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IK Multimedia : 鈴木 Daichi 秀行が体感した TONEX Pedal の魅力と活用法

お気に入りのアンプやキャビネット、ペダルなどのサウンドを「トーンモデル」としてキャプチャし、あらゆるトーンを足元に置ける話題のギターペダル TONEX Pedal。そのクオリティや活用のコツを、ギタリスト/音楽プロデューサーの鈴木 Daichi 秀行氏にチェックしてもらいました。

TONEX Pedal のキャプチャは確実に進化している


- TONEX Pedal を触ってみた印象は?

圧倒的にコストパフォーマンスがいいですね。同じようなコンセプトの KEMPER や QUAD CORTEX は、価格帯が20〜30万円ほどするのでなかなか手が届きませんが、TONEX Pedal は5〜6万円ですよね。内蔵エフェクトの数には差がありますけど、キャプチャの性能が劣っているという感じはしません。KEMPER も登場した時はすごかったけど、音にちょっと違和感を感じるところがあって。TONEX Pedal はそういう部分が解消されていて、確実に進化している感じがします。昨年、TONEX のソフトウェア版がリリースされた時も、すぐに使ってみて「すごいな」と思ったんですが、ライブで使うならやっぱりペダルになっている方が便利じゃないですか。とっつきやすいし、説明書を見なくても使えました。

TONEX Pedal
▲上段が TONEX Pedal、下段はオーディオインターフェイスの AXE I/O Solo

- その TONEX ソフトウェアを利用して、アンプのキャプチャなども行います。

PCを持っている人は多いから、ソフトでキャプチャできる方がかえって使いやすいかもしれません。ペダルにいろんな機能を乗せると操作が難しくなりますから。TONEX Pedal のプリセットを入れ替える作業も、TONEX ソフトウェア上でドラッグ&ドロップで簡単にできて便利です。TONEX ソフトウェアは、

トーンモデルを AmpliTube に読み込めるのがいいですね。モデリング(AmpliTube)とキャプチャ(TONEX)のどちらにも良さがあって、両方の良さを利用できます。ゼロから音作りをするならモデリングの方が幅が広いですし、本物のアンプに寄せるという意味ではキャプチャした方が圧倒的にリアルですから。僕も欲しいギターサウンドによって、アンプシミュレーター自体を変えたりします。

TONEX
▲画面上に見えるのが TONEX ソフトウェア。TONEX Pedal には最上位版ソフトの TONEX MAX が付属する

- どう使い分けていますか?

モダンなサウンド、例えばあまりダイナミクスを付けないプレイや、ライン録りが合うようなサウンドにはモデリングが向いていますが、もっとニュアンスを出したいならキャプチャの方が向いています。それに「お気に入りのアンプがあるけど、ライブに持っていくのが大変」という人は、自分のアンプをキャプチャしておけば、いつでも同じ音を使えます。ライブハウスに置いてあるアンプの状態がわからなくても、ラインだといつでも同じ音が出せるから演奏も安定しますよね。あと、アンプを使わずにラインで出すメリットは他にもあって、ステージの中音を大きくせずに済むので、モニターや出音が全体的に良くなるんですよ。ギターとベースが TONEX Pedal を使ってラインで出せば、ステージ上がかなり静かになるから、結果的にモニターや演奏もしやすくなります。

- PAに直で送るギタリストは増えつつあるのでしょうか?

そうですね。会場がある程度の大きさになると、中音が静かな方が全体的に良くなるんですよ。特にホールライブだと全員イヤモニを使うこともあり、ラインで出すギタリストが増えているので、全体的に綺麗な状態で音が出せます。小さめのライブハウスなどで、背後から迫力のある音が鳴ってほしい場合は、TONEX Pedal をアンプから鳴らしてもいいかもしれないですね。

- ゲインやトーンなど、TONEX Pedal のツマミの操作性は?

使いやすいと思います。サウンド的には、キャプチャされたトーンモデルの状態をそのままいじらないのがベストだと思いますが、全体的な微調整をするにはこういったツマミが便利です。リハでPAから音を出してみて、「もうちょっと抜けを良くしたい」とか「ちょっと膨らみ過ぎかな」と感じた時の調整用ですね。あと、ライブ中に複数のトーンモデルを切り替えるなら、キャプチャされた環境によって音質に差が出てしまうことがあるので、その差も調整しておいた方がいいと思います。そうしないと音の太さや軽さの違いが気になるかもしれません。全体のレンジ感を調整するという感じでしょうか。

TONEX Pedal
▲パネル上のツマミでサウンドの調整が行える

- エフェクトはコンプやノイズゲート、リバーブなどが内蔵されています。

実際に使う時は、TONEX Pedal の前後に好きなペダルを組み合わせると思うので、コンプやノイズゲートが入っていれば十分だと思います。ギターってペダルを組んでいく楽しさもあるじゃないですか。ペダルを集めたり、「あーでもない、こーでもない」って色々な組み合わせを楽しめますから。

- TONEX Pedal はサイズ的にもペダルボードにスッと収まりますね。

最近は単体のエフェクターでも、これくらいのサイズの製品がありますからね。

- レコーディングにも活用できますか?

