コンサートSRに持ち込まれるApollo

株式会社トゥ・ミックス対馬智司インタビュー

Universal AudioのApolloは、決して音楽制作/レコーディング専用のプロダクトではありません。その音質の良さ、フレキシビリティの高さ、そして優れた堅牢性で、最近はコンサートSRの現場でも活躍し始めています。日本を代表するPAカンパニー、株式会社トゥ・ミックスも、Apolloをいち早く導入した会社のひとつ。計4台のApollo QUAD+Thunderbolt Optionを導入し、高品位な外部エフェクト兼オケ出し用オーディオ・インターフェースとして、コンサートSRの現場でフルに活用しています。はたしてApolloのどの部分を評価して、導入するに至ったのか。同社のチーフ・サウンド・エンジニアである対馬智司氏に話を伺いました。

- まずはトゥ・ミックスさんがUADプラットホームを導入された経緯からおしえてください。

UADプラグインのリバーブは深くかけても原音がしっかり残る。それに音の切れ際も凄くいい
現在、コンサート・ツアーの仕事ではAvid VENUE Profileシステムを使うことが多いんですが、このコンソールを使い始めてから外部のアウトボードをほとんど使わなくなったんですよね。もちろん、アナログの時代はアウトボードをたくさん使っていたんですけど、VENUEには使いものになるプラグインがたくさん用意されているので、それで十分になって。VENUEを導入したときにAll-Access Pack(註:VENUE用のプラグイン・バンドル)も入れたので、選択肢もたくさんありましたしね。
でも、リバーブだけはプラグインのサウンドに納得できなくて、ずっと不満だったんですよ。アナログ時代は、リバーブとしてTC Electronic M5000を必ず用意していたんですけどね。しかしVENUEですべてプラグインになったのに、リバーブだけアウトボードを繋ぐのはどうかなと思って(笑)、納得はいかなかったんですがプラグインで我慢していたんです。

そんなときにぼくが手がけているバンドのローディーさんから、“Universal AudioのUADプラグインが凄く良いですよ”という話を聞いて。恥ずかしながらそれまで、UADプラットホームについてはまったく知らなかったんですが、興味を持ったのでApolloをお借りして試してみたんです。そうしたら、ローディーさんの話どおり凄く良くて、すぐに導入してしまいました。それが昨年11月の話で、今ではUADプラグインは手放せないツールになってますね。

- オーディオ・インターフェースとしてではなく、ライブ・コンソールのアウトボードとしてUADプラットホームに興味を持たれたというのがおもしろいですね。

EMT 250
本当に最初は純粋にリバーブとして興味を持ったんです。いちばん初めにEMT 250 Classic Electronic Reverbを試してみたんですが、VENUEのリバーブ・プラグインとはまるで違うサウンドで。M5000とも比べてみたんですけど、全然UADプラグインの方が良かった。良くないリバーブって、かければかけるほど原音がどんどん埋もれてしまうんですけど、UADプラグインのリバーブは深くかけても原音がしっかり残っているんです。それに音の切れ際も凄くいい。あとは密度が濃いからなのか、広がり感が凄いからなのかわかりませんが、バラード系の楽曲にはよく合いますよね。少ししてから、知り合いのレコーディング・エンジニアと話をしたときに“UADプラグイン、凄く良いですよね”という話になったんですが、レコーディングの世界では完全に定番になっているみたいですね。

- 具体的にはApolloを導入されたんですか?

そうです。今では4台のApolloを使っていて、すべてThunderbolt Optionが装着してありますね。コンソールとは外部のアウトボードのような感じで、アナログで繋いでいます。なので、Apollo 16でも良かったんですけど、マイク・プリアンプが入っているApolloならコンソール側の入力が足りなくなって究極に困ったときに活躍してくれるかなと(笑)。

