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Universal Audio : Apollo と UAD を使い、Butch Walker が Green Day をレコーディング

プロデューサー Butch Walker(Weezer、Taylor Swift)が、Apollo、UAD、そして OX Amp Top Box を使い、Green Day の最高に野心的なレコードを制作した手法をご紹介します。

Butch Walker のプロデュースとソングライティングの経歴は、ただ素晴らしいだけでなく、広範に渡ります。ジョージア州出身の彼の過去15年間の仕事をざっと見るだけでも、Pink、Gavin DeGraw、Harry Connick, Jr.、Fall Out Boy、Weezer、The Struts、Train に加え、Taylor Swift(2012年の最もロックなアルバム Red )のプロデュースとコーライティングが含まれます。

しかし Walker 自身も多作なアーティストであり、2002年の Left Of Self-Centered 以降、12枚近くのアルバムをリリースし、そのすべてにおいて彼の激しいギタープレイ、パワーポップの非凡なる作曲センス、幅広い制作手法が展開されています。直近では、Jewel、The Wallflowers、そして Green Day の最新作 Father of All... で Billie Joe たちを、ガレージ的で、グラムな領域までエスコートしています。ここでは、Apollo、UAD、そして OX Amp Top Box が Green Day の最高に野心的なレコードを創り上げるのにどのように貢献したかについて、Walker が詳しく語ってくれました。

Butch Walker は、Rob Thomas、Keith Urban、Fall Out Boy などのプロダクションにも参加しています。

- どのような経緯で Green Day のアルバムをプロデュースするに至ったのですか?

結局のところ、バンドは変化を遂げる時期に来ていたんだと思う。10年間、彼らは基本的にセルフプロデュースでやってきた。それがどういうことなのかは分かるよ。僕は自分のレコードをセルフプロデュースするんだけど、同じトリックやテクニックを何度も使ってしまい、なかなかそこから抜け出せない状態に陥りがちなんだ。

自己流から抜け出して、新たな領域を探る方法が分からなくなってしまうのは、その道中で手助けをしてくれる人が現れないからだね。

- Green Day の新作には、グラムやガレージロックの影響が色濃く表れています。これは意識的なものなのでしょうか?

Billie と僕は70年代のグラムロックやパンクロックにおいて多くの共通点を持っているんだけど、Green Day はこれまでの作品でグラムな面を掘り下げられずにいた。

僕は Green Day のメンバーと同じ影響をたくさん受けている。このプロジェクトについて話し合いを始めた時に Billie がラフなデモを送ってきてくれたんだけど、その段階ですでに多くの実験が行われていることに気付いたんだ。

彼が最初に “Oh, Yeah” のデモを送ってきた時、そこには Joan Jett バージョンの “Do You Wanna Touch Me (Oh Yeah) ” のサンプルが入っていた。どれだけ彼が興奮していたのかは分からないけど、「これはヤバいね」って伝えたんだ。そんなわけで、この曲はレコード全体のサウンドの青写真の一つとなったんだよ。

- Green Day のアルバムでは複数の Apollo X インターフェイスと UAD プラグインが使われましたね。セットアップはどのようなものでしたか?

ほとんどの場合、Helios Type 69 Preamp & EQAPI 550A and 560A EQ プラグインをコンソールのすべてのインプットチャンネルに使ったよ。おかげでトラッキングの時に適切なEQ処理を施せた。僕は、EQの調整を後回しにするような「フラット」なレコーディングがあまり好きじゃないんだ。

2台の Apollo x8p があれば、これまでと比べても遜色ないサウンドでレコードを創ることができる。

- それはなぜですか?

その瞬間に反応しているわけだし、早い段階での判断が、後のミックスの方向性にも繋がっていくからね。

僕は、Green Day のアルバムをレコーディングしたロサンゼルスのスタジオに、70年代初期の Quad 8 2082 という20インプットのアウトボードコンソールも所有している。EQはそれほど使っていないけど、すべての入力は最高のサウンドが得られる内蔵プリアンプを通り、Apollo コンソールと繋がっているよ。

だけど、ロサンゼルスのスタジオを2台の Apollo x8p のみに変更しているところなんだ。つまり、16チャンネルの Unison マイクプリアンプを好きなだけ使えるってことだね。

2台の Apollo x8p があれば、これまでと比べても遜色ないサウンドでレコードを創ることが可能になった。このセットアップで完全に制作がこなせるよ。

ロサンゼルスを拠点とする Walker のスタジオは、まもなく Apollo x8p と UAD-2 Satellite のみを使用することになります。

- この Green Day のアルバムでは、ギターサウンドが明らかに違いますね。スタックされたリズムギターの壁がなくなり、代わりにシングルトラックのパートが増えています。

Billie はギターを重ねるのが大好きで、それを素晴らしいものに仕上げるんだ。僕も何年も同じようにやってきたから分かる。今回のレコードでもそんな感じでいくつかやったよ。

でも、彼と話したことのひとつが、多くの古いレコードで聴くことのできるそのクオリティーの高さについてだ — The Rolling Stones が良い例だよ。ステレオ・フィールドの一方に Keith が、そしてもう一方に Ron Wood や Mick Taylor がいる。

そうすることで、パート間においてとても良いシンコペーションが得られ、トーンも良くなる。2人が一緒に演奏していると、ギターが別物みたいになるんだ。

それは50年代のジャズを彷彿とさせるサウンドで、それぞれの楽器がもう一方と影響し合い、ひとつの楽器を複数重ねることなく、全体のフィーリングを生み出すことになる。

OX は、これまでに出てきたギアの中で、最も有用なもののひとつだ。

- OX Amp Top Box を使って、多くのギターがトラッキングされていますよね?

