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Citadel Electronics : 創業者インタビュー(3)“マス”に挑む俊英が築き上げた“新たな砦”

開発や製造は比較的小規模で行なえ、さまざまな流通手段がある現在、ペダル・マーケットは新規参入のハードルがそれほど高くないのかもしれない。とはいえ、その中で最初から“マス”を見据えて戦略を練るメーカーは稀少だ。大手メーカーで研鑽を積んだ2人が描く、“世界規模”への道筋に刮目せよ!(THE EFFECTOR BOOK SPECIAL PART 2 Citadel Electronics より転載)

第2回はこちら

現代の技術で設計し直せば 60年前よりもずっと良く機能するはず 


- “Planetary Phase”は6ステージのフェイザーで、比較的洗練された落ち着いたサウンドに感じました。6ステージならではの魅力を味わえるおすすめセッティングはありますか? 

ステージ数や回路構造については、かなり多くの実験を行ないました。最終的には、VCAベースのオールパス・フィルターを採用しています。これはギター用フェイザーとしてはあまり一般的ではない方式です。おそらく昔は、VCAはノイズが多いうえ価格が高いといった理由で使われなかったのだと思います。しかし現在は選択肢も増えていますので、少し従来とは違うアプローチを採用しました。あなたが「洗練されたサウンド」と感じたのは、まさにこの点が理由だと思います。とても良い表現ですね。セッティングについてですが……これはプレイヤーに自由に試してもらうのが一番でしょう。コントローラーのレンジはどの位置でも使いやすく、良い音になるよう設計しています。まずはすべてのノブを中央位置からスタートして、そこから好みに合わせて調整してみてください。正直なところ、このペダルをひどい音にするのは難しいと思いますよ(笑)。 

- プレイヤーとしてはタップ・テンポ機能があると嬉しいと感じましたが……。 

私たちはシンプルなフェイザーを作りたいと思っていました。タップ・テンポを搭載すると追加のフットスイッチ、何らかのデジタル制御が必要になる可能性が高くなります。しかしこのペダルは完全なアナログ回路です。もしデジタル制御を導入すると、モジュレーション波形の追加、さらなる機能などを入れたくなってしまうでしょう。そうなると、ペダルは物理的に大きくなり、操作も複雑になってしまいます。ただし、将来的なヴァージョン2では検討する価値はあるかもしれません。 

- “Bus Driver”は高品位なコンプレッサーですが、なぜVCA方式を選んだのでしょうか? 

このペダルのコンセプトは、スタジオ品質のコンプレッサーをペダル形式で提供することでした。また、ギター、ベースのどちらにも使えること、そして音色をあまり変えない、それでいて操作が簡単という点も重要でした。VCAは非常に予測しやすい特性を持つデヴァイスです。他の方式とは違い、dB/Voltの関係が固定された特性を持っています。つまりゲイン制御の挙動が非常に安定しているんですよ。また、私たちは、“Dynazero”、“Planetary Phase”、“Particle Drive”といったラインナップでもVCAを使用しています。そのため、ここでもVCAを採用するのは自然な流れでした。 

- “Bus Driver”開発の際、参考にしたスタジオ用コンプレッサーはありましたか? 

はい。私はこれまで長年にわたりダイナミクス・プロセッサーの設計や開発に関わってきましたし、私たち2人ともスタジオで多くの機材を使ってきました。それもあって、当初は“1176”タイプか、SSLやdbxのようなVCAタイプのどちらにするか迷ったんですよ。しかし最終的に、スタジオ品質、柔軟性が高い、それでいて操作が簡単という方向性を考えた結果、SSLスタイルを採用しました。“Bus Driver”はSSL回路の完全コピーではありませんが、VCAを用いた信号経路、サイドチェイン構造、コントローラー・レイアウトなど、基本トポロジーは共通しています。そこにデジタル制御の正確な信号レベル・メーターを追加しています。 

- “RATIO”の設定がある程度限定されている点が使いやすさに繋がっていると感じました。どのような考えでこの仕様にしたのでしょうか? 

