Hookup,inc.

reProducer Audio Epic 5 : YG エンターテインメントプロデューサー AiRPLAY

YG エンターテインメントの作曲家/プロデューサー AiRPLAY は、ソン・ミンホ、カン・スンユン、ソン、イ・ヤイ、iKON、WINNER ら、K-Pop を牽引するミュージシャンの作品にプロデューサーとして参加し、数多くのヒット曲を作り、その音楽スタイルを確立させてきました。

ヒップホップやR&Bへの情熱から始まった彼の音楽は、ポップ、ブルース、ロック、トラップなどに広がり、独自の魅力的なストーリーを紡ぎ出しています。最近は YG の新人グループ TREASURE や BABYMONSTER の新プロジェクトに参加し、再び活動の幅を広げている彼に Gearlounge が会いました(※Gearlounge【GL Interview】より転載)。

ヒップホップやR&Bへの情熱から生まれた魅力的な音楽


- こんにちは。お会いできて嬉しいです。 簡単な挨拶と自己紹介をお願いします。

こんにちは。YG エンターテインメントでプロデューサーとして活動している AiRPLAY と申します。

- 最近はどんな作品に携わっていますか?

これまでは主にミンホやスンユンの作品を担当していましたが、2人が軍隊に行くことになったので、最近は YG の末っ子グループ TREASURE や、デビューを控えた BABYMONTER の楽曲制作に多くの時間を費やしています。どちらもすでにファンがしっかり付いていて、特に TREASURE は日本でドームツアーをするほどファン層が厚いです。僕はメインプロデューサーではないですが、メンバーに合いそうな曲があれば一緒に作業しています。

- パンデミックによって生活に多くの変化があり、シーンにも様々な影響があったと思います。制作の観点から、コロナ以前と変わった点はありますか?

私達だけかもしれませんが、パンデミック以降はたんにチャートにこだわるより、ファンとコミュニケーションできるプロジェクトに集中するようになった気がします。それによりアーティストのファンダムにも自然と変化が訪れ、大衆的な認知度は広くなくても、強い愛情を持つ厚いファン層を持つようになりました。コロナが終息すれば、コンサートや物理的なレコードリリースも活性化してくると思います。

- 音楽に興味を持ったきっかけは何でしたか?

子供の頃に NBA が好きで、当時、駐韓米軍管轄の放送局だった AFKN で NBA のハイライトを観ていたのですが、中学生の頃、たまたま NBA のハイライトが終わった後に放送されたエンターテイメント番組でヒップホップを初めて知り、完全に魅了されました(笑)。その時、出会ったミュージシャンが LL Cool J で、私のプロデューサー名である AiRPLAY は、彼の「No Airplay」という曲からインスピレーションを得たのです。それ以降、ラジオ番組の「ペ・チョルスの音楽キャンプ」やGMVマガジンなどから、得られる情報はすべて集めました。ある瞬間から、パフォーマンスをするシンガーよりもプロデューサーに興味を持つようになり、それが僕をここまで引きずり込んだのです。

- 当時はメディアに顔が出るミュージシャン中心のコンテンツが多かったと思いますが、舞台裏でミュージシャンをサポートする役割、特にプロデューサーに興味を持つようになったのですね。

アルバムを買ったら、ジャケットに書かれている全員の名前を確認しました。アルバムに含まれるものをひとつも見逃したくなかったのです。 例えば、LL Cool J や好きなミュージシャンのアルバムを買った時、「Marley Marl というプロデューサーがいる」と思ったら彼の作品を全部調べましたし、「クレジットに Track masters の名がある」と思ったら彼の作品を全部調べました。好きなミュージシャンがいれば、そのプロデューサーのトラックも全部探して聴くようになり、LL Cool J から Nas まで自然にヒップホップが好きになって、自然とプロデューサーを夢見たのだと思います。 今思えば純粋な情熱でしたが、当時は父に「勉強以外のことばかりしている!」とよく怒られました(笑)。

