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Universal Audio : UAFX Amp Pedals 話題の最新デヴァイスを詳細に分析!

既存のディレイ、リヴァーブ、モジュレーションとは全く異なる方向性を持つ、UAFXシリーズの最新製品を徹底解説。老舗ユニバーサル・オーディオならではのサウンド・クオリティの高さに、脱帽…!(ヤング・ギター2022年7月号から転載)

スタジオ品質の最強ペダル・シリーズに新たに加わった“アンプ”3機種を斬る!


 1950年代の創業以来、世界中のプロフェッショナル・スタジオで愛用されるレコーディング機器の開発を続け、1999年の再創立以降はデジタル機器も含む最先端テクノロジーを発展させ続けてきたユニバーサル・オーディオ。そんな最高峰の技術を小型の筐体に押し込んだギター用ペダル:UAFXシリーズは、2021年に発表されるやいなや絶大な賛辞で迎えられている。今回そこに加わった“WOODROW '55 Instrument Amplifier” 、“DREAM '65 Reverb-Amp”、“RUBY '63 Top Boost Amplifier”は、歴史的名機のサウンドを圧倒的クオリティで再現する“アンプ・ペダル”だ。これらの実力を検証する当企画では、まず最初に同社のギター・アンプに対するスタンスを紐解くため、2名のスタッフに話を聞かせてもらうことにしたい。

James Santiago / UNIVERSAL AUDIO Senior Product Designer Tore Mogensen / UNIVERSAL AUDIO Product Manager
▲(左)James Santiago / UNIVERSAL AUDIO Senior Product Designer、(右)Tore Mogensen / UNIVERSAL AUDIO Product Manager

ヴィンテージ機器そのものを探すのに膨大な時間を費やす


YG:お二人の経歴を簡単にお聞かせください。ユニバーサル・オーディオに入社されたのはいつ頃で、どんな製品に携わってこられたのでしょう?

トーア・モーゲンセン:私はギター関連製品のプロダクト・マネージャーをしており、この会社に入社して3年になります。主に最初の3つのUAFXペダル…“Golden Reverberator” 、“Astra Modulation Machine”、“Starlight Echo Station”の開発に携わり、そしてもちろん新しい3つのアンプ・ペダルにも関わってきました。ちなみにギター業界には20年以上おり、ユニバーサル・オーディオの前はTCエレクトロニックで18年間働いていました。

ジェイムズ・サンチャゴ:私はユニバーサル・オーディオのシニア・プロダクト・デザイナーです。私の仕事も、大半は基本的にギター関連のプロジェクトばかりですね。過去30年以上に渡って、Line 6やヴードゥー・ラボなど数多くの会社で仕事をしてきました。

YG:今回発表されたUAFXの新しいアンプ・ペダル3機種についてお聞かせ下さい。従来の3機種とは全く異なる方向性でとても興味深いですが、このシリーズを構想した当初から、これだけ幅広いジャンルの製品を展開する計画があったわけでしょうか?

トーア:はい、UAFXシリーズでアンプ・ペダルを作るということは、最初の段階から計画されていたことでした。このペダルのプラットフォームを設計開発する際は、超精細で計算量の多いアンプのアルゴリズムを扱うのに十分な処理能力を確保すること、それをしっかりと確かめるところからスタートしました。

YG:今回の3機種はいずれも、基本的にロー・ゲインのギター・アンプを題材にしたものですよね。もちろんブースト機能でオーヴァードライヴさせることもできますが、どちらかと言えばクリーン〜クランチ・サウンドの魅力ありきの機種という気がします。ヴィンテージ・スタイルのアンプにのみ注目したのは、何故でしょうか?

トーア:それはひとえに今回の題材としたアンプたちが、ハイエンドなスタジオに常設されていることが多く、クラシックなアルバムに収録されている素晴らしいトーンそのものを生む、頂点に立つようなアンプだと感じているからです。これらのアンプはそれぞれ全く異なる個性を持っており、他のアンプでは再現することが決してできません。と言ってももちろん、今回のように小さなペダルの形で使えるようになったら素晴らしい結果が得られそうなアンプが、世の中には他にもたくさんあることは十分承知していますが。

YG:まずは確認ですが…“WOODROW '55 Instrument Amplifier”はフェンダー“Tweed Deluxe”、“DREAM '65 Reverb-Amp”はフェンダー“Deluxe Reverb”、“RUBY '63 Top Boost Amplifier”はVOX“AC30”を、それぞれ元にモデリングした機種なのですよね?