- では、完全にアウトボード・エフェクターのような感覚でApolloを使われているんですね。

Lexicon 224
そうですね。基本的にはリバーブ系のプラグインを2個立ち上げて、モノ入力/ステレオ出力の2台のリバーブとして使っている感じです。個人的によく使っているのが、EMT 250 Classic Electronic ReverbとLexicon 224 Digital Reverbの2つで、大体この組み合わせですね。EMT 250 Classic Electronic Reverbは、デフォルトからパラメーターをエディットしてメイン・ボーカルに使い、Lexicon 224 Digital Reverbはホールやプレートといったプリセットを選んでコーラスやドラムなどに使う感じです。両方ともシンプルなプラグインなので、現場ではとても使いやすいんですよ。
でも、完全にエフェクターというわけでもなく、オケ出しのオーディオ・インターフェースとして使うこともあります。これがApolloの便利なところですよね。DAWとしてはAbleton Liveを使っていて、それでオケをポンポン出すと。Apolloなら、オケの音圧が足りないというときに、Neve 33609 Compressorをかけたりもできるので便利ですよね。もちろん、Ableton LiveではなくAvid Pro Toolsのオーディオ・インターフェースとしても使えますしね。

そうそう、先日のライブではStuder A800 Multichannel Tape Recorderも使ってみましたよ。バンド・サイドから、“ドラムを歪ませたい”というリクエストがあったので、とりあえずStuder A800 Multichannel Tape Recorderをインサートしてみたら、もの凄く良い感じのサウンドになって。たまにアーティスト・サイドからリクエストされる場合があるので、そういうときもApolloがあれば大丈夫ですよね。たくさんプラグインが揃っているので、きっとどんなリクエストにも対応できると思います。まだあまり使ってないんですけど、Roland Dimension DやRoland RE-201 Space Echo Tape Delayなんかは今後出番が増えていくような気がしますね。

- 実際にライブの現場で使用されて、音質や安定性はいかがですか?

繰り返しになってしまいますが、本当に音が良いです。ライブの現場でスタジオ・レベルのサウンドが出ることに驚きですよね。もちろん、各プラグインの出来映えが素晴らしいわけですが、オーディオ・インターフェースとしてもApolloのクオリティは凄く高いと思いますよ。ウチにある他のオーディオ・インターフェースと聴き比べをやってみたんですが、その中ではApolloがいちばん良かった。他のエンジニアさんも皆、音が良いと言っていますし、たぶんAD/DAコンバーターが優秀なんじゃないかと思います。

安定性に関してもまったく問題ないですね。先日も大阪のなんばHatchにこれだけ持って行ったんですけど、何も問題なく使えました。スタッフの人も、“そろそろ誰か持って来るんじゃないかと思いました”と言っていましたね(笑)。なんばHatchには、MIDAS XL8やTC Electronic System 6000といった高級な機材が揃っているんですけど、そこのスタッフの人が“Apollo、凄く音が良いですね”と言っていましたよ。

- 現場にApolloとコンピューターだけを持ち込むこともあるんですか?

シリーズ最新モデルApollo Twin
そっちの方が多いくらいです。ライブ・ハウスにApolloとコンピューターを持ち込めば、どんなコンソールでも自分の好きなエフェクトが使えるわけですから。Apolloとコンピューターくらいでしたら電車で持ち運ぶことができますからね。

だから先日発売されたApollo Twinにはとても惹かれているんですよ。ぼくは普段、Apolloを2ch入力/4ch出力で、2台のリバーブとして使っているので、そんな用途にはバッチリじゃないですか。アダプターも小さいみたいですし、楽器も直接繋げることができる。本当、完璧な製品ですよね(笑)。最近はライブ・ハウスで仕事をしているエンジニアさんが多いと思うんですけど、自分専用のアウトボード・ラックとしてApollo Twinは凄く良いツールだと思いますよ。全然パーソナルで買える値段ですしね。

- 今となっては、ApolloとUADプラグインはライブ・ミックスに欠かせない存在という感じでしょうか。

もう手放せないですね。やっぱりリバーブって、とても重要なエフェクトなんですよ。どんなリバーブを使うかによって、雰囲気がガラっと変わってしまう。リバーブ・タイムをちょこっと変えるだけで、音がグッと落ち着いたりしますからね。それを考えれば、十分に現場に持ち込む価値のあるツールだと思うんです。Apolloとコンピューターさえあれば、どんなライブ・ハウスでも自分好みのエフェクトが手に入るわけですから。これからUNICORNのコンサート・ツアーが始まるんですけど、そこでもガンガンに使おうと思っています。

インタビューイ

株式会社トゥ・ミックス

チーフ・サウンド・エンジニア
対馬智司

http://www.twomix.co.jp/