Hookup,inc.

HEADWAY EDB-2 H.E : ギターテックおすすめのアコギ用DI/プリアンプ

メジャーアーティストの現場でギターテックを務める新蔵孝晃氏は、アコースティックギター用のDI/プリアンプとして Headway EDB-2 を長年愛用しています。そんな新蔵氏の目に新製品の EDB-2 H.E はどのように映るのか。ギタリストの西山隆行氏と共にチェックしてもらいました。

DI/プリアンプがあるとアコギの音を作ってからPAさんに渡せる


西山:新蔵さんは以前からライブの現場で HEADWAY のDI/プリアンプを使っていますよね。

新蔵:知り合いのPAさんが HEADWAY EDB-2 を持っていて、「これいいよ」って教えてくれたんです。音質にクセがなくて、EQも迷わず使えて、いろんな機能がどれも直感的に触れる。ツマミがいっぱいあるから一見難しそうに見えるけど、触ってみれば「ああ、そういうことか」と。それぞれのポイントがちゃんと決まっていて、わかりやすかったですね。その時の印象が良かったので、別の現場でアコギのデュアル・ピックアップの音を混ぜたくなった時に、「そういえば EDB-2 があるな」と思い出したんです。

西山:昔はライブハウスとかで「エレアコを使う」と言うと、DIだけを用意してくれるパターンも多かったですけど、やっぱりシンプルなDIだと対応しきれないのでしょうか?

新蔵:DI/プリアンプを使う方が、ある程度音を作ってからPAさんに渡せますね。PAさんに音をイジってもらうこともありますけど、テック側でピックアップの音を補正できた方が話が早いんです。

西山:EDB-2 で特に重宝しているのは位相反転スイッチですか?

新蔵:それもありますし、ゲインが独立しているところやEQも便利ですね。ツマミを動かした時に、イメージする音量感が付いてくるんですよ。見た目で「このくらいかな?」って合わせると、その通りに音に反映されるところが良かったですね。

img01
▲左手前が新蔵孝晃氏、右奥が西山隆行氏

西山:ツマミと音に違和感がないのは現場では大切なことですよね。レベルを上げた瞬間に急にハウリングが起きたら、PAさんに怒られてしまいますから。

新蔵:そうですね(笑)。あと、2種類のピックアップをギターのステレオジャックから出力して、TRSケーブル1本でステレオ入力ができるところも使い勝手がいいですね。

西山:EDB-2 の入力はステレオに対応しているんですね。普通、ステレオ入力は左右まとめてゲイン調整する仕様が多いから、個別にゲイン調整ができるのは便利ですね。なかなか通な使い方ですけど。

新蔵:ギター側でピックアップのバランスを決めるのって難しいじゃないですか。ギター側はある程度音量を固定しておいて、プリアンプのゲインで調整した方がいいんです。

西山:確かに演奏中にピッキングが強くなったり、タッチが変わることもあるし、アンダーサドルのピックアップだとストロークが強くなることもあるから、手元のプリアンプで操作できるのは便利ですね。サウンドチェックではコンタクトマイクを大きめにしたけど、本番ではやっぱり小さくしたくなったり、逆にもっと大きくしたくなる時もありますからね。

img2

新蔵:あと、ものによっては通すだけで音が変わるDIも結構あって、それがいい場合もあるんですけど、EDB-2 はいい意味でクセがないですね。

西山:生楽器にピックアップを付けるミュージシャンって、ナチュラル志向というか、ピックアップから出力された音をそのままスピーカーから出したい人が多いから、それに対応できるナチュラルさが大事ですよね。EDB-2 はナチュラルだけど音が太いから音ヤセすることもないし、ショボくなったり、ハイが強過ぎてシャキシャキしちゃうこともない。これはアダプターの電圧が18Vというのも影響しているんでしょうか?

新蔵:比べたらわかる程度の微妙な差かもしれませんけど、やっぱり電圧が高い方が音の密度やスピード感が違います。例えば、ドラムのような音が早い楽器と一緒に演奏する時は、アコギも同じくらいスピード感が欲しいので、そういう意味では電圧が高い方が音がしっかり出る印象はあります。

西山:ツアーだと運搬も激しいと思いますけど、現場で EDB-2 を使っていて何かトラブルはなかったですか?