- プロデュースを本格的に始めた初期の話が聞きたいです。

高校時代に「ユニテル」というPC通信サービスがあって、その黒人音楽サークルに参加することで自然とプロデュースの概念や情報を学ぶようになりました。 その後、プロデュースに関わる方面への進学を目指しましたが、家族の反対でクラシック作曲を専攻することになりました。その後、軍隊に行ってヒップホップとR&Bの本場であるアメリカに渡り、本格的に音楽を始めようともしましたが、当時アメリカでアルバイトをしながら音楽活動を並行するのは難しいと判断し、韓国に残ることにしました。今、YG で一緒に働いているプロデューサーのカン・ウクジンと共に、上水洞の地下に小さなスタジオを作り、そこから本格的に音楽を始めました。

- SE7EN の「Make Good Love」で YG エンターテインメントのプロデューサーとしてデビューします。会社に所属する前と後で、作業スタイルや環境などで変化したことは?

それ以前は壁に向かって音楽を作っていましたが、アーティストとコミュニケーションを取り、会社のニーズを把握して作業できるのが一番大きな違いでした。入社した時、実力ある作曲家がたくさんいて力不足を痛感し、たくさん学ぼうとしました。何ひとついい加減にすることなく、細かい部分に多くの時間を投資しながら、プロデュースに対する概念を再確認したように思います。

- K-Popだけでなく、ヒップホップやR&Bが好きな人にとって YG は魅力的なプロダクションでありクランだと思いますが、YG ならではのスタイルとはどんなものでしょうか?

明確に「他と何が違う」とは言えませんが(笑)、他のところでは良いと言われる曲でも、我々のところでは出せない音楽スタイルがあり、逆に我々は良いと感じるものでも、他のところでは出せないような曲があります。我々の直感的なスタイルとでも言うべきでしょうか。同じK-Popの範疇にありますし、すべて良い音楽ですが、ニーズが少し違うと感じられます。と言うと少し閉鎖的なイメージがありますが、外部のプロデューサーとも活発に交流しており、私達 YG のプロデューサーも新しいことを試みるためにたくさん努力しています。

- 作詞と作曲を兼任していますが、歌詞を先に書いてインスピレーションを得るのか、音楽のアイデアをスケッチしてから歌詞を書くのか、どちらを好むのでしょう。

伝えたい感情をイメージするのが一番先だと思います。歌詞をあらかじめ書いておくことはなくて、イメージを連想させるような言葉をメモしておいて、歌詞を書く時にそこからアイデアを得ます。歌詞とメロディが同時に浮かぶのが理想的ですが、音楽的な雰囲気を先に作ってから歌詞を付けることが多いです。

- 作詞の過程で一番大切にしているメッセージや、伝えたいものは?

メッセージというより、伝えたいフィーリングは確かにあると思います。歌詞を書く時に、日常的な言葉や口調を使うことで共感を得たいのです。YG には多くのシンガーソングライターがいるので、歌詞についてミュージシャンと意見を交わすことは多いですが、僕は全体的に関わるよりも、言葉や表現、フィーリングについてアイデアを提示することが多いです。

"仕掛け"に気づいてくれた時、コミュニケーションが取れていると感じる


- ヒップホップやR&Bからチルトラップ・ベースのポップミュージックやブルースまで、様々なスタイルの音楽をプロデュースしていますが、インスピレーションはどうやって得ていますか?

主に自分のスタジオでインスピレーションを得るようにしていますが、いつも意外な場所で突然アイデアが浮かびます。例えば、家に入る直前の駐車場とか...多くのミュージシャンに共感してもらえると思います(笑)。家ではちゃんと休息を取るようにしているので、楽器を弾きながら携帯電話に録音するか、メモを残す程度です。

- アコースティック編成やロックセッションによる楽曲も意外と多く発表していますが、ジャンルごとの特徴を活かすコツがあれば教えてください。

ジャンルごとに明確な基準を持ってトーンを決めていますが、ポイントは楽器のニュアンスをうまく活かすことだと思います。若い頃に熱心に聴いていたアーティストをたくさん思い出して、「あの人達がこの曲を演奏したらどんな感じだろう」とスケッチを始めることが多いですね。

- 自分の演奏を曲に使うこともありますか?