トーア:そうですね。フェンダー“Tweed Deluxe”は1955年製、同じくフェンダー“Deluxe Reverb”は1965年製のものです。“RUBY”に関しては、2つの異なるアンプが元になっています。'61年製のトップ・ブースト回路が入っていない“AC30”と、'63年製のトップ・ブースト回路が組み込まれた“AC30”ですね。“AC30”が生み出せる素晴らしいトーンすべてを1台のペダルで提供したかったので、2つの異なる個体をモデリングすることにしたんです。ユニバーサル・オーディオがモデリングのアルゴリズムを作る時はいつもそうなのですが、まずは黄金のような価値を持つ素晴らしいコンディションのヴィンテージ機器そのものを探し出すことに、膨大な時間を費やしました。これは非常に重要で、世の中には古くて高価であっても、必ずしも良い音ではない機材がたくさん存在します。ですからモデリングするのに適した個体を、何カ月もかけて探し出しました。それが結果的に、1955年製や1965年製、1961年製、1963年製だったということです。

YG:具体的には、どのようにして入手するのでしょう? 場合によっては不完全なものを購入して、修理することもあるのでしょうか?

ジェイムズ:私はいつもリファレンスとなる良い個体を判断する前に、できるだけたくさんのオリジナル機器の音を聴くようにしています。その際はできるだけ、純正に近いものを手に入れたいといつも思っています。とはいえ、アップデートやメンテナンスをきちんと行なわなければならないパーツも確実にあります。トーアが言ったように、大切に保管されてきたミント・コンディションのアンプだからといって、無条件に音が良いわけではありません。きちんと動作するとも限りませんしね。開発期間中、オリジナル・アンプは何年も毎日使いますから、その間ずっと完璧な動作状態でなければなりません。そのためには乾燥したフィルター・キャップを交換したり、何年も新品状態で保管されていた昔の真空管を探したり、技術者によって長年に渡って変更されてきた可能性のあるパーツをすべてあらい出したり…そういうことをする必要があります。

 私はロサンゼルスを拠点にしているんですが、この近郊には素晴らしいアンプ・コレクションを持つ人がたくさんいるんですよ。いつも機材を購入しているディーラーたちとのコンタクト・リストも充実しています。イタリアからサンセット・ブルヴァード・ギター・センターのヴィンテージ・ルーム、そして私の友人であるノームズ・レア・ギターズのノーマン・ハリスまで、色んな人たちがアンプを発見してくれます。

YG:ユニバーサル・オーディオでは、様々な有名楽器をモデリングする際に、多くのステップを踏むと聞いています。ギター・アンプの場合、具体的にどのような工程を経ているのでしょうか?

ジェイムズ:あまり秘密を明かすことはできませんが、大事なことをいくつかお伝えしましょうか。ユニバーサル・オーディオではギター・アンプの入力部からスピーカーやマイクなど、最終的な出音に関わるパーツ類すべてをモデリングしています。小さな真空管1本1本の音質をそれぞれ聴き比べ、採点し続けるようなものです。例えば実際、“Deluxe Reverb”を90Vから122Vまですべての電圧で聴くといったテストも行ないました。アンプに使われている部品には数値が印刷されてはいますが、20%の公差があるものなので、本当にあらゆるパーツの数値を測って確認しなければいけません。回路図に記載されている数値が間違っていることもあります。例えばあなたの大好きなアンプも、何年も前に仕様が変わっていることはざらにあるわけです。加えて回路図だけでは判断できない要素もたくさんあります。トランスの音や、特定の6V6真空管の組み合わせのバイアスなど…です。綿密に試聴して記録する必要があるので、こうした作業は膨大な時間を要します。ただ弊社のDSPチームは非常に優秀で、これらのアンプのすべての音や、さらに重要な要素であるフィーリングを捉えるために、常に新しい技術を生み出し続けているんです。

YG:今回のアンプ・ペダルは3機種とも、何種類ものスピーカーのサウンドを切り替えることができますよね。つまりモデリングする際には、リファレンスとしたオリジナル・アンプのスピーカーをそれぞれ配線し直す必要があったのでしょうか? もしそうなら、とても時間のかかる作業ですよね。

