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Universal Audio : Apollo ─ 素晴らしき音質の背景

世界で最も信頼されているオーディオ・インターフェイスに隠された科学。

競争の激しいオーディオ・インターフェイスの分野において、Universal Audio の Apollo は抜きん出た存在です。2012年の登場以来、Kendrick Lamar や The Black Keys、Ariana Grande、Green Day、そして Tyler, the Creator まで、数多のグラミー受賞アルバムの制作に採用され、今日も世界中のスタジオで使われています。

しかし、Apollo が競合製品よりも優れている理由は、一体何なのでしょうか?

この記事では、デスクトップおよびラックマウント・インターフェイスである Apollo シリーズ、なかでもその最高クラスの AD / DA コンバーターに焦点をあて、卓越したクオリティーを支える開発者に話を聞きます。

シンプルな設計思想


Apollo は Universal Audio の強固なチームワークの結晶ですが、その中心となったのは、UA のテクニカル・フェローである Dave Rossum です。

シンセサイザーにおける革命の先駆者であり、ポリフォニック・キーボードの発明者、そして E-mu Systems の共同創設者でもある Rossum は、E-mu SP-1200 サンプリング・ドラム・マシンで現代音楽の形を変えました。この画期的なデバイスは、長きにわたってポップスやヒップホップの名盤に数多く登場し、その中心的役割を果たします。

Rossum は、伝説的なデザインのすべてにおいて、ひとつの基本原則を指針としており、Apollo も例外ではありません。

「私はシンプルな設計を目指しています。それは、数値的に優れたスペックに仕上げるために調整を行うのではなく、混じりけなく機能する回路トポロジーを実現することを意味します。私たちはスペックを追っているのではなく、サウンドを求めているのです。たしかにスペックは重要です。しかし、熟練した耳による実際のリスニングも重要です。科学的に測定するにはあまりにも微妙なニュアンスが含まれますが、経験豊かな耳にははっきりと聴き取れるものですね。」

「リスニング・テストはさまざまです。非公式な総意に基づくシンプルなものもあれば、より洗練され、科学的に裏付けされた、正確なダブル・ブラインド・テストとして行われたものもあります。」

「私たちは、複数の同一コピーをプリファレンス・リストに含めることで、リスナーがそのサウンドを実際に聴き分けられるかどうかをテストします。これによって精度が上がり、何が明確に聴き取られ、何が好まれるのかを深く知ることができるようになります。」

クラス最高のオーディオ・コンバーター

すべてのオーディオ・インターフェイスのサウンドの核となるのは、AD / DA コンバーターです。AD / DA とは、アナログからデジタル(AD)へのコンバージョン、そしてデジタルからアナログ(DA)へのコンバージョンを指します。デジタルの世界でサウンドを録音/再生するにあたっては、これらのプロセスがとても重要です。高解像度カメラがあらゆる視覚的なディテールを捉えるのと同様に、高品質な AD / DA コンバーターは、サウンドのあらゆるニュアンスを正確に捉え、それを伝えるために不可欠なものとなります。

「Apollo にとって透明性は絶対的なゴールです。しかし、サウンドには常に何らかの主観性が入るものです。」と Rossum は語ります。

「Apollo に採用した ADC は、とにかくそのサウンドが気に入ったんです。機能やスペックは他のインターフェイスに搭載されているものと同等に見えますが、現代のコンバーターはどれも、独自のカオスな演算アルゴリズムによるクセを持っています。DAC に関しては、一般的に ADC よりも優れたスペックを備えているため、慎重にコンポーネントを選択すれば、透明性の高い設計を実現しやすくなります。」

長きにわたり、Apollo にはさまざまな改良を加えてきましたが、最新の Apollo X Gen 2 インターフェイスでは、かつてないほどの低ノイズと歪み(最高 THD+N 0.000037 %)を実現し、これまででベストな AD / DA コンバージョンを提供します。

「現代のオーディオ・コンバーターは、『デルタシグマ』変調と呼ばれる技術を採用しています。これにより、1980年代の古い『R-2R』コンバーターで必要だった、マッチングの取れたアナログ・コンポーネントが不要になります。

これらは、高度な DSP と非常に高いサンプリングレート(6MHz、あるいはそれ以上)を採用することで、サンプリングに伴うアーティファクト(一般的に量子化ノイズや歪みと呼ばれるもの)をオーディオ帯域外に排除します。

残念ながら、これらの数学的アルゴリズムには望まない共振モードを発生させる可能性が含まれます。よって、サウンドの着色につながるこれらのモードを分散させるべく、意図的に不安定あるいはカオスになるような設計を施します。そしてメーカー各社で独自の実装を行うわけですから、標準的なダイナミック・レンジと THD+N のテストでは良好な結果が得られるよう設計されているにも関わらず、それぞれのサウンドは微妙に異なってくるわけです。

幸いなことに、Apollo X Gen 2 では、歪みとノイズを低減する回路の改良点を数多く発見することができました。

得られた教訓に基づいて、いくばくかの調整を行いましたが、これらはすべて、製品を継続的に改善していくという私たちの取り組みの一環です。

Apollo X Gen 2 インターフェイスは、クラス最高のジッター性能を提供します。オーディオ・インターフェイスにおいて、ジッターはデジタル・オーディオ信号のアナログへのコンバージョン(またはその逆)に影響を与え、ノイズ、微細な歪み、明瞭度の低下といった望まないアーティファクトをもたらします。これは高品質な録音/再生において見過ごすことはできません。

Apollo X Gen 1 では、ラックマウント・モデルにおいて、デュアル・クリスタル・クロッキングというコンセプトを導入しました。これは、クロック・ソースとして最適化された水晶発振器を採用することで、一貫性と正確なタイミングを維持するプレミアムな回路トポロジーです。

Apollo X ラックマウント・インターフェイスでは、44.1 kHz 系のサンプル・レートに1つの水晶発振器を使用し、48 kHz とその倍数(例えば 96 kHz や 192 kHz)にもう1つの水晶発振器を使用します。これによって、オーディオ帯域全体でジッターが最小限に抑えられるため、セッションがどのようなサンプル・レート設定であっても、一貫したサウンドを提供することができるのです。

内部と外部の両方で、デジタル・オーディオ信号の正確なタイミングを維持することはとても重要です。それはコンポーネントの細部にまで及ぶだけでなく、PCB のレイアウト、初期段階での徹底した品質保証にもかかっています。」

Apollo Gen 2 インターフェイスのもう一つの大きな改良点は、ヘッドフォン・アンプです。ヘッドフォンを接続した瞬間にその違いがはっきりと分かることでしょう。従来の Apollo と比較して、THD+N が 0.0013 % から 0.00025 % という驚異的な進化を遂げています。

「これまでの Apollo では、既製の IC を採用していました。しかし、Apollo X Gen 2 では、ディスクリートのコンポーネントからそれを独自開発することで、さらに良いものができると考えました。結果、スペックはもちろん、最も重要である音質の向上を果たすことができたのです。」

「細部にこそ真価が宿ります。競合他社が簡単にコピーできるものではありません。ここには、回路図以上のものがあるのです。」

— Darrin Fox

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