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reProducer Audio : Epic 4 アクティブ・モニター(SOS ON TEST)

アクティブ・モニターの新製品を発案し、設計して、市場に送り出すことは決して簡単なことではありません。reProducer Audio は革新的で珍しい工業デザイン哲学を特徴とする企業です。私は今までにも同社製品のレビューを行い、アクティブ・モニターの Epic 5 と Epic 55 は明らかに印象的な製品でした。今回のレビューで取り上げる Epic 4 は、同社の最もコンパクトなエントリーモデルに当たります。

ポータブルな小型モニターをお探しなら、Epic 4 にお任せください


サイズが24 × 16 × 17.5cmの Epic 4 について、reProducer Audio は「ニア・フィールド・モニター」だと説明していますが、ジッパー付きのスマートな布製ショルダーバッグに収まっていることもあり、ポータブルな外出用モニターのように見えます。筐体は Epic 5 で初めて確立された珍しい斜め台形のフォルムを踏襲し、高級感のある素材が使用され、CNC加工・塗装仕上げのアルミニウム製フロントパネルに、ブラッシュド・アルミニウム化粧板仕上げのMDF製シャーシが取り付けられています。

リアパネルにはヒートシンクや接続パネル、コントロールパネルがあり、バランスXLR入力とアンバランス・フォノ入力を装備。入力ゲインノブや、低域・高域のシェルフEQノブ、法律で定められたオートスタンバイ機能のON/OFFスイッチも搭載されています。2つのEQノブは、250Hz以下と2.5kHz以上で±5dBの調整が可能。アンプは、ウーファーとツイーターがそれぞれ50WのクラスDパワーで構成され、ドライバー間のクロスオーバーは3kHz、24dB/octの対称的なフィルター・スロープを備えています。

リアパネルのさらなる特徴は、reProducer Audio 独自のウォールブラケット(近日発売予定)を含む、取り付け金具用にブラインド・タップ穴が2つあることです。マルチチャンネル・モニタリングの導入が急速に進む今、小型のアクティブ・モニターにブラケットを取り付けることは、ほぼ必須だと思います。こうした現実的なニーズに応えるため、reProducer Audio は賢明な決断をしたのでしょう。

フロントパネルには85mmのウーファーと、パンチング・グリルの背後に30mmドーム型ツイーターを搭載しています。ウーファーは、モーターシステムに銅製のポール・ピース・キャップと二次マグネットを採用し、歪みとボイスコイルのインダクタンス変調を低減。また、アルミニウム振動板とラバー・ハーフ・ロール・サラウンドを採用しています。アルミニウム・ドーム・ツイーターは、振動板の背後にダンピング・チャンバーを備えており、基本的な共振を抑えると同時に、振動板の後部から放射されたエネルギーが前方に反射することによる反響や異常の原因となる可能性を低減します。

パッシブ・ラジエーターを搭載


Epic 4 は Epic 5 や Epic 55 と同様、エンクロージャーの底面に反射を引き起こすためのパッシブ・ラジエーターを搭載しています。パッシブ・ラジエーターはウーファーよりわずかに大きい110mm径で、射出成形されたポリプロピレン振動板を採用。パッシブ・ラジエーターを採用すると、単純なバスレフポートよりも高価でかつ複雑な仕様になりますが、バスレフポート特有のコンプレッションや歪みを回避しながら、より低い帯域の再生を容易に実現することができます(パッシブ・ラジエーター自体がコンプレッションや歪みを持つ可能性はあります)。

とはいえ、その反射によりもたらされる周波数は比較的高い75Hzに設定されています。これはサイズが小さいためでもありますが、音楽的に混み合う帯域でパッシブ・ラジエーターを作動させることで、ウーファーの振動板の変化を最小に抑えるという働きもあります。パッシブ・ラジエーターを搭載しているとはいえ、Epic 4 は小型ですから、低域のレンジが制限されるのはやむを得ません。reProducer Audio が主張する「80Hzで−3dBカットオフ」は、同スピーカーサイズの使用経験から言えば概ね正しいように思われます。なお、Epic 4 がサラウンド・マルチチャンネルでの利用に適しているという観点から、reProducer Audio にとっての次のステップは当然サブウーファーでしょう。2023年の前半にはサブウーファーの発売予定があるようです。

Epic 4 はパッシブ・ラジエーターを底面に搭載しているため、その動作する空間を確保するために底部を高くする必要があります。そこでエンクロージャーを30mm持ち上げるために、ねじ込み式の円錐脚が4つ付属しています。また、必要に応じて設置面と足を分離するための小さなゴム製パッドも付属しています。ただ、設置面が完全に平であれば4本足でもいいのですが、凹凸がある設置面では多少の揺れが生じます。片方の足のネジを少し緩めれば多少の凹凸には対応可能ですが、そのような状態を固定できる第2のナットは用意されていません。Epic 5 では、中央のネジ止め部で3本足での設置を可能にしてこの問題を克服しましたが、Epic 4 にはそのような配置を可能にするスペースがありません。足の下にコインを敷いて揺れを抑えようとしましたが、どうもしっくりきませんでした。

Epic 4 の底部の高さは、パッシブ・ラジエーターを正常に動作させること以外にも意義があります。それは、2つのドライバーが音響的に合わさる位置が、フロントパネルに対して垂直ではなく水平な位置にあるからです。そのためリスニング・ポジションはツイーターの軸からわずかにズレます。垂直方向のリスニング・ポジションの違いなど些細なことに思えるかもしれませんが、Epic 4 の音響測定を行ってみると、垂直方向のポジションの違いにはわりと敏感なようです。

