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reProducer Audio : Epic 5 アクティブ・モニター(SOS ON TEST)

このレビューの依頼がくるまで、筆者は「reProducer」というメーカー名をまったく知りませんでした。ですが少し調べると、同社は2016年にドイツで設立され、2020年1月にニアフィールド・モニターの Epic 5 とミッドフィールド・モニターの Epic 55 を発売したことがわかりました。そのうちの1台が今回のレビュー製品です。

ドイツの reProducer 社から異例のデビューを果たした、ニアフィールド・スピーカーを試聴


Epic 5 は最初から好印象でした。ダンボール箱とポリスチレンキャップ、ビニール袋での梱包ではなく、カーボンファイバー製のフライトケースに入っており、その中にはダイカットフォームやアクセサリー用のスペース、巾着袋が用意されています。いい感じです。

アクティブ・ニアフィールド・モニターのマーケット、特に Epic 5 がいる比較的手頃な価格帯は、間違いなく激戦区です。ここで新しいアクティブモニターを発売し、人気モデルからシェアを奪うには、基本的なオーディオ性能はもちろんのこと、ルックスやフィーリングの面で違うアイディアを取り入れるべきでしょう。中国で製造された Epic 5 の音響機器としての性能は後ほど検証するとして、まずは筐体の説明から始めます。

Epic 5 のルックスと表面の仕上げ方は実に奇妙です。コンパクト・2ウェイ・アクティブモニターというオーソドックスなカテゴリーで、新しいデザインを採用するのは容易なことではありません。その結果の良し悪しや、技術的に適切か否かは置いておいて……第一に私はこのルックスを気に入り、その出来栄えに感心しています。第二に、線と角度が交差するデザインには、それなりにオーディオ的なセンスが感じられます。しかし、その理由を説明するには、その線と角度を定義する言葉を探さなければなりません。

独特の角度


Epic 5 は、上部に向かって細くなる台形型のフロントパネルが、少し後方に傾いています。このフロントパネルはアルミの削り出しとアルマイト処理によるものです(この素材と加工方法により、精密工学に基づいたクールな質感を実現している)。

フロントパネルにはゲインコントロールとLEDインジケーターがあり、通常は白く点灯、オーバーロードすると赤く点灯します。トップパネルとサイドパネルはMDF製で、ブラッシュド・アルミニウム・ラミネート仕上げです。

フラットな天板はフロントパネルに対して垂直なため傾斜していますが、両サイドパネルにある斜めの折り目が、台形のフロントパネルと長方形のバックパネルをスムーズにつないでいます。また、折り目があることで内部の面が非平行となり、定在波を抑制すると共にキャビネットの剛性を高める働きもあるという、素晴らしいアイディアです。

フロントパネルが後方へ傾斜しているのは、指向性を上に向けるためではなく、水平前方にいるリスナーの耳までの各ドライバーからの距離を等しくするためです。そのため Epic 5 のリスニングポイントは、フロントパネルの垂直軸よりもわずかに下になります。

アルミニウム


ドライバーは、公称120mm径のウーファーと、一般的な25mmよりやや大きめの30mm前後のツイーターで構成されています。いずれも振動板の素材にアルミニウムを使用しています。現代のスピーカー設計では大きめのツイーターが流行りつつあるようで、10kHz以上が若干狭くなりますが、ツイーターの最低域における歪みや、ボイスコイルの直径拡大による熱圧縮を減らすことができるのは、欠点を補って余りあるものでしょう。また、大型ツイーターはより低い帯域で動作するため、クロスオーバー・フィルターの設計の自由度を高めてくれます。Epic 5 の場合、比較的低い2kHzで4次(24dB/オクターブ)のローパス/ハイパスフィルター・スロープを構成しています。

ドライバーの話の最後に、ウーファーの振動板にアルミニウムを使用することについて興味深い話があります。それは1980年代半ば、Acoustic Energy AE1 ハイファイ・スピーカー/プロモニターの成功まで遡ります。Phil Jones による AE1 の設計はアルミニウムの振動板が機能することを明らかにし、軽量で剛性が高く、ボイスコイルのヒートシンクとして有効など、いくつかの大きなメリットを示しました。

アルミニウム振動板の主な欠点は、高域の共振が非常に活発で制御が難しい傾向があることです。そのためクロスオーバー・フィルターが急勾配となり、クロスオーバー周波数が低くなり、結果として2kHzかそれ以下まで動作するツイーターが必要となります。ですから、アルミニウムの振動板を使ったウーファーと大口径ツイーターを組み合わせるのは、通常ではありえないことです。

底面


ここまで底面には触れてきませんでしたが、180mmのパッシブ・ラジエーターが搭載されており、これも非常に重要です。パッシブ・ラジエーターはリフレックス・ローディングの一種で、バスレフポートと同様の方法で動作し、エンクロージャー内の空気に応じて低域全体を拡げる共振を生み出します。

