シンセとMIDIキーボードの2台使いは、低コストかつ軽量でメリット大
ライブでのキーボード演奏といえば、音色の割り振りや演奏性を考慮すると、最小セットでも鍵盤が2台はほしいところです。しかし、ソフトシンセなどを利用した制作環境が全盛の今、ライブ用のシンセサイザー(ハードシンセ)を1台しか持っていないキーボーディストも多いのではないでしょうか。そんなときは、楽曲制作時に入力用として使用しているMIDIキーボードと、シンセサイザーを併用するのがオススメです。制作時に使用しているMIDIキーボードを活用すれば、ライブのための追加コストも必要なく、また比較的軽量なモデルが多いため、複数台のキーボードをハンドキャリーで会場に持ち込む際にも苦にならないといった利点もあります。
方法1. MIDIキーボードでハードシンセを鳴らす
①MIDIキーボードにMIDI端子がある場合
MIDIキーボード本体には音源が内蔵されていませんが、シンセサイザーとMIDI接続すれば、その内蔵音源を利用できます。この場合、シンセサイザーにはMIDI入力端子、MIDIキーボードにはMIDI出力端子が装備されていなければなりません。また、音源の役割を担うシンセサイザーはマルチ音源(マルチティンバー音源)を搭載している必要があります。マルチ音源であれば、異なるMIDIチャンネルにアサインされた複数パートを同時に演奏可能なので、シンセの鍵盤とMIDIキーボードで同時に異なる音色を演奏できます。接続されたシンセサイザーの音源を使うため、音声はシンセサイザーから出力されます(複数の出力系統を備えたシンセサイザーであれば、パートごとに出力先を分けることも可能)。エフェクトや同時発音数などについては、シンセサイザーの内蔵音源のスペックにより制限されるのでご注意ください。
この用途に適したMIDIキーボード
MIDI入出力端子を装備した代表的なMIDIキーボードには、Nektar Technology のUSB-MIDIコントローラー・キーボード Impact GXP シリーズなどがあります。49鍵を搭載した Impact GXP49 をはじめ、61鍵を搭載した Impact GXP61、88鍵を搭載した Impact GXP88 がラインナップ。全モデル共通のキーアクションを実現しているセミウェイテッド鍵盤は心地良い重量感があり、シンセ音色だけでなく、ピアノなどのエモーショナルな演奏にも威力を発揮します。本体背面にはエクスプレッションペダル端子とフットスイッチ端子に加え、MIDI 出力端子も備えており、MIDIケーブルでシンセサイザーとの接続が可能です。また、搭載されたリアルタイム・リピート・エンジンもライブパフォーマンスにオススメ! 61鍵モデルの GXP61 でも非常に細身で、重量わずか5kgと軽量なため持ち運びにも最適です。
②MIDIキーボードにUSB端子しかない場合
PCを中心とした音楽制作環境での使用を前提としたMIDIキーボードの場合、USB端子(To Host)しか搭載していないことが多く、MIDI端子がない製品も数多く見受けられます。例えば Nektar Technology のUSB-MIDIコントローラー・キーボード Impact LX+ シリーズや Impact GX シリーズは、演奏性に優れたベロシティ対応鍵盤や、多彩なコントロール機能などを備えており、そのレスポンスに優れた小気味好い鍵盤は、制作時の入力用キーボードとしてだけでなく、きっとライブでも使用してみたくなることでしょう。
しかし、残念ながら両シリーズにはMIDI端子が用意されていないため、シンセサイザーと直接MIDIケーブルで接続することができません。では、そのようなMIDIキーボードを、シンセサイザーと組み合わせてライブで使うことはできないのでしょうか? ご安心ください。MIDIキーボードに搭載されたUSB端子をBluetooth MIDIに変換し、ワイヤレス化してしまう超ユニークな便利アイテム、CMEの WIDI Uhost を使えば可能となります。
