マウスカーソルを移動させるより、コントロールサーフェスの方が早い
- JUVENILE さんは以前からコントロールサーフェスを使っているんですか?
はい、コントロールサーフェスは長い間使っています。Platform Nano を導入する前にも、他のコントローラーを使っていました。作業するうえでフェーダーが欲しいんですよ。何年か前からデュアルディスプレイで作業しているので、ディスプレイ間のマウスの移動が手間だったんです。今ってノートPCでDAWを使う人が多いから、どのDAWも画面を分割して、ミキサーとトラックリストとかを一度に表示させられる仕様になっていると思うんですけど、僕はデュアルディスプレイのそれぞれにトラックリストとミキサーを分けて配置しているんです。そうすると、例えばトラックリストでの作業中、瞬間的にミキサーを操作したくなった時、マウスカーソルを移動させるよりもコントロールサーフェスを動かす方が早いんです。
- マウスを移動させる手間が省けると?
そうなんです。なので、僕はコントロールサーフェスだけでなく、ボリュームコントローラーも置いているんですよ。ボリュームとかも瞬間的に触りたいし、モニターのミュートとかも、ソフト上で切り替えようとすると何アクションか必要だったりしますから。他にも、Platform Nano のジョグホイールをグルグル回すとトラックリストをスクロールさせることができるから、キーボードの上下キーを何度か叩いてスクロールさせるよりも速いんですよ。作業したい場所にすぐ行けるという、その恩恵が一番大きいですね。
- Platform Nano を選んだ理由もその辺にありそうですね。
まず値段がそんなに高くないんです。そして、デザインが黒っぽくて、Mac のスペースグレーと合うじゃないですか。光るし、カッコいいですよね。大きさも丁度いいし、軽い。外部電源なしでバスパワーで使えて、すぐに起動する。機能もすごくいっぱいある。ただ、それは一長一短で、機能がたくさんあると使いこなせないこともありますけどね。あと、他の人に僕の席でサウンドチェックしてもらう時、Platform Nano があれば再生や停止、タイムラインの移動の仕方とかも説明しやすいです。
- Platform Nano の特に便利な点は?
ジョグホイールですね。再生や停止、ループ、録音とか、その辺は大抵のコントロールサーフェスに付いていますけど、ジョグホイールは珍しくて、エディットの時とかに画面をズームイン/アウトするためによく使いますね。あと、マスターボタンを押すと、すぐにマスタートラックのフェーダーを操作できるのもありがたいですね。会話する時に、プレイバックの音量を下げるのもラクだし。
- モニターコントローラーのようにも使えるのですね。他によく使う場面は?
ボーカルトラックとかにボリュームのオートメーションを書く時ですね。よく「手コンプ」って言うじゃないですか(※手コンプ=コンプレッサーと同じ動作をフェーダーを動かして行うこと。音量が大きい箇所を下げ、小さい箇所を上げる)。あれをする時にラクですね。1音ずつ音量を上げ下げするようなオートメーションを書くのって超めんどくさいですけど、Platform Nano があればリアルタイムに書けます。よく「ボーカルの頭だけ突いて」とか言われるので、そこだけボリュームを上げたり。特にAメロの頭は「オケがうるさい」とか「頭だけ聴こえづらい」ってよく言われます。
チャンネルストリップを開くボタンは頻繁に使う
- ボリュームの操作はスムーズに行えますか?
フェーダーの精度がムチャクチャいいですね。ストロークや触り心地もいい感じです。
- ツマミやボタンの操作性はどうですか?
パネルの上に乗せるオーバーレイシートがあるんですよ。これを取り付ければ、アンドゥやリドゥ、オートメーションのリード/ライト、センドとかが、どのボタンで操作できるのかすぐにわかります。最初はこのシートを見ながら覚えていく必要がありますけど、慣れればすごく早く作業できると思います。僕はオーバーレイシートを使わずに、自由にカスタムしちゃっていますけど。
- どんな風にカスタムしているのですか?
例えば、音源を呼び出したり、チャンネルストリップを開いたりできるようにしています。この辺の操作は、プリセットにも割り当てられていますけどね。Cubase ではチャンネルストリップを頻繁に開くから、このボタンはめっちゃ使いますね。
- 4つのロータリエンコーダーを使うことは?
パンを操作できるのがいいですね。これはめっちゃ便利です。あと、フェーダーの横にあるレベルメーターもいいですね。レベルが色付きで表示されるので見やすいです。
- Platform Nano を使いこなすためのコツは?
