青木征洋 a.k.a. Godspeed - Apollo インタビュー

オールインワンプロダクションを行う新世代のギタリスト/音楽プロデューサーとして注目を集める青木征洋 a.k.a. Godspeed 氏は、Apolloを高く評価しているアーティストのひとりです。エレクトリックギターを中心としたストレートな音楽制作環境、そしてギター・インスト音楽の最前線について伺いました。

- どのように音楽に出会いましたか?ご自身のことを教えてください。

中学生の時、B’zのPleasure、Treasureを聴いて、習っていたクラシック・ピアノを辞めてギターを始めました。バンドものが人気のある時代で、最初から技巧的なものが好きでしたね。B’zの松本孝弘さんからの流れでMR.BIGや、ポール・ギルバート知って、洋楽に興味を持つようになりました。本当に何も知らなかったのでヤングギターという雜誌を初めて知った時、たまたま表紙だったイングウェイ・マルムスティーンを見て、ギターの世界には王者といういうのがいるんだなあ、と驚いたんですよ(笑)。すぐCDを買ってきいたら、まあ速いこと、ペンタトニックスケールじゃないこと、全部ピッキングで弾いていることにまた驚いて(笑)。こんなに一音一音弾けるものなんだなとコピーをしまくりました。その後は、もうスティーヴ・ヴァイ、インテリペリ、アンディー・ティモンズというお決まりの流れで片っ端から聴いていきました。その頃からもうテクニカルな方向の音楽に行きたいというのが完全に固まりましたね。

- ゲーム音楽というは、以前から意識していましたか?

ファイナルファンタジーのサウンドトラックを全部を買ってました。90年代当時はまだゲームのサウンドトラックが発売されることは珍しかったと思います。聖剣伝説、クロノトリガー、ロマンシングサガとか、ゲームは子供達の共通言語だったし、ピアノを習っていたので意識することなく弾いていたりしていましたよ。今は、ゲームの中で語れる要素がボイスオーバーだったり、効果音であったりで表現されますけど、当時はゲーム音楽は、シンプルなベース、メロディー、リズムで出来上がっていたので分かりやすかった。

- 作曲もすぐ始めていましたか?

中高生の頃が、コンピュータを使ってホームページを作れるというのが一般的になってきた時期なんです。PCでチャットしたり、ホームページを作るのが皆の趣味になっていた。最初のPCが、Window 98SEにCPUペンティアム3、メモリ128MBと13GBのHDDを搭載したモンスターマシン(笑)で、曲を作りたいと思うようになってRoland U8というコントローラー付きオーディオインターフェースでDTMを始めました。インストの曲ばかり作っていましたよ。

大学生の時に同人音楽活動というものに出会って、作った音楽を売って買ってというコミュニティーが楽しそうだなと思って自分でも始めたんです。そのときのレーベル名が、今も続いているViViXなんですよ。当時、バンドもやっていたんですけど、作る曲が難しいとメンバーからは嫌がられることが多くあまり続かなかったですね(笑)。でもその頃にドラマーの個人練習に一緒に行ってドラムのパターンとか、叩き方の種類とかを勉強させて貰ったり、他のパートとアレンジを詰めたりすることでその後の生楽器の打ち込みの参考になりました。打ち込みの研究だけはいつも頭から離れなかったんですよ。作曲をするということは打ち込みをすることと同義だったので、音楽で食べていきたいと思った時に、打ち込みの延長にある音楽を作る仕事という意味でゲーム会社に就職することを考えていました。それで作曲家として株式会社カプコンに入ったんですよ。

- 様々な音楽プロダクションがある中で、ゲーム音楽を作る仕事とはどういったものになりますか?

タイトルによりけりですけど、そのゲームの責任者であるディレクタから、それぞれのシチュエーションはどういうことを表現したくて、キャラクタはどういう気持ちで動いていて、どういう立場から寄り添ってあげたらよいのかというのを聞き出してから、それに対する音楽を創造していくのが仕事になります。ゲームディレクタの下に、キャラクタデザインチーム、背景を作るチーム、サウンドを作るチームなどがいて、僕はその中で曲を作るところをやっていたということです。曲を作るといってもゲーム会社の中で”曲を作る人”がやらなくてはいけない仕事の大半は「音楽監督」で、その人が自身で音楽を作るか否かというのは実はオプションなんですね。音楽監督は、ゲームの仕様、プログラムがどう動いているのか、こういう曲にした方がゲームに都合がよいというのも客観的に把握している。だから外注するよりも速く的確に曲を書けるので作曲をするということなんですよ。極端な例では、1分でクリアできてしまうところに5分の大作を書く必要はないし、ゲームの状況が変わったら別の曲に遷移できるようにしておかなければいけない曲には、コード展開が激しくメロディーの強いものは適切じゃない。主線の見えないダンダカ!ダンダカ!いうような映画でいうところのアクションスコアみたいなものであれば、外注用の発注書を書いている時間があれば作れてしまうものある。音楽監督と作曲家を兼ねているという意味において他の音楽制作の仕事と少し違うところかもしれません。

- その他にゲーム音楽特有のものと感じていることはありますか?