新蔵:特になかったですね。抜き差しの不具合もないし、ノイズが気になったこともありません。筐体が小さいわりに持ってみるとズッシリしているから、造りも頑丈なんじゃないかな。ツアーに耐えられる強さですね。その辺も本当に現場目線というか、現場に持ち込みやすい機材です。

参考動画:納浩一 × Headway Music Audio EDB-2

H.E.A.Tはアコギの美味しいツブ立ちを操作できる


西山:EDB-2 の後継機の EDB-2 H.E は思ったよりもクリアというか、音質がすごくいいですね。特に新機能の H.E.A.T(エンハンサー)がすごいので、これを使っていい音になるのを体験したら、そのためだけに欲しくなる人もいるかもしれない。エンハンス機能付きのプリアンプって色々なメーカーが出していますけど、使えないクオリティのものも結構あって、その点 H.E.A.T はすごく使える感じです。

新蔵:すごくいいですよね。コンプのような効果でもなく、アコギの美味しいツブ立ちの部分を操作できます。個人的にはコンプがあまり好きじゃなくて、ほとんどかけないんです。だけど、H.E.A.T だったら丁度いい感じになるので、現場でも使ってみようかなと思いました。

img3
▲黄色いツマミでH.E.A.Tの加減をコントロールする

西山:サウンドが濃厚になるような印象ですよね。コンプだとローもハイも上がるぶん音が飽和してしまうし、空気感を含み過ぎるとアコギの音がポワ〜っとしちゃうことがありますけど、H.E.A.Tはある程度濃密にしてくれるから、立体感と奥行きのバランスがうまく取れそう。あと、気持ち良く演奏するために使うのも良さそうです。ストロークのようなアタックが強いプレイなら1時あたり、アルペジオなら3時あたりまで上げるとツブ立ちが良くなって演奏がうまく聴こえました。弾きながら自分でツマミを変えてみると、質感の違いがわかりやすいです。ノッチフィルターもすごく強烈ですね。ピックアップに何か問題があって、出音をなんとか作らなきゃいけない場面とかで力を発揮すると思います。Rangeスイッチはよく使いますか?

新蔵:楽器に合わせてハイパスフィルターの周波数を切り替えるためのものですね。僕は結構ストロークの胴鳴りを出したいことが多くて、そういう時はRangeをあえて[Bass]にしたりします。Rangeで音のキャラクターというか方向性を決めてから、EQで補正するような使い方です。コンタクトマイクの場合はRangeを[Bass]にするとモソっとした音になりがちなので、[Guitar]か[Violin]にしています。

西山:ゲインとRangeだけで、ある程度音が作れちゃいますね。そこをうまく固めておけば、あとは余分な倍音やハウリングをカットするくらいで、それほどツマミをイジる必要はないですか?

新蔵:そうですね。あとは弦の新品度合いとか、弾き込んだ度合いによって調整するという感じですね。

img4
▲RangeスイッチはEQのすぐ下に、チャンネルごとに用意されている

西山:重量は軽いのにこれだけ多機能なのは、世界最強だと思いますよ。

新蔵:必要な機能が全部上面パネルに集まっていますからね。グランドリフトなんて、ものによっては裏側に付いていたり押しづらいことも結構ありますけど、現場では結構触るスイッチなので、それらがすべて上面にあるのは助かります。セッティングの状況がパッと見で判断できますから。

西山:上面に全部収めることをコンセプトに設計されているんじゃないでしょうか。ツマミ同士の間隔は狭いけど、ユーザーの要望に応えた結果、こうなったのかなと。

新蔵:強いて言えば、ミュートスイッチがフットペダルで操作できると、もっと使いやすくなると思います。でも、EDB-2 ではミュートスイッチが1つだけだったのが、今回CH1とCH2に独立して搭載されたことで、それぞれのピックアップの音を聴き分けられるようになったのは便利ですね。デュアル・ピックアップの人はサウンドチェックがすごくしやすくなるんじゃないかな。あとはEQがチャンネルごとに独立したので、ここで色々音作りをしてみたいです。EQの引っかかるポイントも丁度いいんですよ。

