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Universal Audio : チューブとソリッドステート・コンプレッサーの基本

チューブ・コンプレッサーとソリッドステート・コンプレッサーの基本的な機能と、そのクリエイティブな活用法について学びましょう。

チューブとソリッドステート・コンプレッサーの仕組みを学ぶ

エンジニアは、ダイナミクスを整えたり、パンチを加えたり、明瞭度を高めたり、トラック間のバランスを取るために、コンプレッサー(以下、コンプ)を使います。しかし、そもそも何がコンプの使用を左右するのでしょうか?そして、なぜ他のコンプではなく、定番のコンプが選ばれるのでしょうか?

本記事では、伝説的なチューブ・コンプとソリッドステート・コンプのサウンドの違いを掘り下げ、それぞれの強みを制作で活かしていくヒントをご紹介します。

コンプレッサーの授業

多くのエンジニアは、各ソースに対する反応の仕方を熟知している定番のコンプを好んで使用します。このようにプラグインや機材のことをよく知っておくと、多くの情報に基づき、決断を早く下せるため、貴重な時間を無駄にせず済みます。

ここでは、人気のチューブ・コンプ/ソリッドステート・コンプの種類、そしてその基本的なアタックとリリースの特性に焦点を当てます。ただし、いずれの設計においても、トランスが持つ独自のキャラクターによって微妙な歪みや倍音が付加されているという点もお忘れなく。本記事では主要なコンポーネントとして、チューブとトランジスタを取り上げます。

「ダイナミクスをコントロールしたいが、コンプレッサーの "効いている感" を求めていない場合は、オプティカル・コンプを使ってみましょう。」- W. Shanks(UA シニア・プロダクト・マネージャー)

チューブの虜

チューブ・コンプは、トラックをまとめ、あたたかさや倍音、そして時代を超えたアナログ感を加える「接着剤」として機能します。

史上最高のボーカル・コンプと言っても過言ではない Teletronix LA-2A は、1950年代のレコーディングに革命をもたらした象徴的なバルブ・コンプです。そのユニークなチューブ駆動型のオプト式ゲインリダクションは、遅いアタックとあたたかい質感をもたらします。LA-2A は比較的「緩やか」で、速いダイナミクス・コントロールよりも、レベルの微調整に適していると考えられていますが、それこそがまさにチューブ・コンプの真骨頂であり、ソースを潰すことなくトランジェントをうまく丸めてくれます。

UA 175B / 176 チューブ・コンプは、LA-2A の光学式フォトセル設計ではなく、専用のゲインリダクション・チューブを採用することによって、独特なチューブのフレーバーを付加します。クラシックなチューブ・コンプの深みとあたたかさを維持しながらも、アタックはより高速で、より攻撃的なキャラクターが魅力となっています。

「175B / 176 の特徴は、クリップさせずに幅広いレベル調整が行えることです。」- W.Shanks

175B / 176 は、色付けやあたたかさ、倍音を付加することで知られていますが、すべてのチューブ・コンプがそこまで個性的なわけではありません。伝説の Fairchild 660 / 670 は、世界中で人気の高いコンプのひとつですが、エッジやチューブの粘りではなく、より洗練されたレスポンスで好まれています。

当初、20本もの真空管を持つこの巨大なコンプは、マスタリング・エンジニアがレコード・カッティングの直前にダイナミクスを調整する目的で設計されました - ナチュラルで速いアタックが特徴的で、クラシックなポップスやロック、モータウン全盛期からの何百ものヒット・レコードで、そのサウンドを耳にできます。ミックスバスに最適な Fairchild ですが、その明瞭な反応の良さはドラム、ベース、ボーカルにも適しています。

さまざまな真空管やトランスが絡み合うゲイン構造により、バルブ・コンプはサウンドの幅広さ、設定の加減が生み出すテクスチャー、粘り、そして繊細さを提供します。明白なカラーとパンチだけでなく、ほぼすべてのソースに対して洗練された「艶」を与えてくれるでしょう。

ソリッドステート・オブ・マインド

1960年後半より、ソリッドステートの技術がレコーディングの分野でも開発されていったことで、まったく新しいサウンドと動作を持つコンプが生まれました。FETとVCAベースのコンプは、初期のチューブ回路では実現できなかった、より速いアタックタイムとコントロールを実現しています。

「コンプは実用的なツールとしても、創造的な "エフェクト" としても捉えられます。1176 はその機能だけでなく、音作りのツールとしてクリエイティブに使えます」- W.Shanks

この時代から、コンプがトラックにカラーとパンチ、そして刺激を与えるエフェクトとして、クリエイティブに使われ始めたのは偶然ではありません。1968年には、Bill Putnam Sr. のビジョンであった「超高速なアタックを持つコンプ」が、ソリッドステートの継承者 1176 のリリースによって実現され、瞬く間に世界中のスタジオに広がりました。

オールトランジスタの回路を搭載した世界初のピークリミッターであり、超高速なFETゲインリダクションで定評ある 1176 Classic Limiting Amplifier は、より高いゲインと速いアタックをもたらし、見まごうことのない個性を発揮します。なぜこれほどまでに使われるようになったのかを不思議に思われた方は、その使いやすさと柔軟性、そしてほとんどのソースに対応可能な高い信頼性について、考えてみてください。

私の父は、常により速いアタックを持つコンプを求めていました。1176 は、176 からの、高速なアタックと大胆なサウンドの質感を兼ね備えたスタジオ・クオリティーのコンプを作るという、彼の最終的なビジョンが具現化されたものです。- Bill Putnam Jr.

バルブ・コンプと同様に、ソリッドステート・コンプも独自のカラーを持っています。これらのコンプは、チューブ式に比べて機敏で洗練されていますが、色気は控え目です。例えば、VCAベースの SSL 4000 G Bus Compressor は、高い透明度とヘッドルームで有名ですが、ミックスにまとまりやパンチ、鮮明さを与えながらトラックを「接着」していく様は、バルブコンプを連想させるものとなっています。

さらにカラフルなソリッドステート・コンプの例として、Empirical Labs EL8 Distressor が挙げられます。TR-808 からボーカルまで、あらゆるソースに使える汎用性の高さと、ザラっとした質感を備える Distressor は、これまでのソリッドステートに対するイメージを払拭します - クリーンでも無着色でもなく、柔軟性に富み、多くの点から見て現代のクラシックと言えるでしょう。

EL8 Distressor は、比類なき高速のアタックタイムと、豊かなカラー、個性を備えています。

コンプを使ってより深く

フォーラムでの会話から、ソリッドステートとチューブに対して固定観念が持たれているように思います。クリエイター、プロデューサー、エンジニアとしては、臨機応変にさまざまなタイプのコンプを使い分け、ソリッドステートとチューブ両方の特性を活用していくことが重要です。回路の機能や技術面について詳しくなるだけでなく、新しい機材やサウンドをワークフローに採り入れる際には、耳を使うことを忘れず、大胆に、限界を打ち破りながら、無数のサウンドやテクスチャーを楽しんでください。

- McCoy Tyler

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