問題だったのは使用する真空管によって 挙動が大きく変わる点
- シタデルとしての最初の製品は何ですか?
これは少し答えるのが難しい質問です。というのも、最初から一度に複数のペダルを発売するつもりだったからです。少なくとも5〜6機種を同時に出したいと考えていて、最終的には7機種になりました。
- 現在のラインナップは主にアナログ回路の製品のようですが、アナログにこだわっているのですか?
いいえ。私たちは、目的を達成するために必要な技術を使うという考え方です。例えば“Dynazero”はエキスパンダー(ノイズ・ゲート)ですが、これはアナログ回路のペダルにデジタルのサイドチェインを組み合わせた構造になっています。また、“Bus Driver”にはデジタルのメーター表示が搭載されています。現在、リヴァーブなどのデジタル系エフェクトも開発しています。リヴァーブのようなエフェクトは、アナログ回路で実用的かつ良い音に仕上げるのはかなり難しいですからね。確かに現在のペダルは信号経路はすべてアナログですが、将来的にはシタデルのデジタル・エフェクトも登場する予定です。
- 各モデルについてお伺いします。“Overtuber”に搭載されている“INITIAL STATE SWITCH”はどのような意図で採用された機能ですか?
この機能はすべてのペダルに搭載されています。これは大きなペダルボードやスイッチング・システムを使う人のための機能ですね。例えば、ペダルボードの電源を入れたときに、バイパスをオフにした状態、ブーストをオンにした状態、両方オンなど、あらかじめ決めた状態で起動させたい場合がありますよね。この機能があることで、演奏を始める前にペダル1つ1つを踏んで状態を設定する手間を省くことができるんですよ。
- Overtuber”はプリアンプ部に真空管を使用しています。どの真空管を採用していますか?
このペダルは“ECC83”(“12AX7”)を中心に設計されています。ただし、ユーザーが実験したい場合には、“ECC81”や“ECC82”でも動作するようになっています。現在の生産ロットでは、中国のプスヴァン(Psvane)製真空管を採用しています。これは、ブーストなし/低電圧動作モードで最も良いパフォーマンスを示したためです。当初はJJ製の真空管を使用する予定でしたが、低電圧で動作させた場合の性能があまり良くありませんでした。そのため代替を探す必要があり、その結果、プスヴァンが最も良い性能を示したというわけです。
- “Overtuber”は特定のアンプやペダルからインスピレーションを得たモデルなのでしょうか?
先ほど少し触れましたが、最初のインスピレーションは “Tube Driver” ですね。このペダルは、デヴィッド・ギルモア、エリック・ジョンソン、ジョー・サトリアーニといったプレイヤーが使用してきたことで知られています。ただし、“Overtuber”は“Tube Driver”のクローンを目指したものではありません。ジョー・サトリアーニと何度も話し合う中で、私たちは“Tube Driver”にはいくつかの弱点があるという点で意見が一致しました。特に問題だったのは、トーン・コントローラーの設計、使用する真空管によって挙動が大きく変わる点です。私たちの開発は、主にこの2つの部分に焦点を当てて進められました。真空管は、サーボ・バイアスのような回路でバイアスされています。この回路は真空管の動作点を評価し、特定の電流値になるように調整します。その結果、使用できる真空管の種類の幅が大きく広がりました。また、トーン・コントローラーも改良しました。オリジナルの“Tube Driver”では、“TREBLE”コントローラーの大半の範囲がほとんど実用的ではないという問題があったのです。そこで、より自然で扱いやすい操作感になるように設計し直しました。
- “GIRTH”ノブと“BODY”ノブはどちらも低音域に作用するコントローラーです。この2つを搭載した理由を教えてください。
確かにどちらも低域に関係していますが、回路内の異なる場所に作用しています。“GIRTH”は、歪みの前段(ディストーション前)での低域量をコントロールします。つまり、低く設定すると低域がタイトになり、高く設定するとシングルコイルなどのブライトなピックアップを補う、といった調整が可能になります。あるいは、よりファズっぽいサウンドを作ることもできますね。これは真空管アンプでもよくある、永遠のジレンマに関係しています。「ゲインが低い→音がトレブリーになる」、「ゲインが高い→音が濁る」というものですね。そこで、歪ませる前の低域量をユーザー自身が決められるようにするため、このコントローラーを追加しました。
一方の“BODY”は、一般的なアンプやエフェクターのベース・コントローラーに近いものです。これはペダルの出力段での低域量を調整し、使用するアンプとのバランスを整えるためのものです。さらに言えば、このコントローラーは単なる低域調整というより、中域のバランスにも少し影響します。そのため、単に「BASS」と呼ぶのではなく、“BODY”という名前にしました。
- “Overtuber”はドライヴ・ペダルとしては珍しく500mAという比較的大きな電流を必要とします。これは真空管の安定動作のためですか?