確かにこのコントローラーは、連続的に変化するポットではなく、いくつかの固定設定になっています。ただ実際のところ、いくつかの固定設定があれば充分なのです。それに、ペダルの筐体には追加のノブを配置するスペースもあまりありませんでした。そのため、このパラメータは現在の3つの設定に固定することにしたんです。“Bus Driver”は私たちのペダルの中でも特に人気の高いモデルですが、このコントローラーについて「もっと柔軟性が欲しい」という声は今のところ出ていません。つまり、多くの人にとって充分に機能しているということだと思います。 

- “Plutonium Overdrive”はオツァヴァーラ氏の経験が活かされたベース用ドライヴ・ペダルだと感じました。開発はどなたが主導したのですか? 

おっしゃる通りです。このペダルはほとんどトミの作品と言っていいでしょう。彼は現在ヘヴィ・メタル・バンドでベースを弾いていますし、ダークグラスでの経験もありますからね。このペダルのアイデアは、トミ自身が現代的なベース用ディストーションを設計したいという思いから生まれました。これはダークグラスのコピーを別の筐体に入れただけのものではありません。むしろ、もし彼が当時完全な自由を持ってベース用ディストーションを設計できたならどうなっていたか、という発想で作られたものです。 

- “CRUSH”ノブによってモダンなサウンドからファズ的な音までコントロールできる点が印象的でした。この機能の開発について教えてください。 

“CRUSH”ノブの役割は、“Overtuber”の“GIRTH”コントローラーと非常によく似ています。これはディストーション・ステージへ送られる低域信号の量をコントロールするものです。目的は、プレイヤーが音をタイトにする、より太くルーズなサウンドにする、といった調整を行なえるようにすることですね。従来、この低域レスポンスは設計者によって固定されることが多いのですが、私自身アンプ設計をしてきた経験から、これは常にある種の妥協になると感じていました。そのため、最終的な調整はプレイヤー自身が行なえるようにする方が良いだろうと考えたんです。 

- シタデルのラインナップを俯瞰すると、ヴィンテージ志向とモダン志向のユニークなバランスを感じます。これは意図的なものですか? それとも自然に生まれたものなのでしょうか? 

おそらく両方だと思います。つまり、意図的な部分もありますし、自然に生まれた部分もあります。また、私たちがエンジニアであり、同時にプレイヤーであることも影響していると思います。多くの場合、設計上の判断はユーザーが期待する機能、そのエフェクトに伝統的に存在する機能といったものを踏まえて行なわれます。ただし、それを現代の技術で設計し直せば、60年前よりもずっと良く機能するはずです。例えば“Vector”のオクターヴ・コントローラー、“INITIAL STATE”機能などがその例です。私たちはペダルのクローンを作る会社ではありません。常に実用的な機能、何らかの新しい要素を製品に取り入れようとしています。要するに、私たちは「きちんと機能するものを設計する」ことが好きなのです。 

- シタデルの今後の展望を教えてください。 

エフェクター市場は非常に過密状態です。同じ市場をめぐって、何千もの会社が競争しています。しかし私たちは、ニッチなブランドやブティック・ブランドというより、より広く知られるブランド(いわば“定番ブランド”)になることを目指しています。その方針は、販売代理店を通じた流通体制、価格をコントロールするビジネス・モデルにも表れています。つまり、より幅広いユーザーに届く製品を作るという考え方ですね。私たちの強みは、長年この業界に関わってきたことです。製品を自分たちで設計しているだけでなく、業界そのものの仕組みを理解しているという背景があり、この点は他のブランドに対して優位性になると思いますし、おそらくそのおかげで、ブランド立ち上げから短期間でヨーロッパ全域、北米、日本といった地域に流通を広げることができたのでしょう。とはいえ、もちろん私たちはまだスタートアップ企業です。市場でしっかりとした地位を築くには、製品ラインナップをさらに増やしていく必要があります。すべてが落ち着くのは、これから2年ほど先になるでしょうね。最終的には、大手ブランドと肩を並べる形で国際的にブランドを確立できればと思っていますよ。 

- 日本ではまだ新しいブランドです。日本のペダル・ファンにどのような点に注目してほしいですか? 

