5043 Compressor-Limiter Duo

5043 デュオコンプ/リミッターは、Portico シリーズが誇る強力なダイナミクスプロセッサーでトラック収録からミキシングまで様々な用途に適しています。

Portico 5043 にはハーフサイズのボディにふたつの独立したコンプレッサー/リミッターを装備します。これらは2台のコンプ/リミッターとして独立使用が可能です。また、リンクしたステレオプロセッサーとしても扱うことが可能です。あるいは直列接続して異なるダイナミクス処理を同時に行うことも可能です。さらに、リアパネルのTRSジャックで複数台の 5043 をリンクすることができます。このリンク仕様は、過去に Rupert 氏が設計した AMEK CIB と DMCL とも互換性があり、拡張ユニットとしても使えます。

Portico 5043 を直列で使用した場合、デュアルスロープのコンプレッサーとリミッターとして利用可能です。例えば、チャンネルAで信号レベルを整え、チャンネルBで適切なコンプ効果を施したり、録音時にリミッターで入力信号のレベルオーバーを防ぎ、チャンネルBで信号レベルを整える際に便利です。あるいは録音したボーカルトラックの存在感を増すためにコンプを二重にかけるなど、その用途は多岐にわたります。

V.C.A.の動作

V.C.A.とは、Voltage Controlled Amplifier (またはAttenuator) の略で、電圧を利用してゲインをコントロールします。電圧を用いたコントロールデバイスは多く存在します。真空管を使用したものや、ディスクリートのもの、統合されたソリッドステート回路、ナチュラルなノンリニアデバイスなど、それぞれの回路設計やパーツ、挙動によって固有のキャラクターを備えます。その多くは素晴らしく、魅力的かつ音楽的な仕上げを行うことができます。(もちろんそうではないものもあります。) Portico 5043 は非常に正確かつローノイズ、低歪のV.C.A.回路を搭載しており、特別なキャラクターがないのが特徴です。

V.C.A.の動作は電圧制御に適したものに変換されたオーディオ信号の一部を使用します。このことで素早い応答速度を実現しながら歪みを抑えることができます。このバランスが絶妙で、応答速度が速すぎる場合、余計なゲインコントロールが生じます。逆に遅すぎる場合は信号過多になったり、コンプレッションが信号の頭に効かなかったりします。この応答速度とタイミングの精度がコントロールパラメーターの "アタック"、イニシャルコントロールされたゲインの持続時間が "リリース" もしくは "リカバリー" パラメーターとなります。これらの要素がコンプレッサーサウンドを形成する上で大きな役割を果たします。

すべての Portico シリーズの入力と出力にはトランスフォーマーとほぼディスクリートのコンポーネントで構成されたアンプが使用されています。ラインアンプも同様です。シグナルチェーンに加えることで、様々なシグナルソースのサウンドクォリティを引き上げることができます。とくに元がデジタルのソースにはうってつけです。Portico 5043 はハイエンドのオーディオチェーンに入れても遜色なく、存分にその性能を発揮することができるのです。

V.C.A.モード - FFとFB?

Portico 5043 にはふたつのコンプレッションモード : FF(フィードフォワード)と FB(フィードバック)が用意されています。フロントパネルのFF/FBスイッチでチャンネルごとにモード切り替えが可能です。

V.C.A.の制御電圧を 5043 の入力信号(V.C.A.の前段)から取った場合、ゲインの変化に対してV.C.A.は即座に反応します。これが一般的な "FF" タイプのコンプレッサーの理論です。

"FB" タイプのコンプレッサーは、5043 の出力信号(V.C.A.の後段)をV.C.A.の制御電圧に使用します。この場合、V.C.A.はゲインの変化に対して即座に反応することができません。なぜならば信号はすでにコンプレッサー回路によって整えられているからです。このふたつのコンプレッサーモードのキャラクターは決定的に異なります。特にアタックとリカバリー(リリース)の挙動に大きな違いがあります。5043 では実際に使用しながらふたつのモードから適した方、あるいは意図した方を選ぶことができます。

過去に Rupert 氏が設計したコンプレッサーのほとんどは "FB" タイプです。このモードは "FF" タイプよりも音楽的かつ心地良いサウンド効果をもたらします。逆に "FF" タイプは入力信号に対してより正確に動作します。5043 では、その両方を選択することができます。

レシオとスレッショルド

コンプレッサーはスレッショルド値を超えた信号レベルに対して作用し、1:1から40:1以上の圧縮率で信号を抑えます。1:1のレシオ(圧縮率)設定は入力に対して何も作用せず、そのままリニアに出力します。40:1の高圧縮率はリミッターとして使用する際に設定します。コンプレッサーのレシオは、その入力と出力の対比を表すグラフからしばし、"スロープ(Slope)" と呼ばれることがあります。

