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Universal Audio 710 : 真空管 vs ソリッドステート - その違いとは?

オーディオ・エンジニアは真空管とソリッドステート両方のプリアンプを巧みに使い分けます。それらふたつの設計がひとつの箱に収められた Universal Audio 710 "Twin-Finity" についてご紹介しましょう。

オーディオ・エンジニアは真空管とソリッドステートの両方のプリアンプを用意し、プロジェクトの内容によって使い分けているものです。真空管のプリアンプはその温かみと豊かな音色をこよなく愛されてきましたが、一方のソリッドステート・プリアンプは精緻で明確な細部の描写力を特徴とし、精密に信号をハンドリングすることができます。

一般的に、ソリッドステート・プリアンプはクラシックやジャズなど、色づけやノイズ、歪みがなく、演奏の忠実な表現を要求されるレコーディングに本領を発揮します。クリーンなソリッドステート・プリアンプを使用すると、音の造形や色づけを入力時ではなく、ミキシング段階で行うこともできます。

しかし正確性よりも "雰囲気" を重視する場合、真空管プリアンプを使って元のサウンドを力強く際立たせ、リスナーが心地良く感じる色づけを入力信号に施す方法は広く知られています。

ではどちらのプリアンプを選べば良いのでしょうか?

Universal Audio 710 Twin-Finty は両方の設計をひとつの箱に収めました。独自のブレンド・コントロールを装備し、サウンド全体に対するそれぞれのプリアンプの割合を、緻密にノブで調節できます。

710 "Twin-Finity" を知る

710 Twin-Finity プリアンプはクラシックな真空管の温もりとソリッドステートの鋭敏さを兼ね備えています。

710 はデュアル・ゲインステージコントロールを搭載し、入力信号の色彩感や歪みのバリエーションを根本から豊かにします。VUメーターにはドライブ・モードを装備し、真空管/ソリッドステートのドライブ量を目で見て確認できます。

710 は他にも、エレキギターやベース、その他の楽器接続のための独立したJFETダイレクト・インジェクト入力、モノリシックのバランス出力部、ファンタム電源、マイク入力用-15dBパッド、極性反転、75Hzローカット・フィルター、そしてポータブルかつラックマウント可能な設計等を備えています。

多用性とパワーに優れた 710 は、とても簡単にお使いいただけます。コントロール類はシンプルで必要不可欠な、実用的用途に厳選された機能を搭載しています。

ドライブ・メータリング

710 の真空管プリアンプでは、適度にザラっとした質感から本格的なグランジ色まで、クラシックな倍音ディストーションを狙った分だけ正確に信号に付加することができます。ドライブ・メーター機能は、信号の真空管サチュレーションの量を目で確認できるので、ゲイン・コントロールのレベルを決めるのに大変便利です。

水晶のようにクリアな真空管のトーンでは、メーターは範囲の一番低いあたりを表示します。真空管の歪みをフルに活かしたい場合は、メーターが赤くなるところを目安にします - いずれにせよ極端な設定を行っても問題はありません。何度かドライブ機能をお使いいただく間に感覚が掴め、お望みの真空管キャラクターを素早く簡単に得られるようになるでしょう。

ドライブ・モードでは、710 メーターは較正されるため、 0VUは1.2% THD(1kHz正弦波)に相当します。 しかし、歪みの量をどう感じるかはソースとスタイルにかなり左右されるため、歪みレベルの計測値を重視しすぎないほうが良いでしょう。正弦波2%のTHDはかなりの歪み量で、生まれついての音楽好きといった方以外にも分かる程の量です。しかしボーカル・トラックでは、同じ2% THDが真空管の温かみを感じる心地よい響きになります。オーバードライブさせたギターでは、 2%のTHDはほとんど聴き分けることができません。

一番大事なことは、ドライブ機能を使う時にメーターがどのような値を示そうと、そのトラックにとってその音が最適であるかどうかが最も重要である、ということです。メーターはガイドとしてご使用いただき、それをOK/NGの目安とはしないでください。感覚をたよりに、その音が正しいと感じるかどうか、その感覚を信じて邁進してください。