私たちの最終的な設計目標は、「人々がギターを弾くことを楽しめること」です。そして、私たちの製品がギターを弾きたくなる気持ちを刺激することです。どれだけ「最高のペダル」(その“最高”が何を意味するにせよ)を買ったとしても、結局使いたいと思えないのであれば意味がありません。私たちは、プレイヤーのことを考えてペダルを設計しています。しかし同時に、すべての設計判断にはエンジニアリングの裏付けがあります。つまり、私たちは自分たちが何をしているのか理解したうえで設計しているということですね。さらに言えば、私たち自身もプレイヤーです。ですから、自分たちが使いたいと思わない製品を市場に出すことはありません。

 

Citadel Electronics Products Review


豊富な知識と積み上げてきた経験をシンプルかつ高性能という理想に注ぎ込んだモデルの実力を検証!

Planetary Phase [Phaser]  : 幻想的な揺れを生む6ステージ・フェイザー

「惑星の」や「軌道を回る」といった意味合いも感じ取れるモデル名をつけられた6ステージ・フェイザー。そういった色眼鏡で見るからか、6ステージ回路を用いているわりには過激さや酩酊感より、雄大で大らかな揺れの魅力が主張するペダルだ。これには一般的なFET制御ではなく、VCAを元にした制御回路を採用していることも関係しているかもしれない。遠景としてなじみつつも、その存在感はしっかり感じ取ることができる独特の立体的フェイズ効果と音色の色合いは、やはり上品という形容詞を使いたくなる。コントローラーは一般的な“RATE”&“DEPTH”に加え、うねりの中心周波数帯を変化させる“OFFSET”と、フィードバック量を調整する“RESONANCE”を装備。“OFFSET”は全体的な音色の明暗も左右するコントローラーで、左に回して低域を強調すればオルタナティヴなドヨ〜ンとした雰囲気を出し、右に回して高域に寄せればキラキラ感も増強され軽やかさも出てくる。また、“RESONANCE”はうねる波の頂点がどのくらい表れるかといった調整に役立つコントローラーで、“RATE”との兼ね合い次第ではワウ・ペダルを操作するかのような周期性も際立たせることができる。これはコードのロング・トーンなどと合わせると、それだけでリフになるような面白みも感じられた。この発想から行くとタップ・テンポ機能なども欲しくなるところだが、シンプルゆえに使いやすい、また人力で使い方を探求していくほうが楽しいという、シタデルの提案と受け取ると、それはそれで納得が行く完成度と言えるだろう。  
なお、“Initial State”では電源投入時に本機をオンにするかオフにするかの選択の他、フットスイッチを踏むごとにオン/オフが切り替わる“LATCH”と、踏んでいる間だけオンになる“MOM”(モーメンタリー)が設定できる。“MOM”による瞬間的効果も魅力だ。
 

▲フットスイッチの挙動を、ラッチとモーメンタリーで選択可能。瞬間的な効果付与などもできる。

[Specifications]●端子:Input、Output ●コントロール:Rate、Depth、Offset、Resonance ●スイッチ:Bypass、[Initial State]Bypass ON/OFF、Mom/Latch ●電源:9VDC(100mA) ●サイズ:62mm(W)×114mm(D)×58mm(H) ●重量:250g 