レシオとスレッショルドは相互関係にあります。例えば、レシオを最高の40:1、スレッショルドを0dBuに設定した場合、+40dBuの入力信号(実際はありえない大レベルです!)はコンプレッサーによって+1dBuに抑えられて出力されます。一般的に高いレシオ設定は、0dBu以上のレベル処理に適しています。例えば、スレッショルドを+14dBuに設定した場合、出力信号のレベルが+14dBu以上になるのを抑えます。特にデジタルレコーダーに信号を送る際のレベル過多を防ぐのに有効です。このように出力レベルを抑える場合、例としてレシオを5:1に設定しスレッショルドを10dBにしておけば、10dB以上の信号は2dBに抑えられて出力されます。

スレッショルドの設定範囲は-30dB ~ +20dBuになります。スレッショルド値が低く、レシオ値が高い場合、低い信号レベルはさらに低く抑えられますので、ゲイン(メイクアップ)でコンプレッサーによって抑えられた分のレベルを持ち上げる必要があります。

アタックタイム

アタックはコンプレッサー回路がレベル圧縮を開始する時間を決定します。アタックタイムを長くした場合、サウンドの頭を外したコンプレッションが行えます。つまり、入力されたサウンドの短いピークにはコンプレッサーは効かず、音本来のトランジェントを活かした、自然なコンプ効果を得ることができます。しかしながらこのテクニックは、後に接続されている機器に抑えられた適切なレベルが送られない場合があります。特にデジタル機器では意図しないオーバーロードは厄介ですので、注意しましょう。非常に短いアタックタイムに設定した場合、サウンドのトランジェントを取り除き、サウンドに不自然さを招く場合があります。中にはトランジェントが極端に速く(短く)、サウンドへの影響がほんのわずかな場合もあります。このようなケースでは、長いアタックタイム設定をすることでコンプレッサーが機能する前のトランジェントピークが終了し、ゲインがほとんど抑えられていないことになります。この部分のレベル過多が顕著になると前出のオーバーロード(歪み)を招く可能性があります。しかしながらどんなに速い回路であっても、多少何らかの歪みを持っています。これがほんのわずかなものであれば、例外として音楽的な結果をもたらす要因となることもあります。

適切なアタックとリリースの設定は、コンプレッサーのすべてと言えます。コンプ/リミッターの原理法則を理解することで 5043 を適切なダイナミックレンジコントロールをするためのパワフルなツールとして扱えるようになります。結果、音楽的に素晴らしい結果を得ることになるでしょう。

リリース (リカバリー)

リリースは信号レベルがスレッショルド値以下に下がった際に圧縮を終了するまでの時間を設定します。リリースタイムを短く設定した場合、素早く元のレベルに戻ります。この設定が短すぎる場合、レベルの変動は不自然になり、時として音量が極端に増減する”ポンピング”効果を生み出します。このような効果は特に信号の低域で顕著になることがあります。リリースタイムを長くすることで、信号レベルが一定になります。特に低いノートやスピーチの音節の繋がりを自然に処理する際に有効です。

ここまで、5043 がどのように信号の音量を扱うのか、例やヒント、注意点を交えて解説をしました。しかしながら実際の信号レベルは常に変化し、一定ではありません。従って、実際に音素材を扱いながら、最適な設定を見つけることをお勧めします。ソース信号の音量、ピークの長さに合わせ、不自然にならないように設定をしましょう。経験に勝るものはありません。良い音がするセッティングにチャレンジしましょう!

特長

COMPRESSION -コンプレッション

信号レベルが "スレッショルド" の設定値以下であった場合、ゲインコントロールは機能せず、入力レベルがそのままリニアに出力されます。信号レベルが "スレッショルド" 値に達し、それ以上になった場合、ゲインは”レシオ”設定に従ってコントロール(コンプレッション)されます。

GAIN - ゲイン

コンプレッサーはオーディオ信号のレベルを抑えるプロセッサーです。そのため、オンにした際とオフにした際の出力音量が異なります。ゲイン(メイクアップ)でコンプレッサーによって抑えられたゲインの補正をします。Portico のコンプレッサーモジュールは-6~+20dBの範囲の(メイクアップ)ゲインコントロールが用意されています。一般的にはコンプをオンにした際とオフにした際の音量が同じになるように設定します。

RATIO - レシオ

コンプレッサーのゲイン圧縮比を設定します。
設定範囲は 1:1 ~ LIMIT(約 40:1)

Threshold - スレッショルド

コンプレッサーが動作する信号レベルを設定します。信号レベルが設定値以上に達した際にコンプレッサーが機能します。
設定範囲は -30 ~ +20dBU

ATTACK TIME - アタックタイム

コンプレッサーの開始時間を設定します。
設定範囲は 20 ~ 75 ms(ミリ秒)

