデザインの機器だったために、他の誰かに販売することはできないものでした - そこで Rupert と Evelyn は、Desmond に手附金として価格の1/3を前払いしてもらうよう交渉し、ようやく最初のミキサーが造られたのです。
やがて洗礼を受けてクリスチャンとなった Rupert と Evelyn は神の啓示を受け、これまでの問題解決に乗り出しました。カスタムコンソールの契約を融資を受けない形にし独立採算するようにしたのです。この経営ポリシーは現在に至るまで大事にされています。
チャンス到来
The Rupert Neve Company
1961年、ロンドンのポップミュージックシーンが活発となり、当時最前線にあったふたつのスタジオがモダンミュージックのために新しいサウンドプロセッシングの技術とミキシングを取り入れようとしていました - それが Recorded Sound Ltd と Phillips Records Ltd です。
Recorded Sound Ltd, London
Recorded Sound の Leo Pollini は以前から Rupert 氏の良きクライアントの一人でした。それまで、彼のために2台の真空管仕様のコンソールを設計し、納品しています。最初の1台はスタジオ用で、プリマス時代の設計をベースに当時の革新技術が盛り込まれたものです。
もう1台は外での放送用コンソールです。Recorded Sound は Radio Luxembourg との契約で、日曜昼下がりのコンサートの生放送用にすべてのスタジオ機器の機能と音楽信号の供給を備えつつ、高品質で信頼のおける可搬式のコンソールが必要でした。このコンソールはすでに Bryonstone Street Studio で稼働していたものに基づくものでした。
Pollini 氏はこれらのコンソールを長年にわたり使用し続け、その頑丈さと信頼性はやがて Rupert 氏の機器に対する評価となり、世間へ知れ渡るようになっていきました。
トランジスターの波及と定着
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1964年、Rupert 氏はそれまでの伝統的な真空管仕様のものに代わる高性能のトランジスター機器を開発しました。最初にトランジスター機器を導入したのが、Phillips Records Ltd. です。そこで氏は録音された音楽素材のバランスを調整するための一連のイコライザー群の設計/製造を依頼されました - これはマルチトラックのテープマシンが誕生する以前の出来事です。それまで2トラックで録音された音楽のバランスを調整するには、アーティスト、プロデューサー、エンジニアがもう一度改めてレコーディングセッションを行わなければなりませんでした。当然、これにかかる費用は莫大です。しかしイコライザーの導入により、費用と時間を大幅に節約することができました。
この成功を受け、Phillips だけでなく他のスタジオからもミキシングコンソールのオーダーが相次ぐようになります。「素晴らしい技量」と「明瞭なサウンド」という評判を生み、需要は急速に伸びていきました。
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Neve 家から…
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この時、会社はまだ Rupert と Evelyn の住居にありました - それはイングランドのリトルシェルフォードにある古い牧師館です。古い馬車置き場(離れ)は金属加工と倉庫として稼働し、プレハブ小屋は設計事務所、プロジェクトエンジニア、販売オフィスとして使用されていました。母屋にあった多くの部屋は研究と開発、購買、経理、秘書室としてあてがわれ、ロンドンのみならず、アメリカ、オーストラリア、南米、ヨーロッパ各国や極東など世界からやってくるクライアントとの打ち合わせにも使用されました。
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…工場に
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1969年初頭、事業の場を専用の製造工場へと移しました。それから5年間、スコットランドにモジュールの組み立て工場を設立し、カナダのトロントをはじめ、コネチカットのベセル、カリフォルニアのハリウッド、テネシーのナッシュビルに販売事務所をおきました。販売エージェントも世界中にでき、1973年までに Neve チームは総勢500人を超えるにまで成長します。
事業は「更なる一歩前進」を信条に抱え、チームは富を築き、革新的かつシンプルな技術設計、そして職人魂によって比類なき成功を収めることができました。
Neve のチャンネルアンプ
Neve のチャンネルアンプは、Neveコンソールで使える高性能な入力アンプのシリーズで、慎重に組み上げたフィルターを装備し、優れた周波数特性を有します。
これらのアンプはマイクロフォンとラインソースからの信号を受けるように設計され、600Ωの負荷で0dBmに増幅できるようになっています。そして最も重要な特徴は、低ノイズと低歪みを実現し、オーバーロードに強い特性を持っていることです。
例 : Neve 1066 Channel Amplifier
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高域、中域、低域の補正コントロールを装備し、そのカーブと周波数は、ハイクオリティなレコーディングで最大限の能力を発揮できるように時間をかけて設定されています。そしてカットオフ周波数を設定できるハイパスフィルターも装備します。
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1970年代
業界の水準として確立
Necam
Rupert 氏はいよいよ「ムービングフェーダーオートメーション"」を生み出します。このアイデアは、とあるカナダの会社によるマルチトラックテープマシンの2トラック分とVCAを使用したフェーダーポジションのリコール技術から触発されたものでしたが、結局そのコンソールが世に出ることはありませんでした。
Rupert 氏は世界トップクラスのスタジオオーナーやエンジニアたちから彼らの「夢」とも呼べる要望を聞き、リストとしてまとめていきます - そしてそれらを、世界初のムービングフェーダーシステム “NECAM” のコンセプトへと発展させるのでした。
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1976年、George Martin を Neve 社のスタジオに招き、マシンコントロールを装備した Neve 16/4 コンソールのテストを開始します。そして彼は1日をかけマスターのミックスを終えた後、こう言いました - 「これ、いつ納品してくれるんだい?」
