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Rupert Neve Designs : TOKIE「RNDI は楽器本来の音の良さを伝えられる」

数々のアーティストのレコーディング/ライブで活躍するベーシストの TOKIE さんは、最近のレコーディングで Rupert Neve Designs のD.I.ボックス、 RNDI を使う機会があり、そのサウンドに驚いたそうです。TOKIE さんを惹きつけた RNDI の魅力とは何だったのでしょうか。

ずっと抱いていた録り音や出音のギャップを RNDI が埋めてくれた


- TOKIE さんが Rupert Neve Designs の RNDI を使い始めたきっかけは?

知り合いに「絶対いいから」とすすめられて、借りて使っています。Neve という名前は音楽をやっている人ならみんな知っているし、憧れの存在みたいな感じがあるじゃないですか。だから「スタジオに Neve の卓があればそれで録ってもらえる」ぐらいのイメージはあったんですが、Neve のDIがあるという選択肢は知らなくて。ちょっと使ってみようかなと思って、1、2ヶ月ほど前のレコーディングで貸してもらったら、音の感触がとても良かったんです。

- どんなところが好印象でした?

自分が作った音やイメージしている音と、レコーディングで実際に録られた音や、ライブで外のスピーカーに出ている音が「なんか違う...」と感じている人は多いと思うんですよ。特にベースはそれが如実にわかるかもしれない。自分が求めるミッドやローの部分をもっとそのまま出せたらいいなと思っていたんですが、RNDI を使ってみたら、そういったイメージのギャップを埋めてくれたんです。出している音をそのまま伝えてくれる感じが、とてもよくわかりました。私がいま色付けがない音に意識が向いている時期なので、出会いのタイミングも良かったと思います。色付けをしたり、目立たせるのではなく、ベース本来のいい音を出したい気持ちがすごくあったんです。

RNDI
▲カスタム設計のトランスとクラスAディスクリートFETアンプで構成された RNDI は、楽器の倍音と奥行きを余すことなく伝える

- 本来の音が出せるようになったんですね。ライブでの使用はこれからですか?

「ライブで RNDI を使うともっといいよ」とは言われているんですが、私のペダルボードはエレキベースとアップライトベースを切り替えて使える特殊なシステムになっていて、特注のDI/セレクターが組み込まれているのですぐには試せない。楽器回線が1つで済むライブであれば RNDI を試してみたいですね。ライブでは DI 経由の音が会場のスピーカーから出ていますが、ベーシストはステージ上のベースアンプから出る音を聴くので、お客さんが聴いている音とは違うような気がしてモヤモヤするようであれば、RNDI はおすすめです。RNDI に出会ったことで、自分にとっては音作りの選択肢が増えました。

モニター音がすごくナチュラルで演奏しやすい


- 今までにも色々なDIを試してきたんですか?

この仕事を始めた頃は「DIはエンジニアさんが選んだものを使う」という意識だったので、Countryman TYPE85 を使うことが多かったですが、最近はベーシストが好きなDIを持ち込んだりしますよね。1人1台は何かしら持っていて、プレイヤーからエンジニアさんに「このDIで録ってください」と言うのも普通になっています。私はずっとEVA電子さんに作ってもらったDI/セレクターを使っていて、通すだけで音がクリアになって抜けも良くなるし、照明とかが干渉して他の楽器にノイズが出ている時も、ベースだけは出なかったりしたので、何の疑いもなく使い続けてきました。だけど RNDI を使ってみてDIによる音の違いを知ったので、これから色々わかってくると思います。

- 演奏する音楽のタイプによって、DIを使い分ける可能性もありそうですか?

使い分けられるレベルまでDIを熟知していないのでまだ難しいですが、「このDIを使ったらこういう音が出せる」というイメージがもっと自分に染み込んで、感覚で理解できるところまで使いこなせるようになったら、ありえると思います。今まではケーブルを変えたり、電源を変えたり、弦を変えたり、エフェクターをかけたりして音作りをしてきましたが、DIも違う機種を使ってみることでプレイが変わるし、視野も広がると思うんです。ずっと同じ音作りで、同じものを使い続けるより、何か違うエッセンスが入ってくるとプレイも変わってくると思うので、DIを使い分けるのは全然ありだと思います。

- RNDI はプレイにも良い影響をもたらしましたか?

