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Universal Audio : LUNA マニュアル | API® Vision Console Emulation(パート2)

マニュアル, 2021/05/14

該当製品

API 2500 Bus Compressor のパラメーター

LUNA の API 2500 Bus Compressor は、チャンネルストリップビューでは主要なコントロールのみが表示され、コンソールブラウザですべてのコントロールにアクセスできるようになっています。

API 2500(チャンネルストリップビュー)
API 2500(コンソールブラウザビュー)

インターフェイス上に記されている値と、実際のパラメーター値とが一致しない場合がありますが、この挙動は、実機と同様のものです。コントロールをダブルクリックするなどしてパラメーターを表示すると、実際の値を確認することができます。

コンプレッサーセクション

THRESH(スレッショルド)

コンプレッサーが掛かり始める入力レベルを設定します。このノブを時計回りに操作するとスレッショルドが下がり、コンプレッション量が増えます。スレッショルド以下の信号に対してコンプレッションは掛かりません。設定可能な範囲は、+10 dB ~ -20 dB です。

ノブの横にある赤色のLEDは、コンプレッサー回路でゲインリダクションが行われていることを示します。コンプレッションが強くなるにつれ、より明るく点灯します。

ATTACK

入力信号がスレッショルドレベルに達してからコンプレッションが掛かり始めるまでの時間を設定します。

アタックタイムは以下の7つの選択肢から設定します。速く設定するほど、スレッショルドを超える信号へのコンプレッションの掛かりが速くなります。遅く設定すると、信号に含まれるトランジェントが通過するため、よりパンチーなサウンドを得られます。

  • 30 μs
  • 100 μs
  • 300 μs
  • 1 ms
  • 3 ms
  • 10 ms
  • 30 ms

RATIO

コンプレッサーで処理されるゲインリダクションの量を設定します。例えば、値を2(2 : 1)に設定した場合、スレッショルド以上の信号レベルが半分に減少させることになり、結果として 20 dB の入力信号レベルが 10 dB になります。

レシオは以下の7つの選択肢から設定します。レシオを高く設定するほど、よりコンプレッション感が強まります。最大(∞)に設定した場合、レシオは実質的に∞ : 1となり、リミッターとしての効果を得られます。

  • 1.5 : 1
  • 2 : 1
  • 3 : 1
  • 4 : 1
  • 6 : 1
  • 10 : 1
  • ∞ : 1

RELEASE(固定式リリース)

上段の “RELEASE” ノブは、入力信号がスレッショルドを下回った時に、コンプレッションを解除するまでの時間を設定します。

リリースは、以下の6つの選択肢から設定します。このコントロールを時計回りいっぱいに設定すると、下段の “RELEASE” ノブを使用して、連続可変のリリースタイムを調整することができます。

  • 50 ms
  • 100 ms
  • 200 ms
  • 500 ms
  • 1 sec
  • 2 sec
  • 連続可変

RELEASE(連続可変リリース)

下段の “RELEASE” ノブは、コンプレッサーのリリース時間を連続的に調整するものです。設定可能な範囲は、50ミリ秒〜3秒です。ただし、上段の “RELEASE” ノブが時計回りに振り切られた設定でない限り、このコントロールは無効となります。

トーンセクション

KNEE

API 2500 のスレッショルド・ニー(コンプレッションのオンセット特性)の設定は、SOFT、MEDIUM、HARD のいずれかから選択して行います。設定を変更するには、任意の選択肢をクリックするか、“KNEE” ボタンをクリックします。

  • SOFT :
    コンプレッションへの繊細なトランジションにより、その効果はさりげないものとなります。
  • MEDIUM :
    コンプレッションへ微妙に「フェードイン」するかのようなトランジションを得られます。
  • HARD :
    典型的かつシャープなコンプレッションへのトランジションを得られます。

THRUST

THRUST の設定は、NORMAL、MEDIUM、LOUD のいずれかから選択して行います。設定を変更するには、任意の選択肢をクリックするか、“THRUST” ボタンをクリックします。

THRUST は API が特許を取得している回路で、RMS検出器の入力のコントロールサイドチェインにハイパスフィルターを挿入し、低域へのレスポンスを制限するものです。

THRUST フィルターは、ピンクノイズのエネルギー曲線の逆数である 10 dB ごとのスロープを有します。THRUST はサイドチェインの周波数特性を調整して各オクターブが同量のエネルギーを有するようにし、ポンピングを抑えてパンチを維持する独自のコンプレッション効果を生み出します。

