第1回 イチからゲームボーイサウンドを作る方法
今回は第1回ということで、phase plant の基本的な使い方や特徴的な機能・特徴を紹介するため、まずは簡単な「イチからゲームボーイサウンドを作る方法」を紹介していこうと思います。もしかして“ゲームボーイ”って聞いたことないですか? 昔そういう携帯ゲーム機があったんですよ……。いわゆる”チップチューン音色”だと思ってください。よしなに。
どうやって使ったらいいの?
まず、phase plant の基本的な使い方を案内していこうと思います。左側がオシレータ部分(音を発生させるところ)、右側が Kilohearts 社製のエフェクトを読み込んでシンセと一体化させられる(!)「Snapin system」と呼ばれる部分、そして下部がLFO(経過時間に応じて周期的にパラメータを変化させる機能)やエンベロープ(非周期的に一度だけ変化を付ける機能)、ランダム変化などのモジュレータ部分です。phase plant は初期の状態では音が出ませんので、左側のオシレータ部分に何らかのオシレータを読み込んでみてください。そうするとMIDIの入力に応じて音が出ます。
オシレータ
左側のオシレータ部分から見ていきましょう! オシレータには、読み込んだ音をそのまま発生させることのできる「Sample」、Wavetable と呼ばれる波形データを元にサウンドを発生させることのできる「Wavetable」、ノイズを発生させる「Noise」、それからアナログシンセ系の音に限って発生させることのできる「Analog」の4種類があります。すでに盛り沢山や……! やりたいことに応じて使い分けていくと吉です!
例えば、キックをSampleに読み込んで phase plant で音程を変化させたり(いわゆるガバキック的なやつ)、あるいはシンセリードのサンプルを持っていれば、Sampleのループ機能を使ってメロディに使ったりすることができます。その他にも、プラックやマレット系の音色の「アタック感」を活用することもできますね!
また、Wavetableにはすでにかなり多くの種類の音が入っています。例えばFM変調系のサウンドや、「Growls」や「Screams」と名付けられた複雑な倍音を持つサウンド、エフェクト系の変化に富んだ「Spectral」や「Evolving」、他にもFMやAMモジュレーション用の「Modulators」や、「Morphs」という基本的な波形のモーフィング用などなど、多彩な音色が選択できます。非常によりどりみどり! Wavetableはその「波形テーブル」からデータを読み出して発音する機構上、多彩かつ実にキレイな、歪みのない発音を得ることができます。その特性を活かして、もちろんベース系の音色に使ってもOKですし、リードやシーケンス、FX系のサウンドにも!
今回は前に述べたように「ゲームボーイサウンド」を作っていこうと思いますが、実際にはもしかすると、前述のSampleのサンプリング一発で終了してしまうかもしれませんね。そんなことをすると、もちろん「ズルい」と言われるので、今回はしっかりこのWavetableを使用してイチから作っていきます!
