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Animal Factory Amplification :「メイド・イン・インド」の矜持を世界の音楽家へアピール

音楽制作におけるニーズの高まりから、いまや世界のあちこちの国でエフェクターが作られるようになった。 日本、アメリカ、ヨーロッパ諸国、中国、南米……など、そこに新たに参入したのがインドである。 世界最多の人口を誇る彼の地の俊英がペダルに注ぎ込んだ叡智とはいかに?(The EFFECTOR BOOK Vol.より転載)

本誌初登場となるアニマル・ファクトリー・アンプリフィケーションは、インドのエフェクター・ブランド。ブランド名が示すように、もともとはアンプ製造を目指していたようだが、やがてペダル作りにシフト。今ではユーロラック・モジュールなども展開し、その製品はヨーロッパや米国にも輸出されている。それが示すように製品のクオリティは高く、その多機能性と「なるほど!」と唸らせるアイデアは、音楽が盛んな同国ならではの個性を備えるものだ。今回は同ブランドの創設者であり、代表を務めるアディティア・ナンドワ氏に話を伺った。

独自のサウンドと個性を追求したいから クローン製作の依頼は断ってきた


- ナンドワさんはどういう音楽を聴いて育ち、どういうキャリアを積んでこられたのですか?

私はもともとクラシック・ロックやヘヴィ・メタルを聴いて育ったんです。でも、その後はオルタナティヴ・ロック、インダストリアル・ミュージックやプログレ、エレクトロニック・ミュージックにも惹かれるようになり、20代に入ってからはブルース、クラシック、ポストロック、ジャズなど、あらゆる音楽を貪るように聴くようになりました。
実家はムンバイで1918年から石膏製造業を営んでいまして、それがファミリービジネスですね。私自身はドイツで臨床工学を学び、スペインで認知システムとインタラクティヴ・メディアの修士号を取得しました。つまり、音楽用電子機器を作る方向へ進む理由は、情熱以外にはほとんどなかったと言えますね(笑)。ただ、現在もアニマル・ファクトリーの運営と並行して家業も続けています。

- 社名の由来について教えてください。

私はインダストリアル・ミュージックが大好きなので、その美学を「factory」という言葉で取り入れたいと考えていました。また、「退屈なペダルじゃなく、ビースト(獣)みたいなペダルを作りたい!」とも思っていたんですよ。そこで、「beast」を「animal」に置き換えて「factory」と組み合わせた“Animal Factory”という名前を思いつきました。でも実のところ、ペダル作りはもともと単なる趣味として始めたものでして。それがビジネスになるとは全く考えていませんでしたし、まして国際的なブランドになるとは想像もしていませんでした。

- ブランドの設立当初、どういうペダル作りを目指したのでしょうか?

私は常に、独自のサウンドと個性を持つペダルを作りたいと強く思っていたんです。というのも、私がペダルを作り始めた頃、“Tube Screamer”や“Centaur”のような定番をコピーするメーカーばかりで、個性的な製品が少なかったんですよ。それに当時、インドにはペダル・ビルダーがほとんど存在していなくて、多くの顧客が私を含めた少数のビルダーに「安くクローンを作ってほしい」と求めてきたんです。私はその考えに全く共感できなかったんですよね。だから、そうした依頼は断ってきました。私にとってはその方が幸せでしたので。

- ブランドの第1号機は、“Chemical Burn”というモデルだったと聞いています。これはどういうエフェクターだったんでしょうか?

AN:私はあらゆるエフェクトの中でファズが最も好きなんです。なので、“Chemical Burn”はシンエイの“SuperFuzz”へのオマージュとして作りました。ただし、私はオリジナルを弾いた経験が全くなかったので、ヴィンテージ感は薄く、より攻撃的でモダンなサウンドになったんです。それでもこのペダルはとても好評で、特に私のお気に入りであるアメリカ人ギタリスト、デヴィッド・トーンから高く評価してもらえました。