周波数特性を測定


図1は Epic 4 の正面方向の周波数特性を示しています。測定用マイクを2つのドライバーの中間の高さに配置し、ツイーターからマイクまでの距離をウーファーからの距離よりわずかに長くしています。3つの点に注目してください。まず、レスポンス・カーブが基本的に直線になっているのが印象的です。次に、ツイーターのレベルがウーファーに比べてやや減衰しているように見えます(測定するまでもなくトップエンドがやや控えめだと私は結論付けていました)。第3に、3kHz付近のクロスオーバー領域で明らかに凹みが見られます。HF EQを使ってツイーターのレベルを3dB上げたのが緑色の曲線です。全体のバランスがフラットになり、同時に3kHzの凹みが少し顕著になりました。

▲図1 EQをフラット(赤)と+3dB(緑)に設定した場合の Epic 4 の周波数特性

図2は、垂直方向の上方10度と下方10度に角度を付けて測定し、3kHzの凹みについてもう少し詳しく調べたものです。どちらかの測定位置で、2つのドライバーがよりシームレスに合わさるスイートスポットが見つからないか期待したのですが、そのような結果は得られませんでした。下向きの測定位置では、よりフラットなレスポンスが得られましたが、もちろんそのリスニング・ポジションは現実的ではありません。ですが、この凹みは Epic 4 のトーンバランスに影響を及ぼします。ドライバーの間隔が狭く、アクティブフィルターのスロープが比較的急なので、もっとシームレスに統合できるはずですが、この凹みがあるのは少々意外です。

図2 Epic 4 の軸上(赤)と、上方10度(青)、下方10度(緑)を測定したもの

最後に、ウーファーとパッシブ・ラジエーターに非常に近い位置(1cm以下)で、マイク測定を行いました。図3を見ると、パッシブ・ラジエーターの出力がピークに達する75Hz付近で、ウーファーの出力(と振動板の変位)が低下しているのがよくわかります。また、パッシブ・ラジエーターのピークより上は減衰が非常になだらかで、エンクロージャーから中域のエネルギーが漏れているような明らかな共振特性は見られませんでした。

▲図3 近距離のマイクによるウーファー(緑)とパッシブ・ラジエーター(紫)の測定結果

実際に使ってみる


トーンバランスがやや鈍いため、リアパネルのEQ調整が必要に感じたことはすでに述べましたが、もちろん、どんなモニターもトーンバランス以上の魅力を持っています。Epic 4 はそのサイズの小ささにより、重低音が出せないのは仕方ないですが、再生可能な低域においてはピッチの正確さとダイナミクスのディテールのレベルが高く、うまく処理されています。例えば、キックとベースのバランスは十分に判断できるでしょう(ただし70Hzあたりから下は難しいかもしれません)。また、驚くほど大きな音量でも、正確な低音を維持することに成功しています。

中域のクオリティは基本的に良好で、焦点の合ったステレオイメージを作り出すことができます。ただし、測定で明らかになった中高域のクセはモニタリングに多少の影響を及ぼすでしょう。例えば、高音域の声や楽器のインパクトがややソフトになり、温かみが増します。スネアも少しキレがありません。このような色付けはどのモニターにも多少はあるので、大きな共鳴が起きない範囲であれば、それを考慮してミキシングが行えます。

Epic 4 のツイーターは Epic 5 や Epic 55 に採用されたものと同じで、鮮明な透明感と自然な表現力の間で優れたバランスを実現し、非常に高い性能を発揮します。過激なサウンドではないので、ひたすら仕事に没頭できます。実際、Epic 4 の中高域の凹みと高品質なツイーターとの組み合わせはリラックスして聴くことができ、長時間のミキシング・セッションでも聴き疲れはしないでしょう。

背面のEQでツイーターのレベルを少し上げればフォーカスが定まり、非常に有能な小型モニターであることが明らかになりました。中域に穏やかなクセがあり、スピーカーサイズや低域のレンジが限られるためスタジオに地鳴りをもたらすほどではありませんが、コンパクトでポータブルなモニターとしては非常に有能です。もし外出先で仕事をすることになり、パッド入りのショルダーバッグに収まる高性能な小型モニターが必要な時は、Epic 4 がその要求を満たしてくれるでしょう。見た目もカッコいいですから。

▲Epic 4 にはパッド入りのキャリーケースが付属する
  • 長所
    • コンパクトで高音質なモニタリング
    • ポータブル
    • ABR搭載の実力派低音
    • 上品なツィーター性能
    • トラベルバッグ付き
  • 短所
    • 中音域の音色に癖がある
    • 低音の帯域が狭い
  • まとめ
    Epic 4は、reProducer Audio の最初の2製品ほど視覚的にも性能的にも印象的ではありませんが、非常に有能で説得力のあるモニターであることは間違いないでしょう。コンパクトで価格も手頃です。
  • 代替品
    本当に高性能な小型モニターは思いのほか多くはありませんが、Epic 4 はこの市場を完全に独占しているわけではありません。例えば、Genelec 8020、Neumann KH80、Focal Shape 40 は、おそらく検討する価値のある3製品でしょう。

文:フィル・ワード
Sound On Sound より転載

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