  • NORMAL :
    サイドチェインはフィルタリングされず、コンプレッション特性は周波数スペクトル全体に渡り均一です。他のコンプレッサーと同様に動作します。
  • MEDIUM :
    サイドチェインは、低域ではわずかに減衰し、高域ではわずかにブーストされます。中域はフィルタリングされず、フラットなままです。低域のポンピングを抑え、高域のピーク部分のコンプレッションを強めます。
  • LOUD :
    サイドチェインにゆるやかなリニアフィルターが適用されます。20 Hz で 15 dB 減衰し、20 kHz で 15 dB ブーストされ、RMS検出器に入力されるエネルギーを均一化します。低域におけるパンチが顕著になります。

TYPE

コンプレッサー回路内のコントロールサイドチェイン信号のルーティングを変更します。設定を変更するには、任意の選択肢をクリックするか、“TYPE” ボタンをクリックします。

  • NEW :
    モダンなVCAベースのコンプレッサーによく見られる、フィードフォワード方式のサイドチェインルーティングです。コントロールサイドチェインの入力信号は、コンプレッションされていないオーディオ信号から取り出されます。透明感のある、ハードなコンプレッションを提供します。
  • OLD :
    API 525 などのビンテージコンプレッサーによく見られる、フィードバック方式のサイドチェーンルーティングです。コントロールサイドチェインの入力信号は、コンプレッションされたオーディオ信号から取り出されます。個性的で、スムーズなコンプレッションを提供します。

トーンタイプが “OLD(フィードバック)” に設定されている場合、ゲイン回路はコントロールサイドチェイン内にあります。この時、(オート/マニュアルを問わず)ゲインを調整することによって、コンプレッション量を変えることができます。

ステレオリンクセクション

L/R LINK

API 2500 をステレオバスやメイントラックで使用する場合、このステップ式の “L/R LINK” ノブを調整することで、左右チャンネルのダイナミクスプロセッサーを常に同量(100%、完全リンク)で扱ったり、完全に独立(0%、非リンク)させたり、ブレンド(例 : 50%、部分的にリンク)することが可能です。

サイドチェインのリンクを解除することによって、チャンネル間のダイナミックな相互作用を低減/排除することができるため、ステレオフィールド内の動きをより正確にコントロールすることができます。

なお、API 2500 Bus Compressor をモノラルで使用する場合、このコントロールは “IND” に固定されます。

  • 100% :
    サイドチェインはステレオリンクされ、両チャンネルで常に同量のコンプレッションが適用されます。一方のチャンネルの信号のピークが他方に比べて高い場合、出力での左右のシフトを防ぐことで、入力でのステレオイメージングが維持されます。
  • IND(0%):
    サイドチェインはリンクされず、生じるコンプレッションの量は両チャンネルで完全に独立します。一方のチャンネルの信号のピークが他方に比べて高い場合、ステレオイメージングがシフトする場合があります。
  • 50% 〜 90% :
    サイドチェインは部分的にリンクし、生じるコンプレッションの量は左右チャンネルのブレンドとなります。ブレンドの量は、50、60、70、80、90% から選択できます。

SHAPE

“L/R LINK” で使用されるコントロール信号のフィルターを設定します。HP(ハイパス/ローカット)と LP(ローパス/ハイカット)が用意され、両方のフィルターを有効にすることで、BP(バンドパスフィルター)のシェイプも得られます。

L/R LINK のコントロール信号から特定の周波数を取り除くことで、その周波数を含む一方のチャンネルのサウンドによって他方のチャンネルがコンプレッションされることなく、お好みの周波数帯域を利用したリンクを実現します。

設定を変更するには、任意の選択肢をクリックするか、“SHAPE” ボタンをクリックします。いずれかのLEDが点灯すると、フィルターが有効になります。

なお、API 2500 Bus Compressor をモノラルで使用する場合、このコントロールは無効になります。

出力セクション

IN

コンプレッサー回路の有効/無効を切り替えます。“IN” ボタンの上にある緑色のLEDが点灯していると、コンプレッサーが機能します。設定を切り替えるには、ボタン、ラベル、またはLEDをクリックします。

オフに設定すると、コンプレッション回路はバイパスされますが、信号は他の回路を通過します。つまり、この「ソフト」なバイパスコントロールでは、信号へのコンプレッションは掛かりませんが、アンプやトランスなどのコンポーネントを介したサウンドを得ることができます。

なお、“BYP(バイパス)” ボタンの有効時、“IN” ボタンは無効になります。

BYP(バイパス)

すべてのハードウェア回路をバイパスします。実機では、このボタンは入力を出力に直接ハードワイヤリングするリレーを制御するものとなります。

“BYP” ボタンの上にある黄色のLEDが点灯していると、コンプレッサーはバイパスされます。バイパスの状態を切り替えるには、ボタン、ラベル、またはLEDをクリックします。

API 2500 Bus Compressor を無効にしてプロセッサのリソースを節約する場合は、“POWER” ボタンを使用します。

GAIN

API 2500 は、コンプレッションによって低下した出力レベルを補うためのメイクアップゲインを備えています。オート/マニュアルを切り替えるには、赤色の “GAIN” ボタン、ラベル、またはLEDをクリックします。