ペダルの場合、アウトボードやマイクプリアンプに通すことが簡単にできるじゃないですか。僕は普段からアンプシミュレーターをプリアンプに通して音作りをするので、TONEX Pedal にはそういうことができるという利点があると思います。TONEX ソフトウェアでそのままDAWに録ってもいいけど、TONEX Pedal のラインアウトをマイクプリアンプに通すことで空気感を付けることができるし、サウンドのキャラクターが違ってきますね。同じことを TONEX ソフトウェアでやろうとすると、一度、音を外に出して、プリアンプを通して戻すみたいな作業が必要になるけど、ペダルだとシンプルにできますから。

AMEK
▲Daichi 氏は TONEX Pedal のラインアウトから出た信号を、AMEK のプリアンプに入力している

キャプチャのガイドが親切。クリーンの出来もすごくいい


- アンプのキャプチャも試しましたか?

SHINOS の ROCKET をキャプチャしてみました。マイクは SM57 を使ってクランチ系のサウンドをキャプチャしてみたら、そっくりな音が出ました。手順のガイドがすごく親切ですね。「どのインプットを使って、ギターをどうして、マイクをどのインプットに接続するか」をイラストで教えてくれて、セッティングが完了すると先に進めるようになっている。ガイドの通りにセットして、あとは処理を待つだけでOKですから。あと、KEMPER とかだと仕上げに自分でギターを弾かなきゃいけないけど、TONEX Pedal は自動で演奏してくれるのがいいですね。レスポールやストラトとか、いろんな種類のギターで弾いてくれているみたいです。

SHINOS
▲アンプは SHINOS、マイクは SM57 を使用

- 時間はどれくらいかかりましたか?

機械学習の計算量を3種類から選べるので、今回は真ん中の[Default]を選びました。10分くらいかかったかな。ちょっと待っていれば出来上がります。モデリングだと、クリーン系やクランチ系が苦手な傾向がありますが、キャプチャはクリーンがすごくいいですね。マイクプリアンプを通しているせいかもしれませんが、TONEX ソフトウェアより TONEX Pedal の方が、より太いクリーンが出せました。この感じだと、ベースアンプをキャプチャしても良い結果が出そうです。

- キャプチャに使用したオーディオインターフェイスは?

IK Multimedia AXE I/O Solo です。アンプアウトが付いているので、アンプのインプットに直接つなぐことができました。あとはオーディオインターフェイスのマイクインに戻すだけで接続は完了です。

AXE I/O Solo
▲AXE I/O Solo。フロントパネルの右下に見えるのがアンプアウト

- ちなみに他のインターフェイスを使う場合はどうなりますか?

オーディオインターフェイスのラインアウトから、リアンプボックスを通して、ギターアンプに接続します。ラインレベルからインストレベルに落とすために、リアンプボックスが必要なんですよ。AXE I/O はその機能があらかじめ付いているので、すごく楽なんです。

- 世界中のギタリストが作成したトーンモデルが、ToneNET でたくさん共有されています。

山ほど上がっていますね。人によってキャプチャの仕方が違って、ビンテージ Neve を通したトーンモデルだったり、すごくリッチな環境でキャプチャされたものもある。単純にアンプだけを選ぶというよりも、どのマイクで録って、どのプリアンプを通したかの情報も全部書いてあるから、なかなか試せない音が試せます。同じアンプモデルでも録り方で全然違ってくるので、そこでまた個性が出ますね。

写真:桧川泰治

鈴木 Daichi 秀行

作曲やアレンジ、プロデュースなど、多岐に渡って才能を発揮する他、ギターやベースなどのマルチプレイヤーとしても活動し、レコーディングエンジニアとしても活躍する。モーニング娘。をはじめ、YUI、絢香、瀬川あやか、家入レオ、SMAPなど、数々の大物アーティストの楽曲の他、「機動戦士ガンダムSEEDDESTINY」などのアニメソングにも携わっている。

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