ピアノは自分で弾くことが多いですし、トランペットも吹けますが、まだ音源として使ったことはありません。実際、すべての楽器を扱うわけではないですが、僕は軍楽隊出身なのでアコースティック楽器やバンドサウンドへの理解度は高いです。軍楽隊生活で色々なことを学びました。ギターパートをMIDIで作るのがすごく得意で(笑)、「本当に打ち込みなの?」と言われるくらい、周りから驚かれることもあります。子供の頃にギターをすごく習いたかったのですが、母がピアノを教えてくれたのでやりたいことができず、MIDIでギターをうまく表現する方法を考え続けていたら自然とうまくなりました(笑)。長く一緒に仕事をしている息の合うギタリストがいるので、僕はガイドくらいしか書きませんが、MIDIで仕上げたギターパートをアルバムに使うこともあります。

- 一番よく使うギタープラグインは?

一般的なライブラリ・ベースのギタープラグインをよく使いますが、ひとつのヒントとして Spectrasonics のベース音源 Trillian のトーンを上げて演奏するとすごく良い音が出ます。基本的な弦楽器の描写がしっかりしているので、ピッチやEQを少し調整するだけで魅力的なギタートーンになるのです。個人的には Goo Goo Dolls や U2 のようなバンドサウンドが好きなので、ギターの音を作る時に、アコースティックやエレクトリックなどの様々な奏法やトーンの参考にしたりします。

- 尊敬している、見習いたい、あるいはインスピレーションを受けるアーティストは?

これは周りにもよく言う話ですが、僕が一番尊敬しているプロデューサーは PEEJAY さんとCHOICE37 さんです。もちろん素晴らしいミュージシャンはたくさんいますが、2人は音楽的に学ぶべきことを一番多く感じ、音楽に取り組む姿勢やマインドなど、見習うべき点が多いと感じるプロデューサーです。僕がプロデューサーになりたての頃から、人間的にも音楽的にも随分引っ張ってくれて、「この人達は何かが違う」と感じたりもしました。忙しくてなかなか会えませんが、いつも尊敬の念を抱いています。

- 音楽制作にリフレッシュが必要な時、どのような方法で充電していますか?

集中力が落ちた時は、DAWを閉じて他のことをします。スタジオで遊んでいると、また作業したくなるタイミングがやってくるのです。無理にトラックを抱え込むような性格ではないので、行き詰まったらすぐに畳みます。むしろこのやり方が、作業をする上で効率的だと思います。

- WINNER やソン、イ・ヒョイ、SE7VENなど、数多くの有名アーティストと仕事をしてきた中で、最も記憶に残っている曲やアーティストは?

一緒に作業したすべてのアーティストが素晴らしく、彼らとの良い思い出がたくさんありますが、あえて1つ選ぶなら WINNER の『EVERYD4Y』でしょうか。メンバーと肩を組み、助け合いながら制作したアルバムなので、より一層そう思えます。また、このアルバムを通して多くの方に僕のことを知ってもらいましたし、アルバムの半分くらいのトラックを僕が制作したので、それだけ多くのエネルギーを注いだのですが、周りから「これくらいなら AiRPLAY にはお手のものだろう」という話をたくさん聞きました(笑)。

- 多くのヒット曲を制作したプロデューサーとして、大衆の共感をつかむためのヒントは?

それは僕にとってもまだ難しいテーマです。リスナーの立場からすると、シンプルで直感的で深く考える必要のない楽曲が、良い反応を得ているのではないでしょうか。プロデュースする立場からすると、そういう曲の方が難しいのです。僕もそうですし、大衆の心を完全に把握しているミュージシャンはいないと思います(笑)。ただ、僕が表現したい感情や感覚がリスナーにも同じように感じてもらえたらいいなと思って、常にサウンドに悩み、努力しています。例えば、単純なピアノの旋律ひとつでも、すごく気を遣って作っているんです。曲を聴いた方から「この曲のピアノパートが好きです」と言われると、すごく嬉しいですね。プロデューサーとして入れた"仕掛け"にリスナーが気づいてくれた時、彼らとコミュニケーションが取れたと感じます。

- 最近はサンプルパックが多様化してプラットフォームも多様化し、音源を見つけやすくなりましたがカテゴリーが複雑になっています。音源を使い分ける独自の方法はありますか?