低域に余分なレイテンシーと張り出しが発生してしまうのはポート付きのスピーカーと変わりませんが、パッシブ・ラジエーターはポートが引き起こす気流の乱れやコンプレッションを避けることができます。以前のレビューで、「気流の乱れを回避できる十分な直径のポートは、エンクロージャー内に収まらない可能性がある」と指摘されていました。ポートの共振周波数を下げるには、ポートを長くしたり、直径を小さくしたりする必要があるからです(どちらも気流が非線形になる体積レベルを下げる)。しかし、パッシブ・ラジエーターの共振周波数を下げるには、たんに振動板に質量を加えればいいのです。そして Epic 5 はパッシブ・ラジエーターの振動板にもアルミニウムを使っています。

底面にパッシブ・ラジエーターがあるとセッティングに制約が生じるため、適切な高さに持ち上げるために、高さ調節可能な円錐形の足が付属しています。また、足先を収めるためにカップ状のネオプレーン・パッドも付属しています。ネオプレーン・パッドは滑り止めの役割と、必要に応じて設置を安定させる役割を果たします。1台につき4つの足が付属しますが、実際には底面に5つの取り付け穴があり、その1つは三脚を可能にするために、後部に向かって中心線上に配置されています。三脚にすれば、我が家の狭いモニター棚でもある程度はトーイン角が取れるので、いつものニアフィールド・モニターとして設置できました。

最後に設置場所について。モニターは設置面の構造物に影響を受けやすいので、少しでも接着度を高めるか、設置面を減らすことで性能を発揮できます。Epic 5 の足とパッドは実用的で、かつセッティングの実験や微調整を可能にするという点でも優れています。

▲Epic 5 の低域は従来のバスレフポートではなく、補助的なパッシブ・ラジエーターによって実現している

背面


アクティブモニターの常として、リアパネルはアンプのヒートシンクと接続パネルという2つの役割を担っています。接続端子はアナログバランスXLRとアンバランスRCAフォノ(公称感度はそれぞれ+4dBVと−10dBV)があり、スイッチで選択します。デジタルオーディオやネットワーク、USBなどの端子はなく、信号経路は完全にアナログです。入力の下流にあるアンプは2チャンネルのクラスDパワーで構成され、それぞれ75W RMSの定格出力を持っています。また、リアパネルにはトーンバランスを調整するためのツマミが2つ付いています。

LFは250Hz以下、HFは2.5kHz以上で、それぞれ±5dBのEQを搭載。かなり余裕のある調整量です。最後にリアパネルには、一定時間無音状態が続くとスリープモードになり、信号が入力されると起動するオートスタンバイと、通常の連続動作を選択するスイッチがあります。この手の機能にありがちですが、オートスタンバイは起動に少し時間がかかることがありました。

▲キャビネットの角度を変えることで定在波を抑制し、LFとHFドライバーのタイムアライメントを改善

測定


いつものように FuzzMeasure(音響測定ツール)を起動して、Epic 5 の音響特性をいくつか調査しました。その結果をここで紹介します。

▲図1 緑とオレンジの線の重なりは、ペアのスピーカー間の緊密なマッチングを示している

図1は、Epic 5 の正面で測定した周波数特性(300Hz~20kHz)を示したものです。レスポンスは(スピーカーとしては)おおむねフラットで、ペアのマッチングもかなり良く、おおむね±0.5dB以内に収まるようです。先に述べたように、Epic 5 のリスニングポイントはドライバーの真正面よりわずかに下にあり、それはおそらく約15kHz以上のロールオフに表れています。ですが、これは特に重要なことではありません。

▲図2 緑は正面でのレスポンス、紫は水平方向に20度ズラしたポイントでのレスポンス

図2は正面でのレスポンスを緑、水平方向に20度ズラしたところで測定したレスポンスを紫で表わしています。予想通り、ツイーターの高域が約6kHz以上で弱くなり、ウーファーは1kHz以上で指向性が強くなっています。これは、このタイプのモニターの典型的な傾向ですから、適切に調整されていると言えます。

▲図3 正面の周波数特性(緑)と、上下20度を測定した特性(それぞれ赤とオレンジ)

図3は、正面でのレスポンスを緑、垂直上方20度、下方20度のレスポンスをそれぞれ赤とオレンジで示したものです。興味深いことに、上方20度では正面でのレスポンスに見られた15kHz以上のロールオフがありません。後方へ傾斜したフロントパネルのツイーターに対して、垂直にフォーカスしているからです。さらに大きな特徴は、クロスオーバー付近では上昇カーブにも下降カーブにも大きな凹みが見られないこと。これはクロスオーバーが巧みに運用されていることを示しており、素晴らしい結果だと言えます。