僕の場合は、左側にボリュームコントローラー、右側に Platform Nano という配置が基本で、そういう風に自分の中で作業しやすい配置をある程度決めるといいですね。僕は右側に Platform Nano を置いていますけど、左側に置く人もいるだろうし、それぞれの使い方があると思うので。まず何を操作したいのかを明確に決めると、自分にとってどういう配置がいいかが見えてくると思います。全部の機能を使いこなせなくても、自分にとって都合のいいところに都合のいいコントローラーがあるだけでいい。それが僕にとってはフェーダーとパンですね。音量やパンを画面上の数値で決めると、キリのいい数にしちゃうじゃないですか。それも悪くないですけど、ツマミやフェーダーで決めた方が、実際に耳で聴いた一番いい設定が決められますよね。
- まさにフィジカルな要素を、曲作りに取り入れることができるのですね。
そうです。フェーダーにしても、気持ちいい音になるようにフェーダーで合わせた場合、数値をみると「−3.04dB」だったりする。そういうもんだよね、ってことに気づかせてくれますね。マウスとかキーボードで設定すると、−3dBとかキレイな数字にしたくなっちゃうから。
- 使用するツールによって結果が違ってくるんですね。
新しい作り方を取り入れるには、こういう機材を買ってみるのが有効ですね。あとはやっぱり、Platform Nano を机の上に置いておくとカッコいいじゃないですか。
- スタジオの雰囲気にマッチしていますよね。
それでいいと思うんです。使い倒せるかどうかも大事ですけど、普通に置いてあるだけでカッコいいっていうのも大事です。ただ、Platform Nano で唯一気になっていることがあって。8トラック単位で移動できるボタンがあるんですけど、9トラック目に移動することができなくて...。9トラック目を選択しようとすると、8トラック移動してから7トラック分戻る必要があるんです。これが解決したら完璧だと思います。
Platform Nanoを使う方が音楽的に作れる
- オプションの Platform D3 を取り付けると、トラック名やパラメーターを Platform Nano 上に表示させることもできます。
8トラック分のトラック名やパラメーターが表示されるんですね。今操作できるトラックがどれなのか、DAW上の白い線を見なくてもいいのは助かるかもしれない。選択トラックを変更する時にも便利ですね。トラック名は最大6文字までしか表示されないけど、これありきで作業するなら、あらかじめトラック名を6文字以内で付けておいてもいいし。重さもあって、しっかりしていますね。
- ワイヤレスタイプの Platform Nano Air も登場しました。
ワイヤレスは便利だと思います。僕はどっちでも大丈夫ですけど、ケーブルでゴチャゴチャするのがイヤな人にはいいんじゃないかな。あと、僕の後ろの席で聴いている人に手渡すこともできるので、それはメチャクチャいいですね。これは電池で動くんですか?
- 充電式のバッテリーで動作します。有線での使用も可能です。
有線の方が、フェーダーを動かす時とかにちょっと吸い付く感がありますけど、これは慣れだと思います。僕は今までの動きに慣れているから。
- Platform Nano はどういう人にオススメでしょうか?
僕みたいに音楽の仕事をしている人はもちろん、制作をする時の気分を変えたい人にもいいと思います。キーボードとマウスの操作に慣れまくっている人が、あえて Platform Nano を使ってみてもいいし、これからDAWを始める人が Platform Nano で作業に慣れていってもいいと思う。キーボードとマウスだけで曲を作るのって今時のやり方ですけど、音楽的かどうかって言ったら、あまり音楽的ではないんですよね。Platform Nano を使う方が音楽的に作れると思います。机の上のスペースに余裕がある人は、8チャンネル操作ができる Platform M+ を選んでもいいと思います。8個並んだフェーダーで一気に動かすのが好きな人もいると思うし。
写真:桧川泰治
JUVENILE プロフィール
「From Tokyo To The World」を掲げJUVENILE Worldともいうべき独自のCity musicを発信し続けるDJ/アーティスト、音楽プロデューサー。2020年、アーティストとして自身初のセッションアルバム「INTERWEAVE」をリリース。☆taku takahashi、Teddy Loid、claquepot、藤森慎吾、中尾明慶、May'n、おかもとえみ等、豪華客演で話題を呼んだ。音楽プロデュサーとしてはRADIO FISH「PERFECT HUMAN」の作編曲をはじめ、舞台「ヒプノシスマイク」の楽曲やTokyoFMの2021年ステーションジングルなども担当し、活動の方面は多岐にわたる。演奏楽器はピアノをはじめトークボックスも得意とし、TALK BOX界No1プロデューサー”FINGAZZ”の来日公演で共演を果たすなど目覚ましい活躍を見せている。アーティスト・サウンドプロデューサー・トークボックスプレイヤー・DJなど、幅広いだけでなく全てが深く、マルチに活動する音楽家。バックトゥザフューチャーをこよなく愛す。