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Universal Audio : 青木征洋が弾く UAFX Orion Tape Echo

70年代のビンテージ・テープディレイ Maestro Echoplex EP-3 の、絶妙な霞み具合をもたらすディレイエフェクト UAFX Orion Tape Echo。その性能と活用のコツをギタリスト青木征洋氏が紐解きます。

Maestro Echoplex EP-3 Delay を再現


世の中には沢山の EP-3 クローンがありますが、その中でこの Orion UAFX Tape Echo は「最も正 確な Echoplex テープディレイ・エミュレーション」と銘打って発表されました。見た目は一般的なデ ジタル・コンパクトエフェクターですが、出てくる音は確かにテープディレイそのものです。コントロー ルは非常にわかりやすく、説明書なしで全容が把握でき、UAD の EP-34 Tape Echo を 触ったことがある人なら特に慣れ親しんだ操作感、音と言えます。

ベーシックなアナログディレイ

本ペダルは一般的なディレイのペダルと同様、DELAY、FEEDBACK、MIXの3つのコントロール でディレイ効果を作り込むことができます。DELAYでタップ音の間隔、FEEDBACKでタップ音が繰り 返される回数、MIXでドライ音とウェット音のバランスを調整すれば、ベーシックなディレイとして の音作りは完成します。

Orion ならではの“アナログ”の表現

テープエコーは、アナログの磁気テープに対し「信号を録音しては削除する」という動作を繰り返 す関係上、必然的にテープが経年劣化していきます。Orion ではこの経年劣化を再現し、3種 類のテープのコンディション(新鮮さ)を選ぶことができます。

テープ
▲中央のスイッチでテープの経年劣化具合をセレクトできる

MINTが最も新しく、WORN、OLDの順に古くなっていきます。テープが経年劣化すれば録音され る信号の忠実度も当然下がっていくので、これをポジティブに捉えれば、より個性的なディレイを生 み出すように変化していきます。

このTAPEの選択は、その下のWONKコントロールと組み合わせて使うと、より効果的です。WONKを上げていくと、フラッターやワウと呼ばれるピッチの変化がより顕著に起きるようになります。フラッターは短い時間内での急激なピッチの変動で、ワウは数秒かけて起こるゆるやかなピッチの変 動です。テープの状態が古い時にWONKをより強くかけることで、テープの古さに対する説得力 をもたせることができます。

WONK

テープエコーでは、テープに録音する信号のレベルによっても、そのキャラクターを使い分けることができ、それは Orion においても再現することが可能です。一般的にテープエコーへの録 音レベルが高ければ高いほどS/N比の観点で有利になりますが、高過ぎる録音レベルはすなわ ち歪みへと直結します。

この時の録音レベルはREC LEVELノブで再現することができます。時計回りに回すとディレイ音 が歪み始め、反時計回りに回すとS/Nの悪いディレイ音になっていきます。REC LEVELは当然 ディレイのウェット音の音量に大きな影響を与えるため、MIXやDELAY、FEEDBACKの調整を始 める前に何となく音色作りとしてREC LEVELを決め打ちしておいて、それからMIXを調整する 方がディレイのデザインのワークフローとしてはスムーズになるでしょう。

またもうひとつのアナログ要素として、実機のプリアンプの歪みを再現する機能が付いています。さらに、その歪みが、ペダルをオフにした時にも乗り続けるか否かを設定することができるようになっているため、たんにディレイとして使うのか、それともトーンシェイパーとしてシグナルの流れの中に本 ペダルを置くのかを意思を持って選ぶことができます。

PREAMP
▲リアのPREAMPスイッチをオンにするとプリアンプの歪みが再現され、BYPASSスイッチをTRAILSにするとペダルをオフにした時にもその歪みが乗り続ける

PREAMPがオンになっていると確実にダイナミックレンジが狭まるのを感じます。アンプ直のセッ ティングでPREAMPをオンにすると若干生々しさが落ちてしまいますが、言い換えると扱いやす い音になると捉えることもできます。

また UAFX コンパクトペダルシリーズはいずれもモノ・イン/モノ・アウトとなっているた め、信号の流れの中で配置できる場所がある程度制限されます。Orion はテープエコーなの で、例えば歪みペダルとクリーンのアンプの間に置くといった形が一般的かと思われますが、アンプシミュレーター/アンププロセッサーの後に配置しても問題なく仕事をしてくれるでしょう。

まとめ

EP-3 を彷彿とさせるようなダーティーで個性的なアナログテープエコーが、これだけコンパクトで軽 い筐体の中に収められたのは、ギタリストにとって本当に感激すべき出来事だと思います。

MINTを選んで、WONKを下げて、REC LEVELをクリーンな状態にしてもなお、かなり特徴的な歪みを 感じさせるエコーを生み出すので、ミキシングの要領で空間をデザインするツールとして扱うより は、ひとつの楽器だと思って自由に過激に音を作り込んでいくのが楽しいペダルではないでしょう か。

写真:桧川泰治

青木征洋

作・編曲家、ギタリスト、エンジニア。代表作:ストリートファイターV、Bayonetta 3、Astral Chain、戦国BASARA3、FF15 Comrades、音ゲー楽曲(チュウニズム、GITADORA、太鼓の達人、Cytus II等)、G5 Project、G.O.D.。

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