そうですね、ゲームの音楽の世界とそれ以外の世界の音楽の決定的な違いは、会社員がデータ入力することによって音楽が生まれるというところからスタートしているところだと思います。例えば、テレビ系の音楽であれば、作曲されたものを誰かが譜面に起こして、レコーディングスタジオに持って行かないと音楽にならなかった時代がある。でもゲーム音楽での収録というのは、あくまでエキストラなことなんですね。予算がある時は、オーケストラをL.A.で録ってみよう、チェコで録ってみようということにもなるんですが、それができない多く場合においては、手持ちの機材で打ち込みが上手くなるしかリッチな音楽を作る方法がない。昔からのゲーム会社では、ふつうにデータ入力で作れるでしょっていわれますよ(笑)。ギター、ベースこそ自分で弾いていますが、これらはもう当たり前過ぎて生楽器を収録している意識が低い(笑)。すごくギターを録音した後のコンポーザーが集まるミーティングで、もっと生楽器を録るためにはどうしたら良いんだろうという話を真剣にしていたくらいですから(笑)。

- 携わったタイトルで気に入っているものはありますか?

ロックマンXoverが楽しかったですね。ゲームディレクタに最初の書いたテーマ曲を評価してもらって、そこから要望を聞きながら書いていったんですが、「シチュエーションに必要な曲の要望はするけど、ロックマンが好きで聞いて育った青木さんがこのシチュエーションにこう感じたものならば、それが良いと思う。」と言ってもらったんです。なんてカッコいいディレクタなんだって感動して(笑)。ロックマンクロスオーバーの曲は全部半日以内で作りました。とてもやりやすかったですね。僕は面接でもロックマンの音楽を作らせてほしいと言っていたくらいロックマンが好きなんですよ。

最近のものではストリートファイターV。これはちょうど僕がカプコンを辞めて東京に出てきた時にオファーを頂きました。謎の自信があったんですよ。基調になっているストリートファイター2の時の音楽はロックフィールのものが多かったんですが、その後にすごくジャズになったり、EDM、テクノの方に振り切ったりしていた。ゲーム中に生録音をしっかり聴かせられる今のスペックで、しっかりとしたバンドサウンドをまだやっていない・・・、これはぜったい合うじゃん!と思っていたんです。オファーをいただいた時に向こうもそういったもの期待しているだろうなって思って曲を書いたらとても気に入ってもらえました。すごく自分が役に立てる仕事に巡り会えたと思いましたね。各キャラクタのテーマは、プロレスの入場歌みたいなものにあたるんですが、こういうアプローチもありますよじゃなくて、本来ならばこうしたかったんだろうというものを作れる自信があった。2016年のサウンドに持っていくのに適任なんじゃないとかと思ってやれたんですよね。

- こちらのスタジオについて教えていただけますか?

アナログワイヤリングを最小限に留めてほとんどの機材がデジタル完結していて、リコール可能なのがポイントです。ここはViViX Studioという名前で、主に作曲、ギターダビングからミキシング、マスタリングまで、音楽制作にまつわるプロセスを全て完結出来る環境を揃えています。メインマシンのiMacは、基本的にDAWのCubase Pro 8.5とシンセとプラグインFXだけを走らせていて、スタジオの外にVienna Ensemble Proで繋げているiMac とMacBook Airがサンプルライブラリー音源を鳴らすためのマシンになっています。 オーディオインターフェイスにApollo 8QUADとApollo Twin DUO。サンダーボルトでデイジーチェーンしてI/OとDSPが拡張しています。

僕にとっては、オーディオインターフェースはApolloか、それ以外か、しかないんです。Apolloは、UADプラグインが使える上にUNISONマイクプリアンプモデリングができますからね、画期的だと思っていましたよ。ギターを弾く、録る人間なので、アンプシミュレータがあって、ヘッドアンプのところまでデジタルで管理できるというのは唯一のモノだなと思いましたし、そこから得られる利便性にも魅力を感じてましたね。A/D D/Aの質も大事なんですけど、どれだけ便利に信頼して使えるかも大事だと思うんです。最初Apollo Twin DUOを導入する時に試してすぐ、いいじゃんこれと。こう使いたいと思ったところにバシッとハマってくれた。ブレークアウトケーブルがないし、Apollo Twin の4アウトがリアンプする時に繋ぎ変えなくてもよくてすごく便利。おかげでリアンプが面倒じゃなくなって以前よりやるようになりました(笑)。地味ですけど本当にストレスがなくなりました。

- ギターダビングにアンプシミュレータはよく使いますか?