その通りです。まず真空管のヒーターを温めるだけでも6.3Vで約300mA が必要です。さらに、9V電源から約120Vの高電圧を生成する必要があります。これはブースト・モード時に真空管が使用する電圧ですね。これらの電圧は、内部のスイッチング電源によって生成されています。さらに、オペアンプ用に±15V電源も生成しているので、こうした電源回路をすべて含めると、最終的にペダルはブースト・モードで約450mA程度の電流を消費します。一方、ブーストを使わないモードでは、真空管は約30V程度で動作するため、消費電力はもう少し少なくなります。私たちは、オリジナルの“Tube Driver”のようにAC電源(コンセント)から直接電源を取る方式にはしたくありませんでした。また、このペダル専用の電源アダプターを付属させることも避けたかったのです。現在では、500mAを供給できるパワー・サプライは多くのプレイヤーが使用していますしね。そのため、ペダル自体はこの仕様のまま販売し、ユーザーが適切な電源を用意することを前提にしました。
- “Particle Drive”はディストーション的なキャラクターも持つハイゲイン・オーヴァードライヴと説明されています。このモデルのコンセプトは?
このペダルは、ある意味で週末の実験のようなプロジェクトから始まりました。狙いは、マイルドなオーヴァードライヴからハイゲインまで変化させても、サウンドのバランスを保ったペダルを作ることでです。開発の過程ではいくつかの異なる回路構成を試し、最終的な製品へとたどり着きました。このペダルの特徴は、複数のゲイン・ステージを持っていることですね。“GAIN”を上げていくにつれて、これらのステージが段階的に歪んでいく設計になっています。
- “CLASSIC/BALANCED/MODERN”という3つのキャラクター・スイッチを備えていますが、基本となるサウンドはどれでしょうか?
もともとの設計は、“BALANCED”モードを基準にしています。その後、柔軟性を高めるために“CLASSIC”と“MODERN”の2つのモードを追加しました。このタイプのペダルで最も難しい問題は、最終的なサウンドがユーザーのアンプによって大きく変わってしまうことです。プレイヤーはこのペダルをマーシャル、フェンダー、ハイワット、あるいはプラグイン・アンプなど、さまざまな機材に接続します。しかし、それぞれレスポンスが異なるため、どのアンプでも良い音になるペダルを作るのは簡単ではありません。そこで私たちは、トーン・コントローラーと組み合わせて機能する複数のミッド・レンジ設定を用意することにしました。
- “Vector”はディストーション的な要素も強いファズと説明されています。特定の既存モデルからのインスピレーションはありましたか?
このペダルも特定のモデルのクローンではありません。ただし回路の一部はクラシックなファズ・ペダルをベースにしています。基本的なコンセプトは次のようなものです。低入力インピーダンス、実用的なゲイン・コントローラー、オクターヴァー/レクティファイア回路、使いやすいトーン・コントローラー、これらを備えたファズですね。そこからは、実験を繰り返して良い回路を見つけていくというプロセスでした。ファズはおそらく最も個人的なエフェクトの1つだと思います。演奏スタイルやプレイヤーの好みなどと非常に強く相互作用するからです。
- “OCTAVE”ノブを上げたときのアナログ・シンセ的なサウンドがとても印象的でした。この部分には特別なサウンド・チューニングが施されているのでしょうか?
