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Expressive E : Deep Forest のソロを奏でる Osmose のメロディ表現力

フランスを代表するエレクトログループ Deep Forest の来日公演が、2024年4月にビルボードライブ東京で行われました。キーボーディストのエリック・ムーケが操る4台のキーボードのうち、主にソロに使われていたのが Expressive E のシンセサイザー Osmose です。

Osmose に初めて触った時、表現力の可能性にすぐに惹かれた


- エリックさんは同じフランスが拠点の Expressive E とは、よくやりとりをされるのですか?

はい、定期的に連絡を取っています。キーボードの使用に関する意見交換や経験のフィードバックは、彼らにとっても私にとっても重要です。

- 初めて Osmose に触れたのはいつ頃ですか?

Haken Audio のシンセサイザー、Continuum Fingerboard の開発者の1人であるクリストフ・デュケーヌさんを介して、Osmose プロジェクトのことを知りました。彼はこの非常に表現豊かなキーボードのプロジェクトについて話してくれて、 数ヶ月後、私は最初のプロトタイプのひとつを演奏する機会を得ました。クリストフが私のスタジオに持ってきた最初のバージョンの Osmose を弾いた時、このキーボードの表現力の可能性にすぐに惹かれました。Haken Audio のオーディオエンジンは、このキーボードに最適な選択であるように思えました。

Continumm Fingerboard / Osmose
▲上が Continumm Fingerboard、下が Osmose。どちらも Haken Audio のオーディオエンジンを積んでいる

- Osmose と Continumm Fingerboard は今回の来日公演でもキーボードセットに組み込まれていました。どう使い分けていたのですか?

この2つは大きく異なる楽器であり、同じプリセットを演奏しても同じ結果は得られません。演奏技術はそれほど関係ありません。Osmose はピアニストのような弾き方をしないことが必要で、Continuum Fingerboard はフレットレス楽器の演奏者になりきって弾く必要があります。また、体の厳格なポジショニングが必要で、ジェスチャーの熟達には、バイオリンを弾くような非常に高い精度が要求されます。Osmose は初めのうちは演奏しやすいとされていますが、やはり厳格さを要求されます。オーディオエンジンとミュージシャンとの相互作用の結果として、音を考える必要があります。

- その他の使用機材やキーボードについても教えてください。

YAMAHA MOTIF XF7(シンセサイザー)は純粋にMIDIコントローラーとして使用しました。Apple MainStage(ライブ用音源アプリ)にプログラムされたプラグインをトリガーし、表現力を高めるために、ブレスコントロールも MOTIF にマッピングしています。Roland RD-2000(デジタルピアノ)も MainStage のためのMIDIコントローラーとして使用し、主にピアノなどのキーボードサウンドを演奏するために活用しました。MOTIF の上に設置した DJ TechTools の MIDI FIGHTER TWISTER は非常に便利なコントローラーで、各ポテンショメーターの機能を自由に定義できます。私は1つ、または複数のMIDI CCを各ポテンショメーターに割り当て、それらのほとんどを Ableton Live 内の機能に関連付けています。例えば、トラックのミュート、オーディオエフェクトの送信、フィルター、またはサイドチェーンなどのプラグインの特定のパラメーターを制御できます。そして iPad は LEMUR(コントローラーアプリ)を使用して、様々なMIDI CCを Ableton に送信します。これにより Ableton で演奏されるシーンの順序をリアルタイムで制御することができます。MacBook Pro はコンサートの中核であり、リアルタイムで Ableton、MainStage、LEMUR を管理します。

ライブシステム
▲右手前に見えるキーボードが MOTIF XF7、その下にあるのが RD-2000。MOTIF の上に置かれた多数のノブを備えるコントローラーが MIDI FIGHTER TWISTER、奥には MainStage が立ち上がった MacBook Pro が見える

音色を自由に形成するための自由を与えてくれる


- Osmose をよく使う場面は?

Osmose は主にソロパートで使用しています。左手で別のキーボードを使ってコードやシーケンスを演奏しながら、右手で Osmose を弾くことで、例えばビブラートなどを、最大限の表現力を保ちながら演奏できます。また、一部の設定を使用して1/4音符を演奏するのにも役立ちます。Continuum Fingerboard も同様のことができますが、Osmose とはまたアプローチが異なります。私は Haken Audio の新しい解析エンジンによって生成されるサウンドを演奏するために、よく Continuum Fingerboard を使っています。

- Osmose の弾きやすさや表現力はいかがですか?

それこそがこのキーボードの主要な利点です。ソロ演奏やシンセ音色の感度、メロディの表現において、Osmose ははるかに魅力的です。ただ、表現の可能性は大きいものの、現時点では4オクターブしかないため、メインのマスターキーボードとしては使用することができません。ピアノの演奏には、RD-2000 のような重いタッチのキーボードの方が適しています。

- 鍵盤のジェスチャーによる操作性はいかがですか?

ビブラートがとても自然で、非常に直感的です。私はクラシックピアノを演奏している時でも、これと同じジェスチャーをすることが頻繁にあります。

エリック・ムーケ

- よく使う音色は?

ステージで使用するほとんどのサウンドは、私が Continuum Fingerboard 用に作成したサウンドを移植したものです。クリストフが設定の移植を一部手伝ってくれました。また、Osmose のプリセットをいくつか調整して使いました。ギターサウンドや比較的単純な波形を使用したサウンドもいくつかあります。

- 和音楽器としてのポテンシャルはいかがでしょうか?

アルペジエーターを使うアイデアを、スタジオでいくつか作り始めたところです。これは非常に興味深いアイデアですが、ライブで使用するには少し慣れが必要です。スプリットも興味深い機能ですね。これにより、ソロ用のポルタメント設定を保持したまま、伴奏にはクラシックな設定を割り当てることができます。

- ステージ上の MacBook Pro には Osmose のエディターでもある Haken Editor が立ち上がっていました。

1つのエディター画面に必要なプリセットをまとめて配置しているため、いつでも簡単にプリセットを変更できます。普段からスタジオでもそのように使っており、それをステージに持ち込んだのです。

Haken Editor
▲Haken Editor

- 今回は現地で借りた Osmose に Haken Editor からプリセットを流し込んで使用したそうですね。

このやり方は初めてで、小さなバグを発見しましたが、コンサート直前にクリストフの力を借りてすぐに修正できました。非常に迅速に対応してくれました。

- Osmose を弾きながら、曲作りのインスピレーションを得ることはありますか?

私は長年 Haken Audio の製品を愛用しており、そのオーディオエンジンとシンセサイザーとしての可能性が私をインスパイアしています。そして、どのように演奏したいかに応じて、Osmose か Continuum Fingerboard のいずれかにサウンドを転送します。サウンドによっては、どちらのキーボードで演奏するかによってその価値が変わってくる場合があるので、選択肢があるのは良いことです。

- あなたにとって Osmose とは?

Osmose は特にソロ演奏において、音色を自由に形成するための大きな自由を与えてくれました。特定の音符でのビブラートや、従来のキーボードでは不可能な、音と音の間をモジュレーションするグライドモードなど、これらの機能なしでは私はもうやっていけないでしょう。

写真:桧川泰治

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