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MeldaProductions : 耳馴染みの良い倍音コントロールを実現する MCharacter

第一線で活躍するエンジニアがお気に入りの MeldaProduction 製プラグインを紹介する記事の第二回。今回は STUDIO MASS の伊永拓郎氏が MCharacter をレビューします。MCharacter はモノフォニック音源の倍音構成を変更することで、音色にキャラクターを与えるプラグインです。

正確なピッチ検出と倍音のコントロールにより音のキャラクターを変更


「素材の明るさを変更する」という目的を果たしたい場合、ほとんどの方がツールとしてEQを選 択すると思います。しかしそれでは不十分だったり、余計な変化を与えてしまうケースがありま す。なぜならボーカルやベースなどの素材はピッチの変動があるからです。

例えばボーカルのもわついた部分を処理したい場合、200Hzなどをカットすると、特定のピッチで は効果的でも、それ以外のピッチではそこまで効果的でないという現象が起きます。 ピッチによっては芯に当たる部分が削れてしまって、張り出すような印象が損なわれることもある でしょう。 ブースト方向に関しても同じで、ピッチが動的に変動しているのに特定の周波数帯だけを静的に ブーストさせると、不要なレゾナンスを生むことになってしまいます。 特定の再生環境下での印象を損ねたり、不要なデジタルピークも生みかねません。

MCharacter はそれらの問題点を解決するために、正確なピッチ検出技術と倍音のコントロール技術 を利用して音のキャラクターを変更するツールになります。 特定の周波数帯だけに変化を加えるのではなく、常に素材のピッチに追従しながらそのX次倍音を 操作します。

MCharacter には3つのモードがあります。[LEVELS]は素材に存在している倍音をコントロールするモード、[SYNTHESIS]と[NOTES]は素材に存在していない倍音を生成するモードです。 元々の素材の録音状況が良ければ[LEVELS]を使用してその内容をコントロールし、 状況が芳しくなければ倍音を生成して、音を作り変えることをお勧めします。

[SYNTHESIS]と[NOTES]に関しては生成エンジンが同じですが、 オクターバーやピッチシフターのように特定の度数の音を生成したければ[NOTES]を使った方が 操作が早いです。

扱う上での注意点ですが、このプラグインはモノフォニック音源専用になります。 和音を弾いているような素材や、複数人のボーカルバスなど、そういった素材では正確なピッチ検 出が行えず、正しく機能しません。

ここからはプリセットを元に、具体的な活用例を紹介します。


EX.1 ボーカルの抜けを作る「Add brightness」

MCharacter1

5次倍音までゆったりと段階的にブーストしていくプリセットです。EQでは得られないスムースさが特徴ですが、そのままだとかなり痛いサウンドになってしまうの で、適宜[LEVELS]の%を調整して使うと良いと思います。 ボーカルだけに限らず、スネアやベースアンプなどにもオススメです。


EX.2 ボーカルの痛さを和らげる「Lower 3rd octave」

MCharacter2

レコーディング段階で歪んでいないのにボーカルが痛く感じる時があります。 波形を見てもクリップした痕跡が見られないときは、このプリセットを試してみてください。 元々の声質やマイクとプリアンプの関係で強調される3次倍音(トランジスタ歪みのようなジャ リっと感)を低減することで痛さを和らげます。


EX.3 素材の距離感を近づける「Fundamental +6dB」

MCharacter3

弦楽器や管楽器のソフト音源に多いのですが、素材の音がやたらと遠い場合があります。 「実体がない」「芯がない」「太さがない」と感じるその音は、倍音に対して基音の成分が足りていない 可能性があります。 このプリセットで基音のみをブーストすることで、素材をもわつかせたり痛くすることなく的確に 近づけることができます。

特にチェロやチューバなど、低音部を担う楽器に最適です。 録音時にマイクを離しすぎてロー抜けしてしまった素材を補うのにもオススメです。


EX.4 オクターブ下を生成する「Octaver -1」

MCharacter4

前述の通り MCharacter の[NOTES]を使えばピッチシフターのように音を生成することが可能 です。 かなり精度が高くナチュラルな音質なので、エフェクティブなオクターブ下というよりは太さを支 えるためのオクターブ下という使い方が良いと思います。[NOTES]を使えばオクターブ下だけでなく5度上や7度上など、任意の度数のピッチを生成するこ とができます。[DRY]を0%にして、生成された音だけを取り出してさらに加工してみるのも面白いと思います。

MCharacter は少し複雑なプラグインですが、仕組みさえわかってしまえば 他のEQや歪みでは得られない、耳馴染みの良い倍音のコントロールが可能になります。 この機会に使ってみてはいかがでしょうか。

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文:伊永拓郎

早稲田大学建築学専攻を経て、ソニー・ミュージックスタジオにてキャリアをスタート。2019年よりフリーランスで活動。 2022年より昭和音楽大学サウンドプロデュースコースにて教鞭を取る。 楽曲に合わせて、常識にとらわれないアプローチを提案するエンジニアリングは「オーダーメイドの創作料理のよう」と評される。趣味は、映画鑑賞・低温調理・デパコス研究。

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