Hookup,inc.

コライトを駆使する Akira Sunset 流 "J-POP 制作術"

音楽ユニット「Safarii」のメンバーとして活動する一方、乃木坂46などのヒット曲を数多く手掛ける作・編曲家としても活躍中の Akira Sunset(アキラ サンセット)氏。近年は、トラックメイカーとの共同作業による「コライト」を駆使して、次々と曲を生み出しています。その制作手法と自身のプライベートスタジオでの作業について、お話を聞きました。

今はオンラインでコライトをしているので、どこにいても曲作りができる


- Akira さんは元々ハワイでデビューされたそうですね。どんな音楽を聴いて育ったのですか?

中学生までは普通にJ-Popを聴いて育ちまして、尾崎 豊や X、BOØWY などが好きでよく歌っていました。尾崎で弾き語りを覚え、文化祭で歌ったのがキャリアの始まりです(笑)。その後、高校時代にレコードを買うのが流行って、その頃に聴き始めたヒップホップやR&B、レゲエなどにハマりました。そしてヒップホップのユニットでデビューさせて頂くのですが、当時のヒップホップ界隈では、「リアルだ」とか「リアルじゃない」みたいなしがらみが結構厳しくて、「ちょっと違うなぁ……」と感じていたんです。そんな中、伯父がハワイ出身で何度か遊びに行っているうちに、ハワイで独自に進化したレゲエやヒップホップに出会い、そこからハワイアン・レゲエにどっぷり浸かりました(笑)。元々J-Popも大好きだったので、かなりミックスされていると思います。

- そこから作曲家として、楽曲提供を始めることになったきっかけは?

ソニー・ミュージック在籍当時に「お前はもっと曲を書け」と言っていただいて、ちょこちょこ他のアーティストに向けて書くようになりました。その後、ソニーとは契約が切れることになるのですが、そのタイミングで「乃木坂46というグループをやることになったから曲をたくさん書いてね」と言われ、たくさん書き始めました。はじめはソニー案件ばかり書いていましたね。

- プライベートスタジオで制作をするようになったのも、その頃からですか?

スタジオというほどのものではないですが、自宅の作業部屋と、事務所に簡単なレコーディングブースを作りました。作家活動を始めてから、色々なつながりが出来たので、若い才能をもっともっと伸ばしていきたいと思い、音楽作家事務所を作ったんです。そこのブースは当初、「プリプロとかに使えればいいかな」くらいに思っていたのですが、今ではメジャーでリリースした作品も何作かそこで録っています。

- 2つのスタジオはどのように使い分けているのでしょうか?

自宅の作業部屋では作詞・作曲・編曲、事務所ではレコーディングをしています。最近では編曲をやることがほぼなくなり(元々苦手でして...)、主にオンラインでコライトをしているので、わりとどこにいても曲作りができるようになりました。

- コライトというのは、1人で完結させる作業とどんな違いがあるのでしょうか?

自分で作る曲はわりと手グセに逃げがちなんですけど、コライトでは、先にトラックを頂くことで、「このコードにメロをどう乗せていくか」というパズルゲームのような感覚で作れます。あと、締切に絶対間に合わせないと相手に迷惑をかけてしまう - というのが一番大きいかもしれません(笑)。

- ご自身のボーカリスト/ギタリスト/ラッパーとしての経験は、作家活動にどう活きていますか?

ボーカルをやっていたので、やはり「どうしたら歌がよく聴こえるか?」という視点で、アレンジやメロディ作りができていると思います。サビ頭が一番大事ですから、そこを印象的な詞やメロにできるかどうかは意識していますね。ギターに関してはジャカジャカ弾いていた程度なんですが、コードのボイシングを考える時に経験が活きていると思います。「1弦はステイした方がカッコいい!」みたいなノリで、シンセとかのボイシングも考えています。一番重宝しているのはラップを研究していたことですね。他の作家さんとは少し違ったリズム感でメロが作れるようになったと思います。たくさんの素晴らしい作家さんがいらっしゃるので、自分の作品をどう差別化していくのか。それを大切にしています。

機材は作業中にずっと目に入るものなので、デザインの良さがすごく重要


- 制作機材に関しては、以前から Apollo Twin を使っているそうですね。

以前は Apollo Twin がメインでしたが、今はラックが入るデスクに変えたので、ラック・マウント・タイプの Apollo x8 にしました。事務所のレコーディング・スタジオでは Apollo x6 を使っています。そこまでたくさんの入力チャンネルはいらないんですけど(笑)、作業中にずっと目に入るものなのでデザインの良さがすごく重要だと思います。コライトで外に出る時は Arrow を持っていきます。

- Apollo を導入してから、楽曲制作の進め方に変化はありましたか?

