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Softube : マスタリングエンジニア直伝 Weiss プラグイン活用術③ Console 1 編

こんにちは。Studio MASS 水野です。前回に引き続き、Softube Weiss プラグインのレビューを行っていきます。繰り返しになりますが、今回の記事は普段マスタリングを専門に行っている人が書いたものであるとご承知頂ければ幸いです!

さて、第1回では単体トラックに対して Weiss EQ MPWeiss Compressor/LimiterWeiss Exciter を使用してきました。これらはある程度のCPUであればトラック単体に使える程度に負荷が軽いとはいえ、元の設計思想はグループバス以降に向けたもの。しかしもし、このクオリティの処理をよりミキシング向けに、もっと素早く直感的に可能なら...?

それを実現してくれるプラグインこそが Weiss Gambit Series for Console 1 です。

Weiss Gambit Series for Console 1 は、Softube のハイブリッド・ミキシング・エコシステム Console 1 専用のアドオンであり、 Weiss DS1-MK3 Weiss EQ1 の中核をなすプロセッシング要素が1つのチャンネルストリップに統合されています。

Weiss Gambit Series for Console 1 の特徴


Weiss Gambit Series for Console 1
▲Weiss Gambit Series for Console 1

Weiss Gambit Series for Console 1 の大きな特徴は、Weiss EQ1、Weiss DS1-MK3 のアルゴリズム由来のクリーンでスムースな出音と、基となった機種がデジタルだからこそ可能な細かな処理です。Console 1 用のストリップとしては、このような倍音などのいわゆる“色付け”の無いものは珍しく、DRIVEセクションも歪みではなくリミッターとなっています。

処理の細かさで最もわかりやすいのはEQのQ幅で、他のストリップの場合、Q幅が最高6〜7ほどであるのに対し、Weiss では脅威の650(!)まで可変域が存在します。

また、他の Weiss プラグインに無い要素として、ゲート部分に配置されたスレッショルド以下コンプレッション/エキスパンダーがあり、これはデフォルト設定(Softモード)時に通常のゲートやアップワードコンプより滑らかな音量変化をもたらします。

以上が主な特徴です。それでは、このシステムがプロセスにもたらす変化を見ていきましょう!

ファーストインプレッション


今回はドラムのパラトラックに Console 1 Channel Mk III を使用していきます。

Console 1 Channel MK III
▲Console 1 Channel MK III

補足ですが、筆者は外部コントローラは普段 StreamDeck しか使用しておらず、Console 1 を使用するのは今回が初めてです。これまでいくつかのMIDIフェーダーやノブの付いたものを経験しましたが、どれも設定の手間や数値の飛び幅、時間軸の書き込みタイミングの荒さなどによって定着することなく手放してしまいました。そのあたりも含め、どのような感触が得られるか楽しみです。

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▲ドラムバスへのEQ。素直以上のクオリティの高さを感じる出音

結論から言うと、Console 1 での作業は想像を大幅に超えた素晴らしいものでした。これまでの第1回、第2回で行ってきたようなことが、直感を妨げることなく圧倒的な効率を持って可能になるのです。操作感の心配をする余地など、全くありませんでした。

これは Weiss Gambit Series for Console 1 ではなく Console 1 そのものの評価になってしまいますが、Console 1 プラグインさえ各トラックにインサートしてしまえば、トラックの選択〜ミュート/ソロ、センドやフェーダーまで、DAWの画面を介することなく操作できます。ドラム全体を聴きながら個々のトラックを触るプロセスが驚くほどスムーズに進んだ結果、音作りも意思決定も早く、当初の目標を見失うことなくドラム全体の音作りが完了しました。

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▲マウスでは決してしないような処理もあり、後で振り返るとそれがなかなか合理的だったりする

デフォルトモジュールの特色


特に役立った機能のひとつが、画面左のShapeセクションの、エクスパンダーとしての機能です。ゲートのように被りを除去するに留まらず、キックやスネアなどのサスティンを整形し、より眼前に配置することに成功しました。

Shapeセクション
▲Shapeセクション

EQに関しては、アナログエミュレーション系EQでは難しい、細いQを用いての余分なレゾナンスの削減も Weiss Gambit Series for Console 1 のEQならお手のもの。

EQ
▲EQセクション

コンプ部分で特に良かったのがオートゲイン機能。オートゲインの中には耳で聴く音量感との辻褄が合わないものもそれなりに存在しますが、Console 1 のオートゲインは非常に自然に機能しました。この機能のお陰で、音量に惑わされることなくエンベロープ変化に集中することができます。出音の変化もまるで波形に直接触っているかのように滑らかです。

Comp
▲Compセクション

リミッターは今回の音作りには使用しませんでしたが、試しにドラムバスに強めに当ててみたところ、DS1 タイプでは予想外に“アナログ”な、まるでトークバックリミッターのような質感が得られ、音色として使い所がありそうだと感じました。Type1、Type2ではほぼクリアなまま3〜5dBほどのピーク削減が可能でした。

Limiter
▲Limiterセクション
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▲全部盛り例。流石にこんなに使わないと思う。オーバープロセスに注意!