ジェイムズ:もちろん、スピーカーの音が実際に良いかどうかを判断する唯一の方法は、キャビネットに取り付けて実際に鳴らしてみることだけですからね。今回モデリングの際に使用したスピーカーは、いずれも複数のヴァージョンを用意しました。例えば工場出荷時にJBL“D-120”スピーカーが搭載されている、ドリップエッジ(註:シルヴァーフェイスのフェンダー・アンプの中でも初期のごく短い期間にしか見られない、スピーカー・パネルの枠にアルミ素材の化粧枠が取り付けられているモデル)の“Twin Reverb”なんかも見付けたんです。それは素晴らしいものでしたが、ただモデリングのためにマイキングする個体を選ばなければならないとなると、どのアンプがベストなのかを決定する必要があります。比較すれば、どちらがより特別なものを持っているかは間違いなくわかるのです。そのために私はお気に入りのマイクを設置し、批判的な心でリスニングすることに時間を費やしました。私はいつも、ユニダインⅢカートリッジが搭載されたシュアの古い“SM57”を使うところから始めます。このマイクで素晴らしい音が得られないなんて、あり得ませんから。そしてその後、'60年代のベイヤーダイナミック“M-160”リボン・マイク、'70年代のゼンハイザー“MD-421”、そして最終的にはノイマン“U-67”やAKG“C414”といった、スタジオにおけるスタンダードなマイクを使用するのが普通です。時間をかけて収集してきたので、長年に渡って最も良い音を出すために目星を付けてきた個体がいくつかあるんですよ。ヴィンテージの“SM57”の山の中から、これぞという1本を探し出すんです。シンガーが使ってカプセルを壊してしまったものもありますから、見た目がいいからって音がいいとは限らない…その法則にいつも従わなければいけません。

本物の完璧に調整された部屋に置いてあるキャビそのもの


YG:ユニバーサル・オーディオにとってギター・アンプ製品の先駆けとなった、“OX Amp Top Box”についても改めて復習させてください。リアクティヴ・ロードボックスという言葉が一般的になったのは、“OX”が発売されて以降のことだと思いますが、改めてそのコンセプトについて、教えていただけますか?

ジェイムズ:専門的なことは抜きにして…リアクティヴでない、つまりレジスティヴ・ロードは、文字通り大きな抵抗を積み重ねたようなもので、スピーカーやライン・レベルの信号の出力を低くしてしまいます。しかし実際のスピーカーは決して静的なものではなく、アンプのパワー・セクションと相互作用しています。ですからレジスティヴ・ロードを使うと、アンプの音やフィーリングを大きく変化させてしまうきらいがあります。それに対してリアクティヴ・ロードは、スピーカーのインピーダンス曲線をシミュレートする独自の設計が必要ですが、アンプの音をより正しく出力できます。リアクティヴ・ロードは複雑ですから、一般的にレジスティヴ・ロードより高価ですね。

YG:“OX”のスピーカー・モデリング機能は素晴らしく、22種類のキャビネット・モデルと6種類のマイク・モデルを内蔵し、それぞれ個性的な音色を実現しています。このモデリング作業にはどれくらいの時間を費やしたのでしょうか?

ジェイムズ:最初の1年はキャビネット、マイク、ルーム・アンビエンスの音を捕らえるための過程を設計すること自体に、時間を費やしました。アルゴリズムの開発を進める一方で、それを実行するための新しいハードウェア・プラットフォームも設計しました。最初から最後まで合わせると、合計で2年はかかったと思います。

YG:世の中にはマイクとスピーカーの距離を自由にシミュレートできるようなアンプ・モデリング・ソフトもたくさんありますが、“OX”のスピーカー・モデリング機能はよりシンプルで、選択肢が少なく絞られていますよね。これはつまり、ユニバーサル・オーディオの技術者陣があらかじめ、完璧なセッティングをしてくれているということなのでしょうか?

ジェイムズ:スピーカーのどこにでもマイクを設置できるからといって、すべて良い音が録れるわけではありません。特定のスピーカーとマイクの組み合わせなら、素晴らしい音になるのは数カ所です。そこで1つのマイクにつき、オンとオフの2ポジションに限定することにしました。録った後になるべくイコライジングする必要がない位置ですね。さらに異なる音色が必要な場合は、EQやコンプレッション、リヴァーブを加えて音色を仕上げればいいわけです。私自身マイキングする際は、特定の種類のスピーカーに特定のマイクを、特定の場所に置くようにしています。例えばスピーカーによっては、中央のダストキャップが大きかったり、あるいは紙製ではなくアルミ製だったりします。どのスピーカーでも同じ場所にマイクを置けばいいわけではありません。1/4インチ動かすだけで、音色が劇的に変わりますし。

YG:“OX”にはダイナミック・ルーム・モデリングという、部屋の音響そのものを再現する機能も含まれていますよね。一体どのような作業を経れば、部屋そのものの音を解析できるのか…正直なところ全くわからないのですが(苦笑)。簡単に解説することは可能ですか?