そうだね。OX は、これまでに出てきたギアの中で、最もスマートで、最も有用なもののひとつだと思う。

僕は自分のすべてのアンプヘッドと Billie の膨大なそれを積み上げ、色分けされたスピーカーケーブルを使い、どのヘッドが OX に接続されているかを常に把握できるようにしておいたんだ。

次に、OX アプリで RIG プリセット(マイク、キャビネット、部屋の設定)をいくつか仕込んだ。Marshall、Fender など、さまざまなアンプのサウンドを補完できるようにね。

「OX Amp Top Box は凄いね。Green Day のレコードを制作している時、誰からも『それは OX のキャビ?マイキングしたキャビ?』なんて聞かれなかった」と Walker は語る。

ところで、OX に加えて、ナイスな本物のマイクをセットした 2x12 のキャビネットも使っているんだけど、制作途中で、「どれが本物でどれがそうでないのか、分からないな」ってことになったよ。

「ねぇ、そのサウンドは OX?それともマイキングされてるキャビ?」なんて誰も思わなかった。ただの一度もね。本当に刺激を与えてくれたよ。

- Mike Dirnt のベースはどのように録音されたんですか?他の Green Day のアルバムとは違う印象です。

そうなんだよ!彼にフラットワウンド弦を張った僕の Fender Mustang ベースを弾いてもらったこともある。「ショート・スケールのベースを弾こうよ、そうすれば大好きな60年代、70年代のクールなガレージやグラム・サウンドを得ることができるだろうね」と言ったんだ。

Mike のベースには UAD Ampeg B-15N Bass Amplifier プラグインを使ったんだけど、曲ごとにプリセットをたくさん創っておいた。時にはもこもこした感じに、またある時はブライトに、といった具合に、ベースサウンドにバラエティが欲しかったからね。

Walker が愛用している UAD プラグイン

- マスターバスにはどのような UAD プラグインを使うのがお好きですか?

前置きしておきたいんだけど、僕はミックスエンジニアではないんだ。自分のレコードのミックスは他の人にやってもらうのが好きだし、キックの音創りに4時間もかけるのは好きじゃない。

ミックスは他の人に任せているよ。今回の Green Day のアルバムは、Tchad Blake にお願いした。Green Day の長年のエンジニアである Chris Dugan も数曲のミックスを担当している。Chris は格別だから、Jewel や Wallflowers の新譜など、他のプロジェクトでも仕事を依頼しているんだ。

とは言いつつも、僕のミックスバスのチェーンでは、大概 SSL 4000 G Buss CompressorPultec EQP-1A を使っている。10 kHz 辺りのトップエンドは素晴らしく、決して痛くなることがないし、60 Hz 付近のボトムもグレートだからね。

そして、1.5 kHz 辺りで全体的な中域のバンプが少しだけ欲しい場合には、UAD Pultec MEQ-5 を使っているよ。

そこから Brainworx bx_digital V3 で全体的なトーンシェーピングを行っている。これはM/Sコントロールも備えているから、乱用しない限りは素晴らしいサウンドでステレオイメージを微調整できるよね。10%くらいにしてみるとどうだろう。これによって、「フェイク」のようなステレオイメージングを行わなくても、音像を広げることができるんだ。

最後に、Shadow Hills Mastering Compressor を使うことが多い。サウンドがイカしてるからね。理屈じゃないんだ。素晴らしい、ラウドなマスタリングプリセットを選んで、そこから微調整を加えているよ。

僕は、ノートとトランジェントを掴んで、ダイナミクスを損なわずにレベルを引き上げるやり方をとても気に入っている。レベルをうまくゼロまで上げるためにね。

「僕は、EQの調整を後回しにするような “フラット” なレコーディングは好きじゃない。早い段階でEQを決めることで、後のミックスの方向性を知ることができるんだ」

- テーププラグインを使ったことはありますか?

ときどき、Shadow Hills を UAD Ampex ATR-102 Mastering Tape Recorder にサブアウトして、1/2インチのテープを使ったりする。とくにテープが持っている独特の色が欲しい場合はね。カセットのような質感も得られて、本当にクールだよ。

- 最後に、UA LUNA をベータテストした経験について少し教えてください。第一印象はいかがでしたか?

LUNA レコーディング・システム は驚くべきもので、多くの人に現在のDAWからの移行を促すものとなるだろう。僕が Pro Tools でのレコーディングに耐えられないのは、今日の多くのアーティストが当たり前と思っていることを処理するのに、あまりに時間がかかるということなんだ。

これは僕が創るような有機的なレコーディングには当てはまらないかもしれないけれど、例えば Ableton Live を使っているラップトップ・プロデューサーと仕事をしていると、「ねぇ、曲のキーはさっと変えられる?」とか、「テンポを 5 BPM 遅くしてくれない?」と尋ねられるだろう。そうなると「長めのランチに出かけることになると思うんだけど......3時間かかるよ!」みたいな感じになっちゃうね。

LUNA レコーディング・システムはマジで最高だよ!

- James Rotondi

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