僕はサンプルを活用する際にジャンル分けをしません。ライブラリはヒップホップやEDMなどのジャンルに分かれていて、その中に各スタイルのキットがありますが、そのまま使うのではなく、好きなサウンドが出来るまでサンプルを組み合わせていき、「音源を探す過程」に多くの時間を費やしています。サンプルのプラットフォームを利用する際も、フィルターオプションをランダムに設定して探します。音源を選んでEQやエフェクターで音を作っていくのもいいですが、音がどう変化するかを予測するのが難しくなるので、仕上がっている音の方がより良い結果が出ると思います。

- 最近、K-Popが世界中で大きな人気を集めています。あなたもその流れの重要な位置を占めていますが、過去と現在、国内と海外のプロダクションの違いとは何でしょうか?

海外の作曲家がK-Popに大量に流入したことで、従来より多様なスタイルと雰囲気が生まれ、ソングキャンプを通じた集団プロデュースのクレジットも多く見られるようになりました。K-Popコンテンツは海外に出るのに、システムはその逆になるという面白い状況だと思います。実際、海外と国内の制作方法に大きな違いはないと思います。一般的に海外のアーティストとのコラボレーションは、ソングキャンプやチーム単位で行われることが多く、短時間で多くの成果を出すのが目的なので、直感的なメロディラインにコード進行やストーリーなどをビルドアップして完成させるのが特徴だと思います。

- プロデューサーの立場で、レコーディングを進める上で重視していることは?

レコーディングは会社のスタジオでレコーディングチームが個別に受けるので、私が受けるというより、傍らで一緒に参加する感じだと思ってください。通常、一番重要視するのはボーカルのニュアンスです。ピッチやタイミングは後から修正できますが、ニュアンスはどんなソフトでも作り出せないので一番気を遣います。

他のスピーカーでは感じられない違いが Epic 5 だと感じられる


- スタジオモニターに reProducer Epic 5 を使用していますが、どんな用途ですか?

Epic 5 は現在、サブのモニタースピーカーとして使っています。僕のスタジオはそこそこ広いので、メインで使うにはサイズが小さいですが、様々なモニタリング環境を整えるのに役立っています。僕はミックスバランスを様々なモニターで必ずチェックするので、その際に重要な役割を果たしてくれます。

- Epic 5 は、パッシブラジエーターやアイソレーション用のスパイク、ドライバーの遅延を調整するためのユニークな設計など、一般的な5インチモニターにはない独自のシステムで構成されています。他のモニターと比較して、Epic 5 の長所や特徴は何だと思いますか?

他社の5インチスピーカーもよく使いましたが、個人的にはこの価格帯、このプラットフォームを採用したスピーカーの中では、Epic 5 が最も安定したサウンドを再生していると思います。通常、スピーカーのブランドによって特定の周波数帯に「キャラクター」が明確に感じられるのですが、Epic 5 はかなりフラットに聴こえます。「過不足のない音」とでも言うのでしょうか。バランスチェックだけでなく、作業中に常にクロスチェックしながら聴きたいモニターです。また、Epic 5 ならではの特性として、ミックスやマスタリングの仕上がりによって、低音の聴こえ方に違いが感じられます。例えば、Cardi B の「Bodak Yellow」を再生すると普通の低域が出ますが、「WAP」を再生すると5インチのスピーカーとは思えないほど素晴らしい低音が出ます。使用されたベース音源のトーンの違いなのか、他のスピーカーでは感じられない違いが、Epic 5 だと感じられるのが不思議です。このような特性がユーザーにとってデメリットになることもあれば、メリットになることもありますが、バランスを確認し、音源を選択する上で大きな助けになると思います。

▲reProducer Audio Epic 5(中央)

- 様々なスタジオで様々なモニターに触れてきたと思います。スタジオモニターを選ぶ際のこだわりやノウハウはありますか?

僕は低音に敏感で、気を遣う方です。聴いて、認識することもそうですが、体で敏感に反応する何かがあり、低域がうまく出ないと耳が聴こえなくなったり、心臓が反応したりします(笑)。 もっとわかりやすく言うと、低域が完璧に再生されながらも、ただ大きく聴こえるだけでなく、過不足のないクリアな音が好きです。「クリアな低音」とでも言いましょうか。

- Epic 5 はどんな作業をする人におすすめですか?