NoiseとAnalogについては、そのままノイズとアナログ系の波形を発生させることができますが、あまり説明が必要ないように思います。なぜならWavetableとSampleが非常に強力だから。もちろん、「シンセサウンドにノイズを混ぜたい!」といった時はNoiseを使えばいいですし、「アナログ系の音色にこだわりたい!」という時はAnalogを使ってもいいと思います。でも、それ以上にソフトウェアシンセ特有の多彩な選択肢があるのが phase plant の良さ! ということで何卒。
ゲームボーイサウンドと言えば、矩形波
さて、ゲームボーイサウンドと言えば矩形波。四角い形をした波形(Pulse wave / Square waveとかって呼ばれます)を出すと、まぁすでにゲームボーイっぽいじゃんね。今回はここからさらに、「実機っぽさ」を目指して作り込んでいきます。
まずはオシレータにWavetableから「PW Square」(Pulse-Width Square=パルス幅矩形波の略)を読み込みます。Frameでパルス幅(つまり波形の厚みってこと)を調整できますが、今回使いたいのはFrame値が「128」、「64」、「32」の音色のみ! なぜなら、それが「っぽい」から(昔のゲーム機なので、技術的に発音できるパルス幅が決まっていたんですね。そこをしっかり再現してあげると本格的に!)。それぞれに味がありますが、今回はいったん「128」で進めてみましょう。
独特なサウンドが一瞬(1分くらい)で出来上がります。
さて、ゲームボーイっぽい音といえば、例えば「アタックで一瞬だけパルス幅が変わるサウンド」。と、文字で言っても伝わらないのですが、百聞は一聴にしかず。先に説明した、画面下のモジュレータ部分を使ってパラメータを変えていきます! 今回使うのはEnvelope(LFOの1-Shotモードを使っても大丈夫です。LFOは自分で波形を描くことができるので、細かい調整には向いているかもしれないですね)。「アタックで一瞬だけ」の部分はHoldパラメータを使って作ります。
Envelope右側の「⊕」マークをクリックすると、このEnvelopeと他のパラメータを連動して動かすことができます。今回はパルス幅を変えたいので、先ほど作ったオシレータのFrameへ。%表示なのでわかりにくいですが、現在の値が「128」なので、例えばFrame値を「64」まで下げたいということであれば「−25%」(256×25%=64、128−64=64ということ)を設定すればnicely doneです。早速ちょっと音を鳴らしてみましょう。……なんとなく懐かしい音がしますよね。しません? ゲームボーイを持ってきてください。
ビブラートとか付けてみたい
オシレータが整ったところで、例えばビブラート(音の高さを周期的に揺らすことで音をいい感じにする技術。これがあると「良い」とされています)を作ってみたかったりしませんか? しますよね。
ビブラートも同じく画面下のモジュレータから、今度はLFOを用いて作っていきます。と言っても簡単で、LFOを立ち上げて周期を「5〜6Hz」くらい(曲のテンポや好みのビブラート速度によります)にして、右下の「⊕」マークからピッチにブッ刺すだけ! オシレータ下部の「SEMI CENT」と表示されているピッチ部分に連動させてもいいですし、「Master Pitch」でも構いません(今回は後者で「+0.12」に設定)。すると音が揺れて、急にゲームボーイっぽさが……。グッと来ませんか?
ちなみに波形の右下にある鉛筆のマークから、波形の編集もできますよ。今回みたいなチップチューン系の音色であれば、前半分が完全に「1」で、後ろ半分が完全に「−1」(パルス幅が50%の矩形波の状態)みたいなビブラートも”っぽさ”があって良い!
とても簡単ですね。phase plant はこんな風に簡単かつ即座にパラメータのエディットができるので、もちろんメイン機としても使えますし、またチョイ役でも重宝するシンセです。
パラメータ×パラメータで200だ
もっとビブラートについて知りたい? しかたないにゃあ……。例えば、「発音直後はビブラートがかかっていないけど、時間経過するとビブラートがかかってくるサウンド」はどうでしょうか? この場合は、EnvelopeとLFOを組み合わせることで、ビブラートの開始タイミングを調整できます。段々楽しくなってきましたね!
Envelopeをもう1つ起動して、今度はDelayを「150ms」、Attackを「250ms」くらいにします。0%の区間が150ms続き、その後250msかけて100%まで上がっていくエンベロープですね。
次に、先ほど作ったビブラート用のLFOを少し細工しましょう。LFOの右側に、灰色のものがすごい勢いで上下しているゲージみたいなものがあると思うのですが、このゲージ上下の白線を中央にドラッグし、振幅を「0」にしましょう。すると、この「LFOの振幅」を0にすることができます。こういう細かいところが便利なんすよ、phase plant。
振幅が無事「0」になったら、ビブラートも無事消えていますよね。そこでさっき新しく作ったEnvelopeの「⊕」マークから、この振幅ゲージに連動させて、「+100%」に設定して完了です! 早速、音を出してみましょう……どうでしょうか、ビブラートがゆっくりかかってくる感じがわかりますか?
