Hookup,inc.

Universal Audio : 青木征洋が弾く UAFX Evermore Studio Reverb

70年代後半に登場したデジタルリバーブ Lexixon 224 のアンビエント・トレイルと、魅惑的なモジュレーションをコンパクトかつエレガントなペダルでもたらす、UAFX Evermore Studio Reverb。その実力をギタリスト青木征洋氏が試します。

Lexicon 224 デジタルリバーブを再現


「最も正確な Lexicon 224 リバーブエミュレーション」と銘打って発表されたのがこの UAFX Evermore Studio Reverb(以下 Evermore)で す。スタジオで仕事をした経験のあるギタリストであれば、Lexicon 224 と言えば名前だけなら聞 いたことがあるであろう超有名なデジタルリバーブです。再現する元の機材がデジタルなので、本ペ ダルは他のアナログ機材のエミュレーションと比較して、より一層再現度が高いと言えます。

帯域ごとに分かれたDECAY

本ペダルの最大の特徴はなんといっても、ディケイタイムを帯域別に設定できることです。基本的 なリバーブのデザインは、BASS/MID/TREBLEの3つのDECAYノブとMIXノブの組み合わせで行 うことになります。

DECAYでは、部屋鳴りのようなほぼ0に等しい長さのショートリバーブから、際限なく響き続ける超ロ ングリバーブまでを幅広く調整することができます。自然な響きから、エフェクターでしか作れない 極端な響きまで、響きの長さで苦労することは無いでしょう。

DECAY
▲3バンドのDECAYを搭載

響きのクセ、個性を形作るMOD

リバーブテールのピッチを揺らすことで、響きに特徴を持たせることができるのがMODノブです。 特にある程度の長さのDECAYを設定した時に効果を発揮するでしょう。Lexicon と言えばその個 性的な響きが特徴なので、このMODをうまく使ってその個性を引き出してください。

MOD

3つのリバーブタイプ

Evermore では次の3つのリバーブタイプを選ぶことができます。

  • Room:密度の高いルームリバーブ

  • Small Hall:適度な密度と複雑なディケイを持つ小さめのホールリバーブ

  • Large Hall:密度が薄く自然なディケイを持つ大きなホールリバーブ

実空間の響きと照らし合わせるのであれば、[Room]の時にDECAYを短く、[Large Hall]であればDECAYを長くするのが最善手のように思われますが、実際には音を聴きながら判断すべきです。あくまで初期反射の響き、密度やテールの個性の違いのみに注目し、アルゴリズムの名前に騙されることなく判断するのが良いと思います。

リバーブタイプ
▲中央のスイッチで、ルーム、スモールホール、ラージホールを選択

値が固定されたPREDELAY

本体側面にはPREDELAYスイッチが付いており、オンにすると各リバーブタイプごとに固定の長さのPREDELAYを付与することができます。RoomやSmall Hallよりは、Large Hallでオンにした時に顕著にPREDELAYの影響を感じることができるでしょう。

PREDELAYをオンにした状態で、RoomやSmall HallでDECAYを極端に短くすれば、部屋鳴りのデザインだけをこのペダルに任せて、テールのデザインをHeavenlyに任せるといった使い方も考えられます。

PREDELAY

Heavenly と同様、どこに配置するかという問題

本シリーズはいずれもモノイン/モノアウトのため、シグナルチェインのどこに配置するのがベストかという問題が生じます。リバーブである以上、後段 に歪みを接続するのは好ましくないケースがほとんどなので、おそらくは歪みペダルとクリーンの アンプの間が最適なポイントとなるはずです。また、ドライ音とウェット音の馴染みが良くない場合 は、Evermore の手前でコンプレッションをかけてダイナミックレンジを狭 めてあげるのもひとつの手段です。

まとめ

リバーブを作り込もうとすると、どうしても複雑なインターフェイスになりがちですが、この Evermore では驚くほどシンプルなコントロールで Lexicon 224 のサウンドを自由に作り込むことができま す。

「これでステレオアウトだったらどんなに良かったことか!」という多くの人の声が聞こえて来きそうですが、そういった混み行った使い方をしたい場合は Del-Verb Ambience CompanionGolden Reverbrator を使った方が、より多くの選択肢の中から望み通りの音を作り出すことができ ます。

そういういわゆるスタジオ的な発想で使うよりは、Evermore を含む UAFX コンパクトエフェクトシリーズは、より「ペダルボー ドに入れるギターペダル」としてカジュアルに使うことを想定しているのだろうなと感じます。

また、UAFX コンパクトエフェクト・シリーズの4機種を触ってみて驚いたのが、アナログとデジタルの境目を意識する必要が無いこと です。実際にはいずれも(トゥルーバイパスでない限り)AD/DA変換を介していますが、デジタル 機器を使う時に気になる入力感度やS/Nなどの問題を意識することなく使うことができるところに Universal Audio の強みが現れていると感じました。

写真:桧川泰治

青木征洋

作編曲家、ギタリスト、エンジニア。代表作:ストリートファイターV、Bayonetta 3、Astral Chain、戦国BASARA3、FF15 Comrades、音ゲー楽曲(チュウニズム、GITADORA、太鼓の達人、Cytus II等)、G5 Project、G.O.D.。

関連記事

ページトップへ