まず、スピーカーの性能に対して極端に高い価格帯ではないので、初心者や、ある程度の作業スペースを確保している方におすすめできますし、小さな部屋で作業しているミュージシャンにもおすすめです。「こんなジャンルに良い!」と言うのは難しいですが、オールラウンド・ビギナーに最適という表現が一番しっくりくると思います。

- 良いスピーカーを使用した良いモニタリングは、プロデュースにどんな影響を与えますか?

トラックメイクだけでなくクオリティの高いデモミックスをしなければならない昨今のトレンドでは、バランスの良いモニタースピーカーは必須だと思います。自分の好みに合うモニター環境を構築することも重要です。どんなに評価が高いスピーカーでも、自分の耳に合わないスピーカーを無理やり耳に合わせて作業する必要はないので。

- Barefoot のスピーカーも長い間メインで使っていたと聞きました。

はい、Footprint の音が好きで、YG の旧社屋時代から長い間使っていたのですが、今使っている新社屋のスタジオがそんなに広くなくて、かといって狭いわけでもなく、少し曖昧な構造なので低域がひどく鳴ってしまいました。部屋の音響の問題だったのか、適応させるのが難しくて隣のスタジオの後輩に渡していたのですが、今回音響を新しく調整しながらテストでデスクに置いてみたところ、また満足のいく音が出ました(笑)。最初に測定した時は低域に深いディップがありましたが、Artnovion のベーストラップを追加で設置し、スピーカーの高さを修正したら、確実に音が良くなりました。 手伝ってくれた Gearlounge のスタジオ施工チームのおかげで満足しています(笑)。

- 使用している楽器についてですが、ハードウェアやバーチャル・インストゥルメンツを含め、一番好きなスタイルの楽器があれば教えてください。

個人的には暖かみのあるEP系のサウンドが好きです。ここにある唯一のハードウェア楽器が Rhodes なのもそのためです。

- Rhodes は制作にどのように活用していますか?

実は僕が持っている Rhodes は MK 1 で、レコーディングするのが難しいんです(笑)。古過ぎてノイズも多いし、ラインで入力してレベルを合わせるのも難しい。僕の部屋にアンプとアウトボードがあるのも、Rhodes を何とか活用しようと思ったからなんですが...難しいです(笑)。 実際に WINNER のトラックに一度だけ使ったことがあって、ソフトウェアの中で一番クオリティが高い Keyscape のライブラリに置き換えるのが一般的です。新しく出た MK8 も話をよく耳にして興味を持ちました。Gearlounge のショールームにあるそうなので、機会があれば確認してみるつもりです。

- インターフェースは Universal Audio Apollo をお使いですね。

そうですね。UAD プラグインをよく使うので、かなり昔から使っています。Apollo のかなり古いモデルなんですが、なかなか壊れないので変えられないんですよ。大変です(笑)。サウンドも良いのですが、DSPベースの UAD プラグインを使えるのが僕にとっては一番のメリットで、UAD-2 Satellite と組み合わせて長い間使っています。よく使う UAD プラグインは Neve 1073UA 1176Teletronix LA-2A です。あとサチュレーターもよく使うし、ビンテージなドラムの質感がよく欲しいので、独特のドライブが魅力的な Moog Multimode FilterRaw も外せませんね。

- 他にワークフローに欠かせないプラグインは?

オーディオサンプルを使ったMIDI作業をすることが多いので、バーチャル・インストゥルメンツでは Ableton Simpler をよく使います。オーディオプロセッサーとしては、先ほどの UAD プラグインと Soundtoys のプラグインです。 特に Decapitator はいつも後輩に勧めています。最近は Slate Digital のビンテージスタイル・プラグインにもよく手を出しています。iZotope Neutron 4 もよく使っていて、独自のテクスチャが好きで手動で使うこともあれば、AI機能を使うこともあります。まずはAIが提示するQ値やコンプレッション量を把握したり、最終ミックスでまとめた音が解決しない場合は、Unmasking機能でバランスを調整することもあります。AIについては様々な見方や意見がありますが、技術の進歩についてはポジティブに捉えています。ただ、このようなテクノロジーに頼り過ぎることは避けています。

