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sE Electronics V7 : ボーカル用ステージマイクの次世代スタンダード

シンガーであり作曲・作詞家の石塚裕美さんは、ライブ用のメインマイクとして sE Electronics のダイナミックマイク、V7 を愛用しています。V7 を選択した理由と、最近試奏したという V7 シリーズの他のモデルについても話を聞きました。

V7はショックマウントを内蔵しているから、全体的に音がスッキリしている


- 石塚さんは現在、V7 をライブでマイ・マイクとして使用しているそうですね。以前から自分用のマイクを持っていたのですか?

何本か持っていて、前は AKG の D5 というマイクを使っていました。仲良くしていただいているエンジニアさんのスタジオで、10種類くらいのマイクを試す機会があって、その中で一番声質に合っていると推薦していただいたんです。ただ、D5 はかなり頑丈な作りで重たいんです。私はマイクを手持ちすることが多いので、ワンステージやるにはちょっと手首が持たないくらいで。あと、これは会場によると思うんですけど、「高域が抜けない」とPAさんに言われることがあって。音質的には、私の声の中低音あたりがふくよかになるので気に入っていたんですけど、「ちょっと難しいマイクだ」というようなことを何度か言われたので、「私の声質に向いているマイクは何だろう?」と思って探し始めました。

- そこで、しっくりきたのが sE Electronics の V7 だったわけですね。

sE Electronics のマイクが良い物であることは、レコーディングではわかっていたので、ハンドヘルドマイクが出ると聞いた時は興味津々で。どういう感じの音が出るのかと思って試してみたら、すぐにいい印象でした。

- どんなところが良かったですか?

まず、ハンドリングがすごくしやすいのと、ショックマウントを内蔵しているおかげで、全体的に音がスッキリしているんですよ。私の声質だと、真ん中から上の帯域は倍音成分が少なめで、下の方はかなり多いので、そこをどうスッキリ聴かせるか、どうふくよかに聴かせるかが課題のひとつなんです。V7 はその点をバランス良くスッキリ聴かせてくれるから、「これはいいな」と感じて、すぐにメインマイクになりました。実際にいろんな会場に持っていって、PAさんに「今日のマイクです」ってお渡しすると、ほとんどの方が V7 をご存知ないんですよ。「sE Electronics にこんなマイクがあるんですか?」っておっしゃる方がすごく多かったですね。ただ、ステージ後に感想を伺うと、「すごくいいですね」って皆さんおっしゃるので、低音の不要なノイズを拾わないところとかが功を奏しているんだと思います。

sE V7
▲V7

- マイクを持ち込む場合、PAさんにとっての扱いやすさも大事ですよね。

そうですね。会場に置いてあるマイクにいくつか選択肢がある場合はいいんですけど、いわゆるライブハウスだと Shure SM58 しかないことがほとんどなので、必ず V7 を持っていくようにしています。本当に音がスッキリしているのと、ケーブルを伝ってくる低音のノイズもかなりカットされていると、何人かのPAさんがおっしゃっていたので、「そんなに効果があるんだ!」って思いましたね。

- 取り回しの良さにもつながる部分ですね。

そうですね。重量が軽いのでハンドリングしやすいというのもあります。激しく動き回って歌うステージばかりではないんですけど、ケーブルに付随する部分も、PAさんにとってはかなり違いがあるんだなと。

- 曲調による向き不向きはありますか?

sE Electronics のマイクって、私としては、わりと煌びやかな音色になる印象なんですね。だから、アイドルっぽい曲を歌うとか、ポップスのキラキラした部分を聴かせたいとか、声質の明るい部分を出したい時にすごく合っているんじゃないかなと思います。ただ、ライブだと曲によってマイクを変えるわけにはいかないので、汎用性の高さが大事だと思うんですね。それぞれのマイクに特性があるんですけど、あらゆる部分で V7 はバランスがいいなと。会場を選ばずに使えるという点でも、すごく助かっています。

- ハウリングの仕方にも影響するのでしょうか?

ありますね。音の被り方が、マイクの指向性によってかなり違うんですけど、V7 はマイクが原因でハウったことはほとんどないと思います。指向性が狭いですから。

- 指向性が狭いことによるデメリットはありませんか?

スイートスポットが狭いので、SM58 しか知らない人が初めて使うとしたら、口との角度とかをきちんと考えないといけないんですけど、私は指向性が狭いマイクも使い慣れているので、そんなに不便は感じませんでした。SM58 みたいにグリルが丸いタイプは、口の位置が多少ズレてもいいんですけど、V7 のような頭が平らなモデルは、口に向けていないときちんと拾ってくれないので。

マイクの基本構造は同じでも、材質とかが違うと音も違う


- V7 シリーズの他のモデルもいくつか試したそうですね。

V7 を使い始めてから、気がついたら結構な年月が経っていたんです。3〜4年くらいの感覚だったんですけど、もっと経っていると気づいて。別にマイクの調子が悪くなったわけではないんですけど、V7 の他のモデルが出ていると知っていたので、それも使ってみようかなと。基本構造は同じでも、材質とかが違うと音も違うと聞いていたので、どれだけ違うのかに興味があったんです。

- スペックには表れにくい部分だと思いますが、実際、違いはありましたか?