ジェイムズ:そうですね、具体的に秘密のテクニックを明かさない限り、ちょっと説明するのは難しいです。ただ最も重要なことは…、“OX”では部屋の響きを再現する際、一般的なリヴァーブ・エフェクトは使用していません。本物の完璧に調整された部屋に置いてある、キャビネットの音そのものを再現しているんです。例えばオープン・キャビネットとクローズド・キャビネットでは、背面のコントロール・ルームの壁やガラスに反射する音が異なります。4×12キャビネットの場合は、複数のスピーカーがすべて部屋を揺り動かし、空間に対してある特定の位相関係を作り出します。これらはリアルなサウンドを作るために再現する、ほんの一部の要素に過ぎないんですよ。

YG:では最後に、今後ユニバーサル・オーディオの製品を使うであろう日本のミュージシャンに向けて、メッセージをお願いします。

トーア:私もジェイムズも、ユニバーサル・オーディオの製品をこれから使おうとしているギタリストのみなさんに、本当に感謝しています。この会社が行なっているのは、ミュージシャンが素晴らしい音楽を創造して録音できるようにするための仕事であり、私たちの製品が素晴らしいサウンドと感動的なトーンを提供することによって、クリエイティヴなプロセスの中で少しでも役に立てればと願っています。

【解説】UAD-2プラグインとアンプの関係


 ユニバーサル・オーディオは自社を代表する真空管式コンプレッサーや、世界中で愛用されるアナログ・コンソール、マイク・プリアンプ、EQ…etc.といったスタジオ機器の名機の数々をPC上で再現する、UAD-2プラグイン・ソフトの高品質さでも知られている。これらは専用DSPを内蔵したオーディオ・インターフェイスもしくはアクセラレーターを導入することによってのみ使用可能で、PC自体のマシン・パワーに頼らず処理することにより、高品質なサウンドを低レイテンシーで得ることができるのが肝だ。

 UAD-2プラグインにはもちろんギタリスト向けのギター・アンプの数々もラインナップされており、中でも大きなターニング・ポイントとなったのが、2016年にリリースされたプラグイン“Fender '55 Tweed Deluxe”だ。これは新しくリリースされたUAFXアンプ・ペダルのうち、“WOODROW '55 Instrument Amplifier”と完全に方向性を同じくするもの。この開発を通して、次ページで紹介する“OX Amp Top Box”や、UAFXペダル・シリーズを生み出すチームとメソッドを揃えることができたという。

apollo
▲ユニバーサル・オーディオのオーディオ・インターフェイス“Apollo”シリーズは高品質DSPを内蔵することにより、プラグインの処理を内部で行ない、低レイテンシーの録音を可能に。
UAD
▲ユニバーサル・オーディオのウェブサイトを経由して、様々なプラグインを購入することが可能。マーシャル、エングル、フリードマン…などが公式に認めたものも含まれる。
Fender '55 Tweed Deluxe
▲2016年にリリースされた“Fender '55 Tweed Deluxe”プラグイン。その名の通りフェンダーの1955年製ツイード“Deluxe”アンプの動作をモデリングしており、2本のマイクの組み合わせで高品質なサウンドを得ることが可能だ。コンディションの良い個体を、最高の音響設備が整ったスタジオで収録した音質であることも大きなポイント。

【解説】“OX Amp Top Box”とは?


 2018年に発表された“OX Amp Top Box”は、主にレコーディング機器を専門に扱ってきたユニバーサル・オーディオがギタリストに特化して開発した、同社としては異色の製品。簡単に言えば「リアクティヴ・ロードボックスとキャビネット・シミュレーターを組み合わせたもの」と表現することができる(図参照)。ロードボックスとは高出力なギター・アンプとスピーカー・キャビネットの間に接続することで、音質を変化させることなく自由な音量調節を可能とする機器のこと。一方キャビネット・シミュレーターは読者諸氏にも既にお馴染みの機能だろうが、昨今主流となっているIRデータを利用したものではなく、ユニバーサル・オーディオならではのダイナミック・スピーカー・モデリング技術を用いているのが肝だ。これによってキャビネットの響き、スピーカーの構造、コーン紙の材質、熱の伝導、経年劣化…などを詳細かつリアルに再現。さらには同社が所有していたレコーディング・スタジオの音響をそのまま再現する“Ocean Way Studios”プラグインの技術も導入されており、超高品質なルーム・アンビエンスを得ることまでできてしまう。