▲アディティア・ナンドワ氏

アメリカやヨーロッパのブランド以上に 革新的で高品質なものを作りたい


- “Ozymandias”は2つのチャンネルを持ち、多彩で多機能な歪み系ペダルに仕上がっていますね。

右チャンネルはハイゲインでアッパー・ミッドが強く、左チャンネルはより太く、低域寄りです。さらに、ヘッドルームを確保するための昇圧回路を追加しました。コア回路はマーシャルの“BluesBreaker”を参考にしていますが、特定のサウンドを狙ったわけではなく、私は真空管アンプをオーヴァードライヴさせたようなサウンドを追い求めていたんです。ハイゲインですが、ヘヴィ・メタルではなくハード・ロック寄り。荒々しく洗練されていないものの、どこか威厳のあるサウンドに仕上がりましたね。

- “Dirty Mirror”は、ファズとしては珍しい2チャンネル仕様が面白いと感じます。 

“BURN”チャンネル(左)は “SuperFuzz”系である“Chemical Burn”の流れを汲んでいるので非常にゲート感が強く、チェーンソーのようなサウンドです。一方、“CHURN”チャンネル(右)は“Big Muff”を参考にしました。なので、より豊かな倍音とサステインを持ち、中域を押し出すこともできます。“Big Muff”は、私がペダルを作り始めた頃に最も多く触れた回路で、個人的に最も好きな歪み系ペダルなんですよ。ただ両チャンネルとも非常に独自性が高く、他にないサウンドを目指しました。ファズ回路の前にデジタル・ディレイを搭載してあるのも特長です。これによりシューゲイズ的な“ウォッシュアウト感”のある大きな音像が作れて、クリーンなままでディレイ・タイムだけを変調させることにより、ピッチシフトからコーラス的な揺らぎまで、非常に多彩なサウンドを生み出せるんですよ。 

- ベース用ディストーションである“Godeater+”についても教えてください。 

これはブランドのベストセラーである“Godeater”の第3世代モデルです。ベース・ディストーションの限界をもっと押し広げたかったんです。よりダイナミクスに反応し、より多彩なサウンドを生み出せて、息づくようなディストーションを目指しました。これはベースだけではなく、ギター、ドラムマシンやモジュラー・シンセなど、あらゆる楽器に使うことも可能です。 

- では最後に聞かせてください。今後、どういうブランドになっていきたいと考えていますか? 

私は“アイデンティティ主義”ではありませんが、アニマル・ファクトリーを始めた際の目標の1つは、「インドのペダル・メーカーでも、アメリカやヨーロッパのブランドと同等、あるいはそれ以上にオリジナルで革新的で高品質なものを作れること」を証明することでした。そして時間をかけて、それを実証できたと感じています。今後は、「インドの“音”に対する考え方そのものを変えるブランド」になりたいと思っています。そして、人々がもっと大胆に、もっと実験的に“音”に挑むきっかけとなる存在になれれば良いですね。

[ 試奏レビュー ]Ozymandias[ Overdrive/Distortion ]


個性の異なる2つのドライヴ回路の掛け合わせであらゆるニーズに対応

2つの異なるヴォイシングを持つドライヴ回路を備え、パラレル/シリーズ接続を選択できる上、個別のイン/アウトを搭載。左チャンネルがオーヴァードライヴ的、右がディストーション的なキャラクターで、両方とも基本の音質が良いだけではなく、それぞれに3種のクリッピング切り替えスイッチ、低域を2段階で増幅させるスイッチが搭載されているため、非常に多彩な響きを生み出せる。入力&出力バッファのオン・オフが付いているのもノイズ対策や他機材とのインピーダンス・マッチに有効だ。また、内部で±12Vに昇圧してヘッドルームを稼いでいるので広いレンジを誇る。よくこれだけの機能とアイデアを詰め込めたものだと驚かされてしまうモデルだ。

①Controls
2チャンネルの各機能のノブ/スイッチが左右対称に配されている上、シンメトリーな意匠の採用もあり、まるで曼荼羅のように見える。ナンドワ氏は曼荼羅を意識したものではないと言うが、インド的なものを感じさせる。
②Mini-Switch
これらのミニ・スイッチがクリッピング切り替え、バッファのオン/オフ、低音の増強を担う。
③Back View
チャンネルごとの入出力に加え、MIDI用端子も用意。

