EMT 140 プレートリバーブの忠実な再現
UAFX Heavenly Plate Reverb(以下 Heavenly)は「最も正確な EMT 140 プレートリバーブ・アルゴリズム」を搭載していることを銘打って 発表されました。EMT 140 と言えば世界で最も有名なプレートリバーブのひとつで、UAD の EMT 140 などでその音に触れて親しんでいる方も無数にいらっしゃると思います。
Heavenly には一般的なリバーブのコントロールに加え、EMT 140 のキャラクターの違いを選びながら楽 しめる要素が、シンプルなインターフェイスの中に盛り込まれています。DECAY、PREDELAY、 MIXでベーシックな響きを作り込む点は一般的なリバーブと同様ですが、さらに3種類のプレー トのキャラクターを選択したり、EQによるトーンの微調整、MODによる響きの特徴、個性、主張の デザインができるようになっています。
3つのキャラクターを使い分ける
プレートのキャラクターは[A]がVintage Bright、[B]がVintage Dark、[C]がModern Fullとなっており、 明るさ、暗さ、周波数レンジの広さをここで選び変えることができます。いずれのアルゴリズムでも 非常に濃密な響きを楽しむことができますが、トーンの重心がかなり露骨に変わるため、響きの 中心をどこに持っていきたいかによって適切なアルゴリズムを選んでください。
プレートのキャラクターを選んだら、EQでお好みの明るさ/暗さに調整し、MODでピッチの揺れ具 合を調整します。ピッチの揺れる速度は、本体側面のMOD RATEで[SLOW/FAST]の2段階から選択することができます。FASTにすると、かなり露骨にピッチがウネウネ動くのがわかります。
リバーブの音を作っている間は、MIXを100%、またはかなり高めの値にしておくと調整しやすい でしょう。ギターは特にワイドレンジになりがちなので、リバーブが邪魔だと感じたらプレートAをEQで暗 めにして使う、またはプレートBを明るめにして使うといったデザインが好まれるのではないか と思います。
シグナルチェインのどこに置くのか
一般的なステレオアウトのリバーブであれば、アンプシミュレーターの後ろにも気軽に配置することができます が、本ペダルはモノアウトのため注意深く考える必要があります。
ひとつの接続例としては、歪みペダルとクリーンアンプの間に配置するといった考え 方ができます。もちろんアンプシミュレーターよりも後ろにモノリバーブとして配置しても構いませんし、歪みの前段 に置いたからといって不正解というわけではありませんが、あまり Heavenly の後に信号を歪ませ る要素が続かないよう注意した方が、美しい響きや望ましい結果を得られるのではないかと思いま す。
コンプレッションと組み合わせる
リバーブのドライ音とウェット音が分離してしまって自然な響きが得られない時は、リバーブの手 前でドライ音にコンプレッションをかけてしまうのも手です。ドライ音のダイナミックレンジが広過ぎると、特に強いピッキングを行った際にアタックの瞬間が非常にドライで、リリースに移行した途端 に強いリバーブがかかるような気持ち悪さが生じがちです。
ある程度、ドライ音のダイナミックレンジをコンプレッサーで狭めてあげることで、リバーブのドライ 音とウェット音のダイナミクスの関係性を良好にすることができる場合があります。UAFX 1176 Studio Compressor との相性も良いと思います。
その他、トゥルーバイパスとバッファードバイパスの切り替えや、リバーブをオフにした後もウェッ ト音が鳴り続けるようにする設定も簡単に行うことができます。
まとめ
正直「これがステレオだったら良かったのに!」という声が世界中から聞こえてきそうですが、そう いった要望については、応えてくれる製品が UAFX シリーズにすでに存在するのでそちらを選ぶのが 賢明でしょう。
このサイズ、重量で、EMT 140 の濃密なプレートリバーブをこれほど忠実に再現できるのは間違いなくあ りがたいことなので、特に「歪みはペダルで作って、アンプはクリーンのまま」というギタリストに使って みてほしいペダルです。実物のプレートリバーブは数百kgもあるので気軽に持ち運ぶのは不可 能ですから。
写真:桧川泰治
青木征洋
作・編曲家、ギタリスト、エンジニア。代表作:ストリートファイターV、Bayonetta 3、Astral Chain、戦国BASARA3、FF15 Comrades、音ゲー楽曲(チュウニズム、GITADORA、太鼓の達人、Cytus II等)、G5 Project、G.O.D.。