そうですね・・・、アンプシミュレータに関しては、相当うるさいかもしれません(笑)。カプコンに在籍していた頃なんかはリリースされていものはフリーウェアとかも含めて全部プライベートで買っていました(笑)。昔のアンプシミュレーターは製品レベルのギターサウンドと呼ぶにはまだ遠かったので、最終的にギターアンプにマイクを立てて録ることが多かったですね。これなら製品にも使えるなって感じのものも増えてきてアンプシミュレータで録る割合が増えてきました。たくさん使ってきましたけど、今はレコーディング、ライブの多くのシチュエーションでKemperをメインで使っています。

UADプラグインのギターアンプシミュレータは、FRIEDMANが出てきた時に全て変わりましたね。これはすごい、使えるぞ!!と思いました。FRIEDMANは、ギター機材オタク的にあこがれのニッチなギターアンプで、ちょうど実機を検討していた時にUADプラグインで出たんですよ。Plexi系とJTM45系があって何から何までカバーできる。マーシャルのキタナイ音もちゃんと出て歪んだ音楽でもよく使うことができるんですよ。アンプモデリングクオリティーとしてはその後に出たSOFTUBEのMARSHALLの方が高くて良い音なんですけど、JCMの最近のシリーズが出てくれない(笑)。BRAINWORKSのFRIEDMAN AMPLIFIRE COLLECTIONは、自分の求めているところにダイレクトに鳴ってくれるんですよね。ストリートファイターVのギタートラックにもたくさん使いました。

UNISON対応のギターアンプシミュレータとしては、V8.6で追加されたFenderの55Deluxeがすごいですね。レスポンスがアンプそのもので、流石Universal Audioという印象です。僕は普段エレキギターのレコーディングでRoyer LabsのR-121を多用するので、その音がちゃんと出るのも嬉しいポイントです。これはTweedだけじゃなくて是非、銀パネのFenderまでラインナップを拡充して欲しいですね。

- アンプシミュレータの種類はどの様に使い分けしていますか?

やっぱりモデリングアンプの素晴らしいところは、ノブがいじれることなんですよ。プロファイリングアンプもとても気入って使っていますが、特定のアンプのノブのセッティングで、特定のマイクを特定の位置に置いたときの音でしか出ない。つまり、少しミドル削ろうと思ったとき、本物のアンプでミッドを削ってまたプロフィリングしなければいけない。もちろんプロファイリングアンプについているEQで出来るけどそれは理想的ではないし、好きじゃない。ギターアーティストをするならば、絶対にプロファイリングアンプの方が良いと思います。自分の欲しい音が決まっていて、自分が求めている音なのでたどり着きやすいし、どこでも理想の音が365日機嫌よく鳴ってくれる。モデリングアンプの方は、コンポーザーとして、アレンジャーとして、ギタリストとして人の曲をやるとなったときに良いんです。曲ごとに求められるギターのトーンが違うということが発生した時にすぐノブを回して対応できるので便利なんですよ。マーシャル系とフェンダー系をモデリングアンプで作っていって、モダンなサウンドはプロファイリングアンプで作っていくことが多いですね。住み分けは明確にできていますよ。

- UADプラグインのラインナップにどんな魅力を感じていますか?

以前、全部ヘッドホンでモニターしながら作っていたんですよ。ボリュームでしかミキシングをできていなかったんですよね。基本ではあると思うんですけど、それこそリバーブの掛け方すらもわからずやっていました。DAWプラグインエフェクトにEQ、コンプがあってこんなことができるのかとずっとやっていたらだんだんバランスが取れるようになってきた。平面上にキレイ並べる技術ですよね。それだけやっていた時は、スピーカーでミキシングする理由がわからなかったんです。ミックスは、プラグイン特有のサウンドでやるものだと思っていたんですよ。でも、それも必要だけど正しい音で聴けてそれを信じてミックスできる環境を構築することが大事・・・、自分のミックスに何をするのか、ちゃんと知っていて自分が見えるというところが大事で、その時にスピーカーがないとダメなんだなって気がついた。それに気がついたときに初めてUADプラグインというのはすごく信頼ができるものだとわかったんですよ。いろんなメーカーがブランドに哲学を持ってアナログモデリングを出しているんだけど、実機よりも良くしようと思っているメーカーのものって結局使わなくなる。アナログって変なことが起きない、めちゃくちゃな設定をやって初めて魔法の様な音が出る・・・、という神話、伝説を聞く(笑)。実機を知らない世代なのでどれがどれくらい似ているか分からない。MANLEYが良いのか、UADだから良いのかもわからない(笑)。でもUADプラグインは、挿して不安になるとか、意図したものと違うものになるという不安がないんですよ。望まないことは起きないし、自分がやり過ぎてしまうこともない。望んだ分だけちゃんと返ってくるツールなんですよね。

