Universal Audio UAD User File #001:ゴンドウトモヒコ

ソロ・アーティストとしてはもちろん、最近では METAFIVE の一員としても活躍するゴンドウトモヒコさんは、UAD プラグインを10年以上愛用している古くからのユーザーの一人です。スタジオでのプロダクションやライブで UAD プラグインをフル活用しているゴンドウさんに、その魅力についてじっくりお話を伺いました。

中学生のときに父親のダブル・カセットで宅録をスタート


- ゴンドウさんが、いわゆる宅録を始められたのはいつ頃ですか?

中学生のときですね。親父がダブル・カセットのデッキを買ってきて、何だかおもしろそうだなと思い、いろいろな音を録っては重ねたりして遊んでいました。

- どんな音を録っていたんですか?

そのときはもうブラバンでユーフォニアムを始めていたんですけど、さすがに家では吹けないので(笑)、楽器の音ではない缶カラの音だったり、ラジオのノイズだったり。音の実験というか、録音という行為がおもしろかったんですよね。

- 自分で作った曲を録音し始めたのは?

大学に入ってからです。曲を録音したいなと思って Yamaha のカセットMTRを買って、同じくらいに Yamaha の QX8 というシーケンサーを手に入れました。QX8 で鳴らしていたのは、Yamaha DX7 や友だちに借りたシンセとか。ドラム・マシンは持ってなかったので、同じフレーズを繰り返したいときは2小節を切り貼りしていましたね(笑)。

- カセットMTRでですか?

そうです。もちろん、リズムはヨレるんですけど、細かいことはあまり気にせず(笑)。シンセは高校3年生のときに手に入れた Roland SH-101 も持っていたんですけど、あれはMIDIが付いてなかったので、内蔵のアルペジエーターで鳴らしていました。アルペジエーターを速く再生すると、和音のように聴こえるんですよ(笑)。録音もそうですけど、シンセにもずっと興味がありましたね。鍵盤は大学に入ってから少し習った程度で、全然弾けなかったんですけど。

スタジオの一角にあるシンセセクション

- 一方で、ユーフォニアムもずっとやられていたんですよね。

はい。でも、ユーフォニアムを吹くことと、MTRやシンセを使った録音は自分の中では完全に別物でした。MTRでユーフォニアムを録ろうと思ったこともなかったですし...。その2つがリンクし始めたのはかなり後になってからです。

- QX8 の次のシーケンサーは何でしたか?

QX8 の次はもうコンピューターでしたね。大学にあった Macintosh SE を触り始めて。シーケンサーは、Opcode Systems Vision。昔からコンピューターにも興味はあったんですけど、コンピューターを使った作曲というのをよく理解していなくて、そこで初めて学んだ感じです。コンピューターのシーケンサーは、とにかく使いやすいことに驚きました。QX8 は、数値しか表示されませんでしたから。自分で打ち込んだものがグラフィックで表示されるのがすごいなと。その後、Vision だけでなく MOTU Performer も使い始めました。

- 本格的にコンピューターで打ち込みを始められたのは?

日本に帰ってきて、会社(註:オフィス・インテンツィオ)に入社してからです。Macintosh SE/30 を手に入れて、音源モジュールを鳴らして。音源モジュールは会社にたくさんありましたからね。空いている時間を見つけて、曲を作ったり、バンドをやったり...。会社では最初は運転手で、機材をセッティングしたり片付けたり、とにかく忙しかったんですけど、やっていることは常におもしろかったです。

- その後の転機というと?

高野(寛)さんと(高橋)幸宏さんのライブにマニピュレーターとして参加したのが転機だったと思います。高野さんがぼくに興味を持ってくれて、デモを聴きたいとおっしゃってくれて。当時の高野さんはコンピューターをそれほど使っていなかったんですけど、ずっと興味を持っていたみたいで、ハードディスク・レコーダーを使ってみたいということでぼくに声をかけてくださったんです。それからいろいろなライブやレコーディングに参加させていただくようになりました。

スタジオ全景

UAD は、コンピューターに負担をかけずにプラグインを使えるというのが大きい


- ゴンドウさんは、かなり以前から UAD を愛用されているそうですね。

はい。今は Apollo なんですが、PCIカードの時代から使っています。きっかけはよく憶えてないんですけど、多分コンピューターに負担をかけずにプラグインを使える点と、実機をシミュレーションしたエフェクトに魅力を感じたからだと思います。普段の制作でプラグインはけっこう使うんですが、音が良いものは処理が重かったりしますからね。

- 現在はどのモデルを使用されているんですか?

