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CME : ショルダーキーボードの機動性が激変!WIDI Master でワイヤレスライブ

ロックバンド、キュウソネコカミのキーボーディストであるヨコタ シンノスケさんは、CME の「バーチャル MIDI ケーブル」、WIDI Master を利用し、ショルダーキーボードをワイヤレスでつないでライブパフォーマンスをしています。導入の経緯と、その利便性について話を聞きました。

ケーブルがつながっているとショルキーのパフォーマンスが制限されてしまう


- ヨコタさんは、ステージでのパフォーマンスでショルダーキーボード(以下ショルキー)を使うことがあるそうですね。

はい。僕はガッツリ弾くタイプのキーボーディストなんですが、ステージでもわりと前に出たりとパフォーマンスもたくさんするタイプで。そういう自分の個性がお客さんに十分に伝わっていないなと思って、6、7年ほど前からショルキーを使い始めました。

- ショルキーを使うとパフォーマンスの幅がだいぶ変わりそうですね。

すごく変わります。キーボーディストが一番損していると思うのは、演奏中の手元がお客さんから見えないことなんですよ。何を弾いているかが視覚的にわからないから、音とビジュアルが結びつきにくい。ギタリストなら手の動きを見れば音を出している瞬間が見えますが、キーボーディストは手元が見えないし、音が同期から出ているのか、手で弾いているのかもわからないですよね。その点、ショルキーなら手元をしっかり見てもらうことができます。

- ショルキーを使うキーボーディストはまだまだ珍しいですよね。

今はわかりませんが、何年か前までは若手でショルキーを使っている人はあまりいなくて、おふざけみたいな感じで使う人が多かったんです。フェスや対バンでもショルキーを使う人はフジファブリックの金澤(ダイスケ)さんくらいでしたから、ショルキーをマスターできるようになりたいという気持ちがありました。ショルキーでメインのイントロを弾いたり、ソロを弾くだけでも、盛り上がりがひとつ作れるんです。ショルキーを抱えてステージに出るだけで「お...来たぞ!」みたいな雰囲気になる。だから、できる限り使う機会を増やしたいですね。

- 海外では使っている人を時折見かけますけど、日本では少ないですよね。

日本でダサいイメージが先行しているのは否定できませんが、堂々と弾けばかっこいいんです。僕が使っている KORG RK-100S は軽くて飛び道具っぽく使えるところもいい。ただ、ケーブルが繋がっているとパフォーマンスが制限されてしまうし、這わせたケーブルが移動の邪魔になってしまうこともある。それだとステージの前方に出た時にバタバタしてしまうから、機動性があるようで実はない...というのが悩みだったんです。

RK-100S
▲ヨコタが愛用する KORG のショルダーキーボード、RK-100S

- 這わせていたのはMIDIケーブルですか?

はい、MIDIケーブルでシンセとつないでいました。それが煩わしくてショルキーの使いどころもあまりなく、だんだん使わなくなっていました。そんな時、ショルキーとシンセをワイヤレスで接続できる WIDI Master の存在をテックさんに教えてもらったんです。僕はワイヤレスMIDI自体を使ったことがなくて、そんなものがあることも知りませんでした。

- それはいつ頃のことですか?

今年の2月か3月...わりと最近です。神戸ワールド記念ホールで主催したイベントの時に、「こういう大きな会場でワイヤレスMIDIを使えたらいいよね」とテックさんと話していて。その時は事前の検証が十分にできず、本番では使えませんでしたが、ライブハウスやリハーサルで試す機会は何回かあり、問題なく使えて不具合もほとんどありませんでした。ただホール規模の会場になると、リハーサルで問題なくてもお客さんが入ったらどういう感じになるかが見通せなくて、ステージに立ってみないと、ワイヤレスでどれくらい距離を取れるかもわからないので、リハーサルを兼ねて実験ができるタイミングを探っていたんです。5月に東京で開催された野外フェスでは僕らがトップバッターだったので、リハーサルをできる時間があり、そこで試してみました。野外の方が電波関係のトラブルは少ない感じがします。

- そこから大きな会場でも使うようになったんですね。接続の安定性はいかがですか?

7月に横浜アリーナのフェスで試した時は、最初はちゃんと繋がって音が出ていましたが、ステージの迫り出しまでショルキーを持っていった時に、音が鳴り続ける状態になってしまって…。リハーサルなので良かったですが、原因がわからず、本番での使用は見送ることになりました。ただ、ショルキー自体に不具合が色々出てきた時期でもあったので、それがワイヤレスの不具合に関係していたのかもしれません。

WIDI
▲WIDI Master はMIDIアウト用のメインアダプター(左)と、MIDIイン用のサブアダプター(右)がセットになっている

ワイヤレスでもレスポンスが気になることはほぼない


- 接続しているシンセサイザーは何ですか?