ショートタイムディレイとかかけてもいいよね
今回は最後に、画面右側にあるエフェクト部分の紹介をして終わろうと思います。
例えばゲームボーイっぽい音なら、ショートディレイを組み合わせるとちょっと凝った音になりますよね。それではDelay(※Delayは2021年3月現在無料! 他にも3-Band EQ、Chorus、Limiter、Stereoなどが無料)を右側のエフェクト部分にインサートしてみましょう。すると発音される音にディレイ(やまびこみたいな音)が付与されていますよね?
こんな感じで phase plant では Kilohearts のエフェクトプラグイン全種(マジで全部)をエフェクト部分に使うことができ、無限のカスタマイズ性を秘めています。すご過ぎる。どんなテクノロジーだ。ほんとに全部読めるのでマルチエフェクターラックを組めます。
今回はゲームボーイっぽい音ということで、Feedbackを「0」(つまり2回目以降反響しないということ)、Duckを「100%」(音が入力されている時に完全にディレイが消えるようにします。すると単音っぽさ、ローファイっぽさが出て良い)に設定します。そうするとゲームボーイ特有のチープな疑似ディレイのあの感じが出来ました!
まとめ
というわけで、第1回は phase plant の基本的な使い方と、「イチからゲームボーイサウンドを作る方法」を紹介させてもらいました。こんな風に、いろんなエフェクトを組み合わせたり(今後紹介していこうと思います)、この他にも多くのモジュレーション方法や機能(今後紹介していこうと思います)を組み合わせたりして、音を作っていくことができるソフトシンセです。音を作る、プログラム/プログラミングが好きな方には特にオススメ!
次回は、今回紹介できなかったエフェクト部分を紹介していこうと思います。お楽しみに!
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かめりあ / Camellia / 大箭マサヤ (not カメリア)
作曲家、編曲家、および作詞家。
1992年生。2003年、弱冠10歳から母親のPCでDTMを始める。 電波ソングやポップミュージック、ロック・メタル、EDM、ハードコア、ジャズ、民族音楽、ラテンなどの広い音楽ジャンルを制作、 インスト・歌ものを問わず、クラブミュージック、VOCALOID楽曲、東方アレンジ、リミックス、ゲームBGM等を広範囲に手がける。
音楽ゲーム「SOUND VOLTEX」で行われた公募にて楽曲を複数曲収録され、とくに同ゲーム内で行われたKAC(KONAMI Arcade Championship)2013オリジナル楽曲コンテストでは最優秀賞を獲得。
またbeatmania IIDXシリーズなどで活躍するクリエイターが多数所属している「beatnation RHYZE」にメンバーとして参加し、REFLEC BEATシリーズやBeatmania IIDXシリーズ、jubeatシリーズ等に楽曲を提供している。
2014~17年には上記beatnation RHYZEのメンバーとして、さいたまスーパーアリーナ、ZEPP Divercity、豊洲PIT等にてDJ出演を行った。
2016年には人気ボーカリストkradnessとのユニット「Quarks」を結成、5月にはワンマンライブを行うなど活動の幅を広げつつ、 7月には自身初となるメジャーソロアルバム「MEGANTO METEOR」をリリース。
2017年には継続してBEMANIシリーズに楽曲提供を行いながら、「プリパラ」シリーズの楽曲のリミックス提供を行った。
男性ボーカロイド「VY2V3」公式デモソングの制作、「蒼姫ラピス生誕祭」でのDJ出演、「初音ミクのミクミクメイクミク」にてED楽曲を提供するなど、ボカロPとしても活動が多く、 VOCALOID楽曲としては「システマティック・ラヴ」「Fly to night, tonight」「ココロの質量」など、エレクトロ~ダブステップ系の楽曲を主に投稿し人気となっている。