マスタリング・コンプレッサー / リミッター / ステレオ・フィールド・エディター

Portico II Master Buss Processor は、Rupert Neve Designs のアナログコンソールである 5088 や Portico II Channel で採用されている高電圧駆動、ディスクリートのクラスA回路をベースにしたマスタリングプロセッサーです。このクリエイティブツールは、伝統的な2チャンネルステレオのコンプレッションとリミッティング効果の枠を超え、その境界線を再定義します。マスタリング環境のために開発された Master Buss Processor は、ミキシングエンジニアやレコーディングエンジニア、そしてFOHエンジニアにとって、すぐにお気に入りのプロセッサーとなるでしょう。重低音の効いたEDMサウンドのミックスから繊細な室内管弦楽のマスタリングに至るまで、このプロセッサーがジャンル、用途を問わず、特別な成果を与えてくれることでしょう。

Rupert Neve 氏が設計した入力と出力トランスフォーマーと72Vの高電圧回路を備えた Master Buss Processor はどんなシステムにおいても完璧にマッチします。マスタリンググレードのつまみ類をその革命的なダイナミクス、トーン、ステレオコントロールに備え、精密な設定を可能とします。定評ある特徴的なRupert Neve 氏のクラシックデザインをさらに進化させた新回路によって、十二分のヘッドルームと広いダイナミックレンジ、低い歪みとノイズ、優れたスルーレート(素早い立ち上がり)と分離の良いバンド帯域、そして正確さ、精密さを誇ります。そしてもちろん、数多のレコードで耳にできる甘く音楽的な Neve サウンドの魅力は、この Master Buss Processor にもしっかりと受け継がれています。

コンプレッサー

Master Buss Processor に装備された2基のコンプレッサーは、モノラル/ステレオソースを問わず、そのダイナミクスをほぼ無限に扱う可能性を持っています。レシオ、スレッショルド、アタック、リリース、ブレンド、サイドチェーン、ハイパスフィルター(HPF)、リミッターそしてメイクアップゲインコントロールで精密かつ大胆に扱うことができます。このコンプレッサーにはふたつのコンプレッションモード : FF (フィードフォワード) と FB (フィードバック) が用意されたを備えたVCAによる処理を行います。"FB" は音楽的かつ心地良いサウンド効果をもたらすビンテージモードで、"FF" は入力信号に対してより正確に動作し、透明感のある処理をするモダンモードとなります。また、約0.1ミリ秒の素早いアタック処理をする "ピーク" モードを装備しています。このモードによりコンプレッサーのアタックはサウンドのピークに応答し、ドラムやパーカッションなどの急激なトランジェントでも確実なコンプ処理を行います。"ピーク" スイッチをオフにした場合、コンプレッサーは通常の "RMS" モードとなり、入力レベルの平均値に対してアタックとリリースタイムの設定に従って動作します。

"SC HPF" スイッチは、コンプレッサーのVCA回路に組み込まれたハイパスフィルターが機能し、VCA回路の動作に余分な低域をカットします。強烈な低域を持つサウンドソースを処理する際、余分な低域によってVCAのレスポンス特性が変化することがあります。この場合、ハイパスフィルターでソース信号はそのままにVCAに送る信号の低域のみをカットすることで、コンプ本来のレスポンスを取り戻します。このハイパスフィルターは250Hz以下の帯域をカットします。

"ブレンド" は原音とコンプレッションされた信号のミキシングを行います。この機能は、自然なダイナミクスを保ちつつ、強いコンプレッション効果を得る際に有効です。現代的なテクニックでは、強烈なコンプレッションでドラムサウンドにパンチを与えることが可能ですが、これにより歪みが発生したり、ダイナミックレンジが損なわれる場合があります。そこで原音を混ぜることで、これらの犠牲を補います。このブレンド機能を使用することで、このコンプ効果のためにミキサーチャンネルをひとつ潰したり煩雑な接続をすることなく、魅力ある強い効果と自然なサウンドに仕上げることが可能となります。

Master Buss Processor のコンプレッサーには外部機器と接続するサイドチェーン機能も用意されています。"センド" と "リターン" 端子で外部のEQやフィルターに接続し、より細かなサイドチェーン処理が可能です。"リターン" 端子はまた、ダッキング効果を演出する際の "キーイン" としても利用できます。例えばスピーチ音声をリターンに分配することで、喋ったタイミングで Master Buss Processor を通した音楽や演奏などの信号レベルをコンプレッサーで抑えることができます。

ステレオ "リンク" スイッチをオンにすればチャンネルAの設定がマスターコントロールとして機能するので、ステレオソースを扱う際に便利です。

リミッター

Portico II Master Buss Processor には究極にシンプル、かつ多様性に富んだ透明感のある音楽的なリミッターが装備されています。このリミッターはたったひとつのノブ操作だけで、様々な信号に対して適切な処理をするインテリジェントタイプです。この画期的な機能は、Rupert Neve Designs が新たに設計したアダプティブリリーステクノロジー(Adaptive Release Technology)によって実現します。一定のリリースタイムを混ぜることで、トランジェントの速い信号(スナップの効いたスネアドラム)と立ち上がりが遅い信号(例えばベースギター)の両方を同時に扱います。この構成により、Master Buss Processor のリミッターは素早い動作をするリミッターに見られる変調歪みを排し、音楽本来のキャラクターを損なうことなく劇的なリミッティングを可能とします。