まだエレキベースのレコーディングでしか使っていませんが、ヘッドホンからのモニター音がすごくナチュラルで、イメージした音が見つかりやすく、演奏しやすかったです。私が特に気にしているのは、音の立ち上がりの速さなんです。立ち上がりの速い楽器や機材が好きなんですが、RNDI はその速さを損なうストレスもなく、そのままの音を伝えてくれました。

RNDIシリーズ
▲RNDI シリーズには RNDI の他に、ペダルボードに収まる小型の RNDI-M、2ch仕様の RNDI-S、8ch仕様の RNDI-8 がある

音の出だしも、減衰していく感じもイメージ通りになる


- そのままの音が出せるというのは、何よりの強みですね。

パワーのある音やかっこいい音は、エフェクターやシールド、パッチケーブルなどを工夫すればいくらでも作り出せると思います。だけど RNDI は楽器そのものの音の良さを伝えてくれるので、楽器の種類にも色々こだわれるようになります。エフェクターで持ち上げたりしなくても、元々のローの出方や立ち上がり方がそのまま出てくれるので、楽器本来の良さをすごく感じられるんじゃないかな。例えば、コンプをかけるとダイナミクスが安定して弾きやすくなるけど、楽器そのものの自然な減衰音は失われてしまいますよね。どっちがいいかは悩みどころですが、私は元々の自然な音をもっとアピールしたい時期なんです。

- アップライトベースに RNDI を使ったら、どんなサウンドが得られそうですか?

より生っぽい音が出せるんじゃないでしょうか。音の出だしもそうですが、減衰していく感じもイメージ通りになるので、変な消え方をしないというか、ニュアンスがそのまま残るような感じでしょうか。ベースはそういう変化が如実にわかる楽器で、電源を変えたり、エフェクターを繋ぐパッチケーブルを変えただけでも音が全然変わるので、その違いはもしかしたら数字では出ないかもしれないけど、体感的な違いがあるかもしれません。

- どんな人に RNDI をおすすめしたいですか?

いい楽器を使っている人ですね。特にシンプルなプレイなのにエフェクターのかけ過ぎでもったいないことをしている人におすすめしたいです。最近はパワーがあって音数も多くて、強めなプレイが流行りだと思うんですよ。SNSで流れてくる演奏動画はそういう激しいものが多いですが、ベースの魅力はバキバキの強い音だけじゃないことをもっと知ってほしいです。攻撃的なプレイはわかりやすいし、かっこいいと思うし、私もそういうのが好きだった時期はあるけど、ベース本来の音の良さと柔らかいタッチで、少ない音数でグルーヴを出すようなアプローチをしたいなら、絶対 RNDI を使った方がいいと思います。1つ1つの音に説得力を持たせるというか、音数を詰め込むのではなく、音の隙間でグルーヴを作ることが私もなかなかできないので練習中です。そこが面白さでもあり、難しさでもあるので、本当に奥が深いですね。

TOKIE

写真:桧川泰治

TOKIE

中学時代、ブラスバンド部でコントラバスと出会い、低音/四弦の魅力の虜に。高校に入るとエレクトリック・ベースに持ち替え、バンド活動を始める。1993年にNYへ渡り、イースト・ヴィレッジでアメリカやフランス出身のミュージシャンと共に「サルファー」を結成。95年までの活動の間、CBGB’Sやニッティング・ファクトリーなどに出演した。96年に帰国後、様々なアーティストのサポートを開始。97年にはJESSE(Vo/Gt)、金子ノブアキ(Dr)と「RIZE」を結成。RIZEは2000年にEPICレコードから『カミナリ』でメジャー・デビュー。同年、UAと浅井健一らの「AJICO」に参加。2001年にRIZEを脱退、AJICO活動休止後は中村達也(BLANKEY JET CITY)率いるロック・ジャム・バンド「LOSALIOS」に加入。2006年に青木裕(Gt)、城戸紘志(Dr) とエクスペリメンタルなインスト・ロック・バンド「unkie」(アンキー)を結成。2012年にはEXILE・TAKAHIRO/GLAY・HISASHI/THE MADCUPSEL MARKETS・MOTOKATSU MIYAGAMIとバンド「ACE OF SPADES」を結成。2013年にはそれぞれに独立したキャリアを持ちながら世代をクロスオーバーした女性メンバーで結成したロックンロールトリオバンド「THE LIPSMAX」を結成。また、TOKIE個人としては、数々のアーティストのライブやレコーディングに参加中。ポップ・ミュージックからエネルギッシュでラウドなロックまでを自在にこなし、確かなテクニックと華のあるパフォーマンスで会場を湧かせている。

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