オクターヴを持つファズはすでにいくつか存在しますが、固定オクターヴ、スイッチでオン/オフというものが多いですよね。私はこの部分を連続的にコントロールできるようにしたいと考えました。というのも、オクターヴの出方は使用するピックアップ、ギターのヴォリューム、トーン設定によって大きく変わるからです。単純なオン/オフ・スイッチでは少し制限が多すぎると思いました。オクターヴァー回路自体は、基本的には標準的なフルウェーブ・レクティファイア回路です。そこに追加したのが“MIX”コントローラーで、サウンドのバランスを保ちながら調整できるようにしました。
- 電圧をコントロールする“WEAR”ノブを搭載した理由を教えてください。
長年、ギタリストの間では「“Fuzz Face”系のペダルは、消耗した電池で使うと良い音がする」という話がよく議論されてきました。このアイデアはそこから来ています。そこで、消耗した電池を再現できる電源回路をいくつか試作し、ペダルの挙動を実験してみました。すると、内部電圧が約5V程度まで下がると、サウンドが非常に面白い形で壊れたような質感になることがわかったのです。ただし、それよりさらに電圧を下げると、完全に壊れたような音になったり、動作しなくなってしまいます。とはいえ、ギター・エフェクトの開発にはよくあることですが、これは科学的なアプローチというより完全に耳による実験でした。つまり、実際に音を聴きながら「このペダルはどう反応するのか?」を試し続けた結果なのです。
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Bus Driver [Compressor] : 操作に迷わないVCAコンプ

開発順で言うと、アルヴァレズ氏が最後に手がけたモデルではあるものの、ドライヴ・ペダルなどと共に第1弾ラインナップに加えたかった理由がわかるVCAコンプレッサー。モデル名には“Drive”という言葉が入っているものの、いわゆる「コンプでの歪み」ではなく、非常に高品位でクリアな効果をもたらしてくれる。VCA回路ならではの、反応が速く色づけもないコンプレッション効果は、ポップスの伴奏などに持ってこいなうえ、各種コントローラーの設定次第では1970年代ファンクやソウル風のカチッとしたカッティング・サウンドにも合いそうだ。ツマミやスイッチが多いわりには操作系もわかりやすく、特に“RATIO”が“2:1”、“4:1”、“10:1”に絞り込まれているのがありがたい。音ツブのデコボコは防ぎつつタッチも生かしたいなら“2:1”、アルペジオなどを均一に表現したいなら“4:1”、シャープなカッティングなら“10:1”と用途に合わせた選択もしやすく、直感的な設定が可能だ。“ATTACK”と“RELEASE”の効き具合も把握しやすいため、どの程度発音を際立たせ、どこまで音を粘らせるかの設定を簡単に追い込むことができる。これらは、LEDのリダクション・メーターによる視覚的認識も大いに貢献しているだろう。それでも迷う場合は、2つのスイッチを同時押しすることでリリースを適正に自動設定してくれるので安心だ。また“SC HPF”は低域をどの周波数帯から圧縮するかの選択。これはギターでも音の軽やかさを変化させる機能として便利だが、やはりベースでの活用に最適。スラップの音像・重心なども変化するので、ベース・プレイヤーにも強くオススメしたい。プロオーディオ機器の開発などにも携わったうえで、ギター・プレイヤー向けのペダルに落とし込むというアルヴァレズ氏の意図が、見事に具現化された1台であり、シタデルの確かな技術力を証明する。本機を第1弾ラインナップに入れたかった理由としては申し分ないだろう。

[Specifications]●端子:Input、Output ●コントロール:Compression、Makeup、Attack、Release ●スイッチ:Bypass、Ratio、SC HPF ●電源:9VDC(150mA) ●サイズ:62mm(W)×114mm(D)×58mm(H) ●重量:250g
Vector [Fuzz] : 電圧調整機能付きオクターヴ・ファズ

第1弾ラインナップの開発では、オーヴァードライヴ2種の次に着手したファズ。アルヴァレズ氏が「ファズは最も個人的なエフェクトの1つ」と語るように、一言でファズと言っても好みは大きく分かれる。なのでまず最初に提示しておくと、本機はかなりディストーション寄りのファズであり、その流派の人にはぜひ試してもらいたい1台だ。歪み具合を決める“FUZZ”ノブは10時位置ぐらいからザラつきが出て、12時位置以降はほぼディストーション的なキャラクター。上げるにつれ2〜4弦の金属感が強まっていくが、この質感こそ本機のキャラクターを如実に示した部分だと思う。一方、低域は飽和感はあるものの潰れはせず、単音リフなども厚みを持って充分成り立たせてくれる。このあたりがカオスを求める流派との分水嶺だろう。“WEAR”ノブは左いっぱいの9Vから右に回すごとに内部電圧が下がり、右いっぱいで5Vの設定になる。サウンドの毛羽立ちや輪郭の崩れ、ローファイ感などさまざまな味付けが楽しめ、よりファズらしさを狙うならこのノブの設定にぜひともこだわってほしい。“OCTAVE”ノブによるオクターブ・アップ効果はハイ・ノート単音だとシンセの金管楽器的な響き。サステインも豊かでリードで使いたくなるのはもちろん、幻想的・牧歌的なサウンドスケープ作りなどにも合いそうだ。逆に低音は潰れたアナログ・シンセ的でかっこいい音色。これもドローン的に這わせるなど、音楽的な発想を刺激してくれるサウンドだが、複音は5度やオクターヴを重ねるのが限界。長3度も怪しいぐらいだが、そこを果敢に攻めて行く楽しさもありそうだ。新進メーカーの第1弾ラインナップにファズが当たり前に入る時代になったことを感慨深く見るとともに、開発者のファズ観も如実に映し出されると納得した1台。ファズ好きにはどう刺さるか。

[Specifications]●端子:Input、Output ●コントロール:Tone、Octave、Level、Fuzz、Wear ●スイッチ:Bypass、[Initial State]Bypass ON/OFF ●電源:9VDC(50mA) ●サイズ:62mm(W)×114mm(D)×58mm(H) ●重量:250g
取材、文:山本彦太郎 Gentaro Yamamoto
