Tune Studio チーフ・エンジニア 井上勝己 インタビュー

経験豊かなノウハウによって最高のMIX環境を提供するレコーディング、ミキシングスタジオ。

- 現在のPro Tools HDの環境を教えていただけますか?

黒筒のMacPro、6コアのモデルにメモリを32GBを積んでMAGMA製の3slot PCIeシャーシを2台をThunderboltで繋いでいます。一台には、Black MagicのビデオカードとHDXを2枚入れて、もう一台のシャーシにUAD2 OCTOを3枚入れています。UAD-2は24コア状態ですね。 

このシステムは、昨年の夏から導入しているんですが、その頃はまだMacProもThunderboltも全然信用されていませんでしたね。MAGMAのThunderboltシャーシが2台で並列で動くか不安でしたけど、あっさり認識しましたし、その後のトラブルも全然なくとても優秀です。AVID HD I/Oも3台に増やして、AMS/Neve 8816のサミングアンプやアウトボードのインサートも自在に出来るようにセットアップしています。Pro Tools HDは、11でも12でも全く問題なく快適に動作していますよ。

- UAD-2 OCTO を3枚にしたのはどの様な理由からですか?

”どんなProToolsセッションでも立ち上げられる”ことをTUNE STUDIOのコンセプトとして、以前から重厚なシステムは組んでいたことがあるけど、一番の理由は、ハイレゾのセッションでも余裕を持ってUADプラグインを使いたいからです。 僕にとってはもう96kHzが基本となっていて今のスタンダードだと思っているんですね。48kHzのセッションをミックスする時であってもアップコンバートしてからミックス作業を始めます。ここの環境では以前の48kHzのセッションと同じ体感スピードで96kHzのセッションを扱えています。96kHzのセッションでは使えるプラグインの数は半分になるので、UAD-2 OCTO 1枚でミックスをやり切るより、2、3枚ある方が、遥かに自由度が高いんです。

- あえてセッションの基本を96kHzとする理由は何ですか?

隙間を感じることができて過度なEQをしなくても良いし、96kHzの方が演算能力が高くなるように感じるリバーブもある。もちろん今も44.1、48kHzの方が、音が好きという人もいるんですけど、誤解を恐れず言えば、それは”古い”と思っています。CD作品では96kHzでミックスを行ったものを最終的に44.1、48kHzにダウンサンプリングして納品していますが、今はそのCDを作った5ヶ月後に、ハイレゾのリマスターをするかもしれないなんてことは、普通にあります。ハイレゾのミックスは、Blu-rayオーディオとして発売することもできる。売るときにあったらいい付加価値を提供できるようなマスターを持つというのは、現代のエンジニアであれば必要なことだと思って取り組んでいますね。できればレコーディングから、もし48kHzのセッションを貰った場合であっても96kHzにして行うべきだと思います。

- ハイレゾの案件も多いですか?

多いですよ。ひょっとしたら僕が96kHzの案件ばかりやっているからかもしれませんけど、今はアイドルやアニメもハイレゾありきですからね。先日の11/6クラムボン2015「tour trilogy」in日本武道館の録音も全部32bit96kHzで行いましたよ。当日は、メンバーの3人以外にも弦セクションが入って結構な数のマイクも立っていたので録音データは全部で500GBにもなってしましましたけどね。コピーするのに3時間くらい掛かって、これはほぼ実時間じゃないかと(笑)。最初は、なぜそんなリスキーことをする必要があるのか、マシンスペックが不安だ、といったような声もありましたけど収録は全然問題ありませんでした。バックアップも録っていますしね。こういうことは10年前にはできなかったことだから・・・、だからやるんですよ。クラムボンのミトさんも革新的なのでこちらも色々トライできるし、楽しくお仕事させていただきました。

- ミトさんとのお仕事が多いようですね

ミトさんがプロデュースする作品のミックスをやらせていただくようになってからご一緒させていただくことが多くなりましたね。とくにクラムボンのアルバム「triology」のミックスは印象深かったです。ミトさんがプロデュースされている映画「心が叫びたがってるんだ。」や「終わり物語」シリーズなどもやらせていただいています。結構、自由にやらせていただいてますね(笑)。僕は、コンビニのシーリングスピーカーで鳴っても、モノラルで掛っても全部の音を余す所なく”風合い”を届けることができる音を目指してやっています。ドラム、ベース、歌もそれ以外も全部聴こえる、全包囲網で音楽を届けることでき、なおかつガチガチじゃない音・・・、ハイファイとローファイが共存した音にしたいと思ってやっているんですね。クラブっぽいサウンドを求めているのであればきっと僕を選ばないと思うので、おそらくそんな所を気に入っていただいているんだと思います。

- どのようにUADプラグインを活用していますか?

1176 Classic Limiter プラグインコレクションのRev.A シルバー・ブルーストライプがお気に入りで必ずボーカルに使っています。男性ボーカル、女性ボーカルでもバッチリですよ。そこに更に太さが欲しいときは、Teletronix LA-2AClassic levelerプラグインコレクションのGrayをインサートします。コンプレションせず通すだけでいいんです。ハイレゾで映える鮮やかなボーカルを作るテクニックとしてボーカルトラックを複製してWET/DRYの2ライン処理を行っています。特定の部分をEQをして過激にリミッティングしたものを少し足して行くんです。これを行うとコンプレッションして足り無くなったトランジェントを補填することができてより自然なサウンドにすることができるんですよ。 

僕に限らずですけどミキシングにはUAD-2だけじゃなく、WavesやPlugin Allianceも使っています。けれどもUADプラグインは他で表現できない濃密なサウンドを作り出すことができる唯一無二の存在なんですよ。全部打ち込みで出来上がった平べったい音であってもインサートすることで魔法が掛かるのはUADプラグインのシリーズです。UAD-2 OCTOが3枚あればOcean Way Studios Pluginとかも各楽器立ち上げることだってできますからね。Pro Tools 12からコミット機能も搭載されましたけど、僕はエンジニアなので必要な調整はリアルタイムで行わなくてはいけない。20万円で買えるDSPカードを節約してクライアントを待たせる理由なんてないですよ。 

ページトップへ