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Universal Audio : Jacquire によるジャッジメント!ビンテージアナログハードウェア vs. Apollo & Unison プラグイン

Jacquire King が Apollo と Unison™ マイクプリアンプを用いたセッションを通じて、ビンテージのアナログハードウェアにどこまで迫れるかを実証します。

Jacquire King は、ダイレクトで的を得た、ごまかしのない表現 - 彼がプロデュースとミックスを行う時と同じように話してくれました。この姿勢は、ナッシュビルの伝説的な Blackbird Studio から Kings of Leon、Buddy Guy、そして Tom Waits のグラミー受賞作品での仕事に至るまで一貫しています。

長年の Universal Audio プラグインとアナログギアのファンであり、30回にもおよぶグラミーノミネートと複数回の受賞を果たした King は、Blackbird Studio G でのエレクトロニック・ソウル・アーティスト Jamie Lidell と豪華プレイヤー陣で構成されたライブセッションで、Apollo の Unison™ マイクプリアンプテクノロジーをテストしました。

私たちは Apollo インターフェイスと Unison マイクプリアンプを用いたこのセッションを通じて、彼のミキシング、レコーディングそしてトラッキングについての洞察に目を凝らしました。

- アナログとデジタルのレコーディング分野で幅広く仕事をしてきたエキスパートとして、Unison テクノロジーはあなたとあなたのプロジェクトへどのような意味をもたらしましたか?

Unison は本当に興味深いもので、フロントエンドやアナログ領域のエミュレーションの可能性を明確に示しています。これまで完璧な答えを持つツールに出会ったことはありませんでしたが、 Unison は Universal Audio のシステムと Apollo をコンピューター内で完璧なトラッキングとミックスを実現させるプラットフォームへ到達したことを感じさせてくれるものです。

今回の Jamie Lidell と素晴らしいバンドによるセッション収録の目的は、わずかな風味の違いはあるにせよ、Apollo と Unison がいかにアウトボードギアに匹敵するものかを実証することでした。ちょうど Apollo と Unison がどこまで使えるのかを知りたいと思っていたのですが、それは結果が雄弁に語ってくれたように思います。かなり満足していますよ。

- アナログ式のワークフローで収録可能な Unison の能力は、あなたを魅了するものでしたか?

もちろん。Tom Dowd や The Beatles、そして多くの機材がなくても名盤を生み出した全てのレジェンドたちのように大胆にいきましょう。これこそが私たちの進むべき道です。音決めしたらあとは突き進むのみ、です。

例えばコンプレッションされたダーティーな何かが必要な場合、実際にそうしてしまいましょう。現在手にできるテクノロジーの落とし穴は、あまりに自由なためにミックスダウンの段階まで何もコミットしない誘惑にあると言えます。ミキサーとしては、最終段階であらゆる決定を下し、全てがまとまるよう求められるというのは、クリエイティブなヘッドルームとしてあまりに厳しく感じます。

Tom Dowd や The Beatles、そして多くの機材がなくても名盤を生み出した全てのレジェンドたちのように大胆にいきましょう。音決めしたらあとは突き進むのみ、です。

- 掛け録りは最終的な作品の仕上がりにどのように影響を与えるものでしょう?

掛け録りは各パートのサウンドをどのように録るのか、あるいはどう重ねるのかといった観点の道標となります。Apollo と Unison プラグインで掛け録りを行うのであれば、高価なアウトボードギアをたくさん揃える必要はありません。なぜなら、実機を揃えることからすれば想像もできないほどのお手頃価格で非常に近い体験を得ることができるからです。

- モバイルレコーディングの際にUnisonテクノロジーから恩恵を得られることはありましたか?

ええ。アイスランドのロックバンド Kaleo のレコード『A/B』では、旅先でいくつかボーカルを録りたかったので、Unison 対応の Neve 1073 Mic Preamp & EQ を立ち上げた Apollo Twin と Shure SM7B を使ってボーカルを録音しました。

スタジオでフルアナログのチェーンで録音してあった既存のトラックにこれらのテイクをパンチしていったのですが、耳の肥えた人たちばかりであっても、誰一人その違いを指摘する者はいませんでしたよ。

- ミキシングにおいて、特にドラム、ベース、ボーカルに対しパラレルコンプレッションを使うことがあなたの定番テクニックのひとつとなっていますが、その活用術についてお話しいただけますか?

パラレルコンプレッションのアドバンテージは、トランジェントに気を取られずより思い切ったキャラの際立つサウンドに向かわせることができる点です。強烈なテクスチャーをブレンドすることで、ソフトでダイナミクスがある程度 "安定化" されたトーンがクールなものとなるでしょう。例えばより多くのルームトーンを引き出すことができ、それを圧縮されていない信号とどのようにブレンドしていくかを決めることができます。

- より自由度の高いパラレルコンプレッションのために無垢な原音を好まれますか?

