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IK Multimedia : 島田昌典がハマる AmpliTube X-TIME / X-SPACE の魅力

aiko、いきものがかり、秦基博など名だたるアーティスト達の作品に携わる音楽プロデューサーの島田昌典氏。楽器やエフェクターの収集家としても知られる島田氏が今愛用しているのが、IK Multimedia のディレイペダル AmpliTube X-TIMEとリバーブペダル AmpliTube X-SPACE です。

エフェクトをかけた時に、音が良くなったように聴こえる


- 島田さんは膨大な数のエフェクターを所有されていますが、日頃から最新のエフェクターをチェックされているのですか?

そうですね。気になるエフェクターがあれば実際に体験してみます。AmpliTube X-TIME(以下X-TIME)の場合は、Twitter や YouTube で使っている人を見かけて、音がすごくクリアなのにビックリしたんです。メーカーサイトで音を聴いてみたらやっぱりすごくクリアで、現代的な、他にはない感じがありました。僕はいろんなメーカーのコンパクトエフェクターをたくさん持っていますが、その中でも X-TIME はキャラクターがちょっと違うなと思ったんです。

- それでギターの録音用に導入したのですか?

ギターのためでもありますし、シンセに使うためでもあります。録りで使ったり、一度録った演奏を再生して通したりもします。Pro Tools のインターフェイスから出力される信号は+4dBなので、コンパクトエフェクター用のリアンプボックスでインピーダンスとレベルを調整して、−10dBに落としてから X-TIME に通します。X-TIME から出力される信号は、DIを通して Pro Tools に戻します。

X-TIME/X-SPACE
▲左がAmpliTube X-SPACE(リバーブ)、右がAmpliTube X-TIME(ディレイ)

- 実際に使用してみた印象は?

キャラクターはプラグインの AmpliTube に似ていますね。上が伸びていく感じや、埋もれにくいところも。音質がすごく良くて「AD/DAが違うのかな?」って感じがしました。入れた音がそのまま出てくるだけでなく、エフェクトをかけた時に、音が良くなったように聴こえるんですよ。不思議な感じなんですけど。エフェクトのアルゴリズムによる効果もあると思うんですが、それも含めてAD/DAや入出力が、他のメーカーのものとは違うのかなと。オケに埋もれにくいし、テールというか、音の切れ目がすごくハッキリ聴こえてくる。特にラージスピーカーで聴くと、奥行き感やテールの切れ具合に、他の製品との違いを強く感じました。

- ディレイのアルゴリズムが16種類内蔵されています。特に気に入っているものは?

アルゴリズムを切り替えていくだけでも楽しめますよね。「VTG TAPE」(ビンテージ・テープ)も好きだし、「REVERSE」もいい。ワンタッチでリバースされて、サイケデリックなディレイが作れます。プラグインではよくある効果ですけど、リバースされるタイミングや感じは製品によって様々で、おいしいところにきてくれないこともよくあるんです。その点、X-TIME のリバースはうまくハマりやすいですね。あと「PATTERN」というアルゴリズムも面白いです。ディレイタイムを周期的に変化させてフレーズっぽくしてくれます。「ARCTIC」はSE的なディレイが作れるというか、空間をフワッとさせる感じでしょうか。

アルゴリズム
▲左上のMODELノブでアルゴリズム、右上のPRESETノブでプリセットを選ぶ。ディスプレイ下部で選択中のアルゴリズムが確認できる

- ピンとくるアルゴリズムを見つけてから、パラメーターを微調整していくのですね。

はい。プリセットがいっぱいあるので、それを聴いているだけでも楽しいですが、演奏したりシーケンサーを再生しながら、ノブを操作してリアルタイムで音作りができます。特にフィルターのノブが付いているのが素晴らしくて、階層を潜る必要もなく、明るい音からくぐもった音まで、リアルタイムでコントロールできます。シンセのフィルターと開き具合を合わせたり、ディレイタイムもリアルタイムに調整できる。丁度おいしいところを調整できるのが素晴らしいですね。複数のパラメーターを同時に操作することもできます。発振もさせられるし、多分、プリセットを作った人がミュージシャンなんだと思います。とてもツボを得たプリセットだから、使っていて楽しいです。

- シンセとの相性はいかがですか?