- 特に気に入っているUADプラグインはありますか?

UNISONマイクプリ対応の Neve 1073 Preamp & EQ Collection、Neve 88RS Channel Strip、マスターに挿すManley Massive Passive EQ、Manley Variable Mu Compressor、弦もの使うOCEAN WAY STUDIOSとかは好きでいつも使っています。最近はMassenburg DesignWorks MDWEQ5がすごく気に入っていて、各トラックに使って行きたいなと思ったときに、もう少しDSPがほしいなとApollo 8 QUADを追加導入しました。UAD-2 SATELLITE THUNDERBOLTより、Apollo 8 QUADを増設することでDSPを増やすだけじゃなくI/Oの質や数の方も確保できることにコストを掛ける意味を感じたんです。いろんな機器を繋ぎっぱなしできたり、ヘッドホンも2種類使い分けできたり、ALTモニター切替えもあって、このスタジオの環境としてはかなり理想に近いところまで来ている感じがしています。

- 主宰されているViViXというのはどういったものですか?

ViViXというのはギタリストをフィーチャーした音楽レーベルです。ギター・ヒーローと言われる人間は、絶対いい曲を書いてますよね。トレードマークとなる曲なしには誰もギター・ヒーローになれていない。うまいだけじゃなくて歌心があって、自分の曲の中でツールとして自分のギターを使えている人だけでやりたい。その理念で、信頼しているインターネット上のギター仲間達と「G5 Project」として2005年、2007年、2010年、2013年にアルバムを作ってViViXレーベルからリリースしました。音楽マーケットが縮小している時代ですが、おかげさまでアルバムセールスは伸びています。その後G5のライバル的な立ち位置として2013年に、G.O.D.という若いギタリスト達のプロジェクトを作ってアルバムをリリースしたんですが、これも予想以上に面白いものが出来て高い評価をいただきました。

リリースを重ねているうちに個人で達成出来るレベルの上限は到達出来たんじゃないか、これよりすごいものを作るならもっとたくさんの人を巻き込んで行かないとできないんじゃないかという感覚になってきて、2016年4月にリリースしたG.O.D.のコンセプトアルバム「G.O.D.111」は外部にマスタリングをお願いしました。信頼できる第三者の手が加わることで、全体の統一感が得られただけでなく、各々の楽曲が持っていたポテンシャル、のびしろを見せて頂けたのがとても大きかったです。ちなみにこのG.O.D.111の楽曲は一部KONAMIのアーケード音楽ゲームGITADORA Tri-Boostにも収録されていて、ゲーム音楽家としての自分とViViXのアーティストとしての自分がクロスオーバーする作品になったので個人的にとても感慨深いものとなりました。

- これから行っていきたいことはありますか?

音楽プロデューサーとしては、自分のレーベルをもっと大きくしていきたいです。若くて訳が分からないくらいギターが上手い子がどんどん増えているので、そういう子達を世に送り出すプラットフォームとしてのあり方を追求していきたい。ちょうど80年代のシュラプネル・レコーズのマイク・ヴァーニーみたいな在り方を目指しているんです。クリエイターとしては常により高いゴールを目指していきたいです。以前、マスタリングスタジオで80年代のアナログレコードを聴かせて貰ったんですよ。この音を聴いて、昔の人はこんなにも良い音で音楽を楽しんでいたのかと愕然としました。改めていい音を自分の感覚として定義しておくことの大事さを実感できたんですね。目の前のツールと自分の中にある狭いゴールを目指していてもその先は行けないけど、良い音を感覚として知ってさえいればそれを目指すことが出来る。エンジニアリングの分野に限らず、これからもそうやって新しいゴールと出会うチャンスに積極的に飛び込んでいきたいですね。

interviewer & photo : Ryuji Seto


青木征洋 a.k.a. Godspeed

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