MIDIキーボードに搭載されたUSB端子は、基本的にPCと接続してはじめてMIDIインターフェイスとしての機能を果たすよう設計されており、通常ではMIDI機器を無理矢理つなげても正しく動作させることはできません。しかし、WIDI Uhost を利用すれば、PCと接続することなくBluetooth MIDIを介して、MIDIキーボードとシンセサイザーをダイレクトに接続できるようになります。この場合、シンセサイザー側のMIDI端子も、同じく CME の WIDI Jack を使用してBluetooth MIDIに対応させることが必要です。こうして WIDI シリーズ間で実現するバーチャルMIDIケーブル接続は、従来のMIDIケーブルを使った接続方法とほぼ同様の感覚で取り扱いが可能なだけでなく、セットアップが簡単かつ低レイテンシーのためライブにも大変オススメです。
安定した接続を実現するためのポイント
ライブでより安定したワイヤレス接続を実現するためには、MIDIキーボード側の WIDI Uhost と、シンセサイザー側の WIDI Jack を、WIDI デバイス同士がダイレクトに通信を行う「ポイントツーポイント」のBluetooth MIDIワイヤレス接続に設定することが重要です。気になる WIDI デバイス間のレイテンシーについても3ms程度と、遅延を気にすることなく十分なパフォーマンスを発揮できます。さらに WIDI シリーズでは、一度設定したデバイス間のペアリング状態がそのまま記憶されるため、ライブ会場でも自動的にセッティングが復元されてとても便利! WIDI シリーズを活用することで、ライブ会場でのキーボードのセッティングやレイアウトの自由度も大幅に広がり、より素早くセットアップが行えるのも大きな魅力と言えるでしょう。
WIDI シリーズの様々な設定は、専用アプリ WIDI App(iOS/Android)を使って行います。より安定した運用のため、必ず WIDI デバイスのファームウェアも最新版に更新しておきましょう。詳細はこちらをチェック!
・iOS 用 WIDI App
・Android 用 WIDI App
方法2. MIDIキーボードでソフトシンセを鳴らす
楽曲の再現性を考慮すると、ライブでも普段の制作で使用しているソフトシンセのサウンドをそのまま使って演奏したいという方もいると思います。ソフトシンセをライブでも使用することで、制作時とまったく同一の音を再現できるメリットがある反面、PCだけでなく、それに付随するオーディオインターフェイスやMIDIインターフェイス、MIDIキーボードなど、様々なデバイスをライブ会場に持ち込み、複雑なセットアップをステージ上に再現しなくてはならないのはデメリットです。そんな面倒な接続や設定の手間を解消するのにオススメなのが、オーディオインターフェイス内蔵MIDIキーボードです。
この用途に適したMIDIキーボード
IK Multimedia の iRig Keys I/O シリーズは、音楽制作に必要な機能すべてを1台に凝縮したMIDIキーボード・コントローラーです。フルサイズの鍵盤、最高96kHzのサンプリングレートに対応した24-bitのプロ仕様のオーディオインターフェイス、ステレオバランス出力端子、ヘッドフォン出力端子など、ライブでソフトシンセを使用するために必要な様々な機能が1台に搭載されています。そのため、PCと iRig Keys I/O を持ち込み、両者をUSBケーブルで接続するだけで超簡単にセットアップできてしまうのです! 最小限のデバイスで演奏が行えるため、機材トラブルの可能性も大幅に軽減できます。
搭載されたフルサイズ鍵盤はしっかりとした演奏感があり、わずかなレイテンシーでソフトシンセをリアルタイムに演奏可能。4つのタッチセンシティブ・ノブと、8つのベロシティ対応マルチカラーパッド、さらに自由にMIDIコントロールチェンジを設定可能な2つのタッチコントロールストリップは、ソフトシンセをライブでリアルタイム演奏するのにも最適です。
最後に
今回はライブでのMIDIキーボードの活用方法について紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。シンセサイザーやソフトシンセに、演奏性や可搬性、コスト面にも優れたMIDIキーボードを組み合わせることで、シンプルかつ軽量・コンパクトなステージを実現できるだけでなく、ライブパフォーマンスの幅もさらに大きく広がります。ぜひ皆さんも、ご自分の好みや演奏スタイルにあったセットアップに挑戦してみてください!
文:内山秀樹