僕がよく使っている IK Multimedia UNO Synth Pro Desktop(アナログシンセ)は、内蔵のディレイやリバーブも良く出来ているんですけど、それを切って X-TIME をかけると本当に素晴らしいんですよ。デジタルシンセだとどうしても変なピークがあったりしますが、UNO Synth Pro Desktop はアナログシンセなのでエフェクトのノリが良くて、音がどこにでも行けるんです。

UNO Synth Pro Desktop
▲UNO Synth Pro Desktop

- UNO Synth Pro Desktop も最近使い始めたのですか?

はい、YouTube で見て音がすごくいいなと思って導入しました。シンセも色々持っていますけど、UNO Synth Pro Desktop は他とはキャラクターが違うなと。MOOG 系とも違うし、KORG とも Prophet とも違う立ち上がりのいい音ですよね。フィルターが素晴らしいし、内蔵のディレイやリバーブも本当に良く出来ていて、X-TIME や X-SPACE に近い感じがします。サイズはコンパクトですけど音は太い。何台か欲しいです。フィルターの操作にもエディットモードにも簡単にアクセスできるし、わかりやすいですよね。フィルターのキレもいいんですよ。効果がハッキリしていて、気持ちいいところをフィルタリングしてくれるというか、音楽的なんですよ。いくらでも遊べるし、リアルタイムの音色作りに向いていると思います。

- どんなトラックに使っていますか?

後ろで流すシーケンスとかですね。あと、まだ使ったことはないですが、シンセベースには絶対に合いそう。ブリブリした音とか。でもシーケンス系が本当にマッチします。UNO Synth Pro Desktop はパラメーターが全部パネル上に出ていて、リアルタイムでツマミ操作ができるんですよ。あと、付属プラグインの UNO Synth Pro Editor と UNO Synth Pro Desktop が同期するのも便利ですよね。アナログシンセがコンピュータに融合しているかのような使い方ができます。

プライベートスタジオ
▲島田氏のプライベートスタジオ。右側には豊富なエフェクター類が所狭しと積まれている

テールの消え方が綺麗で、オケに埋もれない音質


- X-TIME の次に AmpliTube X-SPACE(以下X-SPACE)を導入されたんですよね。

X-TIME の印象が良かったので、X-SPACE もぜひ音を聴いてみたいと思ってレンタルキャンペーンを利用しました。最近の音楽は洋楽も含め、リバーブ感が本当に大事になってきていて。ヒップホップとかアメリカのチャートを聴くと、音数が少なくて、ブワッと広がるようなリバーブが使われているんです。X-SPACE もそれに近い感じで、テールの消え方が綺麗で、オケに埋もれない音質でした。X-TIME と似ていますね。サウンドの質感が素晴らしいなと思いました。プリセットのアルゴリズムも同じくユニークで、今流行りのシマー系であったり、使える音が入っています。

- シマーのアルゴリズムは2種類入っています。

この2つは倍音というか、ピッチ感が違うようですね。「SHIMMER 1」はオクターブが変化していく感じ、「SHIMMER 2」はパラレルで発音しています。あと「CHURCH」も良く出来ていて、立体的なリバーブ感が気に入っています。非常に深い感じがあって、聴いているだけでも気持ちいい、まさにチャーチのリバーブ感ですね。「EXTREME」はリバーブとフェイザーが組み合わさっていて、モジュレーションがかかりながらリバーブがかかります。これが非常に気持ち良くて、アンビエントやループミュージック、ミニマムミュージックにピッタリですね。シーケンスやシンセを流しながら、フィルターをイジるだけでトリップできるというか(笑)。他にはない感じですね。