OX
▲“OX Amp Top Box”のフロント・パネルは、ライヴ・ステージでも操作しやすいシンプルな設計。一方背面には多彩な入出力端子を装備しており、広い拡張性を持つ。
“OX”の使用方法
▲“OX”の使用方法

WOODROW '55 Instrument Amplifier


woodrow

【SPECIFICATIONS】
●外形寸法:92(W)×65(H)×141(D)mm
●価格:オープン・プライス(市場想定税込価格:¥55,000前後)

黎明期の荒々しくダイレクトなツイード・サウンド

 まず“WOODROW '55 Instrument Amplifier”から、解説を始めよう。元になったフェンダーの“Deluxe”というアンプは、最初期である'50年代のツイード・カヴァー・モデルが誕生してから、外見も回路も機能も時代ごとに進化していった。中でも1955年から'57年まで製造されたものは、5E3型と言われる独自の回路が採用されており、どの後継機種でも再現できない伝説のサウンドを生むオンリー・ワンの個体として高い人気を誇っている。

 さて、試奏の前に確認したいのが接続方法。最もオススメしたいのはライン接続だ。具体的に言うと、「ギター→本機→オーディオ・インターフェイスもしくはミキサー→モニター・スピーカー」という順番。この方法なら、内蔵されているスピーカー・シミュレーターの音質を最大限に活かすことができる。もちろんギター・アンプを用いることも可能で、その場合はアンプのエフェクト・リターンに接続し、本機のスピーカー・シミュレーターをオフにすると良いだろう。

 音作りの基本はINST VOL、MIC VOLという2つのヴォリュームだ。もともとツイード時代の“Deluxe”はギター用とは別にマイクを接続できる入力端子も装備しており、本機に搭載されたこれら2つのヴォリュームはその名残。調整できるキャラクターが異なっており、INST VOLは実にフェンダーらしい高音域を強調する。ノブを上げていくとシングルコイルでも9時付近からオーヴァードライヴが効き始め、12時付近にするとコンプレッサーと別次元の飽和感が一気に深まる。強くピッキングするとアタックが飽和して歪み、サステイン部分は同じ音量のままクリーンでグッと粘って伸びる…というニュアンス。このレスポンスが独特で、クランチやクリーンでとてつもなく楽しく弾き続けられてしまう。一方MIC VOLの方は中域から中低域が太く、飽和感が深め。12時以降は歪みと言うよりも音割れに近い成分が加わり、最大に振り切るとファズに近いワイルドな音を生む。とりわけネック・ピックアップでの使用にハマるだろう。

 トップ・パネル左側に搭載されたミニ・スイッチでスピーカー・モデルを切り替えると、サウンドが根本的に変化し、あたかも新しいアンプに交換したかのような印象だ(右上の表を参照)。まず初期状態で用意されている3種類は、コンボ・アンプの内蔵スピーカーをすげ替えるような改造を再現している。スイッチ中央時のJP12は、'55年製“Deluxe”の工場出荷時に搭載されていたスピーカー。高域と低域がよく伸び、オープンバックならではの開放感が心地好い。BLU15は中域が力強く張り出し、アメリカン・ロックやR&Rにピッタリのトーン。コンデンサー・マイクで集音したサウンドだからか、高域の痛いピークがなく扱いやすい。GB25は中低域が太く、鋭いピークがカミソリのように点在するタイプで、明るいアメリカン・ロックのイメージだ。

 製品登録すると使えるボーナス・スピーカー・モデルは、コンボ・アンプに外部キャビネットを増設したサウンドを再現している。Vee30はヴィンテージ・キャビらしい太い中域と箱鳴り感がたっぷり、B-Manは10インチらしいスピード感のある音が前方に飛んで行くイメージ、JB120は高域がスムーズに伸びて癖の少ない広いレンジ感が特徴…といった具合だ。

