インタビュー
Arturiaアーティストインタビュー:HIROSHI WATANABE

HIROSHI WATANABE氏は日本を代表するエレクトロニックミュージッククリエイター/DJのひとりです。我々は今回、彼の愛する音楽、写真、そして日本について、じっくりお聞きしました。

-あなたの音楽を5つのワードで表現して頂けますでしょうか。

そうですね、”エモーショナル”、“メランコリック”、“アトモスフィック”、“生命” 、“ラブ & ピース”でしょうか。これらの要素をエレクトロ・ダンスミュージックとアンビエントミュージックに融合させています。

-ドイツの伝説的レーベルである"KOMPAKT"と契約されていますが、彼らとはどのようにして出会い、契約するまでに至ったのでしょうか?

 僕は19941999年の間はニューヨークでDJをしながら楽曲のプロデュースをやっていたんです。99年に東京に戻ってきてから、そこで培ったインスピレーションを基にして自分のサウンドを再構築していたところ、TREAD ”でのパートナーである北原くんがKOMPAKTに楽曲を送ってみてはどうかと提案してくれたんです。それが20002001年頃のことでしょうか。そこで、デモを送ってみるとすぐに返事が返ってきたんです。「リリースしよう!」って。

-あなたはプロの写真家でもあります。カメラへの愛情とシンセサイザーへの愛情につながりはあるのでしょうか?

はい!写真と音楽に対する僕の情熱はとても似通ったものがあります。双方に対して同じようにインスピレーションを共有していますね。「音やイメージ を具現化したい」と常日頃思っていて、それは言葉だけでは表せない、深い空間と強いイマジネーションがあるんです。

-ボストンにあるバークリー音楽院で作曲科を卒業されましたが、バークリーで学んだ中で最も重要なことは何ですか?またそれは現在どのように役立っていますか?

正確には僕はシンセサイザー科で卒業をしました。バークリーではとても長い時間を過ごしましたが、作曲に関しては学んだというよりも、僕があの場で得たのは何かを理論から学び取ったわけではなく、結局は出会った数多くの異文化のミュージシャン達、特にJazzミュージシャン達から学んだんだと思っています。また同時に、日本人としてのバックグラウンドやアイデンティティを改めて気付かせてくれました。

-あなたのスタジオで、最も特別な機材は何でしょうか?

難しい質問ですね。東京に戻って来る前のことですが、長い間、ビンテージアナログシンセを探しては収集していたんです。本当に好きなんですよ。でも、今はMacのソフトシンセとコントローラーに注目していますね。

-なぜそこまでシンセが好きなのでしょう?

初めて弾いたシンセはKORGの”MAXIKORG 800DV”で した。本当にかっこよくて、最高のサウンドが作れたんです。そういったシンセが当時発売された頃、僕の父親が音楽制作に嬉しい事に使っていたんです。なので、小学生のときにそれを体感出来た事、スタジオという異空間の中で正に宇宙の中にいるかの様な感覚を得られた事、これはとても大きかった。楽器という感覚より、もっとシンセサイザーという物体に興味が湧き、魅了された事を鮮明に覚えています。シンセ音が好きなのはそれが一番大きな理由のひとつですね。RolandJUNO 6/106, MKS-50/70も好きだし、CASIOCZ-5000, KORG T3, もちろんSH-101, TB-303, TR-606/808/909も好きだし、 ARPのシンセも, Sequential Circuit"OSCar" もみんな大好きです。

-Arturiaのシンセはどれをお使いですか?

Analog Experience The Factoryが大好きですね。僕は特にシンセの中ではパッドサウンドが大好きなんですが、音がいいんですよ、音がとてもいい!とくに、Jupiter-8, CS-80Prophetの音が大好きです。ARP2600は滅茶苦茶ヤバいですよ。

-Arturia製品を愛用されている理由を教えて下さい。

Arturiaから出ている音はどれもすごくリアルだからです。Arturiaのソフトウェアからは音の現実性をとても感じます。

-本物のアナログとバーチャルアナログの違いについて、巷ではよく討論されていますが、どう思われますか?

うーん、そういった意味の無いディスカッションはあちこちで見かけましたが、僕の意見は単純で。もちろん、アナログはアナログ、デジタルはデジタル、比べる必要は無いと。どちらの要素にも利点が沢山あります。状況に応じてそれぞれのいい部分を使うようにすべきです。カメラみたいに。現在多くのプロカメラマンは デジタルを使っています。例えば、僕がラップトップとコントローラを使ってDJセットをプレイしている時、オーディエンスが踊り、リスナーが楽しみ、みんなが音そのものに満足してさえいれば、アナログだのデジタルだの懸念する必要はないんです。音楽的満足感という結果がすべてであって、その過程ではないと思っていますよ。

-日本は、地震や津波、福島原発の問題などかつてない深刻で厳しい時期にあると思います。それらのことにどのように影響を受けましたか。また自身の音楽に変化をもたらすことになると思われますか?