Apollo Twin や Arrow のように、大きなボリューム・ノブが付いていて手元で操作できるタイプは直感的でとても便利です。使い勝手が悪くて集中が途切れてしまうのは一番イヤなので、かなり重宝しています。

- 楽曲やデモの制作時によく使う UAD プラグインは?

リバーブはほぼすべて、UAD の Lexicon 224 Digital Reverb を使っています。これもデザインが良いのが一番の理由ですけど、使い勝手もいいですね。

- ギターを録る時も、UAD プラグインを活用していますか?

エレキを録る時に、歪み加減が丁度良くて気に入っているのが、最初から入っていた Softube Amp Room Half-Stack です。デモのギターは、ほぼこれで録っちゃうくらい気に入っています。

- Apollo Unison を利用して録ることはありますか?

これも最初から入っていたプラグインなんですが、UA 610-Bをボーカルを録る時に Unison で挿しています。最近は Rupert Neve Designs の Shelford Channel を導入したので、UA 610-B をガッツリとかけることはなくなりましたが、出先などでは今も使っています。

Rupert Neve Designs Shelford Channel
Rupert Neve Designs Shelford Channel

- 仮歌シンガーさんの歌を録る時は、どんなセッティングにしていますか?

僕が歌って録る男性ボーカル用と、女性の仮歌さん用とでざっくりとセッティングを分けています。変更する箇所は主に入力ゲインくらいですが、Shelford Channel の SILK ボタンのオン/オフによっていい味が出たりするので、曲によって使い分けています。

- 先日、Townsend Labs Sphere L22 を試したそうですね。

これは本当にいろんな可能性があって素晴らしかったです。それこそ歌い手によってセッティングやモデリングを色々と分けられるので、もっと研究したいなと思っています。

- 最後に今後の目標を教えてください。

作家事務所を立ち上げて5年が経ち、後輩作家も育ってきたので、J-Pop にとらわれず、「音のあるところに HOVERBOARD Inc, あり」と言われるような未来を目指したいです!

Akira Sunset

自身のユニット「Safarii」として2007年にハワイでデビュー。2008年には、Sony Music Recordsからメジャーデビューし、3rdシングル「この恋にさよなら」がスマッシュヒット。2012年からは「波乗り作詞作曲家」と釘打ち、他アーティストへの作詞や楽曲提供といった活動を始める。乃木坂46に提供した、自身作曲の「気づいたら片想い」や作・編曲した「今、話したい誰かがいる」、「ハルジオンが咲く頃」が、それぞれ年間オリコントップ10入りを果たし、大ヒット。乃木坂46には2ndシングル収録曲から数多くの楽曲を提供しており、グループ史上最多の作曲数を誇る。2017年は郷ひろみの最新シングルのサウンドプロデュース。9月には乃木坂46主演映画「あさひなぐ」が公開し、主題歌「いつかできるから今日できる」の作・編曲を担当。ミリオン超えを果たす。2018年、AKB48に提供した「ジャーバージャ」もミリオンを越え、トータル売上枚数が500万枚を突破。5年連続でオリコン年間作曲家ランキング・トップ10以内に入る。アーティスト、アイドル、アニメやNISSAN、NTT Docomo、JA全中などの企業系楽曲まで幅広く手掛ける。また、HOVERBOARD Inc,代表取締役として後輩作家の育成に取り組んでおり、現在では11名の所属作家、30名を超える提携作家が在籍。J-Popはもちろん、アニメ、映画、ゲーム、企業、様々な案件に取り組み、「音のある所にHOVERBOARDあり」と言われる未来を目指している。

関連記事

ページトップへ