 そして3種類内蔵されているブースト機能は、さらなる次元の歪みを加える秀逸な回路。ミニ・スイッチ中央のSTOCK時はクリーン・ブースターで、アンプ本来のトーンのままゲイン・アップする。KP-3Kは中域がズドンと押し出され、シングルコイルとの相性が抜群。EP-IIIはギター・サウンドの輪郭をがっしりとさせるような変化が絶妙で、常にかけっぱなしにしたくなる。

woodrow front
  • 内蔵スピーカー・モデル
    • BLU15:セレッション製の12インチ・アルニコ・スピーカーを、ノイマンの“U67”マイクで集音。
    • JP12:ジェンセン“P12R”12インチ・スピーカーを、シュアの“SM57”マイクで集音。
    • GB25:セレッション“Greenback”12インチ・スピーカーを、シュアの“SM57”マイクで集音。
  • ボーナス・スピーカー・モデル(※製品登録後に使用可能)
    • Vee30:セレッション“V30”搭載のマーシャル4×12キャビネットを、ゼンハイザー“MD421-Ⅱ”マイクで集音。
    • B-Man:ジェンセン“P10R”搭載のフェンダー“Bassman”4×10キャビネットを、シュア“SM57”で集音。
    • JB120:JBL“D-120F”搭載のフェンダー製1×12キャビネットを、AKG“C414”マイクで集音。
  • ブースト・サーキット
    • KP-3K:'80年代のコルグ製デジタル・ディレイ“SDD-3000”のプリアンプを再現。
    • STOCK:オン/オフしても原音のトーンが変化しないクリーン・ブースター。
    • EP-III:マエストロ製テープ・エコー“Echoplex EP3-”(トランジスタ)のプリアンプ・サウンド。

アンプ・ペダル共通仕様:フレキシブルな入出力

 本機には部屋の残響を再現するROOM機能も備わっており、その驚くほどリアルな音色を体感するためには、ぜひともステレオ出力でモニター・スピーカーを2台接続してほしい。さらに入力端子もステレオ仕様となっており、空間系やモジュレーション系のエフェクトを接続すれば音の広がりを最大限に活かすこともできる。またこれらの入出力はギター・アンプと組み合わせる際にも効果を発揮し、外部のスイッチャーと組み合わせることなく、本機の音とギター・アンプ自体の音を切り替えて弾くような使用法も可能だ。

woodrow back

DREAM '65 Reverb-Amp


dream

【SPECIFICATIONS】
●外形寸法:92(W)×65(H)×141(D)mm
●価格:オープン・プライス(市場想定税込価格:¥55,000前後)

洗練された極上サウンドと芳醇なリヴァーブ

 続いて解説する“DREAM '65 Reverb-Amp”は、ブラック・フェイス期のフェンダー・アンプのサウンドを再現したもの。モデリング元になっている1965年製の“Deluxe Reverb”は出力20Wで、小型の6V6パワー管を使用しているからか歪みやすく、'60年代後半から'70年代までアメリカン・ロックのレコーディングで最も多く使用されてきた名機中の名機だ。

 こちらも基本機能は前述の“WOODROW〜”と同様であり、試奏はライン接続にて行なった。ちなみに用いたモニター・スピーカーはクローズド・バック・タイプだが、飛び出して来たのは実にフェンダーらしいオープン・バック彷彿の開放感あるサウンドだ。まず音作りの肝となっているのはVOLUMEで、シングルコイルだと10時付近まではクリーン~クランチだが、そこから上げるとクラシック・ロックなら十分なオーヴァードライヴ・サウンドとなる。音圧もレンジ感も恐ろしく広大で、おおらかな効き方の2バンドEQ(BASS & TREBLE)を簡単にいじるだけで、様々なジャンルに対応できること請け合い。本来ヴィンテージ系のフェンダー・アンプでこういったサウンドを出したい場合、耳をつんざくような大音量になってしまうので、防音設備の整ったレコーディング・スタジオなど、使える状況はかなり限定的なはずだ。本機の場合は音量を気にすることなくアンプのポテンシャルをフルに発揮できるのが肝で、しかもその状態で弱くピッキングすれば、あるいはギター側のヴォリュームを絞れば、音量を落とさずに歪みがすっと抑えられ、抜群の粘りとサステイン、そして得も言われぬ倍音煌めくトーンが得られる。このレスポンスと便利さは病み付き確定だ。

 もう1つの肝がリヴァーブ機能で、真空管回路を用いたスプリング・リヴァーブ特有の膨よかで深みのある水っぽさを、実にリアルにモデリングしている。“WOODROW〜”内蔵のROOMサウンドとはまた別の魅力だ。さらにはフェンダーらしいトレモロ機能も搭載しており、特有のトーンや柔らかく深く揺れる音量変化が、完全に再現されている。