ボーカル、ボーカル、そしてボーカル

710 にはひとつだけではなく、ふたつの完全に独立したプリアンプが搭載されているため、マイクの種類やボーカリストのタイプを問わず大変めざましい働きをします。 710 のいずれかのプリアンプを通すと、安価なステージ用ダイナミックマイクでもリッチさがプラスされ風通し良くなり、粒立ちの荒さや余計な色づけのない、活気のあるサウンドになります。

コンデンサーマイクのパリッとした精確性は、余計な色づけのない 710 のトランスインピーダンス・ソリッドステート・プリアンプと好相性です。また、真空管サイドを使用して、トーンに温かみを加えることもできます。そして素晴らしいのは、センターのブレンド・コントロール・ノブを使用して双方のプリアンプの量を的確に調整し、マイクの周波数キャラクターやボーカリストの声質にマッチングさせることができることです。

あらかじめ音質に温かみのある真空管マイクをボーカルに使用する場合、710 のソリッドステート・プリアンプでの補正をお試しください。または、ブレンド・コントロールを使用して、真空管とトランスのコンビネーションをノブで調整し、ソリッドステート・トランス側の量をお好みに合わせてください。

エレクトリック・ギター および ベース

いまさら驚くことではありませんが、ギターの世界では真空管アンプは根強い人気を誇ります。真空管プリアンプとエレクトリック・ギターまたはベースの組み合わせには特別なものがあります。 710 のゲイン・コントロールを上げると、かすかにうなるような音から本格的なグランジまで多彩な色づけをすることができます。ブレンド・コントロールをトランス側に回すと "オーバーロードしたコンソール" 効果、真空管側に回すとオーバードライブしたギターアンプのような骨太さと切れ味をエミュレートします。

エレクトリック・ベースのプレイヤーは、少しトランス・アンプ寄りになるように、ブレンド・コントロールを調整すると良いでしょう - まずは10時の位置に合わせてみてください。ソリッドステート・プリアンプの精確性を活用し、ほんの少し真空管の温かみを混ぜます。アコースティック・ベースには、ノブをもう少し真空管プリアンプ側に回してみてください。

アコースティック・ギター

710 はアコースティック・ギターの録音時にも威力を発揮します。スモールダイアフラムの無指向性マイクと組み合わせてみてください。そしてブレンド・コントロールを2時の位置に合わせ、お好みでほんの少し真空管プリアンプ側に傾けてみると - 素朴さと温かみを兼ね備えた音を作ることができるでしょう。

ホーン および リード

710 のトランス・プリアンプの優れた細部への描写力は、ホーンやリード楽器にも最適です。ブレンド・コントロールをおおよそ9時の位置に合わせると、真空管の温かみをほんの少し付加し、どのような音楽性にも合うサウンドを得られます。

ドラム

710 はドラムの録音にも可能性の扉を開きます。 トランス・プリアンプの俊敏なレスポンスは、オーバーヘッドやアンビエント・マイクのシンバルのシャリ感をよく拾い、真空管プリアンプはスネアとタムのマイクに太さを付加します。

マイクのポジションやマイクの種類によっては、2種のプリアンプをブレンドしていただくことで最良の結果が得られます。また複数のマイクを使用する場合は、極性コントロールもお試しください!

ライブ・アプリケーション

710 はレコーディングでの使用を最優先に設計されていますが、ライブ・サウンドのツールとしても活用できます。真空管プリアンプ部はビンテージ・ギターアンプの設計に基づいているため、 オンステージ・プリアンプとしてもお使いいただけます - Hi-Z入力に直接楽器を接続し、710 の出力をパワーアンプまたはハウス・コンソール入力に配線していただくだけです。

さあ ! あとは710の ユーザー・マニュアル をお読みいただき、このユニークなアナログ・プリアンプの概要を詳しくご覧ください。お客様独自のトーンを探求する冒険のスタートとなりますように。

- Amanda Whiting

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