一般的なリミッターの設計では、動作速度が速いほど、低域の変調歪み量が増加します。これはサイドチェーン信号の低周波が原因で、コンプレッサー(リミッター)が素早くオン/オフを繰り返すことで信号全体の変調(モジュレーション)を引き起こします。この効果はサイン波形を通した場合、興味深い結果を得ることもありますが、音楽のように複雑な信号には望ましいものではありません。Master Buss Processor にはこの犠牲は存在しません。ローエンドの滑らかさと整合性を保ちつつ、素早く信号に反応し、適切な処理を行います。そしてアダプティブタイムコンスタント回路によって、適切なリリースタイムをノブで設定可能です - ノブを反時計方向に回すに従って、リリースタイムが長くなります。そして通常のリミッターと同様、リダクション(リミッティング)が大きいほど、リリースタイムも伸びます。

Master Buss Processor に装備された新型のリミッターは、0.03ミリ秒のアタックスピードを持ち、スレッショルド値に達した20kHzの波形(ものすごく細かいトランジェント)の頭半分にリミッター処理がかかるほど素早く動作します。圧縮曲線は "ミディアムニー" で、イニシャルの圧縮比は3dBのスレッショルドで10:1以上です。さらにソフトクリップ回路で、高いスレッショルド設定時の圧縮曲線の "ニー" 上にあるべきトランジェントを捉えます。(つまり、リミッターで処理しきれないレベルオーバーを柔らかく抑えます。)リミッターとソフトクリッパーはノブを右いっぱいに回し切るとオフになります。リリースタイムは完全に自動で、リミッター設定とスレッショルドを超えたトランジェントの持続時間の平均値によって決定付けられます。このリミッターはコンプレッサーのディスクリート仕様のクラスAゲインモジュールとVCAを共有しています - このリミッターによって二重に処理されることはなく、音楽を仕上げることができます。このコンビネーションによって非常に透明性の高いリミッティング処理をもたらし、他のリミッターよりも2倍のゲインリダクション処理を行うことが可能です。

ステレオ・フィールド・エディター

Master Buss Processor のステレオフィールドエディター(SFE)は伝統的なM-S(ミッド-サイド)テクニックをベースにしたソース信号のステレオ空間の調整を行うプロセッサーです。その操作はウィドスとデプス、およびそれぞれのコントロールと連動したバンドパスフィルターを使用します。

ウィドス(Width)はステレオ音像の広がりの増減(より広くからモノラルまで)を操作します。レコーディングに含まれているアンビエンス量の調整にも使用できます。ノブをワイド方向に回した場合、左右チャンネルの差異成分が強調され、しばし結果としてアンビエント量を増やすことになり、ステレオリバーブにアクセントを加えることができます。逆にモノ方向に回した場合はステレオ感は狭まり、もし左右チャンネルの内容が統一のとれたもの(例えば2つのチャンネルがほぼ同じ素材で位相もずれていない内容)の場合、モノラル成分は一層強調されます。もし、片方のチャンネルの入力信号が逆相であった場合、モノラル(ステレオの中心に定位される)成分は打ち消されます。これはウィドスコントロールによるステレオ効果の量が、元素材に含まれているステレオ情報量とステレオフィールドエディターの他のコントロールとの相互作用によって得られるからです。最良の結果を得るためには、実際にその効果を確認しつつ操作を行うことをお勧めします。

デプスコントロールは奥行き感を操作するためのつまみです。センターに定位したソロ楽器やボーカルをミックスの中でもう少し前面にする際に便利です。また多くのケースでは音楽に悪影響を与えることなく、それらの成分をカットすることも可能です。デプスとウィドスを組み合わせることで、ミックスのルームアンビエンスと奥行きを調整できます。

ステレオフィールドエディターをさらに効果的に扱うために、ウィドスとデプスの回路それぞれにバンドパスフィルターが用意されています。このことで特定の周波数帯域を調整することが可能になります。例えば、センターに定位する低域を操作する場合、デプスとデプスEQをオンにし、周波数帯域を "LF" に設定します。このことで、センターに定位された信号のフィルター周波数以上(この場合は250Hz)の音がフィルターされ、中央定位の低域のみをデプスでコントロールできるようになります。同様に、ウィドスEQとコントロールにこの設定を行った場合、(M-Sの)サイド信号の低域を削り、低域をタイトにすることが可能です。あるいはウィドスEQを中域(HMあるいはソースによってLM)に設定した場合、バンドパスされたサイド信号の操作によって、楽器やバッキングボーカル、リバーブに素晴らしい広がり感を与えることができるでしょう。さらに広げて音に包み込まれるような幻想的な効果を得ることも不可能ではありません。

また、ステレオフィールドエディターはスイッチひとつでミッドとサイドの成分をコンプレッサーのチャンネルAとBに送ることも可能です。このことで、中央定位の成分(ミッド)とステレオイメージの広がり成分(サイド)をコンプ/リミッター処理することが可能になります。さらにステレオフィールドエディターのEQと合わせることで、特定帯域に対してのダイナミクス処理も可能になります - これらの機能により、エンジニアに非常に幅広いサウンド操作の選択肢を提供します。

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