PCIeカードの UAD-2 の調子が悪くなってしまい、それだったらいっそのことオーディオ・インターフェース一体型の Apollo に乗り換えてしまおうと思ったんです。Mac Pro からもPCIスロットが無くなってしまいましたからね。それで最初は Apollo 16 を手に入れたんです。マイク・プリアンプは Mackie Onyx が気に入っていたので、Apollo はライン入力だけでいいかなと思って...。しかしその後アナウンスされたUnisonテクノロジーを使ってみたいなと思い、Apollo Twin MkII に乗り換えました。Unisonテクノロジーは、マイク・プリアンプ内蔵型の Apollo でしか使用できませんからね。Apollo Twin MkII は、Quad モデルを使っています。

「見た目もお気に入り」と語る Apollo Twin MkII Quad。

- プラグインはけっこう使用されるとのことですが、UAD 以外だとどのようなものを?

Waves は全部入っていると思います。そんなにたくさんインストールしてあるわけではなく、基本的には UAD と Waves のどちらかという感じですね。最近、UVI のレズリー・シミュレーターが良かったので買いましたけど。

- UAD と Waves はどのように使い分けていますか?

自分でもどうやって使い分けているのか分かりません(笑)。Waves は、トニー・マセラティとかの Signature Series が気に入っているので、ああいう複合エフェクトが多いような気がしますね。ある帯域を持ち上げたら、ディレイも微妙に変化するような...。一方、UAD は自分で音を作り込みたいときに多用しているような気がします。

- お気に入りの UAD プラグインを教えてください。

いちばんよく使うのは、Lexicon 224 Digital Reverb です。すごく音が良く、減衰の仕方が普通のプラグイン・リバーブとは違う感じがする。プレート・リバーブとかで愛用しています。リバーブに関して言えば、実機のシミュレーションではないですが、DreamVerb Room Modeler も気に入って昔から愛用しています。あのプラグインは、EQのような感覚でエディットできるインターフェースが良いんですよ。

Lexicon 224 Digital Reverb プラグイン

- EQやダイナミクス系では?

EQで好きなのは、Harrison 32C Channel EQ ですね。インターフェースが分かりやすく、上の方もきれいに調整できるので。あとは、1176 や Fairchild といった定番もの。でも、ぼくは実機をよく知っているわけではないので、本当に音だけで選んでいます。1176 とか、プロのエンジニアは種類によってどう使い分けているのか知りたいくらい(笑)。変わったところですと、Moog Multimode Filter XL もよく使いますよ。

- シミュレーション系のプラグインは、実機を知らなくてもおもしろいですか?

おもしろいですね。何ででしょうね?(笑)やっぱり見た目とかで雰囲気があるからなのかな...。ボタン1つで音が変わってしまうよりは、使っていて楽しいですよね。

- Unison テクノロジーを使いたいがためにApollo Twin MKIIに乗り換えたとのことですが、その感触はいかがですか?

つい先日も外でコーラスを録らなければならないことがあって、そのときもUnisonテクノロジーで Neve 1073 を使いました。Unisonテクノロジーは、想像以上の音が簡単に手に入るという印象がありますね。音もそうですが、ぼくにとっては簡単に使えるというのも重要だったりします。ぼくは一応、こういうスタジオを持っていますが、もし自宅に小さなスタジオを作るのであれば、コンピューターと Apollo Twin MkII だけで完結してしまうのではないでしょうか。Quad だったらパワーも十分ですし。

- オーディオ・インターフェースとしての Apollo Twin MkII はいかがですか?

飽和感も無いですし、すごく良いと思います。マイク・プリアンプもしっかりしていますしね。ぼくは Apollo Twin MkII をライブで使うことが多いんですが、出力が2chではなく、4chというのも便利ですね。4chあると、クリックとベースを別々に出すことができますから。それとライブ用オーディオ・インターフェースとしては、見た目が良いところも気に入っています。人前で使うものですから、やっぱり見た目は良くないと(笑)。

- 制作にライブに、UAD をフル活用しているという感じですね。

やっぱりコンピューターに負荷をかけずにプラグインを使えるというのが一番ですね。PCIカードの時代からずっと使っているので、今となってはもう手放せない。今後も気になったプラグインを追加して、活用していきたいと思っています。

- 写真:八島崇
- テキスト:ICON

ゴンドウトモヒコ

日大芸術学部卒業後、米、ボストン大学に留学、修士課程修了。 専攻は電子音楽とユーフォニアム。
2004 年音楽家集団 anonymass を結成し4枚のアルバムをリリース。Yellow Magic Orchastra の日本でのライブおよびヨーロッパ、アメリカツアーにサポートメンバーとして常に参加。コンピューターと管楽器を使ったユニークなスタイルで多数のミュージシャンの録音やライブなどに参加している。国内では特異な " ポップスがわかるユーフォニアム奏者 " としての側面を持ちつつも、作編曲家として CM、サウンドトラックなども多数発表している。
2014年レーベル(株)愚音堂 設立。
2015年より e テレムジカピッコリーノ音楽監督。
2017年11月22日Gondo’s Carol Brass Ensemble「Silent Night」リリース。

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