コンソール
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8078:40チャンネル x 24グループ x 32トラックレコーディングとミックスダウンコンソール
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1978年にAIRスタジオに導入れた3台の中の1つ。現在はバンクーバーにある Bryan Adams のスタジオで稼働中 。
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2254Eリミッター/コンプレッサー
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スタンダード & カスタムコンソール
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Neve “S” シリーズ
コンソールの設計コンサルタント
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5315コンソール
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In-Lineシリーズ
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Recorded Sound Console
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ターンキーシステム
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The Smoke Factory
ARN Consultants
1975年、新しい局面を迎えます。あまりにも急激な成長により、資本の増資が必要となり、Neve 社は英国の上場企業に売却されました。向こう10年間、競合製品および企業に携わらないことに合意した Rupert と Evelyn は、教会や聖堂などのSR等を扱う ARN Consultants 社を設立し、現在もなお操業し続けています。
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Rupert 氏はこの時期に多くの低予算のスタジオのために技術を磨き、機材開発に時間を費やします。彼は Cambridge Radio Course で週4回の授業を始めました - クリスチャン・ワーカーのためのラジオを通じた通信教育で、在宅で実地体験できるコースです。70年代から80年代にかけて、男性女性問わず、数百人がこのコースを受講しました。時には商用国営放送機関からの専門家を交え、講義や助言を行いました。
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1980年代
新たなる挑戦
AMS / Neve
1985年、Neveグループはオーストリアの Siemens 社に売却され、1992年には、デジタルオーディオ分野で大きな成功を収めていた別の Siemens の子会社であるAMS Ltd.,と統合され、AMS / Neve 社となりました。
Rupert 氏は、AMS / Neve 社との関係、および契約はありません。
Focusrite Ltd.
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1985年、 Rupert と Evelyn Neve は新会社 : Focusrite Ltd. を創業し、スタジオのラックに収まるEQやコンプレッサー、マイクロフォン/ラインアンプ等の新たなアウトボード機器のラインナップを生み出しました。
そして過去の実績と業界にいる友人らの切実な要望を受け、再びミキシングコンソールを手がけることになりました。Focusrite Ltd. は8つの大型コンソールの注文を受け、オーディオ部は予定通り完璧に仕上げられたにも関わらず、(Rupertの専門知識外である)デジタルコントロール部の設計が遅れに遅れ、結果としてこの会社の資金は枯渇し、1989年に清算されました。
Phil Dudderidge 氏は、新会社 : Focusrite Audio Engineering Ltd. を設立し、Focusrite Ltd. の資産を買収しました。1989年までの Focusrite 製品を引き継ぎ、他のオリジナル製品を加え、現在も操業し続けています。
なお、Rupert 氏は Focusrite Audio Engineering Ltd. のために製品の設計を行ったことはありません。
Amek
ARN Consultants は1989年に Amek Systems and Controls Ltd. のオーナーである Graham Langley と Nick Franks とのコンサルタント契約に合意し、イングランドはマンチェスターにある同社に対して、新しいレンジのコンソールとアウトボード機器の設計を供給しました。
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1990年代
新世界
Amek
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1993年、システム9098シリーズのアウトボード機器と9098シリーズのコンソールをリリースしました。Nick と Graham、および Rupert 氏は世界市場を考慮し、アメリカにビジネスの場を移すことに合意しました。
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1994年11月、Rupert と Evelyn Neve はテキサス・ウィンバリーに移住します - 以前、友人に会うためこの地を訪れた際に、その素晴らしい景観や人たちを気に入ったことが理由でした。後に ARN Consultants は米国企業となり、社名は ARN Consultants LLC. となりました。
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2000年代
新世紀
Taylor Guitars
ARN Consultants は楽器分野にも進出しました。これは Rupert Neve にとっても新しい領域です。Taylor Guitars は新しいプロジェクトに氏を招き、プロフェッショナル・プリアンプ "K3" をリリースしました。K3にはギター内蔵バージョンとハイクォリティのマグネティックピックアップ用の外付けバージョンが用意されました。この設計は Rupert 氏の信念に基づき、バランスタイプの低インピーダンス接続によって、これまでにない低い歪みとローノイズをアコースティックギターサウンドにもたらします。