X-SPACE
▲X-SPACEも同じくMODELノブでアルゴリズム、PRESETノブでプリセットを選択する

- トラックをループ再生しながら、エフェクトを調整していくのですね。

そうですね。シンセのフィルターと X-SPACE のフィルターを両方操作して、その音を Pro Tools に録っておいていいところを使ったり、ループをブレイクしたりとセッション的に活用しています。これをプラグインでやろうとすると、マウス操作ではちょっと大変ですよね。MIDIコントローラーにアサインすればできないことはないですが、ハードウェアを操作するのは本当に気持ちいい。ずっとやり続けてしまいます(笑)。

- 空間を演出するだけでなく、音色の一部として使っているのですね。

1つの音楽としての作り方ができますね。ギターで使う人が多いと思うんですけど、シンセにもバッチリいけます。まだやっていないですけど、Pro Tools からボーカルトラックを送ったりすると、多分エフェクト乗りがいいんじゃないかな。あとColorというノブが便利で、これでちょっと暗めにしたり、ちょっと明るめにしたり、サウンドのカラーを変えられるんですね。MODノブでフェイザーとかもイジれます。X-SPACE は何台か欲しいですね。それぞれの楽器に挿して使いたい。

フィルター

- ギターにもシンセにも効果的なんですね。

ギターも今は本当に空間系のエフェクターが大事になってきて、ポップスでもシマー系だったり、空間系のエフェクターでどれだけ音色を作れるかが大きいですね。どうやって音を広げて空間を埋めていくか、そこにみんな頭を使っていますよね。そういう場面で X-TIME と X-SPACE のセットは持ってこいなんじゃないでしょうか。今、僕は[ディレイ→リバーブ]というルーティングで使っていて、この流れが一番ハマります。もちろん逆でもいいんですけど。

- 実際に X-TIME と X-SPACE をセットで使う場面が多いですか?

そうですね。他のエフェクターも組み合わせながら実験したりするので、大変なんですけどね(笑)。プラグインでやる方がリコールもできて便利ですけど、ハードの方が音の立ち上がりや奥行き感が良くて、面倒だけどやっぱり使った方がいいかなと思います。最近のシンセは内蔵のリバーブやディレイが良く出来ているので、ワンタッチで素晴らしい音が出ますけど、実験しながら自分のオリジナルの音楽を追求するのは大事なことだと思いますね。

島田昌典

- そういう作業にこそ、X-TIME と X-SPACE は向いているのでしょうね。

プレイヤーの触手を動かしてくれる部分がありますね。それが演奏にフィードバックするし、こちら側に訴えかけてくるようなアルゴリズムやプリセットがいっぱい入っています。それによって、また音楽の構成が変わっていったり、こうきたからこうしようとか、クリエイティブな要素を与えてくれます。

- AmpliTube 5 SE 上で起動するバーチャル・バージョンも付属しています。

バーチャル・バージョンはリコールする分にはいいんですけど、マウスで操作するものなので、やっぱりツマミを触りながら音作りができるハードの方がいいですね。音作りはハードでやって、再現したい時はプラグインを使うのが良さそうです。プラグインはコンピュータに負荷がかかりますよね。そんなに高負荷ではないですけど、そういうのも含めてハードの方が楽しいですね。

バーチャルバージョン
▲X-SPACEのバーチャル・バージョン

写真:桧川泰治

島田昌典

音楽プロデューサー/アレンジャー/キーボーディスト。2001年に自身のプライベートスタジオ「Great Studio」を立ち上げ、鍵盤楽器をはじめギター、ベースなど数々のビンテージ楽器、録音機材を収集(特に復刻版メロトロンは島田サウンド必須のアイテム)。ここから数々のヒットソングを創作していった。自身のルーツともいえるビートルズからのブリティッシュサウンド、サイケデリックサウンド、バンドサウンド、アメリカのルーツミュージック、ストリングスアレンジ、などなど、影響を受けた幅広い音楽からのスピリットを、自身のフィルターにかけて融合する、島田昌典ならではの「ひとひねりある」ポップサウンドは、今や多くのポピュラリティーを得て、特にアーティストから篤い支持を得ている。根っからの音楽好きで、根っからの音楽職人。楽器収集家でもあり、楽器演奏家でもある。今日もまた“新しい音”を求めて、こだわりの機材と共に、プロデュース、アレンジに没頭している。

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