とてもセンシティブな質問ですね…答えは、“YES”です。自分の音楽に影響すると思います。あれから自分の音楽に、よりシリアスで人間的な要素を入れている事に気付きました。震災や津波で亡くなられた方々 のことは我々皆がとても悲しい思いをしている事は確かですから。そして現在も放射能という問題には当面僕ら全国民が立ち向かわなければなりませんから・・・

-あの大災害から日本は復興しようと立ち上がっています。あのような出来事に遭遇したときに発揮される日本人の特別な部分とは何だと思われますか?

日本人カルチャーの中で特別な部分のひとつは、”忍耐”だと信じています。このワードは、何か深刻な事態が発生したときに何よりも大切です。この地震列島に住む僕たちは今後起こりえる地震に対しても常に備えてお かなくてはなりません。しかしこれが日本の歴史でもあります。もちろん、とても怖いですが、ほかにどうしようもないでしょう?私たちはここに生まれたので すから。

 -2012年のプロジェクトを教えて下さい。

KOMPAKTからリリース予定のKaito名義の4thアルバムを準備していこうと思っているところです!このリリースにはとても興奮しています。僕の息子のカイトはもう13歳になります。このプロジェクトは彼が2歳の赤ちゃんだった時に始めたのですが…時間が経つのは早いですね。2012年は重要な年になりそうです!ところで、3枚目のKaitoアルバム”TRUST”にはAnalog Factoryの音色をたくさん使っているんですよ。これはここで絶対言っておきたかったんです。ありがとう、Arturia!

 


<HIROSHI WATANABE プロフィール>

1971年東京生まれ、東京音楽大学付属高校コントラバス科卒業後90年に渡米、ボストンのバークリー音楽学院にてMUSIC SYNTHESIS(シンセサイザー)を専攻。ニューヨークのダンスミュージックレーベルより作品を多数リリースし、 99年6月から本格的に日本に拠点を戻して以降は GACKT、松田聖子、パフィー、篠原ともえ、浜崎あゆみ、Sing Like Talking、星野晃代、CANON、PENICILLIN、工藤静香、小松未歩、meg、曽我部恵一、JAFROSAX、等々数々の日本人アーティス トのリミックスを手掛け、KONAMIアーケードゲームBeatmaniaシリーズへの数多くの楽曲提供、資生堂、メナード、日新フーズ、テキーラクエル ボなどのCM音楽、TVドラマ、映画、ファッションショー、そして舞台音楽家としての活動も勢力的に行い、2002年夏には現在日本を代表する舞踏 家”HIRO TATEGATA”とのコラボレーション『TRYOUT汚れなき痴人』『タランチュラ』では様々な音楽手法を取り入れたサウンドトラックを制作手掛けるな ど多方面で活動し、舞台音楽家として活動をしている中では岸谷五朗氏プロデュース作品を初めとし、第三舞台を立ち上げた鴻上尚史氏のThird Stageプロデュースによる舞台を2004年以降から現在に至るまで手掛けている。99年帰国後からは本格的に写真家としても活動を始めており、東京を 初めギリシャ、モスクワにて個展を開き 『TINY BALANCE』と題したテーマを打ち出し作品作りに励んでいる。

2000年にはグラフィックデザイナーの北原剛彦とプロダクション「norm」を立ち上げ、2人のコラボレーションによる名義“TREAD”をスタート。 2001年の夏より現在に至るまでに5枚のアルバムをリリース。同2001年の夏からはドイツ、ケルンにあるレーベル”KOMPAKT”より Hiroshi Watanabeサウンドの集大成とも言えるメインプロジェクトとなるKAITO名義にて 『BEAUTIFUL DAY』 『EVERLASTING』 『AWAKENING』 を立続けに発表し、2002年秋にはアルバム 『SPECIAL LIFE』をリリース。現在に至るまでにKAITO名義ではトータル3枚のアルバムと6枚のシングルそしてKAITO名義でのDJ MIX CDをリリースしヨーロッパへと活動の場を本格的に広げ、バルセロナ”SONAR Music Fesfival” ドイツのケルン”POPKOM”、ベルリン、スイス”VISION FESTIVAL”、アムステルダムで行われた5 Days Off Festival、ベルリンのKompakt Night、そしてバルセロナのMonegrosDesert Fes等のビックイベントに出演しLIVE演奏を披露。世界屈指のパーティーアニマル達を熱狂の渦に巻き込んだ 。2004年以降はギリシャKLIK RECORDSからは本名名義で活動をスタートしアルバム『GENESIS』を2005年に発表以後、ギリシャツアーを毎年を行い現地ギリシャは元より日 本国内においても大反響を得る。その他も大ヒットアニメ『交響詩篇エウレカセブン』へは挿入曲として『Get it by your hand』を提供。そして2008年には曽我部恵一氏をヴォーカリストに向えた意欲作『LIFE,LOVE』をリリースする。そしてKaitoプロジェク トは更なる進化を遂げ、2009年秋に3rdAlbumとなる『TRUST』『Trust less』2010年にリリースし、新たに迎えた2011年春、HIROSHI WATANABE名義での2nd Album『Sync Positive』をKLIK RECORDS再びリリースする。

HIROSHI WATANABE オフィシャルサイト