 スピーカー・シミュレーターはやはり初期状態で3種類、ボーナスとして3種類、合計6種類を使い分け可能。まず“Deluxe”のオリジナル・スピーカーであるOXFORDは、高音域のピークが強烈で、この貫通力はバンド・アンサンブルの中でも突き抜けて前に出てくれるだろう。GB25は中域がパワフルなスピーカーで、高域が柔らかくなる傾向があるリボン・マイクで集音したためか、フェンダー特有の高音のピークが抑えられて扱いやすい。EV12は巨大なマグネットを備えたエレクトロヴォイス製の12インチで、歪みはやや浅くなる印象だが、特に低域のパワーが抜群。2×12オープン・バックの特性を最大限に活かしてくれる。さらにBoutique D65はヴィンテージ・テイストを残しながらもワイド・レンジで現代的なサウンドが魅力、S-Verbはフェンダー“Bassman”そのものと言っても過言ではないブライアン・セッツァー彷彿のサウンド、JBF120はハイファイかつワイド・レンジで繊細なプレイもリアルに表現できる…といった具合。

 コントロール・パネル右側のスイッチでは、ゲイン・ブーストを主とした改造回路のモデリングを選択することが可能。中域がパワフルなLEADではシングルコイルでも耳が痛くならない歪みを作ることができ、概ねあらゆるジャンルのリードに対応できそうだ。STOCKは最大10dBのクリーン・ブーストで、アンプのキャラクターをそのままにゲインをアップさせ、抜群の貫通力で響いてくれる。D-TEXではスティーヴィー・レイ・ヴォーンを思わせるサウンドが得られ、他のどのモードよりも図太く攻撃的なサウンドを獲得可能。

dream front
  • 内蔵スピーカー・モデル
    • GB25:ヴィンテージのセレッション“Greenback”を、ベイヤー“M160”リボン・マイクで集音。
    • OXFORD:オリジナルのオックスフォード“12K5-6 ”スピーカーを、シュア“SM57”マイクで集音。
    • EV12:エレクトロヴォイス“EVM12L”12インチ・スピーカーを、AKG“C414”マイクで集音。
  • ボーナス・スピーカー・モデル(※製品登録後に使用可能)
    • Boutique D65:セレッション“G12-65”搭載のトゥー・ロック製キャビを、シュアとロイヤーのマイクで集音。
    • S-Verb:'66年製フェンダー“Super Reverb”の4×10キャビネットを、AKG“C414”マイクで収録。
    • JBF120:JBL“D-120F”を搭載した'68年フェンダー“Twin Reverb”のキャビを、シュアとロイヤーのマイクで集音。
  • MODセレクト
    • LEAD:一部のキャパシターを取り除くような改造により、ウォームかつ中域を強調したサウンドを創出。
    • STOCK:アンプの個性をそのまま活かすクリーン・ブーストで、最大10dBのゲインを入力部に加える。
    • D-TEX:SRVモッドと呼ばれる改造を再現し、プリアンプ部におけるゲインや中域を増大。

コントロール・アプリ:UAFX Control

 UAFXペダル・シリーズではスマートフォンなどで無料ダウンロードできる“UAFX Control”アプリを使用することにより、さらなる機能拡張を得ることができる。例えばフットスイッチのモードを切り替えてリヴァーブやトレモロのオン/オフができるようにしたり、本体のセッティングをプリセットとして保存したり、演奏中にプリセットを切り替えたり…といった操作も可能だ。

uafx control

RUBY '63 Top Boost Amplifier


ruby

【SPECIFICATIONS】
●外形寸法:92(W)×65(H)×141(D)mm
●価格:オープン・プライス(市場想定税込価格:¥55,000前後)

英国の揺るぎなき個性を細部まで緻密に再現

 最後に紹介する“RUBY '63 Top Boost Amplifier”は、VOX“AC30”のサウンドを再現した機種。インタビュー中でも語られていた通り、モデリングには1961年製と、音質補正&ゲイン・アップ用のトップ・ブースト回路を組み込んである1963年製という2機種を用いている。例えばザ・ビートルズに代表されるブリティッシュ・ロック勢や、ブライアン・メイがクイーンのレコーディングで使っていたのは、もしかしたらこういったアンプなのかもしれない…という想像を働かせることができる。見事な完成度だ。

 音作りはまず、コントロール・パネル右側のミニ・スイッチでチャンネルを選択するところから始めるのが良いだろう。BRILはトップ・ブースト回路を備えた“AC30”のブリリアント・チャンネルで、VOLUMEを上げて歪ませるとかなり高域に寄ったトーンとなる。VOX特有のCUT(全体の高域を削るコントロール)と併用することで、上手くバランスを整えられるだろう。NORMはノーマル・チャンネルで、中域の太い最も標準的なサウンド。VIBはヴィブラート・チャンネルで、ここを選択している時のみ、内蔵のトレモロ・エフェクトを使用することが可能になる。このサウンドも唯一無二であり、設定とフレーズによってはワウと勘違いするような音色変化ももたらす。