RELEASE / RECOVERY TIME - リリース/リカバリータイム

コンプレッサーによるゲインコントロールの持続時間を設定します。

設定範囲は 100ms ~ 2.5S(秒)

STEREO Operation - ステレオ動作

LINKボタンをオンにした場合、2つのチャンネルのコンプレッサーが連動します。この機能はV.C.A.の動作のみが同期しますので、2台のパラメーター設定はほぼ同じに揃えておく必要があります。揃っていない場合、ステレオバランスが崩れる場合があります。

Composite Operation - 複合動作

Portico 5043 のふたつのコンプ/リミッターをカスケードして使用できます。究極にパワフル、かつ包括的なダイナミックレンジコントロールツールになります。

この場合、ひとつのチャンネル出力をもう片方の入力にケーブルを使用して接続します。これで2台のダイナミクスプロセッサーを直列で繋げたコンプレッション効果を生み出します。例えば、チャンネルAは低いレシオ設定で信号レベルを整え、チャンネルBは高いレシオ設定で強いコンプ、あるいはリミッター効果をかけます。

DUCKING - ダッキング

LINK機能は通常、コンプレッサー同士の連動に使用しますが、リンク入力に別のオーディオ信号を入力して、コンプレッサー入力とは違う信号をコンプレッサーのゲインコントロールに使用することもできます。このことをダッキングまたはサイドチェーンと呼びます。例えば、リンクをオンにし、チャンネルAはマイク、チャンネルBに音楽の音声を流した場合、チャンネルAにマイク音声が通った場合、その音量に合わせてチャンネルBの音声が下がります。

Meters - メーター

5043 に装備されたピークLEDメーターは出力レベル(チャンネルAの上)とゲインリダクション(チャンネルBの上)を表します。この2つのメーターフロントパネル中央のA/Bスイッチでメーター表示の対象チャンネル:AまたはBを選択します。

仕様

ゲインレンジ

-6dB ~ +20dB(メイクアップコントロール)

スレッショルド

-36dB ~ +22dB

レシオ

1.1: 1 ~ “リミット”(40:1)

アタック

20ms ~ 75ms(ミリ秒)

リリース

平均 100ms ~ 2.5秒

FF / FB (V.C.A.モード)

FF (Feed-Forward) または FB (Feed-Back)

リンクとサイドチェイン

複数の 5043 を数珠繋ぎでリンクする際に使用する、V.C.A.の動作に作用するための信号端子
ふたつのチャンネルはリンクスイッチによって内部リンクし、同時にリアパネルのリンク端子でコントロール電圧を扱うことが可能

ラインとバス入力

フロントパネルスイッチでリアパネルXLR入力とバス入力の切り替えが可能
バス入力は他の Portico モジュールのバス出力との接続に最適

最大出力レベル

+25dBu(トランスフォーマーフローティングバランス出力)

周波数特性

メイン出力、ユニティゲイン
-3dB @ 18Hz、-3dB @ 150kHz

ノイズ

メインアウトで計測、unweighted、22Hz ~ 22kHz、40Ωターミネート、ユニティーゲイン
-103dBu以下 @ コンプレッサーオフ
-92dBu以下 @ コンプレッサーオン

THD+N (高周波歪み率)

1kHz、+20dBu出力、メイン出力、負荷なし
0.00061%以下 @ コンプレッサーオフ
0.02%以下 @ コンプレッサーオン

クロストーク

チャンネル間で測定
80dB以下 @ 16kHz

メーターA/B

音量レベルとゲインリダクション表示の対象チャンネル:AまたはBを設定

電源

電圧範囲:DC 9 ~ 18V、12W
接続端子:5.5mm X 2.5mm DCジャック、センター+ 
電源消費:1.0A @9VDC、730mA @12VDC、570mA @15VDC、480mA @18VDC

仕様は予告なく変更となる場合があります。

Porticoシリーズについて

Portico (ポルティコ)、それは建設用語でグランドエントランスや門戸を意味します。私たちRNDチームは、期待への "扉" という意味を込め、この言葉を採用しました。Portico シリーズはプリアンプやアナログのオーディオプロセッサーで構成されており、これらは単独で使用することも組み合わせて使用することも可能で、大規模アナログコンソールなどの中でも重要な鍵となります。

ハイクォリティのミキシングコンソールは強力かつ多様なオーディオツールを供給する反面、選択肢が非常に限られます。そしてその導入コストは莫大になりがちで、不要なもの(や機能)も多く付随しているケースがあります。Protico シリーズは非常に高いクォリティと絶妙な機能を備え、かつ入手しやすく、どこにおいても使用できます - 余分なものは一切ありません。



ビンテージモジュールのサウンドに精通した多くの業界人からの意見を取り入れた Portico シリーズは、最高にして最も信頼の置ける回路設計をベースにしています。

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