時間にしろ、機材にしろ、すべての努力と最善の投資をしてほしい


- 技術の進化に伴い、アナログとデジタルの境界線がどんどん曖昧になり、ミュージシャンの間でも意見が分かれることが多いです。アナログワークフローとデジタルワークフローについての考えをお聞かせください。

僕の場合はアコースティックセッションを除いて、ほとんどすべての作業をバーチャル・インストゥルメンツで行っています。アナログシンセのサウンドは好きですが、K-Popシーンはアーティストやクライアントの要請で素早く修正しなければならない状況が多いので、トラックメイクに限らず、特に海外でミックスして国内で修正する場合は、リコールが容易な100%イン・ザ・ボックスのミックスにせざるを得ません。もちろんアウトボードのサミングミキサーを通せばもっと良くなることは知っていますが、実用的な面でデジタルワークフローを選択していると言うべきでしょうか。重要なのは結果物であり、それは大衆や批評家によって評価されるもので、その基準がアナログかデジタルかではないと個人的に思っています。

- 作曲中にサウンドをより洗練させる目的で、ある程度ミックスをすることがあると思いますが、どのようにして全体のバランスをチェックしていますか?

トラックを作ると同時にデモミックスをするという考え方で作業しています。そうすることで、音源を追加する時にミックスを意識した音作りができるようになります。トラックが完成したら、簡単なイコライジングやボリュームの調整でバランスを整えます。完成後もミックスはほとんどリコールが可能なシステムなので、積極的に修正に関わりますが、マスタリングの場合はアメリカで仕上げるので直接は関与しません。

- 最近 Apple Music のような世界的にユーザーが多いプラットフォームで、Dolby Atmos® のようなイマーシブオーディオが商用化されています。イマーシブオーディオについてはどうですか?

僕が担当した WINNER の『HOLIDAY』もイマーシブオーディオ版がリリースされ、多様な聴き方ができるようになったことは確かです。しかし、ほとんどのクリエイターの立場からすると、自分が意図していない「音響的効果」が生じることになるので、拒否感を感じることもあります。クリエイターとイマーシブオーディオ・エンジニアの間で十分な意見交換をして、そのギャップを減らすことが課題だと思います。個人的には、インストゥルメンタル・ミュージックで新しい試みをしてみてはどうかと思います。ボーカルが入ったトラックだと、当然ボーカルにミックスが集中するものですが、ボーカルがないトラックなら、もっと面白い結果を自由に作ることができると思います。

- 今後、どんなプロジェクトが控えていますか?

先ほど話した YG の新しいアーティストやプロジェクトを着実に準備していく予定です。そして、一生懸命音楽をやっている後輩達を引っ張っていこうと思っています。僕は1人で音楽を勉強してきたし、デビューが遅かったので、若い人達の苦労を減らしてあげて、成長、成功してほしいという気持ちが結構あります。多くの弟子や後輩とコラボしているので、この子達が早く世に知られる日が来ることを願っています。

- プロデューサーとして新たに挑戦してみたい分野は?

音楽だけでなくビジュアルコンセプトやミュージックビデオなどの全般的な分野でディレクションをしてみたいと思っていますが、遠い将来の願望程度です。余裕があれば少しずつ準備をして、プロデューサーとして自分のアルバムを発売するのが小さな目標のひとつです。

- インタビューに答えていただき、ありがとうございました。GL Interview を読むファンの方や、あなたのようなプロデューサーを目指す方に一言お願いします。

まずは GL Interview に呼んでいただき、ありがとうございました。言葉足らずでボソボソと喋ったような気もしますが(笑)。僕は小さい頃からアルバムのシングルカットされた曲やタイトル曲よりも、その他の収録曲を多く聴いていました。なぜか心に響いたからだと思います。だから作曲家になってからも、収録曲を見つけて聴いてくださって、音楽に共感してくださる方がとても大切で感謝しています。そしてプロデューサー志望の皆さん、音楽への投資を惜しまないでください。自分がやった分だけ道が見えてくるのは、音楽だけではないと思います。時間にしろ、機材にしろ、自分ができるすべての努力と最善の投資をしてください。学ぶ姿勢で最後まで挑戦してください。

Gearlounge【GL Interview】より転載

関連記事

ページトップへ