[Specifications]
●コントロール:Gain×2 、Tone×2、Volume×2  ●スイッチ:Crook、Flail、Rule/Conquer×2、Grind/Grit×2、Input Buffer、Output Buffer、 ●端子:Flail Channel Input、Flail Channel Output、Crook Channel Input、Crook Channel Output、MIDI、USB-C ●サイズ:140.5mm(W)×120.5mm(D)×45mm(H) ●電源:9-12VDC

[ 試奏レビュー ]Dirty Mirror [ Fuzz ] 


ユーロラック・モジュールのコアをペダル・フォーミュラに移植

2チャンネルを擁するファズというだけでも珍しいが、その前段にデジタル・ディレイを搭載。しかもそこにLFOとエンヴェロープが加えられているので、アンビエント、シューゲイザー、サイケデリック、ノイズ・ロックなど様々なジャンルに対応する。ファズ部分は、左チャンネルが “SuperFuzz”系、右チャンネルが“Big Muff”系だが、クローン嫌いなナンドワ氏らしく、どちらも独自の解釈で個性的な響きを練り上げているそうだ。氏は「このモデルにはマッドハニーの名盤 『Superfuzz Bigmuff』へのオマージュもほんの少し込められている」と説明していて、それがこのモデルを端的に表していると言えるだろう(“ほんの少し”ではないかもしれない気がする)。 

①Controls
シンメトリーなノブ/スイッチ配置と筐体デザインは、“Ozymandias”よりも宇宙的なイメージを思わせる。この中央のセクションで、LFO、エンヴェロープの設定を細かく施せて、非常に多彩な音作り(音遊び)が可能だ。
②Output
ミニ・ジャックから、他のペダルやモジュラー・シンセにLFO、エンヴェロープ信号を送り出すこともできる。
③Back View
通常のイン/アウトのほかに、CV入力端子、AUX端子、MIDI端子などを搭載。

[Specifications]
●コントロール:Delay Time、Delay Blend、In、Out、Env Sens、Env Depth、LFO Depth、LFO Rate [Dirty]Clip、Tone、Fuzz-、Level [Mirror]Mids、Tone、Fuzz、-Level  ●スイッチ:Bypass、Burn ON/OFF、Churn ON/OFF、Input Gain、Env Decay、LFO Shape ●端子:Input、CV In、Aux、Output、MIDI、USB-C、LFO Out、Env Out ●サイズ:140.5mm(W)×120.5mm(D)×45mm(H) ●電源:9-12VDC

[ 試奏レビュー ]Godeater+[ Bass Distortion ]


ギター、ベース、シンセサイザー、ドラムマシンにも対応可能な重低音デヴァイス

攻めた音作りを標榜するベーシストにお勧めしたいベース用ディストーション・ペダル。もちろんギターで使っても面白いし、ドラムマシンやモジュラー・シンセでの使用も前提に設計されている。外部からのオーディオ信号やCV信号を利用して多彩なサウンドを作り出す“フィルター・キード・サイドチェイン”機能、クリーンな低域と歪んだ高域(その逆も)をミックスできる“アドヴァンスド・クロスオーヴァー・モード”など、コントロール系の機能が充実しているので、“Dirty Mirror”と同じように通常の歪みサウンドのみならず、様々な音色を操れるクリエイティヴなデヴァイスに仕上がっている。内部での24V昇圧など、基本性能の高さも抜群。
 

①Back View
リア・パネルには、メインの入出力端子の他に、SC入力端子、AUX出力端子、MIDI用端子などが並ぶ。
②Side View
左サイド・パネルでは出力形式の選択ができるようになっていて、これが①の出力端子と連動する。
③Side View
右サイド・パネルでは、サイドチェイン・フィルターの反応を選択。またサイドチェイン用信号の入力タイプが選べるようになっていて、選択した入力タイプが①のSC入力端子と連動。

[Specifications]
●コントロール:Gain、Pregain、Cutoff、Clip1、Clip 2、Dirty、Bass、Clean、Freq、Sens、Decay ●スイッチ:Bypass、Sidechain、Direction(Hold Xover)、Target(Swap LP/MP)、Balanced Output、Output Config、Sidechain Input Type、Sidechain Filter ●端子:Main In、Main Out、MIDI、SC In、Aux Out、USB-C、Env Out ●サイズ:140.5mm(W)×120.5mm(D)×45mm(H) ●電源:9-12VDC

取材、文:細川真平 Shimpei Hosokawa

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