それが結構ありました。

- 自宅で試したのですか?

私がボイストレーニングとかをやっている事務所で試しました。そこはスピーカーもあって音が出せるので、全部のマイクで同じ曲を同じように歌って。曲を歌うことによって高音部を使ったり、低音部を使ったりすると、上の方に行く時の感じや、下の方に行く感じがよくわかるんです。

- では、V7 VE の印象から教えてください。

最終的に、私はこの V7 VE を採用したんですけど、それはやっぱり総合的にバランスが良かったからです。私の声で試すと、中低音のガッツはそんなに出ないけど、全体的にスッキリしているのと、かといって抜け過ぎてスカスカな感じになることもない。程良い感じで、高いところ、真ん中、低いところをキレイに表現してくれたので、これがいいと思いました。ビンテージ・エディション(VE)と言うだけあって、見た目が TELEFUNKEN ぽいですよね。持った感じの手触りは V7 と違いますけど、重さはそんなに違わない。でも、取り回しはしやすいし、V7 と見た目の印象が全然違うのもいいなと。グリルボールがピカピカしていて、全体的にビンテージっぽくてカッコいいなと思いました。グリルボールの材質も V7 とは違いますよね。それで、ここまで音が違うっていうのにはびっくりしました。

sE V7 VE
▲V7 VE

- なるほど。材質と言えば V7 Chrome もだいぶ違いますよね。

ピカピカですよね。V7 Chrome は軽くて良さそうだったので、最初はこれを買おうかなと思っていたんです。ただ、試奏してみたら音もちょっと軽めだったんですよ。sE Electronics の持ち味である華やかさはそのままなんですけど、私の声だと若干軽過ぎる印象があって。複数のモデルを比較すると結構軽い感じに聴こえました。持った時に軽いのは、すごくいいんですけどね。

sE V7 Chrome
▲V7 Chrome

- Myles Kennedy のシグネチャーモデルである V7 MK は、内部の仕様も少し違います。

V7 MK は見た目がすごくカッコいいんです。黒いボディで締まっていて。グリルボールのスポンジが赤いのも引き立っていていいなと思ったんですけど、歌ってみたらこのマイクが一番吹くんですよ。私は無駄に息を多く吐く歌い方ではないんですけど、V7 MK だと明らかに息の音をすごく拾っていました。おそらく、モデルとなったミュージシャンの方が楽器を弾きながら歌うスタイルだと思うので、口がマイクから離れたり、顔がジャストのところに向いていなくてもちゃんと声を拾えるように、ゲインを稼いでいるんじゃないでしょうか。だから、他のマイクと同じ距離感で使うと、ちょっと吹いちゃうのかな。逆に言うと、少し口から離したり、アンビエント的に使っても、ちゃんと拾ってくれそうに思ったので、もうちょっと試したかったですね。響きのリッチなホールとかだと、アンビエント的にマイクを使いたい時もあるんですよ。あまり口に近づけないで、声をフワッとさせるんです。私はギタリストの方と一緒に演奏することが多いのですが、マイクを通した歌とギターの音像が違い過ぎるとイヤなので、マイクを近づけ過ぎたくない時もあるんです。

sE V7MK
▲V7 MK

- サウンドの傾向はいかがでしたか?

少し太さを補ってくれるような感じがありました。だから、もっと声量が少ない方とか、囁くような歌唱スタイルには合うかもしれないですね。声との相性や、会場の環境も考えると、いろんなケースが考えられます。

- どんな会場でも、変わらない感じで歌えるマイクがいいですよね。

そう言う意味では、V7 のスタンダードモデルは本当に重宝しています。

- 今後は V7 と V7 VE を併用していくのですか?

そうですね。大体いつもマイクを2種類くらい持っていって、リハーサルで試して、良い方を使うようにしているので、これからは両方使おうと思います。ダイナミックマイクは消耗品なので、ある程度使ったら新しいのに変えた方がいいって言われるんですよ。SM58 と比べてどうかっていう観点の人がほとんどだと思うんですけど、汎用性が高いって大事なことだと思うので、20人くらいのライブハウスから何百人のホールまで行ける V7 が、新しいスタンダードモデルになるといいなと思います。

人物写真:桧川泰治

石塚裕美

東京都世田谷区出身。1995年メルダックよりメジャーデビュー。シンガーソングライターを軸に、シンガーとしては童謡からヘヴィメタルまであらゆるセッションを重ねて、ライブ、レコーディング、CMなど活動の場を広げている。コーラスサポートとしても、浅岡雄也、山下智久、岩崎宏美、近藤真彦、ポルノグラフィティ、乃木坂46、Sing Like Talkingなど多数のアーティストのレコーディングやライブに参加。また作詞・作曲家として楽曲提供も行う。近年はソロと並行して複数のユニットを同時進行中。「ジャンルは関係なく私が歌えば『石塚裕美』の歌である」という考えで、どんな歌も自分色に染め抜くしなやかなヴォーカルスタイルに定評がある。

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