Arrow で超簡単レコーディング!第4回 ボーカルだって手軽に録れる!!

Universal Audio のオーディオインターフェイス Arrow の使い方や特性についてご紹介します。ナビゲーターはギタリスト / 作編曲家 / 音楽プロデューサーの小川 悦司さんです。

UNIVERSAL AUDIO の新しいオーディオインターフェイス Arrow を掘り下げるこの連載の第4回目はボーカル録音について紹介したいと思います。

 

まずはマイク選び

Arrow には2系統のインプットがあります。マイクは XLR ケーブルで接続、コンデンサーマイクにはファンタム電源を供給することもできます。

ロック系ならダイナミックマイクという選択肢もありますが、一般的にはコンデンサーマイクをチョイスするのがベターでしょう。

というわけで、今回は sE Electronics の sE2200aII を使用しました。このマイクは非常にナチュラルですが、ハイがとても透明感のある音で録れるので、ボーカルからギター録り、そして管楽器など、オールマイティに使っています。いわば私のメインマイクのひとつです。

今回は女性ボーカルということもあり、この sE2200aII をチョイスしています。  


マイクセッティング

今回はスタンドは上から狙いです。もちろん、マイクは正面にありますが、歌い手さんがどこに譜面台を置きたいによっても変えます。ちなみにマイクの上下によっても多少音に影響はありますが、それよりも歌い手さんのモチベーションやマイクとの距離のほうが影響は大きいので、私は特にどちら向きというこだわりはありません。

さて、今回お願いした歌い手さんはシンガーソングライターの mamino さん。自らのアルバムもリリースされているアーティストさんですが、スタジオワークもステージ経験もバッチリで非常にやりやすかったです。というよりも仕事が早い。詳しい情報は下のプロフィールをご覧ください。


レーテンシーを気にしないでレコーディングするためのセッティング

XLR ケーブルを接続したら +48V のスイッチを押して、コンデンサーマイクにファンタム電源を供給します。

次に Console で各種エフェクトの設定をします。ここでは DAW に送る前の音をモニタリングすることによってほぼゼロレーテンシーでモニタリングが可能です。画面で説明しましょう。  

A.プリアンプを設定します。ここでは Unison 対応の UA 610-B Tube Preamp を使いました。Arrow 本体のインプットゲインと、このアンプのレベルで DAW で録音するレベルを決めます。 

B.モニターに返すためのリバーブを設定します。このエフェクトに関しては基本的にモニターのみに掛かりますが、DAW の設定によって掛け録りも可能です。  

C.リバーブへのセンドレベルを設定します。 


D. UAD REC / UAD MON ボタンで Inserts エフェクトの設定を行います。もし Console で Inserts エフェクトを使っている場合、UAD REC に設定すれば Inserts エフェクトを掛けた状態で録音できますし、UAD MON に設定すればモニターには Inserts エフェクトが掛かりますが、DAW への録音には掛からないというチョイスができます。

これらの機能は Arrow の大きなアドバンテージと言えるでしょう。

 

ダイナミクス系は録りに使わない!?

通常、歌や生楽器のレコーディングには、例えば 1176 などのコンプを軽くかけて録るのが定石ではありますが、それはアナログテープ時代のダイナミックレンジやSN比の悪かった頃の名残とも言えなくはありません。賛否両論あるかとは思いますが、ダイナミックレンジが十分確保でき、レベルが低くともノイズに埋もれることのない環境がある昨今、私は基本的にはコンプ類をかけ取りすることはありません。これは生楽器奏者として、演奏のモニタリングには時間だけではなくダイナミクスにもダイレクト感が欲しいからです。実は今回のレコーディングでも強弱のつけ方や音の出方について mamino さんと色々試しましたが、やはり自分の思い通りのダイナミクスレスポンスがあったほうが圧倒的にいいパフォーマンスができるものなのです。ただし、それにはもちろんオケの返し方も大事ですが・・・

このあたりはこれから生演奏を録音するかたには是非知っておいて欲しい「演奏家からの要望」なのです。  


それではまず完成した楽曲をお聞きください。


録音後の処理について

それでは今回のボーカルトラックに使った Arrow 搭載の UAD プラグインの設定を紹介していきましょう。使ったエフェクトは3種類の Inserts エフェクトと、RealVerb Pro です。