 VOLUMEはツマミを上げるに従ってクリーン~クランチ~ドライヴと変化し、最大にすると真空管が飽和して音割れも含むような、やや行き過ぎたサウンドに。これも実機を完全再現したが故のリアルさだが…ただこの状態でも弱くピッキングすれば、あるいはギターのヴォリュームを絞れば、サチュレーションの効いた絶妙のクリーンが得られる。一方、BASS & TREBLEはかなり曲者で、これらとCUT、VOLUMEという4要素が互いに影響するため、ツマミの位置によって歪みもトーンもすべてが変化する。例えばTREBLEを上げているのに中域が持ち上がったりといったことが、CUTやVOLUMEの位置によっては起こり得る。正直言って「ここまで再現するのか…」と、その行き過ぎたマニアックぶりに驚かされてしまった。

 スピーカー・シミュレーターは例によって3+3=6種類を切り替え可能で、やはり超リアルだ。まず当時の“AC30”の標準装備スピーカーを再現したBLUEを基準として、SILVERは高音が抑えられ中域が豊かに。GREENはさらにマイルドになり、例えばBRILチャンネルの強烈な高域を上手くまとめて太さを持たせてくれる。そしてBlue ModはBLUEを基準に少し異なるテイストの倍音や高域を持つサウンドで、Matchは中域にフォーカスしながらも広めで現代的なレンジ感を持つサウンド、Goldは柔らかめの高域と張り出し感のある中域が特徴…といった具合。

 ブースト機能は選択したチャンネルごとに、異なるブースターを接続した状態を再現しており、これまたギタリスト心をくすぐるマニアックさだ。詳しくは上の表を見てほしいが、例えばBRILチャンネルではBOOSTツマミを上げていくにつれて、トランジスタらしい派手な高域と中域の芯を加えてくれる。NORMチャンネルではレンジがギュッと狭まり、ゲルマニウムならではの中域に集まったトーンへ変化。一瞬「痩せた?」と感じてしまうかもしれないが、'60〜'70年代のクラシック・ロック・ファンならそれをむしろVOXらしい太さと感じるはず。そしてVIBチャンネルは素直にゲインが上がるクリーン・ブーストだ。

 おそらく若い世代のギタリストだと、ここで再現されている実機を本当に使ったことのある人はほとんどいないはず。今回のUAFXアンプ・ペダルはリアルなサウンド体験を提供してくれる完成度の高さが秀逸で、もはやシミュレートの域を超えたと言っても過言ではないだろう。

ruby
  • 内蔵スピーカー・モデル
    • SILVER:レアなセレッション“Silver Bulldog”スピーカーを、ゼンハイザー“MD421”マイクで集音。
    • BLUE:オリジナルのセレッション“Blue Bulldog”スピーカーを、シュア“SM57”マイクで集音。
    • GREEN:セレッション“G12H”スピーカーを、ベイヤー“M160”リボン・マイクで集音。
  • ボーナス・スピーカー・モデル(※製品登録後に使用可能)
    • Blue Mod:セレッション“Blue Bulldog”を搭載した“AC15”の1×12キャビを、シュア“SM57”で集音。
    • Match:セレッション“G12H”を搭載したマッチレス製2×12キャビネットを、シュア“SM57”で集音。
    • Gold:セレッション“Gold”を搭載したトゥー・ロック製2×12キャビネットを、ゼンハイザー“MD421”で集音。
  • チャンネル&ブースト・セレクト
    • BRIL:ブリリアント・チャンネルを、マエストロのテープ・エコー“Echoplex EP-3”で増幅。
    • NORM:ノーマル・チャンネルを、ゲルマニウム・トランジスタを用いたトレブル・ブースターで増幅。
    • VIB:ヴィブラート・チャンネルを、原音をそのまま活かすクリーン・ブースターで増幅。

 ここまでに紹介したUAFXアンプ・ペダル3機種のサウンドを、実際に体感することができるスペシャルな映像を、今回もご用意させていただいた。本誌オフィシャル・ウェブサイト及びYouTubeの公式チャンネルにて視聴することが可能だ。デモンストレーションを担当したのは、UAFXの前3機種も試奏してくれたPABLO。彼ならではの熱い表現力に注目!

pablo

解説●安保 亮 Akira Ambo
撮影●竹澤 宏 Hiroshi Takezawa

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