セッティングのテーマは「ダンスミュージックの制作環境」
昔のダンスミュージックはハードシンセの音をパソコンに取り込んで作るのが主流でしたが、ソフトシンセの時代に突入してからは、コンパクトな環境にまとまってきています。パソコンのスペックが上がってきたこともあって、ノートパソコン1台で制作ができるようになり、特にシンセサイザーをよく使う EDM やダンスミュージックでは、顕著にスタジオが小さくなっていると思います。
目次
- ノートパソコンと外部モニター1台が基本
- FL Studio のプレイリストを外部モニターに配置
- オーディオインターフェイスはバス電源対応の Apollo Solo
- ノイズが入らずに録れるダイナミックマイク V7 MK をデスクアームに設置
- リードシンセの芯となる音をアナログシンセ UNO Synth で鳴らす
- MIDIキーボードはドラムパッドを搭載した Impact LX61+
ノートパソコンと外部モニター1台が基本
僕も家で曲を作る時は、ノートパソコンと外部モニター1台が基本です。ノートパソコンは画面の大きさに制約があるので、外部モニターをつないで大きな画面で作業する方が、モチベーションを維持する上でも良いです。外での作業はノートパソコンの画面だけでやりますが、家で体を小さくして無理に作業するのは気持ち的にも窮屈ですから。
コロナ禍で外に出ることが少なくなりましたが、以前はスタジオセッションに参加したり、DJで地方に行く時は、出番ギリギリまで曲を作っていることもありました。そういう時のためにも、ノートパソコン1台で、ホテルでも作業ができるようにしています。家ではノートパソコンが心臓部で、それに付随する服のような感じで作業環境を構築しているので、スピーカーとかいろんな機材をつないでいますが、出かける時はそれを全部取っ払って、ノートパソコンだけを持って出かけます。
ただ、ミキシングやマスタリングでは、しっかりしたスピーカーやヘッドホンを使うので、最終的な完成形に持っていく作業は家でやります。
FL Studio のプレイリストを外部モニターに配置
DAWは僕も使っている Image-line Software FL Studio です。ノートパソコンの画面では、ピアノロールやシンセサイザーを使って1つ1つの音を作り、それを外部モニターのプレイリスト上に配置していきます。
作業効率を落とさないためにも、プレイリストの上には絶対に何も置かないようにするのがポイントです。FL Studio はウィンドウがどんどん重なっていくようなデザインになっているので、2画面で作業する場合は、画面が広い方にプレイリストを配置した方が、曲全体をストレスなく見渡せます。
オーディオインターフェイスはバス電源対応の Apollo Solo
機材は全部ノートパソコンにつないで、なるべくノートパソコンへの電源供給だけで賄えるようにしています。外部モニターやスピーカーは別に電源が必要ですが、オーディオインターフェイスはバスパワー、アナログシンセもバスパワー、MIDIキーボードもバスパワー対応です。
オーディオインターフェイスの Universal Audio Apollo Solo はバスパワーに対応しているだけでなく、ノートパソコンのCPUを使うことなくUADプラグインを立ち上げられる点もすごく重要です。プラグインがCPUをどんどん食っていくと、パソコンの動作が重くなってしまうので、そのパワーを分散してくれる Apollo Solo はすごく助かっています。
音質も、業界スタンダードと言えるくらいユーザーが多いだけあって、フラットでバランスがいいですね。UADプラグインもすごく優秀で、ボーカル録りとかでかけても、レイテンシーがないんですよ。配信とかでコンプレッサーをかける時も、ネイティブのプラグインを使うと若干遅延するんですけど、Apollo Solo では全然遅れないので、配信する時も助かっています。最初から入っている LA-2A(コンプレッサー)やRealVerb Pro(リバーブ)をよく使います。
ノイズが入らずに録れるダイナミックマイク V7 MK をデスクアームに設置
最近のトレンドとして、「ヤー」「ワー」「オー」とか、そういう声のワンショットを録音して、グジャグジャに加工してリードっぽく使うのが結構流行っているので、そういう素材をパッと録る時とかにマイクを使います。コンデンサーマイクよりもダイナミックマイクの方が、周囲のノイズが入らずに綺麗な声が届けられます。