シンセの音はすべて Novation UltraNova から出していて、ショルキーも UltaraNova につないでいます。RK-100S の内蔵音源でもダメではないけど、KORG の音と Novation の音って結構違うんですよ。Novation を使っているキーボーディストはあまりいなかったので、この音がキュウソの音だって思えるぐらい作り込んでいるつもりです。

- UltraNova を直に弾く場合と、ワイヤレスのショルキーで弾く場合で、レスポンスの違いは感じますか?

レスポンスが気になることはほぼないですね。鍵盤の弾き心地が違うだけで、音に関する違和感を感じたことは1回もありません。

- WIDI Master を2つ使って接続しているのですか?

ショルキー側に1つ、Ultranova 側に1つ付けています。

WIDI Master
▲ヨコタは WIDI Master を2セット使用。そのうち1セットはメインアダプターのみを使い、ショルキーのMIDIアウトに接続。もう1セットはシンセサイザーのMIDIアウトにメインアダプター、MIDIインにサブアダプターを接続している

- ワイヤレスMIDIの設定はスムーズにできましたか?

設定はテックさんに手伝ってもらいました。最初はPCのBluetoothをつかんでしまい、ちょっと苦戦したようですが(笑)、2台の WIDI Master の間で一度ペアリングさせてしまえば、それ以降は自動で繋がるので、最初の設定さえ乗り越えれば大変ではないですね。

- ワイヤレスの距離が足りないなどの問題はないですか? 仕様上は、遮断する物が間に何もなければ最長20mとなっていますが。

横浜アリーナでは20m以内…たぶん10mくらい離れたと思います。いろんな会場で使ってみて、うまくいくパターンとそうでないパターンを検証していくつもりです。丹波篠山市のホールでワンマンをやった時は少し不安定な感じがありましたが、ライブハウスでは今のところ、ツアーで10本以上やっていても不具合はないですね。

- WIDI Master を導入してから、ショルキーの使用頻度は増えましたか?

まさに今のツアーで増やしているところなんですよ。絶対に使おうと思っているわけではないけど、演奏しながら「あ…この曲のこの部分は弾けるな」とか考えたりします。先日、ワンマンで久しぶりにやる曲があって、イントロが始まった瞬間に会場が湧くような曲だったんです。キーボードから始まるので、弾き始める前にわかりやすく注目を集めたいんですが、あまり露骨だとダサいし、サプライズ感が薄れてしまう。そういう時にショルキーで前に出て行って、「何が始まるんだ?」と思わせておいてイントロを弾き出せば盛り上がるし、次にその曲を披露する時にもショルキーを構えるだけで予感させることができる。今はそういう風にパフォーマンスの発想を増やしているところです。

- ステージの見せ方もどんどん可能性が広がっていきますね。

あとはギタリスト同士が竿を交差させたり、ステージの一箇所に集まったりする時に、ショルキーを使えば自分も参加できるので、最近はそうする曲も増えました。自分達の中である程度パフォーマンスが完成されていた曲も、見どころを増やせるようになったんです。ショルキーは新しいフックみたいなもので、これがあるだけで「去年と違う!」って思ってもらえたらいいですね。フェスだと特にセッティング時間がシビアだったりするので及腰になっていましたが、WIDI Master のおかげでセッティングが楽になって、使いやすくなっていけば使用機会が増えそうです。「キーボーディストのわりによく動く」というのが自分のスタイルなので、できるだけステージの遠くまで行きたい。それがキーボードごとできたらいいなって思います。

- そのためにもワイヤレスMIDIは欠かせないですね。

僕らみたいに色々な規模の会場でやるバンドにとっては特にそうですね。キーボーディストは基本的に目立ちたがらない人が多いと思うけど、そこを切り崩していきたい。オリジナリティのある存在でいたいし、キーボーディストに対する一般的なイメージの逆を行きたい。今は同期を入れたり、サポートキーボーディストを入れる方が楽になって、「もうキーボードなんて弾かなくていいじゃん」というパターンが増えていると思うけど、僕は一応、キーボーディストがいる意味を担っているつもりなんです。

ヨコタさん

写真:桧川泰治

ヨコタ シンノスケ

ロックバンド「キュウソネコカミ」のキーボード&ボーカル担当。
ライブでは、コミカルかつエネルギッシュなパフォーマンスで観客を巻き込み、ステージを盛り上げるムードメーカーとして圧倒的な存在感を放つ。
また、テレビやラジオ番組など各種メディアでMC・コメンテーターとしても活躍し、音楽以外の分野でも多彩な才能を発揮している。

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