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Universal Audio : 5分で知る UAD プラグイン(13)dbx 160 Compressor/Limiter

今回は数々の名盤で、ドラムやベースの音作りの要として愛されてきた伝説の名機、dbx 160 の UAD プラグイン版について解説します。音楽制作をしている方なら、一度はその独特なルックスを目にしたことがあるのではないでしょうか?

音楽的でアグレッシブなコンプレッション


1970年代に登場した dbx 160(通称:160VU)は、VCA(Voltage Controlled Amplifier)回路を採用したコンプレッサーの先駆けです。

最大の特徴は、ハードニーと呼ばれる非常に音楽的でアグレッシブな圧縮特性。音がしきい値を越えた瞬間にガツンと叩くその質感は、特に立ち上がりの速い楽器(ドラムのキックやスネア、ベース)に魔法のようなパンチを与えてくれます。

3つのメインノブをマスターしよう


dbx 160 の操作系は非常にシンプルです。基本はこの3つのノブを調整するだけ!

スレッショルド
コンプレッサーがいつ作動するかを決めます。右に回すとしきい値が下がり、より多くの音にコンプレッサーがかかるようになります。dbx 160 はここを深く設定した時の「グシャッ」とした潰れ方が非常にかっこいいのが特徴です。

コンプレッション
圧縮率(比率)を決めます。「1:1(かからない)」から「∞:1(リミッター)」まで無段階で設定可能。ドラムなら2:1〜4:1程度で躍動感を出し、ベースなら少し高めに設定して音の粒立ちを揃えるのが王道です。

アウトプット
圧縮によって下がった音量を補正する最終的なボリュームです。

スレッショルドの LED と mV の秘密


dbx 160 には、一般的なコンプレッサーにはないユニークな表示や単位があります。ここをマスターすれば、あなたも 160 使いの仲間入りです。

信号の状態を一瞬で判断できる BELOW と ABOVE

スレッショルドノブの上にある2つのLED。これは今、音がコンプレッサーに対してどのような状態にあるかを示しています。

BELOW
入力音が設定したスレッショルドを下回っている状態。つまり、まだコンプレッサーがかかっていないことを示します。

ABOVE
入力音がスレッショルドを超えた状態。つまり、今コンプレッサーが作動していることを示します。

dbx 160 はハードニー特性のため、このランプが ABOVE に切り替わった瞬間にガツンと圧縮が始まります。ドラムのスネアなどで、アタックの瞬間だけが赤く光るように調整するのが、パンチを出すコツです。

なぜ単位が dB じゃないの? MV(ミリボルト)の正体

一般的なコンプレッサーのスレッショルドは「-20dB」のようにdB(デシベル)で表記されますが、dbx 160 は MV(ミリボルト)という電圧の単位が使われています。 1MV1/1000Vのことです。オリジナルの dbx 160 が開発された1970年代、この機材は入力された電圧に対して忠実に反応する VCA 回路を売りにしていました。そのため、音量という曖昧な指標ではなく、電気信号としての電圧をそのままパネルに記載したのです。デジタルに慣れていると戸惑いますが、基準を覚えてしまえば簡単です。

10MV側(左)
スレッショルドが非常に低い状態。小さな音でもすぐにコンプレッサーがかかります。

3MV側(右)
スレッショルドが非常に高い状態。相当大きな音が入らない限りかかりません。

プロの現場でよく使われる基準の0dBuは、電圧に直すと約775MVです。つまり、ノブを真ん中より少し右に回したあたりが、現代のミキシングにおける「標準的な入り口」の目安になります。

UAD 版だけの現代的な追加機能


実機にはなかった、デジタルならではの便利な機能が追加されています。ここが使いこなしのポイントです。

MIXノブ
原音とコンプレッションされた音を混ぜることができます。いわゆる「パラレル・コンプレッション」がこれ一つで完結!バキバキに潰した音を薄く原音に混ぜることで、芯を残しつつ迫力を出せます。

サイドチェイン・フィルター(PULL/SC)
低域をカットしてからコンプレッサーを反応させることができます。「キックの低音に反応しすぎて音が沈んでしまう」という悩みを解消してくれます。

プロの隠し味!楽器別おすすめセッティング


ドラム=スレッショルド深め、比率4:1
スネアにかけると、アタックが強調されて「パコーン!」という気持ちの良い抜け感が生まれます。

ベース=比率3:1〜6:1
指弾きやスラップの音量差を均一にしつつ、音を前に押し出します。VCA 特有のタイトな低域が手に入ります。

ギターのカッティング=比率2:1
クリーンギターにかけると、リズムの粒が揃い、ファンキーなグルーヴが際立ちます。

シンプルこそ最強の武器


dbx 160 は単体での購入も可能ですが、最新のオーディオインターフェイス Apollo X Gen 2 シリーズの、プロ仕様のプラグインが豊富にバンドルされた Studio+ Edition には、dbx 160 が最初から付属しています。手に入れたその日から、世界中のスタジオで使われている「あの音」を自分のシステムに取り入れることが可能です。

dbx 160 は、複雑な設定を必要とせず、直感的に良い音にたどり着ける素晴らしいツールです。「なんだか音がボヤけているな」「ドラムにもっとパワーが欲しい」と思ったら、迷わずこのプラグインを挿してみてください。きっと、あの伝説のパンチのあるサウンドがあなたの楽曲に命を吹き込んでくれるはずです。

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