さらに Taylor Guitars は Rupert 氏の協力を得て、Expression System (ES) と呼ばれるマルチセンサー低インピーダンスマグネティックピックアップアセンブリーを完成させました。この新しいESピックアップはダイナミック型のマイクロフォンのように電気的に動作します。
プロオーディオの手法、バランス信号経路とプロオーディオの接続端子で信号レベルをコントロールし、高精度のイコライザー、極限まで抑えられた歪みとノイズ、更にESピックアップによって、そのクォリティは劇的に改善されました。これは業界において大きな飛躍となりました。
アメリカ国籍の取得
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2002年、Rupert と Evelyn Neve はアメリカ国民となり、1975年に設立された ARN Consultants は、ARN Consultants LLC. として米国企業となりました。
Legendary audio
Billy Stull との密接なコラボレーションによる3年の研究開発の後、当時急成長を遂げていたマスタリング分野向けの製品 "The Masterpiece" の開発に携わります。"The Masterpiece" は2004年のサンフランシスコで行われたAESで公開されたのでした。
Rupert Neve Designs – 2005年
テキサス・ウィンバリーにオフィスを構えるこの会社は Rupert 氏の優れた設計と理念をベースにしながらもDAW世代に適した柔軟さと機能を持つ製品の開発と供給を主眼としています。
Portico シリーズ
Rupert Neve Designs は2005年に Portico シリーズをリリースし、すぐに高い評価を得ました。Portico はデジタルシステムの入出口のための高品位なアナログブロックです(それゆえこのシリーズの名前を “Portico = 玄関” と名付けました)。Portico シリーズはそのリリース後数年にわたり、業界で権威のあるさまざまな賞を獲得しました。いくつもの TEC アワード、複数の PAR 優秀賞、Mix Certified Hit Awards、MIPA 賞など、その品質と素晴らしさを不動の地位へと押し上げたのです。
リリース当初の Portico は、グレーのバウダーコーティングに黒と赤色のインレイを施したデザインで、横置きと縦置きの両バージョンが用意されていました。当初は 5012 Dual Pre 、5042 True Tape FX(生産完了)、5032 Mic Pre EQ(生産完了)、 5043 Dual Mono / Stereo Compressor(生産完了)、5033 Five Band EQ(生産完了)、5016 Mic Pre / DI(生産完了)、5014 Stereo Field Editor(生産完了)と 5015 Mic Pre Compressor(生産完了)の8モデルがラインナップされていました。
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5088 と新しいルックス
2009年、高電圧のディスクリートミックスシステム 5088 がリリースされ、無限のミックスバスとサウンドクォリティを実現しました。このモジュラー式ミックスシステムは、ユーザーが必要に応じて構成を変えることが可能で、Portico シリーズを装着してマイクプリやシグナルプロセッシングを追加することができます。回路電圧を90Vにすることで、5088 はこれまで Rupert Neve 氏が設計したどのコンソールよりも、10dB以上も広大なダイナミックレンジを誇ります。そして、カスタムトランスフォーマーをすべての入力と出力に装備することで、完全なるガルバニック絶縁を実現しています。
そして Portico シリーズは 5088 のリリースを受け、フロントパネルをライトブルーのパウダーコーディングに、ノブをアノダイズ処理したアルミニウム仕様に変更されました。
Shelford シリーズ
2013年、Rupert 氏はリトルシェルフォード時代の設計を現代的な仕様にアップデートした Shelford シリーズ をリリースしました。プリアンプとインダクターEQは、1073 と 1064 を受け継ぎつつ、バリアブルシルク/テクスチャーコントロールのモダンな機能を装備します。そのフロントパネルは 5088 でも同様に採用されることとなった、彼のビンテージデザインと同じロイヤルエアフォースブルーで彩られています。
サミングファミリー
Rupert Neve Designs は、2012年の 5059 Satellite からサミングミキサーの開発にも力を入れ、大型スタジオの要求にも耐えうる音質を備えた拡張可能なモジュラーサミングシステムを生み出しました。現在、サミングファミリーとして、5060 Centerpiece、5059 Satellite、5057 Orbit がラインナップされています。
デジタルソリューション
2018年、Rupert Neve Designs は、マスタリンググレードの24ビット / 192 kHz 変換を実現する8チャンネルのクラスA・Dante™ 接続マイクプリアンプ、RMP-D8 で初めてADコンバージョンの領域に参入しました。ゲインとトーンを1つのICに依存する統合型の Dante マイクプリアンプとは異なり、RMP-D8 の各チャンネルにはカスタムトランスを備えるA級回路設計のマイクプリアンプが搭載され、Rupert Neve Designs 製スタンドアロン型プリアンプの高い品質を維持しています。
そして2020年には、MBC Master Buss Converter をリリース。RMP-D8 のコンバーター技術に基づく、クラスAのトランスレスパス、もしくは Silk 回路を含むカスタムトランスカップルドパスのいずれかをお使いいただける設計となっています。
Rupert Neve Designs は、長きに渡る Rupert 氏の伝説的デザインワークの集大成です。Rupert 氏を創設者であり師匠とする RND のエンジニアチームは、彼の崇高なビンテージデザインの要素を継承しながら、現代のレコーディングエンジニアのニーズを満たすための新たなアプローチを探求しています。同社のすべてのツールは、最高水準の音楽的品質を維持しながら、今日および将来のエンジニア、ミュージシャン、オーディオファンのために、実用的かつ革新的なソリューションを提供するよう生み出されています。