Townsend Labs : ドラム収録で Sphere L22 を探求する

By Julian David | October 24, 2019

ドラムの収録は難しく、ロック、ポップス、アーバンといったジャンルでは、楽曲を生かすも殺すも素晴らしいドラムサウンド次第、と言われることがよくあります。つまり、細心の注意を払うべき領域となりますね。ラージダイアフラムのコンデンサーマイクは、ドラムのオーバーヘッドをキャプチャーする際によく使われますが、個々のドラムにおいても非常にうまく機能します。私たちは、ドラマーの Alex Höffken(Alice Merton、Namika、Balbina)と協力し、ベルリンにある彼の居心地の良いスタジオで Sphere L22 を使って、パンチの効いたドラムを収録しました。さぁ、ドラムにどのマイクモデルが最適か - 調べてみましょう!

Sphere L22 の大きな利点のひとつ、それは通常なら決して使う機会に恵まれないような、かつ普通なら怖くてできないような使い方を試せることです。仮にあなたがビンテージの AKG C12 を持っていても、それをスネアの近くにセットすることはさすがに躊躇してしまうでしょう。ドラマーが誤ってスティックを当ててしまう危険がありますから。あるいは、とくにキックドラムへリボンマイクを使うと、繊細なリボンを引き裂いてしまうような高エネルギーの風が吹き込むため、これまた危険が伴いますよね。

Sphere v1.4 でクラシックなドラムマイクが追加されました!

もともと、Sphere コレクションには、DN-57 や RB-4038 といった一般的にドラムによく使われるマイクモデルがいくつか含まれていましたが、Sphere v1.4 より、10種もの新しいモデルが追加され、ロックドラムやポップドラムのクラシックな選択肢が増えました。例えば、DN-12 モデルはキックにオススメですし、DN-421 はスネアの個性を表出させます。そして、Soyuz Microphones の友人から依頼された LD-017T モデルは、耳障りにならずシンバルに美しい煌きを与えてくれますよ。v1.4 の詳細については、こちらをご覧ください。

セットアップ

このセッションにおいて、Alex はシンプルな4ピースのセットアップ - 素晴らしいサウンドを持つ1970年代の Slingerland Sound King のキット、モダンな AK Drums Copper Standard スネアドラム、そしてスタンダードなシンバルセット - を用意しました。その結果、自然でありながらパンチのあるレコーディングに最適な、バランスの良いオーガニックなサウンドのキットが組み上がりました。

ドラム :

  • 1970s Slingerland Sound King
  • 22” x 14” kick
  • 13” x 9” rack tom
  • 16” x 16” floor tom
  • 14” x 6.5” AK Drums Copper Standard Snare

シンバル :

  • 16” Masterwork Jazz Master hi-hat
  • 20” Istanbul Agop Traditional Thin Crash
  • 22” Istanbul Agop Signature Ride

今回のセッションでは、計4本の Sphere L22 を使いました。オーバーヘッド用として1ペア、そしてキックとスネアに各1本ずつ、です。タム、スネアの下、キックドラム内部にも別でマイクを仕込みましたが、これらの信号は本ブログでは取り上げていません。

サウンドサンプルのレコーディングには、Universal Audio Apollo のプリアンプを使って(Unison プラグインは使っていません)、キックとスネアには Sphere L22 本体の -20 dB パッドを入れました。

オーバーヘッド

まずはオーバーヘッドから聴いてみましょう。ドラムキット全体がどのように鳴っているかを知ることができます。Alex は、ペアのマイクを間隔を空けたり同位置にセットするトラディショナルな手法よりも、わずかにアレンジされた "Recorderman" テクニックの大ファンです。この手法の詳細については後述しますが、キックとスネアがステレオイメージのセンターに配置されることが基本概念となります。それでは、機材のセットアップと Sphere に付属するいくつかのマイクモデルを紹介する短いビデオをご覧ください。

この例にスポットマイクは含まれていませんが、オーバーヘッドのセットアップがキット全体をうまくキャプチャーしていることは注目に値します。ここでは、マイクがドラムの基本周波数に渡ってずっと伸びていますね。ドラムレコーディング用としてマイクが2本ある状況であれば、オススメの手法です。

コツ

ステレオマイキングのテクニックに関わらず、オーバーヘッドではさまざまな指向性の設定をお試しください。従来型のマイクとは異なり、Sphere は実験の扉を開く多様なパターンを提供します。スーパーカーディオイド、あるいはフィギュア8なんていかがですか?パターンを絞っていけば、キックとスネアはよりセンターに集中していきますが、ドラムキットの特定部分に重きを置きすぎてしまう結果となることもあります。カーディオイドからサブカーディオイド、あるいは完全にオムニにすることで、ずっと雰囲気のあるステレオイメージが得られますよ。以下の追加のサウンドサンプルを聴いてみてください。豊富なオプションが用意されているというのは素晴らしいことですよね。

"Recorderman" について

ドラムセットをキャプチャーするための手法はさまざまで、鉄則はありません。聴こえるサウンドが良ければそれで良いのです。

ざっくり言えば、ドラムのオーバーヘッドに関するテクニックは2つのカテゴリーに分類できます- 他のスポットマイクを補完して主にシンバルをキャプチャーすることを目的とするもの、そしてドラムキット全体を捉えながらパンチと近接性を得るために追加のスポットマイクを必要とするもの、です。Recorderman は2番目のカテゴリーに入りますね。最も多いパターンとして、エンジニアはドラムキットの上にある種のステレオアレイ(ペアのマイク)をセッティングします。このステレオアレイは、間隔を空けて置いたり、同位置に置いたり、あるいはその中間的とも言える ORTF といったセットアップとなります。