その他 Weiss モジュールのカスタマイズ性


さて、上記の基本的な機能だけでも充分すぎるほどミキシングに貢献でき、マウスのみでのワークフローに比べてその結果は特筆に値するものでしたが、実はこれだけではありません。デフォルトでShape、EQ、Comp、Limiterとなっている各モジュールを、別のものに変更できるのです。

その内容は、Weiss Exciter、Weiss EQ1、Weiss EQ MP、Weiss Deess、Weiss Compressor/Limiter、Weiss MM-1まで…つまり、これまでご紹介してきた Weiss プラグインの全て! さらに、これらを各モジュールの第1、第2プラグインと2種類読み込ませ、全て同時に動作させることが可能なんです(Console 1 内で使用するためには単体プラグインを所有している必要があります)。

この機能を知った時、流石にやりすぎなのでは?と驚きました。最初は「これで Weiss Exciter も入れられたら革命だな〜」などと考えていたからです。もちろんShape1に割り当てたモジュールとShape2のモジュールをシグナルチェインの別々の位置に置くことも可能。

それぞれ一部の機能が制限されていますが、それすら Console 1 を用いたミックスワークフローにとっては、むしろ余計な思考を削ぎ落とし判断力を上げる武器となり得るでしょう。

リミッター部のレイテンシについて


注意点として、レコーディングなどのレイテンシーを嫌うシチュエーションでは、レイテンシーの無い他の Console 1 ストリップと異なり工夫が必要です。

デフォルトで最後段に入っているリミッターモジュールが大きなレイテンシー源となっており、この部分を別のシリーズのものに変えれば回避できるようです。変えた上でOFFにしておけば音への影響も無いでしょう。

まとめ


以上が主なレビューになりますが、改めて、Weiss と Console 1 が産む相乗効果に圧倒されました。ミキシングは専門ではないですが、正直自分用に欲しいくらいです。

再度 Console 1 本体の感想になってしまいますが、パラメーターを保ったまま他のシリーズのストリップに変えられるのも魅力的です。本体の画面も充分な情報量を持つので、例えば新しいトラックに自動で Console 1 がインサートされる設定をすれば、画面を見ず、マウスもキーボードも触らない、アナログ時代と同じような流れを完成できるでしょう。

しかもアナログと違って、undo/redoがある! A〜D比較ボタンがある! 実時間バウンスが無い!

Console 1 Channel Mk III はコントローラーとして比較的大きな部類ですが、これだけインタラクティブかつ効率的な環境をもたらすものとしては、このコンパクトさは希少なのではないでしょうか?

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感想


筆者は職業柄か、ミキシングにおけるいわゆる“創造的”な方向の音作りは苦手な部類でしたが、Console 1 を触って初めて、頭を空にして音作りに夢中になる感覚を得ました。打算的なバランシングは Console 1 外で行うなど、使い分けることで、実際の作業で最も難しい要素のひとつである、脳のモード切り替えが簡単に可能になりそうです。

本当に大事なポイントを感じ/考えながら音だけと向き合う…これまでそうありたいと思っていたところに、Console 1 と Weiss が手を差し伸べてくれる。触って数時間でそんな印象を受けたので、Console 1 × Weiss に慣れたのなら、ほとんどの作業がこれまでよりずっと自由に、これまでの何倍ものスピードで進められるのではないでしょうか。

終わりに


さて、ここまで3回に渡って Weiss プラグインをご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?

特に Console 1 に関してはワークフローに与える変化が絶大で、Console 1 ファミリーに Weiss が並んでいるからこそ、アナログフィールに特にこだわりがない方にとっても Console 1 の導入メリットが充分にある...ということを知っていただけたのではないかなと思います。Console 1 をすでに持っている方に関しても、ここまで読んでいただければ Weiss Gambit Series for Console 1 を導入するための充分な検討材料になったのではないでしょうか。いずれにせよ、個人的には革命的なシステムでした。

購入に関してのご相談があれば私個人宛でも構いませんし、Hookup さんも喜んで相談に乗ってくださると思いますので是非お声をおかけください! では、ここまで読んでくださってありがとうございました。

またどこかでお会いしましょう!

今回レビュー掲載の機会をくださった Hookup さん、Weiss のレビューは水野が向いているのではないかとご提案くださり、内容の精査をしてくださった StudioMASS のボス 諸石政興さん、この場をお借りして感謝いたします。

ありがとうございました。

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水野壮志

1993年 京都生まれ、静岡育ち。 幼少期よりジャニスジョプリン似の母とイングウェイマルムスティーン好きの父にピアノとギターを習わされるも、一方的に教わる事への反抗からロックへの道に目覚める。 高校卒業前後からバンド活動に没頭し、deepNowとしてYAMAHA Music Revolution 優秀賞/ フジロック/ライジングサンのルーキー枠出演、年180本ほどのライブ経験を果たす。 その後The Tateとして電子音楽制作、Qujakuとしてヨーロッパツアーなどを経験する。

同郷の崎山蒼志氏が当時組んでいたバンドKids Aを見て”今の姿を音源として残すべきだ”と強く思い、エンジニアリングを開始。 その後ライブハウス浜松Kirchherrのオーナー就任し、以降地元のミュージシャンの録音を継続的に行い地元音楽シーンを支える。 上京したことをきっかけに、自身の経験を活かしマスタリングに専念する。

3D空間としての音場のダイナミクスや解像度を制御し、空間認知度を高めるマスタリングを得意とする。
インディー/サイケ/エレクトロニック/ロック/ボカロ/VTuver/アイドル/劇伴 など幅広いジャンルを手掛けている。

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