▲図4 ウーファー(青)とパッシブ・ラジエーター(赤)の周波数特性

図4は Epic 5 の低域特性について少し調べたものです。青い線は、ウーファーの振動板に非常に近い位置に置いたマイクでの、20Hz〜1kHzのレスポンスを示しています。100Hz以下のロールオフは予想通りですが、興味深いのは60Hzでの鋭い凹み。これはパッシブ・ラジエーターの共振によるもので、バスレフポートでもパッシブ・ラジエーターでも、リフレックス・ローディングがいかにドライバー出力(ドライバー負荷)を局所的に著しく減少させるかを示しています。

また赤の線は、パッシブ・ラジエーターのすぐ近くでのレスポンスを示しています。予想通り60Hzの共振でピークを迎え、その両側で減少しています。共振周波数=60Hzは比較的高めで、Epic 5 の低域のレイテンシーと共振のはみ出しのピークは、まさにベースギターが動き回る音域にあると言わざるを得ません(例えばコンサートピッチでB♭は58.27Hz)。

▲図5 ステップ信号に反応するウーファー(青)とパッシブ・ラジエーター(赤)を時間軸で測定したもの

最後に、図5は Epic 5 のタイムドメインの特性を示しています。これは多くのリフレックス・ローディング型モニターの典型的な傾向です。青と赤の曲線は図4と同じ方法でキャプチャされましたが、周波数レスポンスではなく、断続的な信号に反応するウーファーとパッシブ・ラジエーターをタイムドメインで示しています。

注目すべき点がいくつかあります。まず、パッシブ・ラジエーターは一度起動すると停止するのが苦手で、約80ミリ秒間、鳴り続けています(同サイズのリフレックス・ローディング型モニターに多く見られる典型的な現象)。第二に、パッシブ・ラジエーターの出力のピークはウーファーのピークよりも20msほど遅くなります。この図は、モニターの低域におけるレイテンシー(正確にはグループ・ディレイとして知られている)の大まかな指標です。最後に、意外と知られていませんが、鳴動時間(約16.5ms)はパッシブ・ラジエーターの共振周波数である60Hzに計算されます。

サウンドチェック


以上のように、Epic 5 はオーディオ機器として非常によく整理された有能なモニターのようです。また技術的にもよくまとまっており、ユニークで興味深いルックスを備えています。ではサウンドはどうでしょうか?

まず第一に、最近レビューしたいくつかのモニターとは対照的に、Epic 5 はアイドリング時に無音でした。1mまで近づいてもアンプのヒスさえ聞こえません。例のごとく、古いお気に入りのCDや Pro Tools のプロジェクトを再生してみると、すぐに感動が訪れました。客観的にも主観的にもサウンドがよく整理され、優れたモニターであることがわかります。正確に録音された声やアコースティック楽器は説得力を持ち、すべてのハーモニーやタイミングなどの要素が適切なバランスで自然なディテールで再生されます。中域のステレオイメージのフォーカスや、奥行きの描写も Epic 5 の優れている点です。経験上、このような特性はドライバーの優れた統合と、キャビネットパネルの共振挙動の適切な制御によりもたらされます。ミックスの明瞭度とディテールの表現においては、最高級のモニターに及ばないとしても、その分、手に入れやすい価格設定となっています。ツイーターは究極のディテールとまでは言えないものの、非常に優れた働きをします。

また、Epic 5 の低域は私のスタジオルームでうまく機能しました。他の帯域同様、レベルのジャッジが的確にでき、レンジの拡張性にも無理がありません。リフレックス・ローディングのせいかパンチがややソフトに感じられましたが、その効果は穏やかで、パッシブ・ラジエーターを採用したおかげで、音量が上がった時にポートによく見られるコンプレッションやシャカシャカ音はまったくありません。

このような人工的なノイズがないことは、FuzzMeasure のデータを取っている時にも明らかでした。FuzzMeasure でサイン波のスイープ音を使用すると、ポート付きスピーカーでは低域で気流ノイズを発生させがちですが、Epic 5 では完全にクリーンな状態で再生されました。つまり、Epic 5 の低音はダイナミクスが若干柔らかい可能性があるものの、クリーンでかつ信頼できるものであり、おそらく多くのコンパクトなポート搭載モニターよりもミックス用途で使いやすいと思います。

Epic 5 を開梱して接続した時は、何を期待したらいいかわかりませんでしたが、客観的・主観的なパフォーマンスだけでなく、その工業デザインと構造にも感心してレビューを終えました。Epic 5 は異彩を放つ非常に高性能なモニターであり、新しく、真に競争力のあるコンパクトなニアフィールド・モニターの選択肢を象徴しています。印象的な初の試みですし、このデモ機を返却するのが本当に残念です。

文:フィル・ワード
Sound On Sound より転載

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