今回は Inserts エフェクトで使った3つのエフェクトを紹介します。


Precision Channel Strip

これだけでダイナミクスもまかなえますが、ここではハイエンドのツヤの部分を足しています。サウンドサンプルがありますので、主に子音に注目して聞いてみてください。

実際のブースト値は3dBですがサンプルでは分かりやすいように4.3dBまでブーストしてみました。ポイントは10KHzではなく8KHz前後という点です。 


※エフェクトOFF→エフェクトONの順で流れます。



Pultec Pro Equalizers EQP-1A Legacy

前回も登場した Pultec ですが、ここでは4kHzあたりの少し耳に痛いあたりを下げているのと、100Hzあたりをブーストして温かみを加えています。これはコンプの後にかけていますが、ここでは先にその違いを確認してみてください。


※エフェクトOFF→エフェクトONの順で流れます。



Teletronix LA-2A

生中心のオケであれば、私はあまりダイナミクス系のエフェクトは使わずにフレーズ毎にミキサーレベルを細かく補正しますが、この楽曲はオケのレベルも比較的平坦なのでここでは光学式コンプレッションの代表機種ともいえるLA-2Aを使ってみました。

ダイナミクスとアタック感が生歌とは変わってしまうのは仕方ないところですが、サンプルの 0:02-0:04 あたりのロングトーンのボリューム感と、0:06-0:07 あたりの声の張りが大きすぎるのが緩和されているのがわかると思います。


※エフェクトOFF→エフェクトONの順で流れます。  



さて、いかがだったでしょうか?次回は Arrow でベースを録ってみます。お楽しみに!!

Mamino

シンガーソングライター

鹿児島市生まれ。

鹿児島県立松陽高等学校音楽科、福岡教育大学芸術音楽領域をピアノ専攻で卒業。
大学在学時よりヴォイストレーニングに通い本格的にシンガーソングライターとして活動をはじめる。
2012年5月初のオリジナルアルバム「Sing&piano」をリリース。
2013年、拠点を東京へ移す。
2017年3月、エアプレーンレーベルより初の全国流通盤アルバム「ModernTimes」をリリース。
都内を中心に精力的にライブを行いながら、バックコーラス、CM音楽等のサポートやヴォイストレーナーとしての仕事も行っている。
オリジナル曲“ツタエタイコト”が、2016年12月鹿児島MBCテレビ「NEWS NOW」エンディング曲に採用。
透き通るような伸びやかな声は、透明度が高いのに細くなく、鍛錬されたしなやかなテクニックと潔さを感じる大人の意思があり、心にまっすぐ響く。そして、彼女の作り出す楽曲は色んなジャンルの要素を含んでおり、ストレートな詞の表現から素朴さを感じる作品が多い。
HP→https://singermamino.tumblr.com/
Blog→https://ameblo.jp/trajets-6g-music/

小川悦司

ギタリスト / 作編曲家 / 音楽プロデューサー 

ギタリストとして竹本孝之、今井優子、牧野由依、 劇団四季、中川ひろたかなど、ロックからジャズ、ミュージカル、子供向けの音楽まで、幅広いジャンルのサポートやレコーディングに参加するほか、「ポケモン」「ビーダマン」「オハスタ」「生き物地球紀行」などのTV番組関連、また「アイシールド21」や「ウィザードリィ外伝」などゲーム音楽のレコーディングにも数多く参加。楽器フェア等各種催事では長年にわたってYAMAHAやHookUp、Internetなど国内外のメーカー、ベンダーのステージデモを担当。作編曲家、サウンドプロデューサーとしても五十嵐はるみ、折重由美子、米澤美玖、JAZZ LADY Projectなどのジャズ〜フュージョン系からソーシャルアイドルnotallなどまで幅広いジャンルのアーテイストを手掛ける。また、櫻井哲夫の全国ツアーオケやモーターショーの音源制作、USJのサウンドデザイン、菅沼孝三、川口千里、大高清美、梶原順らのDVDや出版物への楽曲提供、「アニソン・エクササイズ」の音楽監修も行っている。執筆家としての関連著書も非常に多く、その発行部数はトータル1000万部以上にのぼる。

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