Universal Audio : テクニカラー・ヒップホップ

プロデューサー Marco Polo(Masta Ace、Scarface、Talib Kweli、Pharoahe Monch)が Apollo インターフェイスと UAD プラグインを使い、サンプルから抜け出してクリエイティビティを刺激する方法についてヒントをくれました。

ブルックリンを拠点に活動する非凡なヒップホップ・プロデューサー / ビート・メーカーの Marco Polo(1979年、Marco Bruno としてトロントに⽣まれる)は、20年前にニューヨークへ移住して以来、喜び溢れるサウンドを生み出し続けています。さまざまなスタジオでエンジニアとして働いた後、Polo は、Masta Ace、Kool G Rap、Rakim、Large Professor をはじめ、多くのアンダーグラウンドの巨⼈達にビートを提供し始めました。やがて大きな影響力を持つこととなる自身のアルバム - Port Authority(2007年)The Stupendous Adventures of Marco Polo(2010年)を発表するに至ります。

タフでセピア調の、ヴァイナル愛溢れる特製のビートとドラムサウンドで知られる Polo は、作品に対して巧みかつ情熱的であるのと同時に、技術的な見識について実直でいます。Apollo と UAD プラグインを信頼する Polo が UAD を掘り下げるきっかけとなったのは、Masta Ace とのコラボレーションによる見事な作品 A Breukelen Story(2018年)が示す通り、オリジナルのビートを追求し、さらに個性豊かな領域へ到達するためでした。

- どういったアーティストやプロデューサーから影響を受けましたか?

⾃分⾃⾝でビートを創り始める前には、DJ Premier、Pete Rock、RZA、Large Professor といった⼤御所について研究しました。彼たちは皆レコードを掘って、キーの異なる複数の⾳源から⾳楽を創り上げていたんです - 魅力的でしたね。

しかし彼たちがどんなレコードを使っていたかを学び、⾃分でも同じことができるようになってからは、レコードからサンプルを得ると稼ぎが減ってしまうということがビジネス⾯から分かってきたんです。

それからはサウンド・デザインの道を進むようになりました。独自のビートやインストゥルメンタルパートをゼロから創って、なおかつ古いレコードからサンプルしたように聴こえるサウンドをね。

- ではクレート・ディギングはもうしないのですか?

いやいや、今もツアーで世界中を周りながらレコードを買っていますし、レコードからサンプリングしていますよ。しかし私はどんどん⾃分のビートを創っていて、それらをまるで古いレコードからサンプルされたかのようにプロセッシングしているんです。

「Neve 1073 は本当に頼りになるドラムEQ ですね。」- Marco Polo

- その「古いレコード」のヴァイブを得るために、ビートや楽器をどうプロセッシングしていらっしゃるのでしょう?

ヒップホップでは、キックとスネア - ドラムがすべてです。ドラムはヒップホップにおける最も重要な要素。ありふれたサンプリング済みのドラムサウンドがクールなときもありますが、サウンド・デザインの観点から⾔えば⼗分なものではありません。

Studer A800 Multichannel Tape RecorderOxide Tape Recorder、そして Ampex ATR-102 といった UAD のテープ・プラグインは、個性やグルー(接着)効果を与えてくれるだけでなく、ローエンドを磨き上げ、⾃分のビートやパートをレコード箱から取り出したかのようなサウンドにしてくれますよ。

私は確実に「ドラムは常に前⾯にあるべき」という流れから来ていますね。

- 例えばどんなアプローチを?

Masta Ace とコラボした A Breukelen Story に収められている "American Me" というトラックが完璧な例です。

マスターフェーダーに UAD Ampex ATR-102 Mastering Tape Recorder を入れているのですが、これはドラムの鳴りおよび全体的なミックスにおいて非常に重要なんです。"Warmth" というプリセットを使いましたが、これはかなりアグレッシブですよ - しかし私のビートにたまらなく良い効果を与えてくれましたね。

- ドラムバスでは具体的に何を使⽤しましたか?

Studer A800 のプリセット "Drum Buss" を使っています。私はテープ・プラグインで攻めるのが大好きなので、一緒に仕事をしている人から「そんなことすべきじゃないよ!」って⾔われることもありますよ。しかし、トラックをどう感じるかがすべてです。⾃分⾃⾝が正しいと思えるサウンドが出てくるまで、試行錯誤を続けるしかありません。

- プロセッシングは、ミックスダウンまで待つよりも制作過程から⾏っていかれますか?

もちろん。Ampex ATR-102 プラグインは、ドラムサウンドを改善し、特徴づけるだけでなく、作曲の⽅向性も変えてくれたんです。「そこそこ良い」ビートを基に構築していくのではなく、Ampex プラグインによって、グルー効果、あたたかさ、ローエンドなど、元のサウンドに欠けていたパワーやヴァイブをもったビートを手にすることができました。

- ではプリセットから始まり、そこから調整、といった感じでしょうか?

ええ。実際、プリセット "Sunbaked Cassette" は素晴らしく、そこから始めることが多いですね。明らかにアグレッシブなので、少しノブを戻して、ノイズをいくらか減らしたりしますけどね。

- ドラム用として頼りにされている EQ はありますか?