実際、これらの手法は正確な音像を生成し、ミックスにおいてもうまく機能するのですが、スネアをステレオイメージのセンターに配置しないことがままあります。Mixerman と Eric Greedy によって発明された Recorderman テクニックは、キックとスネアの両方をど真ん中でロックするように考えられました。試行錯誤の末、2本のマイクを使い、1本がスネアの上、もう1本はフロアタム近くのドラマーの右側に置かれることとなったのです。この手法は Glyn Johns テクニックにも似ていますが、いくつかの明確な違いがあります。

この手法を試す際に重要なのは、2本のマイク両方がドラムキットの中心部分から等距離にあることを確認することです。Alex は紐を使って三角形を作り、距離を見定めることにしました。キックのビーターを踏んでバスドラムの真ん中で紐の一端を固定し、スネアドラムの真ん中で他端を固定します。その状態で、もうひとつの紐の頂点が同じ長さでそれぞれのマイクに届くよう、ドラマー右肩付近の2番目のマイクを動かします。

Recorderman は、Alex のドラム収録のためのデフォルト・セットアップとなっています。なぜなら、一度セットアップすれば素晴らしいサウンドを簡単に手に入れることができますからね。Alex は、スネアのしっかりしたセンターイメージと、とくに 4038 リボンを使用した際の2つのタムのサウンドが気に入っています。ドラムを少しコンプレッションするだけで、うまくミックスに溶け込みますよ。必要に応じてキック用のマイクを追加し、素晴らしく、そして雰囲気のある3点マイクセットアップを組むこともよくあります。

キックドラム

それではスポットマイクに移り、Sphere L22 がキックドラムにおいてどのように使われるのかを見てみましょう。通常、ラージダイアフラムコンデンサーは、レゾナントヘッドから数インチ離したドラムの外側でうまく機能します。今回、バスドラム内部に Beyerdynamic M88 をセットアップしましたが、次のサウンドサンプルでは使用していません。以下のビデオは、前述のオーバーヘッドから始まりますが、途中からキックドラムの信号が加わってきます。

とくに DN-421 および DN-12 モデルは、全体的なサウンドに適切な「活力」を加えるパンチの効いたローエンドを提供していますね。RB-4038 は驚くほどの低域をキャプチャーしていますが、若干過剰な印象を受けます。Sphere プラグインで近接コントロールを戻すか、ハイパスフィルターを入れることで、この問題にすばやく対応できます。一般的に、ラージダイアフラムコンデンサーはキックドラムをより自然かつオープンに表現します - ドラム内部にセットしたダイナミックマイクと組み合わせる場合には良い選択となるでしょう。

スネアドラム

最後に、スネアドラムのオプションについて見てみましょう。スネアでラージダイアフラムコンデンサーを使用することはあまり一般的ではありませんが、Sphere L22 は内蔵パッドのおかげですぐに使用することが可能です。演奏の強さに応じ、-10 dB または -20 dB のパッドをオンにしてみましょう。次のビデオで、マイクモデルがサウンドを見事に捉えている様子をご覧ください。

各マイクモデルはスネアドラムのサウンドに影響を与え、さまざまな表情を描き出しています。同じ 421 でもバージョン違いで個性を感じられますよね。DN-57 や DN-421 などのダイナミックマイクモデルにはムービングコイルの典型的なパンチとバイト感がありますし、歴史的な RCA リボンマイクをベースにした RB-77DX はとても暗いですが、ルーティーなR&Bには最適です。Soyuz 017 チューブコンデンサーなどのラージダイアフラムコンデンサーを使えば、より開放的で風通しの良いサウンドが得られますよ。

マイクモデルのいくつかを以下でさらにご紹介します:


コツ

スネアのビデオはすべて、Sphere マイクをカーディオイドパターンに設定して収録されています。しかし、とくにハイハットやシンバルのブリードが気になる場合には、指向性の実験を行いましょう。気に入ったスネアドラム用のマイクモデルを見つけたら、プラグインをデュアルモードに切り替え、Off-Axis Correction™ を有効にします。Off-Axis Correction とは、簡単に言ってしまえば、周波数全体においてより一貫した軸外レスポンスを実現する Townsend Labs 独自のDSPプロセスです。選択したマイクモデルの音響特性を維持しながら、指向性を自由に調整できますよ。

探求心を忘れずに

すべてではないにせよ、多くのジャンルにとって、傑出したドラムサウンドを得ることは重要です。Sphere は、ユニークなドラムサウンドを得るための幅広いオプションを提供します - 明るく風通しの良いものから暗く濃厚なものまで、無料で含まれるマイクモデルのコレクションはあらゆるベースをカバーしていますし、通常はドラムに使わないようなマイクのサウンドを試す機会も与えられます。

Off-Axis Correction や近接効果のコントロールといった Sphere の高度な機能は、難しい状況であっても可能な限り最高の結果を得るのにおおいに力となってくれることでしょう。Off-Axis Correction は、他のドラムからのブリードや不要な部屋鳴り感を軽減するのに有用ですし、近接効果のコントロールは指向性マイクの近接効果によって引き起こされた過剰なローエンドを改善します。さぁ、ドラム収録で Sphere L22 をさらに探求しましょう!

*モデリングされたすべての製品の名称はそれぞれの所有者の商標であり、Townsend Labs Inc. とは関連性がありません。これらの製品名および記述は、Sphere のサウンドモデル開発中に研究された特定の製品を示す目的としてのみ提供されています。

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