Dynazero [Noise Gate/Expander]  : ペダル構成に合わせて柔軟に対応するノイズ・ゲート/エクスパンダー

度々ラインナップの話になって恐縮だが、やはり第1弾ラインナップにノイズ・ゲート/エクスパンダーが含まれているというのは、なかなか稀な話だ。これにはアルヴァレズ氏の嗜好と経歴、親交の深いイングヴェイ・マルムスティーンのアンプにノイズ・ゲートを搭載したという過去も関わっているかもしれない。本機のノイズ除去の実力は確かなもので、検出回路&リダクション回路が優れているのはもちろん、その2つを絶縁することでグランド・ループ・ノイズも徹底排除する気の配りようだ。これは、単にペダルボードに組み込むという使い方以外の用途も見据えているからこそだろう。本機にはメインのインプット&アウトプットの他、絶縁されたセンド&リターン端子も装備。このセンド&リターンはやはり便利で、このループ内に歪み系ペダルを配置する、アンプ側のセンド&リターンを用いてプリアンプ後のノイズ対策に用いるなど、用途に合わせた柔軟なシステムを組むことができる。4ケーブル・メソッドなども提唱されており、ギター本体のダイナミクスやタッチは生かしつつ、ハイゲイン・サウンドを鳴らす、または空間系前のノイズを徹底除去するなど、こだわり派も納得のシステムを組むことができるわけだ。マーシャルの中でもハイゲイン・モデルと向き合い、プロオーディオ機器の世界でも活躍してきたアルヴァレズ氏だからこそ、ノイズの除去という課題には挑まずにはいられなかったのだろう。なお本機は、設定スレッショルド以下はバッサリとカットする“HARD”モードと、エキスパンダー的な緩やかなかかり具合の“SOFT”モードを選択可能。アナログ/デジタルにかかわらず、ペダルにこだわる人ならば、そのオイシイ魅力のみを掬い上げてくれるノイズ・ゲートにも注目してくれるのではないだろうか。

▲筐体左側面にセンド&リターン端子を装備。4ケーブル・メソッドなどで的確なノイズ除去に対応する。

[Specifications]●端子:Input、Output、Send、Return ●コントロール:Threshold ●スイッチ:Bypass、Hard/Soft ●電源:9VDC(150mA) ●サイズ:62mm(W)×114mm(D)×58mm(H) ●重量:250g 

Plutonium Overdrive [Overdrive for Bass] 相棒が本領発揮したベース用オーヴァードライヴ

ここまで、ややアルヴァレズ氏寄りの話が続いてしまったが、シタデルの共同創設者であるトミ・オツァヴァーラ氏は、今やベース用ギアで世界を席巻しているダークグラス・エレクトロニクスの元技術責任者。そのオツァヴァーラ氏の面目躍如とも言えるペダルが、このベース用オーヴァードライヴだ。まずベース・プレイヤー視点で見て嬉しいのは、原音をミックスする“BLEND”の装備。よっぽどギターライクな攻めの音作りが許される環境でもない限り、やはり低音の保持は外せない。本機の歪みキャラクターがやや金属的なディストーション寄りでもあるので、さらに低域の存在感はマストだ。その点、現役ベース・プレイヤーでもあるオツァヴァーラ氏の設計には、実践的に使えるかどうかが重要な要素として組み込まれている。また2バンドEQも、特に演奏会場の特性による低音の回りや抜けの悪さといったトラブル対応面で役立ってくれる大切な存在だ。これら基本性能はしっかり確保したうえで一歩踏み込んだのが、“CRUSH”ノブだ。これは歪み前段の低域を調整するコントローラーで、低域が締まったガリガリのディストーション・サウンドから、やや飽和感のある1970年代ファズ・ベース・サウンドまで幅広い音作りに貢献してくれる。歪みキャラクターの変化というだけに留まらず、どこか時代感を変えてくれるようなニュアンスもあり、非常に重要なコントローラーと言える。ミニ・スイッチなどによるモード変更ではなく、1つのノブでシームレスにその幅を行き来できるという機能は、そのおいしいポイントを知り尽くした見事な設計だと感じた。ベース用ドライヴ・ペダルは選択肢が潤沢ではなく、また定番モデルが強すぎるという現状がある。そこに打って出た本機は、歪み好きのベース・プレイヤーにどう受け止められるか。熟練の新兵の活躍に大きな期待を寄せたい。

▲モダンなディストーション・サウンドからレイドバックしたファズ・サウンドまで幅広い変化が魅力だ。

[Specifications]●端子:Input、Output ●コントロール:Level、Crush、Blend、Drive Bass、Treble ●スイッチ:Bypass、[Initial State]Bypass ON/OFF ●電源:9VDC(50mA) ●サイズ:62mm(W)×114mm(D)×58mm(H) ●重量:250g 

取材、文:山本彦太郎  Gentaro Yamamoto

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