西山:EQのポイントってメーカーごとに全然違うから、欲しい音域にかかってくれないと、すごくストレスが溜まりますよね。80Hzあたりを何とかしたいのに、65Hzあたりにかかったりして、「それベースの音域じゃん」って思うこともある。EDB-2 H.E はそういうことがなくて、欲しいポイントが最初から押さえられているから、本当にアコースティック楽器のピックアップに最適ですね。

新蔵:ギターテックとしての使い方なので、ちょっと特殊ではあると思いますけど。

西山:ミュージシャンにとっても同じだと思いますよ。やっぱりPAさんに対して、自分が求めている音をある程度提示することは必要だし、丸投げするのはちょっと失礼ですからね。EDB-2 H.E があれば全部できてしまいます。

img7
▲新蔵氏の現場のセッティングに組み込まれたEDB-2 H.E(本人撮影)

新蔵:そうなんですよ。あとは宅録に使うのもいいかもしれません。

西山:ノイズが少ないですからね。ゲインやマスターを上げた時に「シー」とか「サー」っていうノイズが乗ってしまうプリアンプもありますけど、EDB-2 H.E はそんなことも起きない。部品とかに結構こだわっているんじゃないかな。

新蔵:これでファンタム電源で駆動できるようになったら、すごく便利です。ただ、付属する18Vのアダプターはユニバーサル仕様なので海外でも使えます。電圧を100Vにステップダウンしてもらっても、キレイに100Vに落ちることはまずなくて、実際には110Vとかなんです。実は日本のライブハウスやスタジオでも現場の電圧が高いことが結構あって、108〜110Vだと壊れちゃう機材もあります。だから、ユニバーサル電源なのはありがたいですね。

西山:次の後継機では、ぜひファンタム対応にも期待したいですね(笑)。

img6
▲EDM-1 H.E

新蔵:1チャンネル仕様の EDM-1 H.E の方はファンタムで使えるんですよ。

西山:EDM-1 H.E は機能もちょっと違いますね。H.E.A.Tがスイッチ式で、Rangeはスライド式。むしろ微調整が効く分、スライド式の方が便利な可能性はあります。筐体がかなり小さいので、ストラップの後ろに装着して、バランスアウトからケーブルを出すという使い方も良さそうです。バッファみたいな形で一度プリアンプを中継させた方が、長いケーブルで這わせるより音質が良くなるだろうし。とにかく小型なプリアンプ/DIが欲しい人とか、1チャンネルで良くて、EQも3つあれば十分という人には EDM-1 H.E の方がいいかもしれません。

参考動画:アコギ向き!最新プリアンプ2機種×井草聖二

写真:桧川泰治

新蔵孝晃プロフィール

1983年生まれ。鳥取県出身。
音楽専門学校のギタークラフト科を1年で中退。
その後ライブハウスでのバイトやフリーランスのローディとしての現場経験を経て、2007年に現在所属の(株)デュースに入社。
規模、ジャンル問わず様々なアーティストのライブ現場を担当。

西山隆行プロフィール

24才からギター(アコギ•エレキ)&ウクレレ講師のキャリアをスタート。07&09年 Tommy Emmanuel Japan Tourでオープニング・アクトを務める。Tommyより、アメリカ・ナッシュビルで開催されるCAAS 2010(Chet Atkins Appreciate Society)のオファーを受け出演。開催26年目にして日本人初参加を果たし、オーディエンスからも高い評価を受け2010より10年連続出場。ニューヨーク・マンハッタンの老舗ライブハウスThe Bitter EndやTOMI JAZZなどでソロ・ライブを開催。"ゆず"「マボロシ」「マスカット」「通りゃんせ」「TOWA」「かける」「いっぱい」「みそら」「終わらない歌」でアコースティックギターのアレンジ&アコースティックギターレコーディングを担当。ハイブリッドピッキング&フラット・ピックでのギャロッピング奏法を得意としたアコギインストの活動、YAMAHA、Maton Guitarsのデモンストレーター、島村楽器主催のアコースティックギター・セミナー、アーティストのサポート&レコーディング等で活躍中。

関連記事

ページトップへ