あとコンデンサーマイクだとファンタム電源が必要ですけど、ダイナミックマイクは電源がいりません。マイクまでバス電源で賄おうとすると、電力を食い過ぎる気がしたので、そういう負荷を少しでも抑えられるといいかなと。個人的に黒が好きなので、カラーリングやデザインの面も考慮して sE Electronics V7 MK を選びました。
あと最近、ダンスミュージックのプロデューサー界隈では、Twitch や YouTube で作業配信をするのがすごく流行っていて、そういう用途にもダイナミックマイクは向いています(※作業配信=DAWの画面を映し、自分の顔をグリーンバックで抜いて、マイクで喋りながら曲を作る様子を配信すること)。あと、配信の作業は座ったままやるので、横からマイクが伸びてきてくれた方が邪魔になりません。横からアームが伸ばせるマイクスタンド iCON MB-06 に取り付ければ、作業の邪魔をすることなく自分の口元に持ってこられるし、使わない時は下げられるという利便性もありますね。
リードシンセの芯となる音をアナログシンセ UNO Synth で鳴らす
僕はソフトシンセから入ったので、ハードシンセには全然触れてきませんでしたが、友達の家でハードシンセを触れさせてもらった時に「音太いな!」と思って。それで IK Multimedia UNO Synth を導入して、ラインで録ってみたら、パソコンの中で鳴らしたソフトシンセの音とは質感が違くて。音色を混ぜたりレイヤーした時に抜けてくるんですよ。例えば、リードの中心となる芯のある音とかを UNO Synth で鳴らして、その1本の軸を支えるようにソフトシンセを鳴らすと太いリードが作れるので、こういうコンパクトなハードシンセを1台持っておくと、非常に重宝します。
操作の仕方もすごくわかりやすいです。マニュアルを見なくても、直感的に触って、ボタンを押して、上のツマミを回すだけで、どういう音が作れるかがわかりますし、プリセットも豊富に入っているので、プリセットを選んで鳴らして、それを録るのを繰り返していくと、その音色がどういう風に作られているかがわかります。昔のハードシンセはもっと複雑で大変だったと思いますけど、こんなにコンパクトでわかりやすいんだなと。エディターを見ながらだと、もっとわかりやすいですね。
MIDIキーボードはドラムパッドを搭載した Impact LX 61+
僕はキーボードが全然弾けないんですが、音出し用としてMIDIキーボードを使っています。ダンスミュージックを作る時、ドラムパッドがあるとすごくリズムが打ち込みやすいので、そういう意味で今回は Nektar Impact LX61+ をチョイスしました。
今回セレクトした機材リスト
- DAWソフト:Image-Line Software FL Studio
- オーディオインターフェイス:Universal Audio Apollo Solo
- MIDIキーボード/コントローラー:Nektar Impact LX61+
- マイク:sE Electronics V7 MK
- マイクスタンド:iCON MB-06
- アナログシンセ:IK Multimedia UNO Synth
- モニタースピーカー:reProducer Audio Epic 55
- デスク:Output Platform コディアック ブラウン
写真:桧川泰治
MK / Shadw プロフィール
Music Producer / DJDance Musicを中心に商業、非商業を問わずハイクオリティな楽曲を数多く輩出してきたキャリアを持ち、キャッチーなものからエッジの効いたグルーヴ感のある楽曲まで様々なジャンルを手掛ける。アメリカのプロデューサー「BT」のRemixコンテストで入賞しオランダのトップレーベルArmada Musicからの楽曲リリースや、音楽ゲーム「Beatmania IIDX」「DANCERUSH STARDOM」「CHUNITHM」「CytusⅡ」への楽曲提供、国内TOP DJ楽曲の制作、J-POPなど多数編曲、サウンドレコーディングマガジン執筆、EDMユニットPolyphonixのサウンドプロデュース。別名義ShadwではオランダのHardwell主宰"Revealed Recordings”やブラジルのレーベル”Glorie Records”,アメリカのレーベル”Peak Hour Music”など世界各国のビッグレーベルから楽曲をリリースし、世界のトップDJ,Hardwell,Fedde Le Grand, Ummet Ozcan, Promise Landなどサポートを受ける。日本国内ではATOM TOKYOなどで有名なDJ TORAとの楽曲”Mr.Vain””UDLR”,Kanae Asabaとの”Summer Is Calling”が大ヒットするなど多方面で活躍する実力派。