  • オート :
    オートメイクアップゲインは、赤色の “GAIN” ボタンが押されていない(上にある赤色のLEDが消灯している)時に有効になります。オートメイクアップゲインが働くと、コンプレッサーの出力レベルは、コンプレッション量が増加すると相互に増加し、コンプレッション量が減少すると相互に減少します。これによってスレッショルドとレシオを調整しても出力ボリュームが一定に保たれるため、サウンドの調整や試聴が容易になります。例えば、録音機材や放送システムへの出力レベルを乱すことなく調整を行う場合などにとくに有効でしょう
  • マニュアル :
    マニュアルメイクアップゲインの有効時、赤色の “GAIN” ノブを使用して、コンプレッサーの出力レベルを連続的に調整することができます。設定可能な範囲は、0 〜 +24 dB です(“0” をクリックすると、値を瞬時に 0 dB に戻せます)。マニュアルメイクアップゲインは、赤色の “GAIN” ボタンが押されている(上にある赤色のLEDが点灯している)時に有効になります。

その他のコントロール

POWER

API 2500 Bus Compressor の有効/無効を切り替えます。状態を変更するには、黄色の “POWER” ボタンをクリックします。

オフ(ボタンが消灯している状態)に設定すると VU メーターが暗くなり、信号への一切の処理が行われていないことを示します。

MIX

API 2500 Bus Compressor で処理された信号と、ドライなソース信号との出力バランスを調整します。“MIX” ノブは、余計なルーティングを作成することなく、「パラレル・コンプレッション」テクニックを容易にするものです。

0%に設定すると、ドライなソース信号のみが出力されます。100%(デフォルト値)に設定すると、処理された(ウェット)信号のみが出力されます。50%の設定では、ドライ信号とウェット信号が均等にブレンドされます。ドライ/ウェットのバランスは連続的に調整でき、位相も正確です。

“0” をクリックすると、値は瞬時に最小となります。“100” をクリックすると、最大に設定されます。

なお、実機にこのコントロールは備わっていません。

VU メーター

キャリブレーションされた VU メーターで、入力レベル、出力レベル、ゲインリダクションレベルを表示します。メーターに表示する内容は、VU メーターソースボタンを使用して切り替えます。

API 2500 には、各チャンネル(左と右)それぞれにVUメーターが用意されています。モノラルで使用される場合、両方のメーターが同じレベルを表示します。

メモ :
VU メーターは平均的なラウドネスを表示します。信号のピークは表示しません。

VU メーターの背景には、2種類のスケールが記されています。有効なスケールは、VU メーターソースボタンの選択によって決定されます。

  • IN/OUT :
    上側のスケール(-20 dB 〜 +3 dB)は、入力または出力レベルを表示するために使用します。このスケールでは、0 VU は +4 dBu を示します。
  • GR :
    下側のスケール(20 dB 〜 0 dB)は、ゲインリダクションレベルを表示するために使用します。

VU メーターソース

“VU” ボタンは、VU メーターで表示する内容を決定します。VU メーターのソース設定を変更するには、任意の選択肢をクリックするか、“VU” ボタンをクリックします。

  • GR :
    VUメーターは、各チャンネルで発生しているゲインリダクションの量を表示します。
  • OUT :
    VU メーターは、API 2500 Bus Compressor の出力における信号レベルを表示します。
  • IN :
    VU メーターは、API 2500 Bus Compressor の入力での信号レベルを表示します。

HR(ヘッドルーム)

このコントロールは実機にはない機能で、API 2500 Bus Compressor の内部動作基準レベルの調整を可能にし、API 2500 Bus Compressor がゲインリダクションによって余分に「プッシュ」されないようにします。ヘッドルームは、ベストな動作レベルマッチングを可能にするだけでなく、サウンドの幅を広げるためクリエイティブに使用することも可能です。

ヘッドルームを微調整することで、ノンリニアなI/Oディストーションとコンプレッション特性を、入力信号レベルに依存せずに調整が行えます。ヘッドルームを大きく確保(コントロールを反時計回りに操作)すると、入力信号をコンプレッションする前にプッシュすることができます。

ヘッドルームは、4、8、12、16、20、24、28 dB 単位で設定できます。デフォルトの設定は、16 dB(セッティングスクリューのドットが正午の位置にある状態)です。コントロールをデフォルト値に戻すには、“option” キーを押しながら、“HR” ノブをクリックします。

注意 :
ヘッドルームの調整時に予期しないゲインの増加が生じることを避けるため、このコントロールをオートメーション化することは推奨しません。

HRは、実機に搭載されている L/R TILT コントロールの代わりとなるものです。L/R TILT は、アナログコンポーネントの許容誤差とドリフトを補正するものであるため、この API 2500 Bus Compressor では必要ありません。

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