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Universal Audio : Sphere マニュアル | Sphere を使ったステレオ収録

マニュアル, 2023/01/17

該当製品

Sphere DLX および L22 マイクは、ステレオ収録のためのさまざまなオプションを提供します。従来のマイクと同様に、XY、スペーシングペア、MS、ORTF などのよく知られるステレオマイキングテクニックも、2本の Sphere マイクがあれば効果的に活用することが可能です。また、Sphere 180 プラグインを使用すれば、Sphere マイク1本でもステレオ収録に対応します。

注 : Sphere 180 プラグインを使用するには、Sphere DLX または L22 マイクが必要です。

Sphere マイク1本によるステレオ収録

Sphere マイク1本でステレオ収録を行うことは、実に簡単です。Sphere マイクでは、ダイアフラムのフロント側とリア側に対し、それぞれで任意の仮想マイクを設定することができます。ステレオ収録の際は、マイクを90度回転させ、フロント出力が左チャンネル、リア出力が右チャンネルになるようにセットします。次に、Sphere 180 プラグインを起動します。

Sphere マイクは、高精度でマッチングされたダイアフラムを背中合わせで備えているため、チャンネルがモノラルサミングされた場合でも完全な位相が常に維持されます。この手法では、最大の広がりを持ったステレオフィールドを得られますが、そのセンター部分にはスペースが残ります。これはカプセルがソースに対して90度オフアクシスの状態となっているために、(オンアクシスと比較して)高域成分が弱まるという特性に起因します。しかし、ルーム感を含んだワイドなステレオ収録が目的であれば、これでよいでしょう。この時、マイクの指向性をカーディオイドとスーパーカーディオイドの間に設定することで最良の結果を得られます(スーパーカーディオイドは、より広いステレオフィールドを提供します)。

メモ : ハイパーカーディオイドはステレオ音像を広げる際に有効なパターンですが、時として位相の問題を引き起こす可能性もあります。

左右のチャンネルで異なるマイクモデルを選ぶことも可能です。アコースティックギターのサウンドホール付近は、低域が強調されたサウンドになることが多く、ブリッジ側はブーミーに、ネック側はブライトになります。したがって、低域が抑えられたマイクモデルをブリッジ側、低域が膨よかなマイクモデルをネック側に設定することで、サウンドのバランスを取ります。

Sphere マイク2本によるステレオ収録

Sphere マイクを2本使用すれば、より幅広いステレオテクニックを活用できます。一般的なステレオマイクテクニックを用いることももちろんですが、それに加え、Sphere ではオフアクシス補正などの新しいオプションが用意されています。

2本の Sphere マイクを使用することで、ステレオからクアッド、あるいは5.0サラウンド収録にまで対応します。この場合、マイクを XY にセットし、それぞれのマイクを90度オフアクシスの状態にします。これによって、一方の Sphere マイクでフロントレフトとリアライト、もう一方の Sphere でフロントライトとリアレフトのサウンドを取り込めるようになります。このケースでは、全マイクにカーディオイドパターンを設定するのが一般的でしょう。

5.0 サラウンドのセンターチャンネルを作成する場合、最も簡単な手法は、左右のマイクモデルの出力をサミングすることです。これにより、センターパンされた仮想のカーディオイドマイクが作成されます(左右の出力がカーディオイドであると仮定しています)。別の手法としては、2本のマイク信号を1つのステレオバスに送り、そこへモノラルの Sphere プラグインを追加すれば、5つのチャンネルすべてで個別に設定が可能なレコーディングセットアップができあがります。指向性をスーパーカーディオイドやハイパーカーディオイドに設定すると、センターと左右のチャンネルの分離がよくなります。さまざまな指向性が用意されていますので、ご自身の用途に合ったものをお試しください。

オフアクシス補正を使用する

コントラバスのステレオ収録について考えてみましょう。低域の基音は、高域の倍音よりもセンターに向かって知覚されます。すなわち、そのサウンドはステレオフィールドの1点を占めるのではなく、広がるように存在します。

Sphere のオフアクシス補正でソースとの距離を設定し、このような楽器の周波数特性を管理しましょう。

  • ON DIST で、ソースからマイクまでの距離を設定します。
  • OFF DIST で、軸外のソースからマイクまでの距離を設定します。

これらの値は正確に設定する必要はなく、耳を頼りに調整していきます。複数のソースを調整する場合は、平均的な距離、もしくは聴感上ベストな値を採用します。

オフアクシス補正をミッド/サイドなどの構成で使用する

オフアクシス補正は、異なるタイプのマイクを用いるミッドサイドやステレオ、サラウンドの構成時でも有用です。例えば、ミッドサイドでは、ミッドチャンネルにカーディオイドまたはオムニ、サイドチャンネルにフィギュア8のマイクが使用されます。フィギュア8のマイクは固有の指向特性により、オムニやカーディオイドマイクとは常に異なる周波数特性を持つため、ミッドサイドのエンコーディングでは周波数に依存する誤差が生じます。これはある程度避けられないことですが、オフアクシス補正を使用すれば、周波数特性や極性特性の違いを多少補正することができるため、結果的としてより良いミッドサイドレコーディングを実現することができます。

ステレオ収録時の近接効果の調整

指向性マイクを使用してステレオ収録を行う場合、ソースからの距離によっては近接効果のために低域が大幅に損なわれてしまう場合があります。多くの指向性マイクでは、ソースから約 0.5 m 離れたところが最もフラットな低域特性を得られます。

Sphere プラグインでは、[PROXIMITY] コントロールをプラス方向に調整し、近接効果によるロスを補正します。これによって、より充実したサウンドのレコーディングを行うことができます。

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