必ずしもそうではありません。パラレルコンプレッションを使用しているからと言って、ソースをコンプレッションしないというわけではありません。より穏やかな仕上げ、微妙なニュアンスの調整、多少の音色の整形など、異なるやり方をしているだけです。パラレルでは、好みに合わせてバランスを取ることができます。トランジェントを少しだけ残したいなら、コンプレッションされていない、もしくは薄くコンプレッションされたドライなサウンドよりもパラレルサウンドが強くなるようにバランスをとります。

例えばドラムの場合、通常パラレルチャンネルは底上げ的に用いられます。これはドラムサウンド全体を整えるのに有効です。単一のドラムトラックを個別でコンプレッションするのは難しいですが、全体を特徴づけたり、明瞭にすることに役立つトランジェントのエネルギーを保つことが期待できるでしょう。

- キック/ベースのパラレルバスで用いられた UAD Fairchild コンプレッサーをはじめ、Jamie Lidell のセッションでお使いになられた様々なUADコンプレッサーについて、どのようなキャラクターがお好みか教えてください。

Fairchild は遅めの設定で、よりオールドスクールなアタックとリリースで処理を行います。少しアグレッシブに使ってベースやキックにブレンドすると、全てをうまくまとめてくれます。概して、私はこういった古い設計の、柔軟性に乏しくてもより個性的なサウンドとキャラクターが得られる古いスタイルのコンプレッサーが好みなのです。こういう類のギアはパラレルコンプレッションで大変良い働きをしてくれます。シンプルで、使いやすいということもありますね。

こちらより非圧縮のオーディオファイルをダウンロードして試聴することができます。(80 MB, .zip)

- UAD Brainworx bx_refinement EQ、Neve 33609 Compressor、Ampex ATR-102 Mastering Tape Recorder、Pultec EQP-1A、そして Precision Limiter といった、Jamie Lidell セッションのミックスバスに用いられたシグナルチェーンは非常に興味深いものです。これらはいかなる理由でチョイスされたのでしょうか?

私は Brainworx でいくらかイコライジングを施してブレンド全体を優しく整え、ローエンドをクリーンアップするのが好きです。適切な方法で余計な超低周波を除去すれば、ミックス内の全てにハイパスを使わなくても、程良いロー感を保つことができるのです。

そのためトップエンドはオープンなまま、わずかなトータルEQ処理で最初のコンプレッションステージへ送り込まれます。今回は Neve 33609 を使いましたが、SSL G Bus Compressor になる時もあります。

- ミックスバスの最初のコンプレッサーの設定について教えてください。

通常、スレッショルドを高めにしておきます。そうすることで、1.5:1 など非常に低いレシオで可能な限りレベルをプッシュすることができます。最大で 3 〜 4 dB コンプレッションするとしても、レシオは上げたくありません。スローアタック、ファーストリリース。とても優しい感じで、アグレッシブになり過ぎず、過度にトランジェントにヒットしないような設定ですね。

- では、ミックスバスにおける Ampex ATR-102 プラグインの活用については如何でしょう?

これはいわゆる "テープサウンド" を得るために使用しているわけではありません。音をまとめる程良い接着効果があり、テープの種類や再生速度の違いが生み出す特有のEQカーブが魅力的だからです。素晴らしいトーンボックスだと言えますね。また、素材によってはステレオ音像を拡大したり、狭めたり、特定の周波数帯の存在感を示すことにも役立ちます。私はたいていクロストーク機能をオンにしていますよ。

- Pultec Passive EQ Collection はどうでしょうか?

ひとたびミックスにEQ、コンプレッション、トーンシェイピングを施してしまえば、Pultec EQP-1A は言わば最後の一押しとなる "スマイリーフェイス" のような存在です - トップエンドをオープンにし、ボトムエンドを持ち上げることで個別にイコライジングする必要はなくなります。ギターは十分に明るいか、ドラムのバランスを取るためにシンバルのレベルは適正か、ボーカルはしっかり抜けてくるか、などを確たるものにすることに比重が置かれます。

素晴らしいミックスに不可欠な3つの要素、それはドラム、ボーカル、そしてローエンドです。これらをしっかり押さえておけば、残りの部分は然るべき所に落ち着くでしょう。

個々の要素を最高級に磨き上げていくよりもここで EQP-1A を使うことの方が良好な結果をもたらすでしょう。それらは全て、この時点でかなり良い形になっているはずですから。よってここではプロジェト全体の個性と方向性を形作るために使用します。

UAD Precision Limiter については - 基本的に私はピークがつくことを好みません。出力コンバーターのメーターを赤くしたくない、つまりクリッピング状態で使いたくないのです。少しだけヘッドルームを残しておくためにこれが挿さっています。

- ミックスにおいて鍵となる要素は何ですか?

素晴らしいミックスに不可欠な3つの要素、それはドラム、ボーカル、そしてローエンドです。残りの部分は比較的簡単に然るべき所に落ち着くでしょう。3大要素はしっかり押さえておく必要がありますよ。そしてそれらを取り囲む周りの全てがしっくり感じられるようにします。要は楽曲のストーリーとリズムです。トップラインのメロディーとグルーヴを軸に、他の楽器や要素はそれを引き立たせるようにしましょう。

- James Rotondi

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