Volt Max であれば、トラックにクラシックなコンプレッションをかつてないほど簡単に加えられます。
コンプレッションは、音楽制作において重要なツールのひとつです。しかし、具体的にミックスにどのような効果をもたらすのでしょうか? また、なぜ 1176 や LA-2A といったコンプレッサーはこれほどまでに有名なのでしょうか?
本記事では、オーディオ・コンプレッションの基礎知識、UA 1176 と Teletronix LA-2A が業界標準となった理由、そして新しい Volt Max USB オーディオ・インターフェイスによって、これらの伝説的なスタジオ機器のサウンドをどのように使っていくかを解説します。

コンプレッサーの仕組み
コンプレッサーは、録音された音声のダイナミックレンジ(最も小さな音と最も大きな音の幅)を狭めます。コンプレッションを活用して最大レベルを制御しつつ平均音量を高く保つことで、トラックをより洗練された印象に仕上げることができます。
具体的には、ささやきほどの声から絶叫するようなボーカルの楽曲であっても、ヴァースで音が埋もれたりコーラスで音が割れたりすることを防ぎます。また、ドラムの打感を力強くしつつ音量自体は抑えたり、ベースの演奏を均一に整えたり、ファンキーなギター・パートをミックスの中で際立たせたり、といった効果も得られます。
1176 と LA-2A の素晴らしさ
1968年、FET コンプレッサー 1176 が登場しました。これは、ゲイン・コントロールにチューブではなくトランジスタを採用するタイプです。1176 は当時どのコンプレッサーよりも反応が速く、最速設定時のアタックタイムは20マイクロ秒という、前例のない数値を実現していました。コンプレッションをバイパスした状態で信号を通過させた場合でもその増幅回路やトランスを通ることによって音質は明らかに向上し、特に強くドライブさせた際には豊かなグリット感やパンチをもたらしました。


LA-2A と 1176 は、6年の間隔を置いてリリースされました。両者では、全く異なる回路設計が採用されています。LA-2A は光に反応するオプティカル・セルを使用、一方の 1176 は電圧に反応するトランジスタを使用しています。そのため、LA-2A は動作がゆるやかでソースに対して寛容な特性を持つのに対し、1176 は高速かつパンチーなサウンドを生み出します。
コンプレッサーによっては、まるで生命力が絞り出されてしまったかのように聞こえるものもある。でも、1176 はボーカルに命を吹き込んでくれるんだ。
─ Spike Stent (Beyoncé)
1176 と LA-2A を組み合わせたボーカル・チェーンの構築
生のボーカル録音は、音量や質感が一定ではないことがよくあります。ヴァースでは音が小さすぎたり、コーラスでは大きすぎたり、特定の言葉が耳障りだったり、あるいは他の楽器に埋もれてしまったりすることもあります。1176 の後に LA-2A を接続するという構成は、何十年にもわたってプロのエンジニアに愛用されてきたひとつの定番レシピとなっています。
まず 1176 を通すのは、その素早い反応で、ピークが手に負えなくなる前に捉えるためです。レシオを 4:1 または 8:1 に設定すれば、演奏のニュアンスを損なうことなく最も大きな音量部分だけを的確に抑え込み、即座にピークをコントロールできます。
続いて LA-2A を通すことでチューブ特有のあたたかさと質感が加わり、ビロードのように滑らかで穏やかなリミッティング効果が得られます。結果、存在感がありながらも自然な響きのボーカルとなり、ミックスにも非常に馴染みやすくなります。この定番コンビネーションは、ボーカルだけでなく、ベース、ギター、ドラムなどにも同様に効果的です。
録音段階でコンプレッションを活用する
録音の段階でサウンドをコミットさせることは、決断を促し、勢いを生み出し、パフォーマンスにおけるインスピレーションの源となったサウンドそのものを捉えることにつながります。プロデューサーの Jacquire King (Kings of Leon、Tom Waits) は、「優柔不断さは素晴らしい芸術を殺してしまう。」と語り、「創造的な観点から言えば、確たる決断を下し、それを推し進めていく方が良い結果を生み出すんだ。」と述べています。
一方で、録音時にはコミットせず、後から雰囲気や色付けを加えるという選択肢もあります。一度プリントしてしまうと、そこで固定されてしまうからです。
しかし、Volt Max ならそのどちらかを選ぶ必要はありません。Max プロセッシングをオフにして「フラット」な状態でクリーンに録音し、後から処理を行うことも可能ですし、6種類のプリセットのいずれかを選び、録音の段階で 1176 や LA-2A のキャラクターを付加することも可能です。
また、例えば、ボーカル録音で定番の「1176からLA-2Aへ」というレシピも再現できます。すべての Volt モデルには 1176 と LA-2A の UAD プラグインが付属しているため、録音時には本体の Max プロセッシングを使用し、DAW 上では UAD プラグインのコンプレッサーを使用するといったことも容易に実現します。

Volt Max における最適なコンプレッションの設定
あらゆる状況に万能な設定というものは、存在しません。音楽に関することすべてに言えることですが、まずは自分の耳を頼りに判断してください。とはいえ、ここでさまざまな音源に対する Volt Max の設定に関する目安をいくつかご紹介します。
Great Vocal :
1176 のエミュレーション。定番の 8:1 設定によるボーカル・コンプレッション。
Rap Vocal :
LA-2A のエミュレーション。滑らかなリミッティングで、ボーカルを安定させます。
Album Vocal :
1176 のエミュレーション。4:1 のレシオと速めのリリース。
Electric Guitar :
1176 のエミュレーション。突発的なピークを抑えつつ、トーンを維持します。
Jangly Acoustic :
LA-2A のエミュレーション。チューブ/オプト式による深いコンプレッションと煌びやかさを得られます。
Tight Bass :
Discrete VCA のエミュレーション。トラックにしっかりとなじむ、色付けのないクリーンなサウンドを得られます。
— Darrin Fox