UAD Neve 1073 Preamp & EQ をいつも使っています。ソースとなる素材を問わず、デフォルト設定であっても、さらなるバイト感や深みといった違いを聴くことができるんです。実際、ドラムではローエンドのわずかな加減のために、テープ・プラグインの後にときどき 1073 を持ってきますよ。

「Apollo インターフェイスと UAD テーププラグインは、私にとって⾰新的なものです。」- Marco Polo

- ビートにおけるコンプレッションについてはどのようにアプローチされていますか?

ドラムとコンプレッションに関してはとても注意を払っています。コンプレッサーがすべてを台無しにすることもありますからね。UAD プラグインを使い始めた頃は、サウンドをとても気に入っていたので、たしかにコンプレッサーをかけ過ぎていました - しかしそれでヒップホップのすべてとも言える「Knock(ノック)」までをダメにしてしまっていることに気付いたんです。

ですから、コンプレッションとEQを微調整しながら、ドラムサウンドに生命を吹き込むことのできるスイートスポットを見つけることが私にとってのアートです。ほとんどの場合、ドラムにはコンプレッションよりもサチュレーションを加えたいですね。コンプレッションするのではなく、すでにそこにある音の豊かさを引き出そうとしています。

- 最近は Apollo インターフェイスもお使いですね?

はい!スタジオでは今もオールドスクールなサンプラー MPC 2000XL が活躍していて、そこから一気に8トラックのビートを Pro Tools にダンプしているんです。というわけで、私にとっては Apollo x8p が最適なんですよね。ツアーでも UAD プラグインにアクセスできるよう Apollo Twin を使っていますよ。

MPC でビートを創る際は、Apollo にステレオアウトするだけです。そしてコンソールアプリの中でさまざまなサウンドをオーディションしながら生命を吹き込んでいきます。UAD Shadow Hills Mastering Compressor プラグインでは、プリセット "Medium Mastering" をよく使います。もしも、どうしようか悩むドラムサウンドがあれば、UAD Oxide を使って調子を⾒ますね。

Studer A800 Multichannel Tape Recorder、Oxide Tape Recorder、そして Ampex ATR-102 といった UAD のテープ・プラグインは、⾃分のビートやパートをレコード箱から取り出したかのようなサウンドにしてくれますよ。

- あなたはミックスを圧倒することのない太いベースパートでも有名です。どんなソース素材を使っていらっしゃいますか?

⻑年、何⼈ものベーシストたちが来てくれて、ありとあらゆる奏法やサウンドで演奏をしてくれましたから、良いエレクトリック・ベースのライブラリーはたくさんあるんですよ。他のソースからひっぱってきたサウンドを MPC でフィルタリングすることもありますね。

最近は、UAD Fatso Jr/Sr と UAD Empirical Labs EL8 Distressor Compressor プラグインを使ってベースサウンドの実験をしています。繰り返しになりますが、これらプラグインのサウンドは気に入っているものの、1音1音それぞれに呼吸をさせてライブ感を得たいので、慎重に扱いたいと思います。

ベースには UAD Teletronix LA-2A "Gray" コンプレッサーをよく使います。私のお気に⼊りのひとつですね。⽅向性にもよるんですが、 LA-2A はエレクトリック・ベースの豊かなミッドレンジを活かすのにうってつけですよ。

「ドラムがノッキングしていないようなら、ダメですね。」- Marco Polo

- あなたは素晴らしいラッパーやボーカリストたちと仕事をしてきました。ボーカル・チェーンについて教えていただけますか?

確実に言えるのは、Unison テクノロジーを備えたコンソールアプリで UAD Neve 1073 を使わずにボーカル録音をすることなんて、もうあり得ないってこと! 絶対にね!それから UAD LA-2A "Gray" コンプレッサーを少し加えて、一度トラッキングを終えたら UAD Manley VOXBOX Channel Strip、UAD Pultec EQ、場合によっては Oxide Tape Recorder を使います。これが現在の私のボーカル・チェーンですね。

すべてのボーカル録音は、私のアパートで、安価な Rode NTK マイクを使って⾏います。私がボーカルを録⾳している部屋を⾒たら、皆笑うでしょうね。(音響的な)処理はされていませんが、ここで13年間やってきています。私の求める、ボーカルにとって歪みのない、あたたかく、クリーンなサウンドが得られるんですよ。もちろん、トラッキング後には、UAD EMT 140 Classic Plate Reverberator プラグインを含むいくつかのエフェクトでスパイスを効かせますけどね - このプラグインは本当に素晴らしい。

- 最後に、私は A Breukelen Story の歌の合間に入るスキット(⼨劇)の中で、あなたがニューヨークに移る際、ちゃんとパスタを⾷べなさいと両親役の⼈達が確認するというやりとりをとても気に⼊っています。

それは実際に私の本当の⽗⺟がアルバムに参加してくれているんですよ!両親はともにイタリア南部の出身で、⽗はカラブリア、⺟はナポリなんです。私の祖父母が、私が生まれたカナダへと家族を移住させました。私自身はニューヨークに移って約20年ほど経ちます。そう、もちろん今でも両親は私がしっかり⾷べているか⼼配していますよ − 典型的なイタリア⼈ですね!

- James Rotondi

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