「ミキシング・コンソール的発想でサウンドメイクが可能な小型プリアンプ」粟澤博幸氏
エレクトリック・アコースティック・プレイヤーには根強い人気を持つBINGOアンプで知られるAERから、BINGOのプリアンプ部を独立させ、ミキシング・コンソールの機能も合わせ持たせたモデル、dual mix 2が登場した。今回2台のエレアコを使ってギタリスト粟澤博幸氏がその可能性を探った
【Checker】
粟澤博幸(あわざわ・ひろゆき)
ライヴを中心として演奏活動しているギタリスト。多くのベース、ピアノ・プレイヤーとデュオ、トリオで共演している。ジム・ホール(g)やジャズ・ギターに関する研究、さらにダキストをはじめとするアーチトップ・ギター解説の著作が多数あり、最近は、若い世代に対して独自の方法論によるレッスンを展開している。
本機は、よくあるコンパクト・エフェクターふたつ程度の大きさでギター・ケースに入れて持ち運べるサイズだ。ただし電池駆動ではなく、ACアダプター仕様なのでその点の注意が必要。なお、このモデルの電源は24V仕様なので、安定した余裕のある動作が期待できる。
入力端子類は前端に、出力は後端にとスッキリまとめられていてわかりやすい。2チャンネルのいずれの入力ジャックもBINGOでもおなじみの、標準フォーン・ジャック/キャノン・コネクターの両方が使用できるコンビネーション・タイプになっている。また、キャノン・コネクターを使用したマイクロフォン入力時には、24Vのファンタム電源を供給する事も可能になっており、さらにCH1とCH2の出力は個別に出すこともできるようになっている。他にもDI出力やAUXインなど多彩な入出力端子を装備していて、ちょっとしたミキシング・コンソールとしての使用を想定していることがそこからも見て取れる。
アコースティック・ギター用のプリアンプとしての部分に目を向けてみると、ヴォリュームにトレブル/ベースのトーン・コントロール、それと4種の内蔵エフェクターとシンプルな構成だ。トーン・コントロールは、ハイが10kHz、ローは100kHzをセンターとしての増減となっているが、変化させた時に変なクセがつくことはない素直な特性という印象である。積極的に音色作りする方向性ではなく、低音高音のバランスをストレートに調整することを狙っている印象を受けた。だから、基本的な音色は後ろにつなぐギター・アンプの側であらかじめしっかりセッティングしておいて、dual mix 2では使用する楽器間のバランスを取ったり、ピックアップ出力とマイクロフォンで拾った生音とのミックス具合の調整をするといった役割を担わせるのが良いだろう。
CH2の方には「hp filter」という50〜300Hzの範囲で可変するハイパス・フィルターも装備されている。不要なローのカットやハウリング対策に使えるわけだが、トーン・コントロールの方のベースをある程度上げておいて、このハイパス・フィルターであるところから下の低音をカットするようにしてみると、ミドル・コントロールをいじったような効果も得ることができた。その点では、CH1よりも音作りの幅は広いかもしれない。
内蔵されたエフェクターとしては4つの効果(リヴァーブ2種、ディレイ、コーラス)が用意されていて、その中から選んだエフェクトをCH1とCH2にバランスを変えて同時に掛けることができる。このあたりもミキシング・コンソール的発想で面白い。リヴァーブのひとつは、通常のロング・リヴァーブで、もうひとつは原音から遅れて掛かるプリ・ディレイ・タイプのショート・リヴァーブになっている。コーラスは通常のコンパクト・エフェクターのものに比べると掛かりは軽くアコースティック・ギター用という印象が強い。ちなみに、エレアコ以外にふつうのエレクトリック・タイプも試してみたが、このプリアンプはやはりエレアコの特性により向いているのではないかと感じた。
このdual mix 2の特徴を活かした使用場面としては、ピエゾやマグネット・タイプなどの性格の異なる2台のギターを使用する場合や、1台のギターでピックアップ出力とマイクロフォン採音を自分で調整してミックス・アウトしたいケースなどが挙げられるだろう。もちろん弾き語り用のギターとヴォーカルの出力コントロールとしてや、AUXインを使って録音素材やマイナスワンを鳴らしながらのパフォーマンスや練習にもいいだろう
BINGOアンプを使ったことがあれば取り扱いにもすぐ慣れるだろうし、エレアコのピエゾ/生音のバランスをステージ上で自分自身の手で納得いくようにセットアップしたいという場合に、このプリアンプはそのコンパクトなボディも含めて使いやすいものだろう。
アコースティック・アンプ「COMPACT 60(通称・BINGO)」のプリアンプ部を独立させた2CH仕様プリアンプ「dual mix」のアップデート・モデル。楽器やライン入力、マイク信号を扱え、超小型ミキサー的な活用が可能。新機能として、ハイパスフィルターを搭載し、ミックスアウト/独立アウトの選択も可能に。アンプチャンネルの拡張、PA用プリアンプ/DIボックス、練習用ヘッドフォン・アンプなど活用範囲は幅広い。
【SPEC】
●フロント入出力:CH1 Input、CH2 Input、AUX Input、Phone Output ●リア入出力:Line Output(CH1/CH2)、DI Output、Foot Switch(TRSフォーン)、DC Input(24Vセンター+) ●コントロール(トップ):Gain(CH1/2)、2 Band EQ(CH1/2)、Level(efx)、Pan、Select(ロング・リヴァーブ/ショート・リヴァーブ/リピート・ディレイ/コーラス)、Level(aux)、Master、hp filter、frequency ●コントロール(リア):24V phantom power、level ●電源:24VDCパワー・サプライ付属(消費電力:5W) ●サイズ:65(H)×105(W)×135(D)mm ●重量:540g